現在位置 : トップページ > 財務省について > 審議会・研究会等 > 財政制度等審議会 > 財政制度等審議会財政制度分科会 > 議事要旨等 > 議事録 > 財政制度分科会(平成30年3月14日開催)議事録

財政制度分科会(平成30年3月14日開催)議事録

財政制度等審議会 財政制度分科会
議事録

平成30年3月14日
財政制度等審議会


財政制度等審議会 財政制度分科会 議事次第

平成30年3月14日(水)15:30〜17:10
第3特別会議室(本庁舎4階 中-412)

1.開会

2.議題

  • 有識者からのヒアリング
    「日本経済と財政健全化について」
    − 熊谷亮丸 大和総研常務執行役員 調査本部副本部長 チーフエコノミスト
  • 有識者からのヒアリング
    「「高格付け安全資産」としてのJGBの重要性と財政再建」
    − 大島 周 みずほ銀行常務執行役員

3.閉会

出席者

分科会長代理

田近栄治

木原副大臣

今枝大臣政務官

岡本主計局長

茶谷次長

大鹿次長

神田次長

青木総務課長

中野司計課長

若原給与共済課長

関口調査課長

竹田官房参事官

江島主計官

安出主計官

湯下主計官

小宮主計官

高橋主計官

中島主計官

阿久澤主計官

前田主計官

中山主計官

内野主計官

北尾主計企画官

藤ア主計企画官

遠藤典子

黒川行治

武田洋子

中空麻奈

永易克典

宮島香澄

臨時委員

秋池玲子

伊藤一郎

老川祥一

小林 毅

末澤豪謙

十 河 ひろ美

冨田俊基

増田寛也

~子田 章 博

宮武 剛

吉川 洋

亮丸・大和総研常務執行役員
調査本部副本部長
チーフエコノミスト
大島 周・みずほ銀行常務執行役員


午後3時30分開会

〔 田近分科会長代理 〕 それでは、財政制度等審議会財政制度分科会を開催させていただきたいと思います。

秋の建議を終えて、これから春の建議について、5月ぐらいまで審議を重ねていきたいと思います。

本日は、お手元の議事次第にあるように、有識者のお二人からお話を伺いたいと思っています。

講師として、熊谷亮丸大和総研常務執行役員 調査本部副本部長 チーフエコノミストと、大島周みずほ銀行常務執行役員の2人にお越しいただいています。

本日は、熊谷さんと大島さんから続けてお話を聞いて、その後、質疑ということで進めさせていただきます。

それでは、お願いします。

〔 熊谷チーフエコノミスト 〕 ただいま御紹介にあずかりました大和総研の熊谷でございます。本日は、日本を代表する諸先生方の前でお話をさせていただく機会を賜りまして、心より光栄に存じます。時間も限られておりますので、ポイントを絞って、少しでも皆様のお役に立つような話をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

まず、資料の1ページ目をごらんください。

本日、私からは大きく4点について御報告をさせていただきたい。

まず1点目としては、アベノミクスの成果と課題ということでございますが、私は、基本的な方向性としては、決してアベノミクスは間違っていない、正しい方向である、このような考え方でございまして、日本経済は今着実な回復軌道をたどっていると。ただ、足らざるところがあって、1つは、社会保障制度の改革等を通じた財政再建、もう1つは、第3の矢、成長戦略の強化ということでございますけれども、この成長戦略については、後で資本主義の歴史のようなことを少しお話させていただきますが、労働市場の改革、ここにやはり最も力を入れることが必要であるという考え方です。

2点目として申し上げたいのは、1から5まで書いてございますけれども、世界経済には下振れリスクが、とりわけ海外に山積をしているという状況でございます。したがって、どんどん先送りをするのではなくて、やはり早期に財政再建に取り組むということが必要である。これを2点目として申し上げます。

3点目としては、財政再建が経済に及ぼす影響でございますけれども、これはもう釈迦に説法ということだと思いますが、健全な財政は、やはり中長期的な経済成長の前提条件である。一部で、増税はブレーキで、成長戦略はアクセルだと、このアクセルとブレーキを同時に踏むのは何だという、このような議論があるわけでございますけれども、もともと今はもう財政ががたがたになって、いってみれば車が壊れかけている状況であって、そこでアクセルを踏めば車はスピンしてしまうわけでございますので、ちゃんと車を直しながら車が進むような、このような財政再建と経済成長の両立を図るということが必要だと。そして、最近の我が国における貯蓄率の動きでございますけれども、将来が不安であることが貯蓄率を押し上げている。したがって、中長期的な観点から見れば、財政再建に取り組むことが、これがむしろ消費を中心に景気を支えることへと繋がっていく。具体的には、将来不安というところがかなり足を引っ張っているわけでございますので、これからの財政再建計画において、この社会保障に係る個々の改革の中身や工程をしっかりと示すとともに、制度の持続性に係る不確実性を減らしていくということが非常に大きなポイントであると。

4点目としては、それでは、具体的に何をしたらいいのかということでございますけれども、まず、経済成長すればそれだけで財政再建ができるかといえば、ドーマー条件、名目GDPが長期金利よりも高いという条件は、やはり中長期的に見ればなかなか満たすのが困難である。やはり諸外国の事例などを見ると、1つは経済成長、2点目として増税、3点目として歳出のカット、この3つを三位一体でバランスよく行っていかない限りは財政再建することはできない。自然増収だけに頼っていては財政再建は難しいと。そして、鍵としては、歳出の適正な管理、これを行うと同時に、将来世代に負担を先送りせずに、社会保障制度の改革を断行していくということが非常に大きな鍵になるのではないか。

本日は、以上の4点について、残された時間で、実際のデータを使って、なぜそう考えているかということをお話しさせていただきたいと思います。

2ページ目は、日本経済の展望。一番上のところを見ていただくと、ここでは次の消費増税を織り込んでおりますけれども、今、潜在成長率が1%ちょっとだと言われておりますので、その潜在成長率を上回る1%近い着実な経済成長が想定される。

3ページをごらんください。3ページ目でお示ししたように、そもそも安倍政権が成立する前には「追い出し5点セット」ですとか「七重苦」という問題があって、これを今、安倍政権は全て反対の方向に転換しようとしているわけですから、基本的な政策の方向性は正しい方向に来ている。

4ページ目、5ページ目は、このアベノミクスの経済効果でございますけれども、4ページの上のグラフ、左から3本目の緑色の線、これは私どもが経済モデルを使って1年間でアベノミクスによってGDPがどの程度押し上げられたかということですが、大体0.45%ずつ毎年経済が支えられている。ただ、右半分のところを見ていただくと、物価に対する影響はせいぜい0.1%あるかないかということでございますから、アベノミクスは、景気はある程度短期的には支えたのだけれども、物価に対する押し上げの圧力は限定的であったという評価。

そして、5ページ目は、一番上のピンクのところを御覧いただきますと、ここで、一番左端が全規模全産業で、1年当たり、アベノミクスの円安で大体3兆円ぐらい経常利益が増えた。内訳は、大企業、中小企業、そして製造業、非製造業とあるわけでございますが、全体としてはやはり底上げされているということがございます。

問題は、6ページ目でございますけれども、ジョン・F・ケネディが1962年にアメリカの議会でおっしゃったこと。やはり「屋根を修理するなら、日が照っているうちに限る」ということでございますから、今、短期的にカンフル剤等によって景気は非常にいい。世界経済も今のところしっかりしているわけですから、なるべく景気がいい今のうちに積み残した問題を、特に財政再建の問題について、早目早目に取り組んでいくということが必要だと。

次のスライドは、私は、今、経済同友会でJapan 2.0という委員会があって、これは小林代表直轄で、2045年の日本がどうなるか、バックワードルッキングに2020年までに何をやればいいかということを議論しているのですが、その副委員長を今拝命しております。国家価値はX軸、Y軸、Z軸の3つで表現できる。X軸というのは、普段の、せいぜい1年程度の時間軸までの経済活動。Y軸は、10年程度の時間軸のイノベーション。Z軸は、サステーナビリティー ──まさに財政、教育、人口、エネルギー等々でございますけれども、これは100年程度の時間軸。今の日本というのは、事実上毎年のように選挙が行われるので、とにかくもう議論がX軸のところだけに集中していて、中長期のサステーナブルな成長に関する議論というものが進んでいない。短期的にはカンフル剤で景気はよくなっていますが、特に財政再建の問題、社会保障の問題、人口の問題等々、このあたりについて、やはり前倒しで景気のいい今こそこれに取り組んでいくということが必要だという考え方です。

その中で、次のスライドでございますけれども、労働市場の改革が、これが成長の宝の山になってくると。このページ全部ちょっと映していただきたいと思いますが、左に行くほど株主が強い、右に行くほど従業員が強い、縦軸が時間軸で、下に行くほど今に近づくわけでございますけれども、過去数百年間の資本主義は、左に行ったり右に行ったりして、株主が強くなったり従業員が強くなったりして動いてきた。第3期、3.0というのは、これはグローバル資本主義。一気に左に行って株主の短期的な利益が非常にアンバランスな形で重視をされたわけですが、これから大きな潮流は、もう一度右に向かって動いていく。これはなぜかといえば、人工知能が出ればほとんどの単純労働が代替されてしまうということですから、企業の付加価値の源泉は最終的には人間の創造性だとか対人関係能力へと移っていく。このような資本主義の過去数百年の潮流変化を踏まえた上で、労働市場の改革が成長戦略の宝の山になってくるということでございます。

9ページ目のグラフでございますが、これは左上が日本、左下がドイツ、右上が、これがアメリカ、右下が韓国でございますけれども、賃金の要因分解をしたものでございます。左上の日本のところを見ていただくと、やはり賃金が伸び悩んでいる主因は黄色い部分の労働生産性、ここが低迷しているということがかなり効いているということがございます。他方で、赤で描いてある労働分配率、これは若干賃金を押し下げていますので、当然やはり──本日、春闘の集中回答日ですが、しっかりと賃上げをすることが必要である。ただ、この部分が主因ではなくて、あくまで賃金の大勢は黄色い部分の労働生産性によって決まっている。紫の部分が交易条件、原材料価格等をどれだけ売り値に転嫁できているということですが、これは足元で見るとそれほど賃金を下押ししていないということでございますので、まずは、この労働市場改革などで生産性を上げるということが一義的に重要であって、2次的に見れば、労働の分配の部分で賃上げを行っていく、そのあたりがこれからの鍵だということでございます。

11ページまで行っていただくと、冒頭申し上げたように、今、世界経済には下振れのリスクが山積をしている。

12ページが、これがシラーPER。中長期で見たときに、株が上に行くほど割高で、下に行くほど割安ということでございますが、今は歴史上1900年以降で見ると3番目に割高な状況と。一番割高だったのがITバブル。2番目が1929年の世界大恐慌の前夜。今、それにほぼ迫る程度ですね、過去3番目に割高であって、グリーンスパン氏が「根拠なき熱狂」と言ったときを少し超えている程度の状況でございますので、これもやはり予断を許さない状態と言えます。

次のスライド、まさにティラーソンさんが辞任をいたしましたけれども、今までは上半分の円安・株高材料が評価されてきた。ただ、これからは下半分の円高・株安材料に対する警戒感が強まるのではないか。特にAのドル安カード、ここを相当警戒する必要があるわけでございまして、次のスライドで、アメリカは過去にドル高、ドル安、ドルの安定化、この123、123というサイクルを繰り返してきた。これから徐々にアメリカが(2)のドル安カードを切ってくるのですね。このリスクに対して細心の警戒を払う必要があると。

次のスライドは、中国でございます。全体としては、金融の過剰が1,200兆円強、コインの裏表で設備ストックの過剰が730兆円程度、財政出動余地は実態的には非常に小さくなっているというような状態です。

具体的には、次のスライドの左のグラフでございますけれども、これが過去の名だたるバブルを並べたものでございますが、家計と企業の借金のGDP比を見ると、過去の名だたるバブルの中でも最悪程度のところまで今中国の借金は積み上がっている。右のグラフはその中身でございますけれども、赤い部分の非金融法人、この中の8割方が国有企業であると言われておりますので、実質的に国が負わなくてはいけない債務はおおむねGDPの180%程度。日本の220%と比べてもちょっと低い程度のところまで来ていますので、中国についても相当警戒することが必要だと。

その中で、やはり財政再建は日が照っているうちに急ぐ必要があると。17ページは、これはもう確認でございますけれども、財政赤字にはここに書いてあるような弊害があるわけです。

そして、18ページ、縦軸に潜在成長率をとって、横軸に政府の債務をとると、緩やかな右下がりの均衡線でございますので、やはり赤字が積み上がっている国は潜在成長率が低いという、このような関係がございます。

19ページでございますが、ここでは私どもが定量分析を行っておりますが、この右の部分、文章で書いてございますけれども、政府の債務残高比が、これがGDPの104%を超えると成長に対してマイナスの影響が出る。これは過去の様々な先行研究とも整合的な結果でございます。そして、今の政府残高比から10%ポイント削減することができれば1人当たりのGDPは0.29%ポイント程度改善できる。これが私どもの定量的な分析結果でございます。

20ページは、縦軸が貯蓄率、横軸が、これが将来不安ということでございますけれども、緑の線で生の貯蓄率を見ると、実はあまり相関があるように見えない。ところが、紫の線のほうで高齢化の要因を私どもが除去した貯蓄率というものを計算してみると、この2つにはかなり相関があって、やはり将来不安が高まる中でどんどん国民が貯蓄をするようになってきているということがあります。

次のスライドは、この貯蓄率の推計ということでございますが、ご注目いただきたいのは、紫色の部分、これが将来不安の要因によって貯蓄率が押し上げられている部分でございますが、1983年からの累計で見ると、将来が不安なことで5%近く、5%ポイント近く貯蓄率が上がっているわけでございますから、これを財政再建等によって解決することができれば、潜在的には消費が5%程度伸びる余地が存在するということです。

そして、次のスライドは、それでは、国民の不安の中身は何なのかということでございますが、上半分のところに書いてあるように、大きく3つの不安材料があると。ブルーで書いてある雇用状況の悪化、黄色で書いてある子育てや教育に対する負担の増加、そしてまさに本日のテーマである赤い部分の国や地方の財政状況の悪化ということでございますが、この下半分で、それでは、安倍政権はそれぞれの問題に対して今どういう手を打っているのかということで、まず、一番左側のブルーの雇用状況の悪化ということで言えば、ここに対しては、今、同一労働同一賃金などの働き方改革によって手を打とうとしている。そして、真ん中の黄色い子育てや教育の問題も、まさに今、人づくり革命によって対応している。問題は、右端の赤い部分のこの財政の悪化という問題についてだけは、やはり問題が先送りされていて、なかなか手がついていない状況でございますから、ある意味で、画竜点睛というような、アベノミクスの最後のピースとして、この財政再建について正面からしっかりと取り組むことが必要ではないか。

次のスライドは、これは左側が家計部門、右側が企業部門、縦軸が政策の影響度がどれ程度あるか、横軸が政策の不確実性がどれ程度あるかというものでございますけれども、やはり右上のところに社会保障制度関連のものがあり、これが家計についても企業についてもこの辺りが大きな問題としてあるわけでございますから、こういった不確実性を除去していくことがとりわけ社会保障制度については重要だと。

24ページは、今申し上げたことを補足する意味で、左のグラフが、これがグレンジャーの因果性。これは1%有意のものを抽出しておりまして、これは色にかかわらず全て1%有意。緑のところは、ちょっとビジュアル上強調しているわけでございますが、構造的財政収支を動かすことによって消費に対する影響があるということが抽出できる。右のグラフは、ショックが起きて時間がたつとどうなるかということですが、最初はもちろん財政再建するから経済にはマイナスの影響が出ると、ただ、5年程度たってくるとむしろプラスの影響のほうに転換してくるということがございます。このような観点から、やはり社会保障制度の改革をしっかりと行って将来の不確実性をなくすことが、これが長い目で見れば日本の経済にとってプラスの影響を及ぼしてくるという考え方でございます。

次のスライドからは、最後の論点、それでは、経済成長だけで大丈夫なのかというところを含めた話でございますけれども、ご案内のように、ドーマー条件というのはなかなか満たすことが難しい。まず、左の図表の右上のところに緑で描いてある図表がございますけれども、過去のドーマー条件の日本における勝率は、大体2割台からせいぜい4割台程度の勝率だと。右のグラフは、縦軸がOECD諸国でドーマー条件を満たした国の割合、横軸が時間軸でございますけれども、70年代の金利が自由化する前はドーマー条件を満たすことが比較的多かった。ところが、80年代に自由化してからは、よほどのバブルでも起きない限りはドーマー条件を満たさないというのが、ある意味で国際的な常識になっているということでございますから、いわゆるディフィシットギャンブルという、起こるか起こらないかわからないことを前提にしてそのような甘い財政再建の計画を立ててはいけないと、やはりある程度保守的な前提のもとで実効性のある財政再建の計画をつくることが重要だと。

26ページ、ここは、やはり社会保障が今の歳出拡大のほとんどの部分を占めている、この期間で言えば3分の2程度を占めているということ。

27ページは、縦軸が社会保障の支出、横軸は国民負担率でございますけれども、日本は、今のままでいくと、この緑の均衡ゾーンから抜け出して、やはり受益と負担が全く見合わないゾーンに入ってしまうということがあります。

次のスライドは、「選択する未来」委員会、この事務方を私ども大和総研がやらせていただいたので、そのときのシミュレーションで、どれだけ負担を増やさなくてはいけないか、増やさなければどれだけ給付を減らさなくてはいけないかという、このような姿の中から現実的なものをやはり国民が選択していくということが必要になる。

29ページは、日本の財政再建がなぜうまくいかなかったのか。まず、左上は、この赤い部分が歳入で、それで紫の部分が歳出、上に行くほど財政が改善する、これは歳入が増えて歳出が減るということでございますが、日本は、よくなるときは、この紫色の部分、歳出に対する切り込みがちょっと甘くて、この赤で描いてある歳入頼み、景気頼みでよくなるわけでございますが、そこでまた景気が悪くなると、今度は歳入も減るし、歳出も増えて、またさらに悪くなるということを繰り返してきた。やはり歳出に対する切り込みが甘くて歳入頼みであるということが問題である。左下のグラフで見ると、安定的な間接税のウエートが低いので、やはり景気がよくなるととそれによって所得税や法人税などが上がるけども、悪くなるとそれ以上に大きく落ちる。右のグラフで見ると、これは歳出の中身でございますけれども、やはり社会保障に対する取組が、切込みの甘い部分があって、諸外国で財政再建がうまくいっている国は、社会保障のところにしっかり切り込んでいる。ですから、ここから得られる教訓は、まず1つは、歳入頼みではなくて歳出にも切り込まなくてはいけない。2つ目として、間接税のウエートをしっかり上げて税収を安定化しなくてはいけない。3点目として、社会保障に対する切込みをやらなくてはいけない。これが諸外国の事例などと比べて──諸外国の事例は30ページ以降にございますけれども、得られる教訓ということでございます。

それから、34ページ、ここはいわゆるシルバー民主主義の話で、財政支出は高齢者向けのウエートが高過ぎるので、ここをやはり若年層だとか子育て世代などに傾けていくことが必要だと。

35ページ、36ページ、ここは中長期の財政のシミュレーションで、例えばやはり超改革シナリオという程度のところまでいかないと、なかなか財政が持続可能な状況にはなりにくい。

37ページから39ページは、具体的なシミュレーションでございますが、やはり社会保障への切り込みですとか増税のようなものが一定程度必要になるということ。

そして、40ページは、縦軸が長短スプレッド、横軸が政府の財政状況でございますが、これは大体きれいな一直線上に並んでいて、日本だけは異常値をとっている。これは、今、日銀が発行される国債のほとんどを買っているからということが1つ、もう1つは今のところは経常黒字で外国人が国債の1割程度しか持っていないという、2つの前提があるわけでございますが、これらもいずれは大きく変わっていく。

少し飛ばしていただいて、43ページ。左が今までのゆでガエル構造、右がこれからでございますけれども、これからは貯蓄が取り崩される中で経常黒字が大幅に減少する可能性がある。そうなると円安だとか、インフレ、もしくはスタグフレーションのリスクが出て、金利が上がるとそこから悪いスパイラルが起きる可能性がございますので、やはり早目に、景気がいい今こそ財政再建に取り組むことが必要だと。

次のスライドは、左がイギリスの1930年代の事例、右がアメリカの1970年代の事例でございますけれども、経常収支の赤字化などが視野に入ると、そこで長短スプレッドが拡大して長いところの金利が大きく上がるという傾向があるわけでございますので、やはり先手を打って財政再建に着手をすることが必要だということでございます。

少し長くなってしまいましたが、最後1ページのところでもう一度ポイントだけ申し上げますと、アベノミクスは、方向は正しいけれども、財政再建の取組や成長戦略、特に労働市場改革のところにはまだやはり取り組む余地が大きく残っている。世界は下振れリスクがあるので、早目の財政再建が望まれる。財政の再建については、むしろ中長期には景気にプラスの可能性が高くて、将来不安を社会保障制度などでなくすことがポイントである。そして、成長だけでは達成できないので、成長・増税・歳出カットを、これを三位一体でバランスよく行うことが必要だということです。

私からのご説明は以上でございます。

〔 田近分科会長代理 〕 熊谷さん、どうもありがとうございました。非常に分かりやすいご説明をいただいたと思います。

続いて、大島常務執行役員より、「高格付安全資産」としての日本国債(JGB)の重要性と財政再建についてお話をいただきます。よろしくお願いします。

〔 大島常務執行役員 〕 ありがとうございます。ただいま御紹介にあずかりました大島でございます。

若干自己紹介を申し上げると、私は、みずほ銀行で、まさに国債、外国債券を含めたポートフォリオ、それからそれらの外貨・円貨の流動性の管理を実務でやっているわけでありまして、もちろん今の金融環境の中で、いかに窮状のビジネスを支えながら、各銀行の収益を支えているポートフォリオをどのように運営していくかというような課題に日々取り組んでいるものでございます。

マクロ経済につきましては、本日ご列席の皆様はもう百もご承知ということでございますので、私が普段実務上見ております角度から──もう既に御覧いただいているものが多々と思いますけれども、少しスライドを御覧いただいた上で、マーケットというフィルターを通した場合に日本の財政再建の必要性がどのように映っているのか、実際にその行動をとるプロセスについて市場というプレッシャーを考えたときにいかほどの時間が残されているというふうに考えていけばいいのか、こういった参考になればと思いまして、本日、スライドを幾つかご用意しております。

財政制度でございますけども、そのような意味では、国債という財政を支えているメカニズムの中で、まず、日本国債──紙上では「JGB」ということで書かせていただいていますけれども、それが金融機関という、あるいは日本銀行も含めたファンクションを通してどのように機能している状態にあるかということをまず申し上げまして、その後、マーケットの話題としてどのように日本の財政が映っているのかというところで、もう常識のものが多いと思いますけれども、幾つか用意させていただいております。

それでは、まず、4ページ目でございますけれども、これもご案内のとおりと思いますけれども、日本銀行の国債の残高が増えている状況でございますけれども、引き続き銀行部門についても非常に多くの債券が保有されているということでございます。現在の日本銀行の政策の中で預金が少しずつ各銀行のバランスシートの中に増加している状況でございますので、そういったところは真ん中にございます国庫短期証券等で少し運用されながら実際に預金を打ち返していると、このようなことも含めてこのような図式になってございます。

次のページ、5ページ目でございますけれども、今と同じでございますけども、国内銀行の保有している国債の割合の変化でございます。減少したということは言っても、引き続き国内銀行、生命保険等の保有している残高が大きいということでありますけれども、急速に日本銀行のバランスシートの中で積みあがっているということでございます。

次のページ、6ページ目でございますけれども、こちらは先ほど申し上げた円貨の預金と貸し出しのギャップでございます。水色の線が変化でございますけれども、徐々に徐々に預金が凌駕しているという変化が御覧いただけるかと思います。

そういった中で、7ページ目でございますけれども、余資の運用先ということで言いますと、引き続き日本国債は非常に重要ということでございまして、この7ページ目のグラフで申し上げたいのは、このギャップが、下に行くほど預金が増えていく状態ですけども、そういったトレンド、傾向が日本国債の利回りの上昇をある意味防いでいるといいますか、上限を押しとどめている状況が継続しているということであります。

次のページ、8ページ目でございますけれども、こちらで申し上げたいのは、銀行にかかります金融規制の動きの中で、足元では国債のリスクウエートについては特に最終的に変更されるということがなく、現在はリスクウエート0%ということで扱えるという状況になっておりますので、ここは非常に懸念された問題ではございましたけれども、バーゼル委員会での検討も一旦完了ということでございますので、一旦はこの日本国債を金融機関が保有いたしましてお金が回る仕組みというのが今までと同じように維持をされているということだと思います。

続きまして、9ページ目、これは別な観点でございます。18年の3月から銀行勘定が持っております金利リスクに関する規制──我々はIRRBBと呼んでいますけども、銀行勘定における金利リスク、これが導入されているわけですが、その前提となるストレスを、金利上昇のストレスをかけた場合にどれだけの損失が発生するというふうなポジションを日本銀行、あるいは民間金融機関が持っているかということを示したグラフでございまして、青のところの金融機関の部分から日本銀行のほうに移っているところがうかがえますけれども、1%の金利上昇がある場合には、青いグラフで言えば5兆円超の金利上昇における影響ですね、銀行のバランスシートを傷める、それだけの金利リスクが市中において保有されているというところでございます。

続きまして、11ページ目からは、日本国債が金融機関の取引の中で担保価値として非常に有用であるという点でございます。この点では、やはりリーマン危機後のデリバティブの規制がおおむね整理をされているわけですけれども、ほとんどのデリバティブの取引については中央清算をされるという方向に進んでいるわけですけれども、例えば通貨スワップ、日本の銀行がドル資金を調達する際に円を見合いにドル資金をとってくるというような取引に関しては、足元でも中央清算のめどが立っていないということでございます。そういった取引に関しましては世界的にマージン規制というものが今入ってございますが、これは、右上にありますけれども、当初証拠金というものを相互にやりとりしながら、日々マーケットの時価変動の分を決済することによって、金融危機のショックが起きた場合に対応が可能になる、また金融システムに伝播しないようにする仕組みでございます。ここの契約に使われている担保が、まさにJGBが使われているケースが非常に多いということでございます。

12ページ目でございますけども、こういった規制の動向については、担保契約、各金融機関──この図式はISDAのほうでまとめたものをISDAのほうから頂戴しましてお示ししているわけですけれども、これは東京市場で活躍する23社ということでとった数字ですけども、急速に伸びているということを御覧いただければと思います。

次のページ、13ページ目でございますけれども、これの中で緑で囲った部分が日本国債の分でございまして、特に日々の変動をカバーしている部分については、赤い棒グラフですが、日本国債、あるいは現金と、多く利用されているということが御覧いただけるかと思います。

次のページの14ページ目は、その実数を示してございます。御覧いただきたいのは緑色の枠で囲ってある中段のところでございまして、JGBの使用率が非常に東京市場においては高いという実数を示しておるものでございまして、日本国債の担保価値が維持されていくということの重要性を示していることかと思います。

続きまして、15ページ目でございます。ここからは少し日本の邦銀の動きということでありますけれども、ご案内のとおり、国内におきましては、貸出金利ざやが、政策の影響もあるということでございますけれども、継続的に低下傾向にある中で、主要行につきましては海外でのビジネスチャンスを追いかけるケースが増えております。貸し出しの利ざやは今は若干落ちていますけれども、比較的なだらかな状態になっているわけでございます。

16ページ目もご案内のとおりでございますが、リーマン危機後の急速な海外展開、それから各企業の売上高に占める割合も非常に上昇しているということを示しているわけでございますけれども、17ページ目は、海外資産残高、こちらも急速に上昇しているということでございます。

こういった中で、邦銀、大手行でございますけれども、貸し出しの急増、18ページ目で御覧いただきますと、この濃い線が貸出金の伸び、それに対応いたしまして預金が増加しているわけですけども、これは主に法人の預金、日系・非日系からの預金が多いということでございますけども、おおむね今までのところはバランスをとって上昇することができたということではございます。

その中で、19ページ目でございますけれども、法人等の預金につきましては、非常に足の短いものが多くございますので、そういったものだけでは、いわゆる流動性規制と言われているバーゼルの規制に対応できないということから、少し長目の資金などもとっているということであります。ここでお示ししていますのは、日本国債を担保にしてドル資金を調達するスキームを示しています。短いものもございますけれども、場合によっては3年、5年と長い資金の調達にも活用されているということでございます。

こういった取引がやはりここ数年急速に拡大しておりまして、20ページ目にお示ししていますけども、これは実は私どもの銀行の数字を指数化してお示ししているのですけれども、どのくらい上昇してきたかというところを御覧いただければと思います。このようなものも加えることによって、日本企業の海外における進出の資金を、特にドルベース、あるいはドルから現地通貨ベースに変わっていく分も含めてサポートしているというのが現状でございます。

22ページ目にお進みください。ここからは国債の利回りが上昇した場合どう見えるかというところでございますが、22ページ目のところは、ご案内の長期金利のベースラインのシナリオを示しているわけでございます。これでも足元の金利水準からは非常に高い水準にございます。例えば2025年、ベースラインケースで2%ということでございますけども、先ほど御覧いただいた日本国債の金利リスク量、1%増えた場合にどれだけの影響があるかということをお示ししたわけですけども、2%ということですから、ざっくりその倍の影響があるということでありまして、ここのシナリオに穏やかに進んでいくことの難しさというのを少し御覧いただければと思います。

23ページ目は、これもよく御覧いただいているものだと思いますが、これはイメージというふうに理解をしていますけれども、内閣府のものでございますが、この中でやはり金利の1%のぶれでもかなり債務残高対GDP比が拡散するように見えるというところでございます。

24ページ目でございますけども、これは今この長期金利を分解したときに期待インフレ率と潜在成長率、それとタームプレミアムと。この水色の部分が非常に今抑えられているということを示してございます。これはまさに日本銀行が購入していることによって長期金利の上昇を抑えている。それによって、先ほど熊谷先生のお話がありましたように、ドーマー条件を満たしているという状況が続いているということかと思います。

次のページは、これは格付。御案内のとおりと思いますけれども、申し上げたいのは、今の日本国債の格付といいますのは、一番下の段に少し書いてございますが、バーゼルにおける担保、あるいは価値ということで見た場合に、ぎりぎりのところにいるということでありまして、中銀等につきましては、シングルA格以上の国、あるいはそれに対応した銀行についてとしか取引をしないというところが相当ございます。外貨準備が相当潤沢にアジアの中銀等にあるわけでございますけども、そういったものが日本、あるいは日本の金融機関の調達のサポートをしてくれない可能性も存在しているというのが足元の格付と思います。

26ページ目は、これは銀行の部分を示していますけども、通常は日本国債の格付と連動しやすいものですから、この辺りもぎりぎりのところにあるということを図示させていただいています。

27ページ目にお進みいただきますと、こちらは御参考ですけれども、欧州債務危機──記憶も新しいところでございますけども、債務残高が対GDP比で大きいところほど金利変化に脆弱であったということが左側。右側は、先ほど熊谷先生のお話もございましたけども、外国人の保有比率というのが相応に金利変化における影響が大きいというところでございます。

次の28ページ目、これは金利水準の動きでございますけども、ショック時の大きさというのは相当であるということでありますので、先ほどの金融機関、日本銀行にある金利リスク量を考えますと、相当に影響は大きいと思われるところでございます。

ただしということでございますが、29ページ目に、御覧いただきますとおり、まだ外国人の保有比率は少ないということでございますので、そのような意味では部門間の不均衡が国内で融通されているという状況にありますので、ヨーロッパ危機と同様のことが起きるにはまだ時間はございますけれども、構造的には同じような状態になっているということかと思います。

30ページ目以降は、少し財政の、もうよく御覧いただいているものばかりと思います。

32ページ目に、いわゆるワニの口ということでございますけども、重要なところは、これもやはりいろんな機会に出てくるものをヘッジファンド等市場関係者はよく見ておりますので、こういったワニの口が発散するのか、あるいはワニの口が閉じる方向に向かっていくのか、そのトレンドが非常に注目されているというところでございます。

次のページ、33ページは、御案内のとおりの社会保障の膨張でございます。

34ページ目、ここは今のところは意外に騒がれておりませんけれども、今回また見直しをしていく過程の中で、なかなかプライマリーバランスの黒字化のタイミングが計れないというところでございまして、ここのタイミングがいかに早く見通せるのかというところは、どこかでは非常に注目されるというところであります。

36ページ目以降、これはもう様々なところで出ているお話でございますので詳細は省きますけども、単純にこの図を見ても、日本の赤い位置が、いるところを見てみますと、やはり政府の社会保障支出の割合の大きさ、相対的な割合の大きさというのが御覧いただけるのではないかと思います。

次のページは、租税収入の低さでございますので、これもやはり諸外国と並べてみると突出をしているということでございまして、この単純な比較においてもなかなかに均衡するのが難しいということは明らかかなというふうに見られている状況がございます。

次のページは、先ほどもお話が出た国民負担率、御案内のとおり、少し日本は外れたところに存在をしているということでございまして、やはり右側のところに行くのか、あるいは社会保障支出を切り込んで下に行くのかということが、ほかの国々のバランスと、方向に行くのであればそのようなことかと思います。

次のページ、39ページ目のところでは、日本の国民負担率。これ自身はまだ相対的には低いわけですけども、支出と比べてどうかということかと思います。

41ページ目以降は、私どものみずほ総研で算出しているような人口動態の資料を御参考におつけしています。

申し上げたいのは、43ページまでお進みいただきますと、やはり人口動態から、これもよく言われていることでございますけれども、生産年齢人口が比較的安定しているタイミングというのが2020年代半ば辺りまでしかないということでございますので、ここの過程までの間にどうやって財政均衡に向ける道筋を示すことができるかというところが非常に重要になるということでございまして、恐らくここから三、四年程度の時間軸しかないかもしれないというところかと思います。

45ページ目以降は、少しジャーナリスティックでございまして恥ずかしい次第なのですが、税収の捕捉が果たして十分かどうかというところで、このような記事が踊るようになったということで、45ページ、46ページにいろいろと書いていますけれども、ダイヤモンドさんは「「税金の逃れ」を封じれば消費増税は不要」と書いてありますけど、果たしてそうかよく分かりませんが、いずれにしましても、歳出と歳入のバランス、ここをもう一度見つめてみて問いかける勇気というのが必要かなと思います。

47ページ目、まさにこの不安があるからこそ現金預金の比率が高い状態が続いているわけですけれども、これが銀行を通じてファイナンスされているということと思いますが、逆に言えば、本来生産性の低い分野も含めてお金が回っている可能性、あるいは本来活用すべき資金がきちんと行き渡っているかどうかということも含めて、なかなか難しい状態にあるのだろうというふうに思います。これは金融機関の使命という部分もあろうかと思っています。

48ページ目以降は、昨今御案内のとおりの財政のトレンドでございますけども、アメリカの例を例に出すまでもなく、足元では財政支出合戦のような雰囲気が傾向としてございますので、ここのポリシーミックスが世界の傾向と日本の状況と果たして同じかどうなのかというところでありまして、ここで申し上げたいのは、改めての比較でございますけれども、債務残高の比較という49ページ目のグラフを御覧いただきますと、やはり突出して大きいということでございまして、緑の線が日本でございますが、50ページ目のところでは、日本の位置は非常に左側のところですと右側に寄っておりまして、財政政策の発動余地はほとんどないというところ。右側では、イタリア、ギリシャと一緒というグループにくくられているということもまた事実でございますので、かなり細い道ということだと思います。

一方、次の51ページ目、これもよく御覧いただいていて、ここを金融で支えてきたわけでございますけども、バランスシートとGDPの対比における足元の時点での日本銀行の突出、売りというのもまた非常に大きいところでございまして、これをいかに下げられるか。点線になっていますけども、これは恐らくこのようにはならなくて、日本銀行の国債保有量は、相当長く継続的に購入が続くと思います。そうでありましても、ここの余地もあまりない中で、どうしても今後景気にプレッシャーがかかる場合には財政の議論が出やすいと思いますけども、市場で見ていることとすれば、一時的な財政のサポートは許容されるかもしれませんけども、その枠組みをどのように将来的に維持していくかということに対するコミットメントについては恐らく強く求められるところだろうというふうに考えます。

海外におけるビジネスチャンスをとっていきませんと生きていけない国になってしまっているということからしますと、そこに、金融機関という立場で考えますと、いかに資金面、金融面でのサポートをしていくためには、日本国債の価値を維持できるような財政再建の枠組みが非常に重要なポイントになり、あるいは、それなしには継続も難しい可能性も存在しているというのが足元のマーケットにおける財政の見方であるということかと認識しています。

私からの御報告は以上でございます。ありがとうございます。

〔 田近分科会長代理 〕 どうもありがとうございました。

以上で熊谷さん、大島さんの御報告が終わったわけですけれども、これから残りの時間は自由討議ということにさせていただきたいと思います。いつものとおり、御意見のある方はプレートを立てていただいて、活発に御発言いただきたいと思います。よろしくお願いします。

では、冨田さんから。

〔 冨田委員 〕 大変ありがとうございました。市場から、金利という形での反応が見えない中におきまして、非常に大切なお話を本日は市場に近い方からいただきまして、大変勇気づけられた次第でございます。

お一人ずつに1つずつお聞きしたいことがございます。

熊谷さんは、三位一体という言葉を使われまして、皆さん誰も財政健全化は必要であり重要だと言われるのですが、通常は、景気が先で、再建は後だという、シークエンスを大体言われます。ですが、それを一体と言われたことは私には非常に大事なことだと思うのですそのようなことを考える際の貴重な資料も本日提出していただけたように思います。24ページにグレンジャーの統計的な因果を示すチャートがございました。そこで、グリーンの線で財政収支、構造的な収支と個人消費との関係が示されております。これがどのような形で計測されたか。つまり「今日の減税は明日の増税」というのが非ケインズ効果の1つの表現の仕方なのですけれども、そのようなことはこの日本において計測されたと思うのですけれども、それはどのような形であったのかということと、右側では5年間ほどラグを置いてプラスの効果が現れるという話があったのですけども、金利が今のように非常に低い中において、金利という経路を通じずに非ケインズ効果が発現するとすると、それはどのような形なのかなということをお聞かせいただきたいというのが第1点なのです。全体の流れについては全く私も同意するわけですけども、そこのところをもう少し補足していただきたいという点です。

そして、大島さんにお聞きしたいことは、最後のところで、日本銀行の買い入れもまだ当分続くだろうということをおっしゃいました。お話の前半ではJGBを担保に使った金融取引の話がございました。この両者の関係ですね。どこら辺までと言ったらあれですけど、今でも非常に巨額の、1年で50兆円ほどの買い入れを続けているというのがどこまで持続可能なのでしょうか。論者によっては様々な見方があるのですけども、大島さんはどのように御覧なのだろうかということをお教えいただきたい。

ありがとうございます。

〔 熊谷チーフエコノミスト 〕 どうもありがとうございました。

これは、基本的には、やはり将来不安によって今貯蓄率が押し上げられているという状況なので、そこの将来不安を除去することによって、貯蓄率が下がってきて、それで消費が刺激されてくるような、そのような効果というのが想定できる。

ただ、増税のとき自体は当然やはり所得が減るということになるわけですから、そのときにすぐにあらわれるというよりは、これは24ページの左下のところにありますが、先進22カ国で、そこで推計したものでございますので、日本がこのとおりになるかどうかというのは多分様々な議論があるのだと思いますが、いずれにしても、最初は所得が減ることで消費などにマイナスの影響が出るけれども、一定の時間を置けば、その影響がおさまって、最終的には貯蓄率が下がって消費が上がって景気が刺激されるというような、基本的にはそのようなメカニズムを想定しているというところです。

〔 冨田委員 〕 少しすみません。よろしいですかね。貯蓄率のお話をされたのですけども、資料で本日お見せいただいたのは家計の黒字率ですよね。マクロで見た家計貯蓄率自体は非常に低い水準にまで日本はもう高齢化の影響でなっていて、そこからまだ下がっていくということは、私もそう思うのですけど、家計貯蓄率はマイナスになっていくということなのでしょうか。

〔 熊谷チーフエコノミスト 〕 21ページのところで、ここは御指摘のようにマクロの部分になるわけでございますが、ただ、重要なのは、絶対水準はその2つのデータで違うにしても、紫色の部分で、やはり将来不安でこれが押し上げられているので、そこがなくなってくれば、御指摘のように、このマイナスになる程度のところまで下がる余地があると、そのような考え方でございます。

〔 大島常務執行役員 〕 私のほうへの御質問ということで、私の資料ですと23ページ目のところで一度御覧いただいていますけれども、やはり利払いが増加していくことの影響による債務残高が急速に発散する形で上昇するというのがリスクであろうと思います。

この量的緩和の出口というのは、粛々と今向かっているわけでございますけれども、今年は欧州中央銀行も買い取りを恐らくやめていくだろうということで、徐々に、堅調な経済を前提にすれば、州にあります資金が吸収されていく過程にあると思いますが、先般、2月に大きくマーケットが動きましたように、そのような今まで前提となっていたお金がなくなる、規制の影響によって非常に慎重に資金を確保するような金融機関が出てくる、あるいはクロスボーダーの資金の動きというのが非常に一時的に細る、そういった緊張というのも少し垣間見たというのが2月5日、6日の出来事だったというふうに思っています。

実際にどこまで抑え込めるかということに関して言えば、今は日本銀行の購入量が非常に割合として突出している中で、国債市場の参加者が本邦金融機関という中で、非常に──これも三位一体かもしれませんけども、意図をよく了解した上で保有を続けている。非常に利回りも低くてという観点もあるわけですけれども、先ほど少し触れさせていただいたように、一方ではリスクアセットが0%だという、しかも、変動も抑えられている、リスクリターン的には意外に安定している資産でもある状況であるがゆえに、今、発散していません。

ですが、仮に外国人の保有比率が徐々に増えていく、消化が進んでいくというところまで膨らんできた場合に、そこをどこかをきっかけとして金利水準が一時的に大幅に動くというようなことを──これはずっと恐れてきているわけですけども、まだ現れていませんけども、そういったところがもし健全な財政への道筋が示されていない中で起きますと、日本人は大丈夫だと思っていても、海外から見たときに、日本国債の格下げをしようと、あるいは中央清算機関が日本国債については20%額面からカットした価値で見ていこうとか、このようなことは簡単に起きるのだろうと思います。そういったことを通じて担保価値の毀損というのが行われていく可能性が高いというふうに思います。これはストレスシナリオですけれども。

〔 冨田委員 〕 お聞きしたかったことは、今のような巨額の国債買い入れをいつまでマーケットとしては許容できるというか、それも含めてどこまで続けるのかということでした。

〔 大島常務執行役員 〕 資金を有効に活用し、潜在成長率を上げていくという観点からすれば、早目にやめたほうがいいと思います。

〔 田近分科会長代理 〕 では、宮武さん、それから中空さん。

〔 宮武委員 〕 大変明快な解説と御指摘をいただきました。ありがとうございます。

熊谷さんに事実認識として1つだけお聞きしたいのですけども、社会保障給付費の振り分け方においては、確かに日本では子育て支援というのは極めて小さいと、おっしゃるとおりでございます。ただ、GDP比で見た社会保障の大きさそのもので言いますと、それこそフランス、ドイツ、デンマーク、イギリスに比べて社会保障給付費そのものの大きさは小さい、パイの大きさが小さいと、このような認識でいいのでしょうか。

要するに、パイの切り分け方には、確かに子育て支援が極めて少なくて問題がある。しかし、パイ自体そのものが要するに相対的には小さい。財務省の資料を見てもせいぜい中福祉という規模であるわけであります。これが高福祉であれば福祉水準を切り下げるということも可能かもしれませんが、中福祉であって、なおかつ借金まみれで中福祉を維持している。これから先は中福祉を維持するためにも高負担をしなくてはいけない、このような厄介な状態にあるというふうに私は思っているのですが。それと同時に、熊谷さんのおっしゃる社会保障制度改革というのは、パイをさらに小さく、パイ自体を小さくする方向に持っていけということでございますか。

〔 熊谷チーフエコノミスト 〕 ありがとうございます。

私の27ページの部分で、その受益と負担で考えたときに、もともと日本は中福祉・低負担と言われてきたわけですが、今、やはりその福祉レベルも徐々に上がってきているということがある中で、将来的に見れば、やはり高福祉・低負担ですね。受益と負担がもう全然見合っていなくて、それで子や孫の世代にツケを先送りしていくと、そのようなことですから、これは財政の硬直化という面で見ても問題だし、加えて、人間のモラルで考えたときに、これから生まれてくる人たちは投票権を持っていないわけですから、そこにそのツケを回すということは、やはりどこかで是正していくことが必要になってくる。

次のスライド、これは先ほど申し上げた「選択する未来」委員会ということでございますが、これ、要するに幾つかのシナリオを立てているわけですけれども、やはり今のままでいくともう全然受益と負担が見合わなくなってしまうということでございますから、右の表で言うと下半分の部分で、やはりその負担をかなり重くするのか、それとも給付のほうは相当我慢してもらうのか、そこの部分をしっかりとやっていかないと、なかなか持続可能にはなりにくいのではないかというところがあります。

その意味では、やはり給付のレベル自体もある程度身の丈に合ったものに縮小せざるを得ないというのが多分現実だと思うのですけれども、ただ、そのときに、日本の社会保障というのが本当に困っている人のところにきめ細かくいっていない部分というのがやはりあるのではないかということで、これは、今、ある意味で給付、負担などがある程度年齢で輪切りにされているわけですが、同じ年齢層の中でも例えば所得があったり金融資産があったり裕福な方はいるわけですし、また、この社会保障というのはもともと保険なわけでございますので、そのような方々には一定程度やはり我慢してもらうというような、そのような耳の痛いこと、これを言うことも必要になる。

それからあとは、例えば医療だとか福祉、介護などに関して言えば、その供給体制の見直しですね。これはもう恐らく財審などでも相当議論されている話だと思いますけれども、この医療の高度化だとか、それから選択と集中を行っていく。例えば公的医療保険制度に2階建て部分をつくっていくことですとか、もしくは健康への自助努力のインセンティブを与えることだとか、さらには費用対効果を見て医療の技術に対してやはり適正な評価を行っていくとかですね。もしくは、かかりつけ医、ゲートキーパーをしっかりと普及するというようなこと。それから、介護についても、これもやはりその給付を重点化することが必要だと思いますし、もう1つやるべきは、やはり年金と雇用を一体として改革をしていくということが必要になるのではないか。多様な働き方を、これを進めることによって、生涯現役で、要するにすぐに年金所得に頼らなくても仕事ができるような、そこの年金の部分と雇用の部分をシームレスに一体的に改革をしていく。それから、年金の受給開始年齢についてもやはり弾力化だとか撤廃が必要だと思いますし、例えば在職老齢年金の支給の停止、これもやはり見直す必要があるということですし、加えて、子育てだとか若年雇用対策ですね、リカレント教育だとか能力開発などとあわせて、年金だけではなくて、やはり雇用と一体的にその改革をやっていくと。このような今申し上げたようなところがこれからのやはり改革のポイントになるのではないかと思います。

ありがとうございました。

〔 田近分科会長代理 〕 では、中空さん。

〔 中空委員 〕 本日はありがとうございました。

実は私、ここのところ熊谷先生と一緒に話すことが多くて、熊谷先生の話はもう3〜4回聞いているのですが、そのたびに上手になっていて、素晴らしいと思って本日も聞かせていただきました。大島先生は、私たちの業界では本当に大物の投資家で、このような方に生の声を聞けるというのは大変貴重だというふうに思います。

そのお二方に質問させていただく前に、1点だけ、本当に余計なことなのですが、私、クレジットアナリストというのをやっており、格付の話が出ましたので、1点だけ補足をさせていただきたいと思います。

大島先生のプレゼンの中の8ページに日本国債のバーゼルの規制上のリスクウエートという話がありまして、国債は、今、リスクウエート0%ですよと、だから安心ですよねと、今のところよかったのですよという話をしていただいて、でも、この先、格付が下がってきたら分かりませんよということだったと思います。大島先生はいい方なのでそれ以上言いませんでしたが、私が思っているのは、他国のことはやはりシビアに見えるわけです。ユーロ危機のときなど、当時私はフランスのパリバにおりましたが、パリバは大変多くのイタリア国債とギリシャ国債を持っていたわけですね。そのときは、マーケットからも何でそんなにいっぱい持っているのだという話が必ず出るわけです。リスクウエートはゼロだからよいではないかという話になるのですが、そもそもリスクウエートが、ギリシャやイタリアがゼロでよかったのかという話に、やはり他国の話だとなるのですね。日本の話だからすっといくということを考えると、他国から見た日本国債のリスクウエート0%というのは、本当に日本人が思うのと同じような感覚で思っているかというと、そうではないということを1点申し上げたいと思います。これが1点補足です。

また、質問は1点だけなのですが、大島先生の御説明の中で、今の現実と望む世界にはかなりのギャップがあって、今は金利が低いですよねと。例えば100ベーシスで広がったときには、IRRBBではこの程度の損が出ますよという計算をしている。でも、我々は100ベーシスも上がらないから大丈夫でしょうと思っているところがどこかあります。あと、御説明の中にもあったのですが、内閣府の試算で金利が急速に上がるという前提についても、ここまでやはりどれだけ穏やかに上げていけるか難しいという話があったと思います。本当にそのとおりなのですが、そうした中で、では、財政再建をやめていいかというと、やめてはいけないし、やらなくてはいけないのだという話もいただきました。バランスよくやらなくてはいけない。でも、消費増税は2回も先送りされて、2019年10月にはぜひとも上げたい。ぜひとも上げたいのですけれども、消費増税ができなくなったから財政再建の見通しも先送りになっているわけです。この状況の中で、外国人から見て、あるいは投資家から見て、この日本の財政のあり方というのはいいと思うかどうか。いいと思っていないということであれば、どのような説明をしたり、どのような予測を政府として、あるいは財審として出していくと、どのような見立てで、このように財政再建していきますよと言えば、日本国債市場にいる方々、あるいは様々な投資家の方、御存じの方々から見れば説明力が高いのか、みんなに信用してもらえるかということについて、アドバイスをいただければと思います。よろしくお願いします。

〔 大島常務執行役員 〕 中空さん、ありがとうございます。

今の御質問、補足もいただきまして、今御覧いただいている8ページ目のこの議論も、相当すったもんだあったというふうに風の噂で聞きますし、黒田総裁がかなり体を張って守ったという話も伺っていますが、やはりこれは宿題になっているというのが認識でございまして、多少大きなマクロ変動が今後起きた場合にはもう一回出てくる可能性がある議論だと、まずそういったことはございます。

また、実際に消費増税との組み合わせということでありますと、消費増税についてはある種シンボリックな状態に今なっているのではないかというふうに思います。もちろんそのときの単年度における税収の大きさということに関して言えば、2%分ということだけで言えば、その単年度で見ればそんなに大きくないのかもしれません。ですが、それは恒久的なものになるというステップではあるのだろうというふうに思います。

また一方で、ここまで膨らんでいる債務残高を減らしていくという観点から言えば、やはりある程度、長期金利と名目成長率の差の部分のところは、マーケットの参加者は見ているのではないかと思います。つまり、もはや自然増収も前提にしながらでないと財政再建が難しい。初期においては、そのような批判は、本当のコミットメントがあるのかという批判は13年、14年あったと思いますけれど、足元で見れば実際に税収が少し改善をしたというところは事実ですので、ここはまさにアベノミクスの成果と言える部分なのかもしれません。ただし、その傾向を維持しながらも、やはり歳出のところも切り込みながら、歳入の消費税も対応しながら、また一方で、課税の捕捉ということに関しても、例えばマイナンバーをもっと活用するとか、歳入庁の問題とか、様々あると思いますけども、少し租税ベースがしっかりしてくるような取組、こんなものが揃って出てきて、かつ、また、歳出については、教育であったり、あるいは社会保障のベースのサポートであったりということで、人々が、労働市場を移動しやすくなる社会に移ることによって資源の再配布が効率的に行われるというような中での成長シナリオを一体として示す、そしてそれを対外的に発信していくというようなことができれば、パスが見えてくるということでありますので、消費税1つということでは恐らくはないという段階にはいると思います。ただし、消費税もやらないというのは、他をどう揃えられるかという意味では結構分かりにくくなるという意味において、外の市場から見ると少し不利なのではないかというようなことを思う次第です。

以上です。

〔 中空委員 〕 もう1点いいですか。具体的に、今回、2020年度のプライマリーバランスの黒字化というのを放棄したわけです。難しいという話になったわけですが、もうじき夏になると示す新しい計画において、例えば何年遅れというのを示したほうがいいのか、それともどこかではやりますよでいいのかとなってくると、やはり具体的に示したほうがいいということですよね。

〔 大島常務執行役員 〕 それでも許されるときは、ものすごく景気がよくて株が上昇しているときだと思うのですね。そっちにみんな浮かれますので、リスクは株にどんどんシフトするということですけども。

これは少し別のお話で申し上げると、GPIFもそうでございますし、日本の機関投資家という意味でも、今やもう分散して余剰資金を運用していることでありますので、国債の運用がしっかりできるような環境に戻していく部分、それが株式等に、リスクウエートが高い資産への運用のところのバランスがとれるようになりませんと、経済全体、あるいは金融機関の役割という意味ではかなり脆弱になるのも事実だと思いますので、そういった観点でも、やや、相当踏み込んだ部分のアクセルを戻すということの中で、財政と金融のバランスをもう一回考えていくというのが今求められているのではないかなというふうに思います。そのような意味では示したほうがと私は思っています。

〔 熊谷チーフエコノミスト 〕 すみません、少し発言させていただきます。

プライマリーバランスの黒字化の計画は、若干時期は後ろに倒れるにしても、それはやはり維持する必要というのが大きいです。それは43ページのところで先ほど示したように、これからやはり国全体のISバランスだとか取り巻く環境などが変わっていく。今のところは日銀が出てくる国債をほとんど買っているので、加えて、経常黒字なので外国人が国債を多くは持っていないので、とりあえず安定しているわけですが、ただ、2020年代の後半になると、日本国民の金融資産の残高と、それから国債、国の借金の残高ですね──今までは金融資産の範囲の中におさまっていますが、これが2020年代後半になるとやはり逆転する可能性は出てくると。それは非常に大きなマクロ的な変化だと思いますので、そこについては、やはりしっかりと一定の時期でプライマリーバランスを黒字化するという目標を堅持することが必要だと。

もう1つ申し上げたいのは目安の話でございますけれども、これは、結果的には、その目安を設けたことで財政の悪化は一定の歯止めがかかっていますから、そこは一定程度評価することはできると。ただ、実際問題として、それがやはり少し緩過ぎた部分もあるし、それから、目安を達成したことで安心してしまって、先日の医療費の改定でも、薬価の部分で達成したら本体を増やしてしまったというような、そのようなところもあるわけですので、もう少しやはり場合によれば厳しい目安、しかも、それに安心するのではなくて、景気がいいときはそれを上回るような、そのようなものをつくらなくてはいけないのではないかと。

例えば16年度から18年度については、当初の政府などの計画で見れば、3年間で物価が7%上がるはずだったので、それに伴って歳出も増えるという考え方でしたので、この目安自体がやはりこう緩かったという部分があると思うのですね。ところが、7%物価が伸びる計画が実際には物価は2%弱しか伸びなかったので、歳出はそれほど自然体で見ても伸びる状況では結果的にはなかったわけでございますね。

今回も先行きについてはそれなりに物価が伸びるという前提になっているわけなので、その辺りも少し実態との違いなどを踏まえて、歳出のカットについては場合によれば少し厳しいものを課していくだとか、加えて、それはあくまで目安であって、それに安心せずに、いいときはもっとやはり減らしていく、歳出の管理もしっかりやることが必要じゃないかなと思います。

〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございました。

〔 宮島委員 〕 すみません、質問ではないのですが、せっかくの機会なので。大変すばらしい中身のプレゼンをいただきまして、どうもありがとうございます。

本当に財政再建は必要だということは感じるばかりです。2月に海外調査に参加させていただいたのですけれども、そのとき──これは次回に御報告すると思いますけれども、例えばスウェーデンが国民レベルにおいても税とそれが与えるサービスというところのリンクがしっかりしているということですとか、フランスにおける財政に対する独立した機関の存在ですとか、そういったところを大変印象を持って帰ってまいりました。

また、財政再建に一番必要な、行政に対する信頼というものが今、揺らいでいるのではないかと思います。今ある疑念に対しては真摯な形で省内において調査をされているというふうに思いますが、国民の信頼を取り戻せるよう、省をあげてしっかりと調査に取り組んでもらいたいと思います。

〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございました。

他にございますか。では、末澤さん。

〔 末澤委員 〕 すみません、どうもお二人とも詳細な御解説ありがとうございます。

お二人にお伺いしたいのですが、実は昨年来、世界的に申し上げますと、景気はいい中で、ただ、なかなか政権与党が勝てない。日本は少し別なのですけど。その結果、昨年の年末に出ました、アメリカでも税制改革法、Tax Cuts and Jobs Act、これで1兆5,000億ドルの減税をやると。一方、先週、イタリアで選挙がございましたけど、こちらでも政権与党が大負けしてですね。これはドイツでも昨年同様なのですね。つまり、割と今世界的に見ると財政拡張が1つのブームにまたなっていまして、私、これ、少し、特に日本にとってみると迷惑な話だと思っているのですけど、先ほど24ページでお示しいただきましたが、財政収支を大きく一挙に改善すると、目先はマイナスだけれど、その後プラスになるという話がございました。これは、逆に、今の日本において、ここから再度例えば財政拡張的な路線をとったときにどの程度の効果があるのか、むしろ実は効果はほとんどなくてマイナスのほうが大きいのか。この辺り、御感想でも御意見でも結構でございますのですので、少しお二人からお伺いしたいと思います。

以上でございます。

〔 熊谷チーフエコノミスト 〕 財政、特に公共投資などということで言えば、これはやはりワイズスペンディングということで、例えばスペインで12世紀、13世紀ぐらいにマイナスの金利の時期があったと言われていますが、そのときに例えば巡礼者が来るような宿をつくりました。これはやはり数百年間続いたワイズスペンディングだったわけですが、ところが、現実問題としては、日本の中でそのようなワイズスペンディングになっているかどうかと言われると、どうしてもやはり効率が悪いところにお金が振り向けられている可能性がある。また、補正予算に対するチェックが、現実問題として、メディアなども含めて──本予算は非常にチェックするけれども、補正予算はある意味で季節の風物詩みたいなとこがあって、そこに対するチェックが甘いので、どうしても駆け込み的に無駄な投資が残念ながら行われているところがあるのではないかと。

私の資料で言うと41ページですけれども、41ページで、緑の線が公共投資、下の赤い線が景気なのですけれども、やはり公共投資は一過性の効果しかなくて、公共投資が増えれば一時的に景気は良くなるけれども、それがなくなればまた悪くなるという、このようなことを繰り返してきたということがあると。

もう1つは、次のスライドで、公共投資の乗数ということですが、これについても、やはり長い目で見れば相当波及効果自体は小さくなってきているというところがあるわけですから、その部分では、やはりなかなか日本では公共投資が効率的に出ていない部分もあるので、やはり費用対効果を見ながらワイズスペンディングでかなり限定的にやるということが必要なのではないかと。

あとは、世界的に見ると、いわゆるシムズのFTPLという議論があるわけでございますけれども、これについては、1つは、机の上の計算としては成り立つ議論なのだけれども、現実問題としてあんなにうまい形でピンポイントで刺激をすることが本当に可能なのかどうかという、その理論の部分と現実の部分の乖離が相当大きいということが1つ。それから2つ目に、財政再建は2%インフレが進んだ程度では到底達成できないぐらい、今、日本は借金が積み上がっているわけですので、そこも非常に大きな大幅なインフレを強いることになりかねない。3点目としては、やはりそのようなことをやると、最終的にはかなり逆進性のあるような形で庶民の方々が負担を負うようなことが考えられるということでございますから、その辺りを考えると、一部で出ているFTPLという議論にも私はやはり賛同しかねると。財政状況から見れば、大胆な金融緩和の前提条件は財政の規律が保たれていることなので、そこはしっかりと保ちながら限定的にワイズスペンディングでやっていくべきではないかと思います。

〔 大島常務執行役員 〕 今、特に起きていることは、ある意味、市場から見ていますと、今までやってきました総需要管理的な財政政策と金融によるサポート、それも非伝統的な政策まで使い切ってしまった上で需要を喚起して何とか需給ギャップを戻したというところが今の状況にあるわけですけれども、そういった過程の中で、やはり世の政策はどうしても資産価格を戻す──これはリーマン危機以降のトレンドの中で傷んでしまった資産価格を戻すことが危機を避けるために必要だったわけですけれども、もとをただせば、国民経済に必要なバランス以上に安定的な成長率を確保する、あるいは安定的な総需要を使うためにやってきた累積としての今の開放経済での金融財政政策の一種の限界というふうに私は思っています。

実際に賃金ということで見ましても、アメリカの賃金を所得階層別に見ますと、低所得層、あるいは高卒以下の学歴の方の賃金はほとんど上がっていないということでありますし、豊かになっているのは富裕層、あるいは資産保有層ということでありますので、それは構造的に格差を広げるようになっているということは間違いないところであるかと思います。

今、世界経済も非常に好調だということの中で、また新しいインフラ計画等の話について、アメリカでは今年いっぱい議論するのだと思いますけれども、供給制約が起きてしまうような不必要な総需要喚起策というのは非常に危険だというふうに思います。それは結果的には持てる者と持たない者の格差を広げることによって社会的な不安定性を呼んでしまいますので、それが逆にまた財政支出を拡大させて、現金給付等も含めて政治的な、ブライブというか、そのようなことが選挙において行われるので、これは民主主義のあり方の問題でもあると思います。

日本については、本当に、労働人口もそうなのですけども、供給制約がある段階でありますので、今必要なことは、まさに退出すべき産業は退出する、あるいは事業承継をやる、必要な子育て世代のサポートをするというような、もう少し、総需要は十分あるわけですので、身の丈に合った政策をとりながらバランスをとっていくということのほうが財政の使い方としては非常に正しいのではないかというふうに思いますし、その原資として消費税の増税は必要であろうというふうに思いますし、課税ベースを広げることが非常に大事だというふうに思います。

ですので、これは政治的な危機を内包しているというふうに認識しています。

〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございました。

時間がまいりましたが、もしまだ御質問、御意見があれば。よろしいですか。

本日は、熊谷さん、そして大島さん、大変ありがとうございました。

特に熊谷さんからは、財政再建が経済に及ぼす効果ということで、冨田さんからも御質問がありましたけども、健全化が時間を通じて実は経済成長に寄与していくのだというお話。それから、大島さんからは、日本国債の持つ潜在的なリスク、それをしっかり見きわめなくてはいけないというお話。ともに大切なお話を伺えたと思います。ありがとうございました。

これにて本日の議題は終了とさせていただきます。

本日の会議の内容については、いつものとおり私にお任せいただき、会議後の記者会見で御紹介させていただきたいと思います。

次回については、調整の上、改めて事務局より連絡をさせていただきます。

宮島さんが既におっしゃったように、海外調査もしてきていますから、その御報告もいただきたいと思っています。

本日はこれにて閉会いたします。御多用中のところありがとうございました。

午後5時00分閉会

財務省の政策