財政制度等審議会 財政制度分科会
議事録
財政制度等審議会 財政制度分科会 議事次第
平成29年10月25日(水)13:00~15:00
第3特別会議室(本庁舎4階 中-412)
1.開会
2.議題
- 社会保障について
3.閉会
分科会長代理 | 田近栄治 | 木原副大臣 長峯大臣政務官 岡本主計局長 茶谷次長 大鹿次長 神田次長 青木総務課長 北尾主計企画官 中野司計課長 奥法規課長 若原給与共済課長 関口調査課長 藤﨑主計企画官 江島主計官 安出主計官 湯下主計官 小宮主計官 高橋主計官 中島主計官 阿久澤主計官 岩佐主計官 竹田参事官 前田主計官 中山主計官 内野主計官 | ||
委員 | 赤井伸郎 遠藤典子 倉重篤郎 黒川行治 佐藤主光 角 和夫 武田洋子 竹中ナミ 土居丈朗 中空麻奈 宮島香澄 | |||
臨時委員 | 伊藤一郎 井堀利宏 宇南山 卓 老川祥一 岡本圀衞 葛西敬之 喜多恒雄 小林 慶一郎 進藤孝生 末澤豪謙 十河 ひろ美 田中弥生 冨田俊基 宮武 剛 |
午前13時00分開会
〔 田近分科会長代理 〕 本日は、冒頭でカメラが入りますので、そのままお待ちください。
(報道カメラ 入室)
〔 田近分科会長代理 〕 ただいまから、財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。皆様にはご多用中のところ、ご出席いただきましてありがとうございます。
本日は、「社会保障」を議題としております。
それでは、報道関係の方は、ご退席ください。
(報道カメラ 退室)
〔 田近分科会長代理 〕 それでは、本日の審議を始めさせていただきます。本日のセッションは全て「社会保障」ということになります。
まずは、阿久澤主計官、続いて岩佐主計官の順番で、「社会保障」についてご説明をいただきたいと思います。
その後、自由討論ということとします。阿久澤さん、お願いします。
〔 阿久澤主計官 〕 厚生労働担当主計官の阿久澤でございます。よろしくお願いいたします。
本日でございますが、「社会保障」についてご説明させていただきます。平成30年度予算では、社会保障予算は多岐にわたっております。多岐にわたる論点がございますので、恐縮ですが、ある程度説明時間を要するということについて、ご容赦いただきたいと思います。
まず、医療についてであります。平成30年度は、診療報酬改定の年であります。資料の5ページや6ページにありますように、診療報酬は技術・サービスの評価である診療報酬本体と、薬などの物の価格評価であります薬価などから成りまして、国民から見れば、受診にかかる料金に相当します。このため、診療報酬改定に当たりましては、医療機関の経営という側面だけでなく、国民の負担に与える影響を十分に考慮していく必要があると考えております。
また、7ページをお開きいただきたいと思います。医療費の総額は、診療行為に報酬単価を掛け合わせたものの積み上げであります。診療行為は、高齢化などによって毎年増加していきます。診療報酬改定は、こうしたトレンドの中で、単価を増減させるものでありますので、国民負担の増加を抑制するという観点からは、報酬単価を抑制していく必要があると考えております。
なお、診療報酬改定が一定程度マイナスであったとしても、診療報酬総額は増加するため、医療機関の増収は確保されます。
続きまして、9ページをお開きいただきたいと思います。国民医療費は、この資料にありますように、過去10年間で平均2.5%のペースで増加しております。このうち、高齢化等の要因による増加は年に1.2%でありまして、残りはその他の要因によるものでございます。こうした医療費の伸びは、これを賄う雇用者報酬等の伸びを大きく上回っておりまして、これが保険料率の引き上げの要因にもなってきたわけであります。
こうした医療費の伸びを高齢化等の伸びの範囲内とするためには、2年に1度の診療報酬改定において1回当たり2%半ば以上のマイナス改定が必要であると考えております。近年の雇用者報酬の伸びを踏まえましても、保険料率のさらなる引き上げにつながらないようにし、かつ、制度の持続可能性を確保していくためにも、少なくともこの程度のマイナス改定とすることが求められると思っております。
続きまして、11ページであります。我が国診療報酬、特に本体のほうでございますけれども、我が国がデフレを経験いたしました1990年代後半以降、賃金や物価水準がデフレにより上昇せずに、リーマンショック後などは急激に落ち込むといったこともあったわけです。一方で医療機関の人件費や物件費を賄う診療報酬本体の水準につきましては、報酬改定により、おおむね上昇を続けてきたわけでございます。
その結果、診療報酬本体の水準は、賃金や物価の水準と比べて高い水準となっております。こうした状況を踏まえれば、国民負担の抑制、制度の持続可能性といった観点から、診療報酬本体についても、マイナス改定としていく必要があると考えております。
また、13ページにありますように、主な医療関係職種の給与水準でありますが、デフレの期間中であっても、おおむね上昇のトレンドを続けてきているところでございます。
以上が診療報酬改定率の議論でございます。
続きまして、診療報酬改定の個別の項目についてでございます。まずは、適切な医療提供体制の構築に向けた改革項目についてです。
15ページをお開きいただきたいと思います。これまでご議論をいただきましたように、地域医療構想に沿いまして、医療機能の転換を進めていく必要がございます。
一方で、現行の診療報酬は、提供している医療機能というより、むしろ職員配置による評価との側面が強く、患者の状態像や地域の医療ニーズの変化を踏まえた効率的な医療提供体制への転換が進みにくい状況になっております。団塊の世代が後期高齢者になり始める2022年度までに、診療報酬、介護報酬の同時改定となるのは、平成30年度が最後の機会でございます。
18ページにありますけれども、地域医療構想の実現に向けて、地域ごとの実情に応じた取組とあわせまして、平成30年度の同時改定において、実効的な見直しを行い、病床の転換の動きが加速するようにしていく必要があると考えております。
続きまして、18ページをお願いいたします。この資料にありますように、一般病床の稼働率を見てみますと、近年は低下傾向にございます。また、二次医療圏ごとに見ますと、過疎地などにおいて、病床の利用率が低いところが相当程度存在しているところでございます。こうした事態は、医療機関の経営にも一定の影響を与えるものと考えられます。
また、こうした地域の医療ニーズの変化や減少による経営課題への対応につきましては、全国一律の診療報酬単価での対応は適当ではなく、むしろ病床機能の転換やダウンサイジング等によって対応していくべきものと考えます。このため、診療報酬改定に当たりましては、単に医療機関の平均的な収支差の状況を見て判断するのではなくて、収支差悪化の要因まで踏み込んだ分析を行っていく必要があると考えております。
続きまして、19ページの急性期医療の適正化についてでございます。高齢化の進展や人口の減少に伴いまして、急性期や高度急性期のニーズは減少していくことが想定されております。一方、7対1の入院基本料を算定する病床につきましては、これまでの要件見直しにも関わらず、ごく緩やかな減少にとどまっております。また、今後、転換するとの意向も、医療機関からはほとんど示されていないということであります。
一般病棟入院基本料は、看護師の配置の中で基本的に点数が決定されております。20ページにありますように、7対1の入院基本料につきましては、これに加えまして、重症度や医療看護必要度を満たす患者が25%以上との要件があるものの、残り75%の患者は、どのような状態で、どのような医療を受けているのかは問われておりません。評価項目に1つも当てはまらない患者も、相当程度の割合で存在しているという状況であります。
このため、19ページに戻っていただきまして、地域医療構想も踏まえまして、7対1の入院基本料につきましては、今後、どの程度病床数を適正化していくのか、見通しを示した上で、それに向けて算定要件の一層の厳格化を行っていくべきであると考えております。
続きまして、21ページをお願いいたします。診療科偏在と診療報酬についてでございます。外科や産婦人科などの診療所に従事する医師数が減少していく中で、皮膚科や眼科などの診療所や医師数が増加しております。医師総数の増加が診療科偏在の是正に必ずしもつながっていません。
また、診療科のうち、皮膚科、眼科などを主たる診療科とする診療所などの損益率が高く、累次の診療報酬改定においても、この傾向は変わっていない。このままでは、診療科偏在を助長しかねないということから、今回の診療報酬改定におきましては、こうした観点からの見直しも行っていく必要があると考えております。
続きまして、調剤報酬についてご説明させていただきます。23ページをお開きいただきたいと思います。調剤医療費のうち、薬剤料を除きました技術料部分の伸びは、入院医療費や外来医療費と比較しても大きいものとなっています。
また、24ページにありますけれども、これまでの診療報酬改定では、医科・歯科・調剤の各科につきまして、各科を取り巻く状況に関わらず、それぞれの技術料部分に対しまして、同程度の伸びとなるように改定率が設定され、単価の上乗せが行われてきたところでございます。
25ページにありますように、薬局数や薬剤師数は増加しております。通常の市場競争でありますれば、必要以上の供給の増というのは、収益の低下を通じた調整が行われることになりますけれども、医療サービスは公定価格でありますので、こうした価格面を通じた競争は行われておりません。実態としましては、薬剤師数の増加により、薬剤師1人当たりの処方箋枚数は減少しているわけでございますが、調剤報酬の引き上げによりまして、薬剤師1人当たりの技術料は維持されているといった状況になっております。
更に、26ページでございますけれども、同じ金額の薬剤を処方する場合でありましても、院外処方の場合は、院内処方と比べて3倍を超える技術料が算定されているといった状況にございます。こうした院内処方と比べたコスト差につきまして、薬局のどのような機能を評価したものであるのか。また、調剤薬局の実態との間に乖離はないのか。それらを含めて、評価として適正な水準であるのかなどにつきまして、改めて検証し、調剤の報酬体系の見直しを行っていく必要があると考えております。
そこで、30ページでありますが、この資料は、平成29年度の予算執行調査によりまして、「処方箋の受付回数や集中率から見た薬局の実態」を分析したものでございます。例えば、全体としまして、特定の医療機関から受けつける処方箋の割合を集中率と言いますけれども、これが90%を超える薬局が4割などとなっております。
これに対しまして、様々な医療機関から、処方箋を地域で受けつける、これを、面分業と言いますけれども、こうした面分業を行う薬局は少数派となっております。
また、中小の薬局で見ますと、地域において面分業を行っている薬局も一定程度ございますけれども、大病院や診療所に近接をし、集中率が高い薬局、いわゆる門前薬局やマンツーマン薬局が多いといったものが実態となっております。
続いて、資料32ページをお開きいただきたいと思います。これが、コスト構造でありますけれども、同一の法人で保険調剤を行っている店舗数が多い薬局では、収益率が2桁台と非常に高くなっているということでございます。
また、処方箋集中率が高い薬局は、特定の医療機関において処方される医薬品への対応が中心となりますので、備蓄品目数が総体的に少ない傾向にございます。このため、多数の備蓄品を取りそろえ、不要な在庫も生じやすい面分業を行う薬局と比べると、コストを低く抑えることが可能と考えられます。調剤報酬の水準を設定するに当たっては、こうしたコスト構造の違いも勘案していく必要があると考えております。
続きまして、33ページをお願いいたします。平成28年度診療報酬改定におきまして、大型門前薬局にかかる調剤基本料の見直しが行われたところでございます。これによって、調剤報酬が250円に減額となった薬局は、全体の3%であります。また、200円に減額となった薬局は、全体の7%にとどまっております。
なお、平均より規模が大きい門前薬局の大宗は、引き続き地域において面分業を行っている薬局と同じ、高い調剤基本料が算定されているという実態になっております。
また、平均より規模が小さい薬局につきましても、大規模グループに属している薬局は多く、その多くは、薬局の機能の違いに関わらず、高い調剤基本料の算定を行っています。
続きまして、34ページをお願いします。これは、平成28年度改定の際にもご議論いただきました調剤料についてでございます。この調剤料の見直しも、ごく一部にとどまっておりまして、さらなる引き下げを行っていくべきであると考えております。
また、後発医薬品の調剤体制加算につきましては、既に3分の2の薬局が算定していることや、足元の後発医薬品の使用割合、更には目標の使用割合が80%に引き上げられたことなども踏まえまして、基準の引き上げを行っていくべきであると考えております。
以上を踏まえまして、改革の方向性を35ページにまとめております。要点を申し上げますと、まずは、処方内容のダブルチェックといった最低限の機能を果たしながら、患者の負担軽減や利便性を重視する形態や、高齢者などを対象に在宅の対応やきめ細やかな服薬指導を行う形態など、薬局の多様な在り方や経営環境を踏まえながら、それに即した調剤報酬の評価を行っていくべきであると考えております。
また、「かかりつけ薬剤師・薬局」のビジョンに向けて、地域においてかかりつけ機能を担っている薬局は適切に評価しながら、こうした機能を必ずしも果たしていない薬局の報酬水準は適正化していくべきであると考えます。大手調剤薬局グループに所属している薬局や処方箋集中率が高い薬局につきましては、経営環境や収益性の観点からも、より低いコストでのサービス提供を求めていくべきであると考えております。
こうした観点から、平成30年度の報酬改定におきましては、まずは、大型門前薬局にかかる調剤基本料の対象範囲を拡大して、平均以上の規模の門前薬局等を対象としていくべきだと思っております。その際には、規模に応じた収益性の差異を踏まえた、段階的な報酬設定とすることもあるのではないかと考えております。
また、平均以下の規模の門前薬局やマンツーマン薬局に対する調剤基本料につきましても、グループへの帰属など、経営実態や収益性を踏まえながら適正化を進めていくべきであると考えます。
また、調剤料につきましても、先ほど申し上げたように見直しを行っていく必要があると考えております。
また、36ページでございます。これは、これまでご説明させていただきました、平成30年度診療報酬改定の考え方をまとめたものでございます。ご参照いただければと思います。
続きまして、薬価制度の抜本改革についてでございます。38ページをお開きいただきたいと思います。高齢化や年度途中の新薬の収載による薬剤費の増加に加えまして、高額の薬剤も登場している中で、医療保険制度の持続可能性を確保し、国民負担の軽減を図る観点から、昨年末にまとめました「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」に基づきまして、年末までに改革の具体案を決定していく必要があります。
39ページをお開きいただければと思いますが、ここでは、薬価制度の抜本改革の基本的な視点をまとめさせていただいております。
まずは、視点の1つとして、市場価格の反映による国民負担の軽減といった視点でございます。現行の薬価制度におきましては、慣行によりまして、これまでは市場実勢価格の把握については、2年に1回行うこととされております。また、市場実勢価格が把握されていたとしても、新薬のかなりの部分につきまして、市場価格を上回る価格を維持したままとなっております。やはり医薬品につきましても、適時に市場価格を薬価に反映させることで、市場価格を上回る部分に係る国民負担を抑制する仕組みにしていくべきであるということでございます。
また、2つ目の視点としましては、革新的な医薬品を見極めたイノベーションの評価ということでございます。イノベーションを適切に評価していくためには、新薬であれば何でも評価するということではなく、患者にとって個々の医薬品の画期性や有用性を見極めて評価をしていくことが重要であると考えております。
また、イノベーションの推進に向けましては、財政措置のみに頼るのではなくて、研究開発環境の改善や創薬コストの低減、また、産業構造の転換といった対応も重要であると考えております。
続きまして、薬価の抜本改革の具体的な内容についてでございます。資料42ページの「新規収載の効能追加」、及び43ページの「薬価の毎年調査と毎年改定」につきましては、春の財政審の建議と同様の内容の提案をさせていただいているところであります。
続きまして、新薬創出等加算のゼロベースでの抜本的見直しについてであります。44ページをお開きください。最初に、薬価を算定する際に、医薬品の画期性や有用性に応じて、薬価に加算を行う制度は別途あるわけでございます。新薬創出等加算は、そうした制度で評価をされた革新的な医薬品にとどまらず、加算が認められなかった医薬品も含めて、新薬に幅広く適用されているというのが実態となっております。
すぐれた医薬品が生まれた場合に、これを評価する必要はあると我々も考えておりますけれども、そうした画期性や有用性の高さが認められなくとも、新薬創出等加算の対象となっておりまして、イノベーションの適正な評価といった観点からも、問題が大きい仕組みであると考えております。
46ページにありますように、新薬創出等加算による毎年の国民負担は、平成22年度以降、薬価改定で試行が継続する度に追加されてきております。現在、新薬創出等加算による財政影響は、単純計算で年間2,530億円であります。これに加えて、改定後の薬剤使用料の変化や類似薬効比較方式による他の医薬品の価格引き上げを通じた影響も生じております。こうしたことから、まずは現行の新薬創出等加算制度は、廃止すべきであると考えております。
また、仮に薬価改定時の加算制度を何らかの形で存続させる場合には、十分に国民負担を軽減しつつ、イノベーションの促進につながるよう、他の医薬品にない画期性や有用性の高さを根拠に、薬価算定時に相応の加算が認められた医薬品に対象を絞るべきであると考えております。
また、これまでになされた加算につきましても、速やかに薬価を引き下げ、解消していくべきであると考えております。
続きまして、47ページであります。費用対効果評価の活用についてでございます。新規の医薬品などにつきまして、既存の医薬品に比べた費用対効果評価が平成30年度から制度化されることになっております。医薬品の価格設定への反映方法などを年末までに決定することにされております。
新たな医薬品の薬価は、市場価格がないものですから、一定の算定式に基づいて算定されますが、例えば、原価計算方式につきましては、そもそもの価格標準の妥当性が必ずしも明らかではありません。このため、原価計算方式で算定された医薬品は、費用対効果評価を義務づけまして、費用対効果が悪いものにつきましては、薬価全体について、公的保険として償還可能な価格まで引き下げる仕組みとするといった対応等が必要だと考えております。
続きまして、医療提供体制についてでございます。49ページをお開きいただきたいと思います。病床とは異なりまして、診療所や医師の配置、また、高額医療機器への設備投資、介護の在宅サービスにつきましては、提供体制をコントロールする仕組みがございません。
51ページを開いていただきますと、医師数は医療費に影響を与えているといった指摘もある一方で、医師の地域偏在や診療科偏在への対応として、医師増加が図られているわけですけれども、実効的なコントロール手段のない中での医師総数の増加は、十分な偏在是正の効果がないまま、医療費の増加につながっている可能性もございます。診療所や医師数、高額医療機器など、病床以外の医療資源につきましても、医療費の増加を抑制しながら、診療科や地域ごとの偏在を是正し、限られた医療資源の中で、適切かつ効率的な医療提供体制を構築するという観点から、その配置にかかる実効的なコントロールの在り方について、早期に議論を進めるべきであると考えております。
また、来年度以降、養成が開始される総合診療専門医につきましても、必要な養成数を確保し、速やかな養成を進めていくべきだと考えております。
医療の最後になりますけれども、53ページにあります改革工程表の着実な実施についてであります。53ページは、医療保険制度に関連する主な改革項目をまとめたものであります。このうち、平成29年度末までに結論を得るとされている項目は、病院・診療所間の機能分化の視点から、病院への外来受診時の定額負担の在り方、それから、先発医薬品価格のうち、後発医薬品にかかる保険給付額を超える部分の負担の在り方、また、医療費適正化に向けた高確法第14条の活用などでありまして、年度末までにしっかりと結論を得ていきたいと考えております。
また、当審議会でもご意見をいただいておりますが、後期高齢者の窓口負担や薬剤自己負担の引き上げなどにつきましても、できる限り速やかに検討を進めていきたいと考えております。
それぞれの改革項目ごとの論点や改革の方向性につきましては、このページの後ろに資料を添付しておりますので、ご参照いただければと思います。
それでは、続いて、介護についてご説明させていただきます。64ページをお開きいただきたいと思います。ご覧のように、介護費用は大幅に増加しております。中でも訪問介護・通所介護の伸びが大きくなっております。また、受給者数で言えば、特に通所介護が大きく伸びているというところでございます。
65ページで、訪問介護と通所介護の伸びの要因を分析しております。いずれのサービスも、受給者の伸びだけでなく、1人当たりのサービス費用が増加しておりまして、その要因としましては、サービス算定回数の増加によるものとなっています。
66ページでありますけれども、こうした介護費用の大幅な伸びによりまして、それを賄う税負担、保険料負担といった国民負担が大きく増加しております。制度導入当初は、全国平均の保険料水準は3,000円以下であったわけでありますが、足元では5,500円となっておりまして、今後も増加していくことが見込まれるところでございます。
67ページをご覧いただければと思いますが、そうした中、介護保険では平成30年度から平成32年度が新たな計画期間となっております。この期間の介護費用の見通しを踏まえまして、介護保険料の見直しも図られることになります。この資料にありますように、ただでさえ高齢化の進展等による介護費用の増加によりまして、保険料の引き上げが見込まれるところであります。この第7期の介護保険料率につきましては、平成29年度の臨時改定と平成30年度改定による影響も含めて見直しが行われることになりますので、この2つの改定をセットで考える必要があります。
また、介護報酬改定に当たりましては、これまでも介護人材の処遇改善などを行う一方で、報酬水準の適正化もあわせて行ってきております。
ただし、今回につきましては、既に介護人材の処遇改善。これは、平成29年度の臨時改定で先行実施しておりまして、平成30年度の改定では、まだ未実施であります報酬の適正化や工程表に沿った見直しなどについて、しっかり取り組む必要があると考えております。
これによりまして、先行実施したプラス改定による国民負担の影響を極力抑えるものとしていく必要があると思っております。このため、平成30年度、単年度だけで見れば、一定程度のマイナス改定とする必要があると考えております。
68ページをお願いいたします。そうした中で、介護サービスの事業者の経営状況についてであります。サービスごとで見ますと、訪問介護や通所介護などは、高い収支差率になっております。介護サービス全体で見てみても、一般の中小企業の経営状況よりおおむね良好な状態になっております。平成30年度介護報酬をめぐる状況を踏まえれば、報酬水準の適正化・効率化を行っていく必要があると考えております。
なお、他産業の経営状況との比較に当たりましては、69ページにありますように、介護サービス事業者の実態や他産業の産業構造を踏まえますと、中小企業との比較で考えていくべきであると考えております。
68ページに戻っていただきまして、平成27年度介護報酬改定におきましては、全体の報酬水準は引き下げる一方で、質の高いサービスを提供している事業所は、加算により手厚い報酬が得られる仕組みとしたところであります。このため、加算がとれていない事業者も含めた経営状況で、各サービスの報酬水準の改定の必要性を判断してしまうと、質の高いサービスへのシフトの流れに逆行することになってしまいます。
したがいまして、介護事業者の経営状況の判断に当たりましては、こうした加算が取得できている事業者のみの収支差率も把握しまして、各サービスの報酬水準の在り方を判断していくべきであると考えているところでございます。
続きまして、介護報酬改定の個別項目についてでございます。まずは、70ページの生活援助サービスについてでございます。生活援助中心型の利用状況を見てみますと、1人当たりの平均利用回数、これは月10回程度でありますけれども、月31回以上の利用者が2万5,000人にも上っておりまして、中には100回を超えて利用されているケースもございます。例えば、要介護1・2の場合、利用者の9割は、大体20回までの利用であるのですけれども、残り1割の利用者は、月20回以上、中には100回以上の者がいるなど、全体としての利用状況に大きなばらつきが見られます。
このため、一定の回数を超える生活援助サービスを行う場合には、地域ケア会議などにおけるケアプランの検証を要件とするなどの対応が必要ではないかと考えております。また、1日に複数回にわたり報酬を算定可能な現行の報酬体系は、必要以上のサービス提供を招きやすいということから、1日に算定可能な報酬の上限を設定するなど、身体介護も含めて、訪問介護の報酬の在り方を見直していくべきであると考えております。
続きまして、71ページをお願いいたします。高齢者の住まいについてでございます。大阪府の調査結果では、サービス付き高齢者向け住宅などにおいては、外部の在宅サービス利用にかかる受給者1人当たりの利用単位数が非常に高い傾向が見てとれます。高齢者向け住まいの居住者にも、要介護度が高い者が一定程度おり、また、その半数以上で介護サービス事業者が隣接・併設されており、そのほとんどが同一グループで運営されております。実質的に介護施設に近い性格を有しているものが多く存在すると考えられます。
こうした高齢者向け住まいでは、訪問介護や通所介護サービスが出来高で提供されている一方で、特定施設入居者生活介護の指定を受けている有料老人ホーム等については、1日の費用が決まっております。
こうしたことから、高齢者向け住まいに居住する者の在宅サービス利用につきましては、特定施設入居者生活介護とのバランスも考慮し、報酬の算定回数の上限を設定するなどの対応を図っていくべきではないかと考えております。
続きまして、72ページの通所介護についてです。通所介護サービスの事業者のうち、個別機能訓練を取得して、リハ職の配置を行っている事業所は、他の事業所と比べまして、利用者の日常生活自立度の改善・維持率が高くなっております。
一方で、事業所の規模が小さいほど、個別機能訓練の取得率が低くなる一方で、サービスの提供の1回当たりの単位数は高くなる傾向にあります。すなわち、利用者にとってみれば、機能訓練などの質の高いサービスを受ける割合が低いにも関わらず、高い費用を支払う結果となっている。
こうしたことを踏まえますと、通所介護について機能訓練などの質の高いサービスの提供がほとんど行われていないような場合には、むしろ基本報酬の減算措置も含めた介護報酬の適正化を図っていくべきであると考えております。
続きまして、73ページをお願いいたします。地域医療構想の推進と療養病床の再編についてであります。現行の介護療養病床は、平成29年度末で廃止となりまして、新たに介護医療院が設置され、地域医療構想の方向性に沿った療養病床の再編を行うことにしております。
一方で、再編に当たりまして、介護医療院には、現行の療養機能強化型と老健施設並びの2つの類型に転換をする。また、医療療養病床の25対1につきましては、より報酬の高い20対1病床へ転換するといった動きがございます。
この場合、一定の仮定のもとに試算すると、再編後も医療費・介護費は変わらないか、かえって増加するといったこともあり得るわけで、こうした転換例が多くなる場合、療養病床全体を在宅等への移行も含めて、効率的な提供体制に再編していくといった地域医療構想の考え方とも整合的でなくなってしまいます。こうした事態を避けるためには、不適切な20対1病床への転換の防止を図るとともに、介護医療院につきましては、費用面等で効率化が進むよう、報酬や基準を設定していく必要があると考えております。
また、医療・介護療養病床ともに、入院患者のうち、医療の必要度が低い患者につきましては、在宅医療等での対応を進めるような改定としていくべきだと考えております。
介護報酬改定の関連は以上でございますけれども、報酬改定以外の論点を幾つか簡単にご紹介させていただきたいと思います。
まず、74ページであります。調整交付金についてです。介護費の適正化などの保険者機能の強化に向けた財政的インセンティブとして、努力をした自治体に対して財政支援を行う新たな交付金を創設することとしております。全自治体の取組の底上げを図るためには、あわせて現行の調整交付金によるインセンティブも必要であると考えておりまして、新たな交付金とセットで調整交付金を利用したインセンティブの仕組みを導入していくべきであると考えております。
続きまして、76ページの在宅サービスの提供体制についてであります。訪問介護や通所介護の被保険者1人当たりの給付費は、大きな地域差があります。こうした居宅サービスにつきましては、自治体がサービス供給量をコントロールする仕組みが、現在十分ではございません。今後、介護費の地域差縮減に向けて、保険者機能を強化する一環といたしまして、在宅サービスにつきましても、総量規制や公募制といった仕組みを導入していくべきではないかと考えております。
77ページでございます。介護施設と在宅の公平性についての論点でございます。近年、介護施設の入居者の割合が減少しまして、むしろ高齢者向け住まいの定員や在宅でのサービス受給者の割合が増加しております。こうした中、介護施設等の利用者のうち、低所得者の居住費、食費について支給されている補足給付につきまして、在宅等施設の負担の公平の観点から、例えば、支給要件のさらなる見直しも含めて、その在り方を検討していく必要があると考えております。
介護の最後になりますけれども、改革工程表の項目についてご説明させていただきます。78ページをご覧ください。これが、介護に関連する主な改革項目をまとめたものになっております。その多くが、平成30年度介護報酬改定に関連する項目でございまして、既に説明した内容に含まれております。
説明の追加は1点であります。上から2つ目の軽度者にかかる生活援助サービス等の地域支援事業への移行であります。これにつきましても、具体的内容は次ページをご参照いただきたいと思いますけれども、今後、改革工程表に基づき、しっかりと検討を進めていきたいと思っております。
続きまして、子ども・子育て支援に移らせていただきます。ページで言うと、81ページをお開きください。資料にありますように、これまでも待機児童解消のため、保育の受け皿拡大に努めているところでございますが、女性の就業率の上昇に伴いまして、保育利用率も増加をし続けております。いまだ待機児童の解消には至っていないということでございます。このため、本年6月に新たに「子ども・子育て安心プラン」が発表されました。
更に、その後、9月の総理記者会見におきまして、このプランを前倒しするということで、平成32年度までの3年間で32万人分の受け皿拡大を行うこととされたところでございます。10月4日の財制審でもご説明させていただきましたように、保育の受け皿を拡大した場合、その分、運営費が増加することになります。そのための安定的な財源の確保が、今後の予算編成の課題となってくるわけでございます。
それでは、子ども・子育て支援の個別の項目についてでございます。まず、83ページをお開きいただきたいと思います。83ページの事業主拠出金による子ども・子育て支援の充実についてです。保育の受け皿の整備の拡充に向けまして、平成28年度に事業主拠出金による企業主導型保育事業を創設したところでございます。創設当初は、5万人分の受け皿拡大を目指していたわけでございますが、申請状況も踏まえまして、新たに2万人追加し、平成29年度末までに7万人の受け皿を確保する予定となっております。なお、新たに追加した2万人は、「子ども・子育て安心プラン」の前倒し実施分となるものでございます。
ちなみに、内閣府の推計によりますと、8月の第二次募集に対して、既に申請は7万人に到達しているところでございまして、この企業主導型保育事業は、制度創設以降、企業からの申請が増加傾向にございます。来年度以降、新たに取組を進めようとする企業のニーズにも応えていく必要がありまして、当該事業の安定的な運営を図るための財源を確保する必要がございます。
また、9月の記者会見で総理が表明されました人づくり革命への取組も進めていく必要がございます。総理からも言及のございました全世代型社会保障制度の実現に向けまして、子ども・子育てを社会全体で支援していく仕組みの強化を図っていく中で、企業にも相応の役割を担っていただく観点から、先般の財審でもご指摘をいただいたところでありますけれども、事業主拠出金につきまして、法定上限の引き上げなども進めまして、子ども・子育て支援の充実を行うことを検討すべきであると考えております。
続きまして、保育事業の収支状況でございます。資料は84ページになります。平成28年度調査によりますと、保育等の事業者全体の平均収支率は9%程度となっておりまして、一般の中小企業の利益水準である約3%を大幅に上回る状況になっております。保育所等は公費をもとに運営されている中にありまして、他業種とのアンバランスが生じていないのか、また、公費で負担している範囲は適切なのか、これまでの保育士の処遇改善加算が適切に人件費に反映されているのかなどにつきまして、検証を行い、公定価格全体を適正化していく必要があるのではないかと考えております。
続きまして、児童手当についてでございます。まず、所得判定基準についてでございます。児童手当の制度創設時におきましては、父親が家計を支えている世帯が多かったことなどもありまして、児童手当が支給されるか否かにつきましては、世帯全体の所得ではなく、世帯の中で所得が最も多い者、すなわち主たる生計者の所得のみで判定されることになっております。
平成9年以降、共稼ぎ世帯数が専業主婦世帯数を上回りまして、足元ではほぼ倍になるなど、制度創設時から大きな変化が生じている中、現行の仕組みについても見直す必要があるのではないかと思っております。やはり現在の世帯の実態を踏まえれば、児童手当の所得制限につきまして、世帯合算で判断する仕組みに変更していくべきであると考えております。
子ども・子育て支援の最後となりますが、86ページをお開きいただきたいと思います。児童手当の特例給付についてでございます。児童手当の所得制限を超えるものに対しましては、当分の間の措置として、月額5,000円の特例給付が支給されております。全世代型社会保障の実現に向けまして、子ども・子育て分野の充実・強化を図る中においても、効果的・効率的な支援としていく観点から、現行の施策についても、分野内における優先順位づけも含め、必要に応じた見直しを検討していくべきであると考えております。
したがいまして、この児童手当の所得制限を超える者に対して、当分の間の措置として、支給されている特例給付につきましては、廃止を含めた見直しを行っていくべきであると考えているところであります。
私からの説明は以上でございます。
〔 岩佐主計官 〕 厚生労働担当の第2主計官の岩佐でございます。
私からは障害福祉と生活保護を残された時間でご説明させていただきます。
まず、障害福祉についてであります。89ページでございます。平成30年度、障害福祉サービスについても、報酬改定を行うこととなっております。その前に、障害福祉の歴史を簡単に振り返りたいと思います。ノーマライゼーションの理念が浸透する中で、平成15年度には、行政がサービス内容を決める措置制度から、利用者がサービスを選ぶことができる制度へと転換されております。その後、平成18年度には、3障害共通の障害者自立支援法が施行されまして、その後、周知の改正を経て、現在の姿に至っております。
1ページおめくりいただきます。利用者負担の観点で見てみますと、平成18年度には介護保険のような1割の応益負担が導入されました。その後、累次利用者負担は軽減されておりまして、足元では、利用者負担は金額ベースで0.23%、負担のない方の割合が93.3%という形になってございます。利用者負担が小さいということは、とりも直せば、コストインセンティブが働かない。利用者が選ぶと言いつつも、供給が需要をつくり、あるいは質の低いサービスにつながってしまうといった側面もあるのではないかと考えてございます。
次、91ページ、予算の推移でございます。障害予算は、見てのとおり急増しておりまして、自立支援法の施行以降、10年あまりで2倍強となってございます。大きな要因は、自立支援給付など、障害福祉サービスの増加です。事業所も倍増しておりまして、事業所の増加が利用者の増加につながっているといったことも考え得るわけでございます。
障害福祉は、ある意味保険制度ではありませんので、保険料の上昇を心配する必要はないわけでありますけれども、これは、とりも直さず、税を通じての公費負担そのものでありまして、公費負担の増加が顕著である中、制度の持続可能性を確保していく観点からも、増加額を将来にわたって抑制していくことは急務だと考えてございます。
平成30年度の改定におきましては、サービスが類似する介護保険における議論、今後、公表される事業者の収支差率等も勘案しながら、全体として適正化を図ることはもとより、各サービス分野の実態に即して必要な見直し・適正化をしっかり積み上げていく必要があると考えてございます。
以下、各論での論点を若干紹介させていただきます。93ページに飛んでいただきまして、まず、就労支援系のサービスについてであります。この就労支援系のサービスは、自立支援給付の中でもおおむね4分の1程度と大きな割合を占めておりまして、予算の伸びも顕著な分野でございます。
就労支援には、幾つか類型がございます。企業での就労を希望する障害者に訓練を行う就労移行支援と、一般就労はやや困難な障害者に福祉的な就労の機会を提供する就労継続支援といった類型がございます。この継続支援の中には、雇用契約を結び、最低賃金が適用されるA型と、最低賃金が適用されないB型がございます。
基本的な考え方は、障害者の所得保障としては、障害年金など、他の仕組みがある中で、この就労支援につきましては、税財源を障害者に直接移転するものではなくて、あくまで就労の環境づくりに公費を充てるということで、障害者が自立した社会生活を営めるようにしようとするものでございます。
そこで、就労支援の実態を見ますと、左上の表のとおりでございます。支援区分の低い利用者が多く、また、その事業者の収支差率が高いといった傾向が見てとれます。
また、左下のグラフでありますが、利用率の地域差が著しいといった特徴がございます。
次のページに飛んでいただきます。こうした中、就労支援につきましては、事業者などからも、障害者を単に囲い込んでいるだけで、実際は障害者のためになっていないのではないかといったサービスの質の問題が縷々指摘されている現状にございます。
次ページをおめくりいただきまして、この分野では、私どもでも予算執行調査を行いました。その分析でありますけれども、まず、左上及び右上のグラフのとおりであります。利用開始者の五、六割は、一般就労の経験のある方となっております。
一方で、左上ですけれども、一般就労への移行はあまり進んでいない。結果として、福祉の利用者が増加し続ける構造となってございます。
右下の表を見ますと、特に移行支援に関しては、企業の障害者雇用が増加する中で、全体の3割の事業者が1年間で1人も移行者を出せていないといった状況でございます。就労支援と言いつつも、実際の成果という観点からは、非常に残念な現状が見てとれるかと思います。
次、96ページでございます。継続B型に関してでありますが、右上の表でございます。工賃の支払いを障害者の生産活動収入で賄うことができず、事業収益が赤字ということでございますけれども、それを、本来の支援の趣旨から離れて、税財源の障害者報酬によって事業収入、事業面の赤字を補していると考えられるような事業者が全体の3割に上るといった現状にございます。
一方、中ほどの囲みの中にありますように、各種創意工夫、営業努力で売上を伸ばし、しかるべき工賃を払っている、工賃を増加させているといった事業所も見られます。
以上を踏まえますと、下の囲みにありますとおり、就労支援の報酬というものは、サービスの質や費用に見合った水準とし、また、就労への移行といった実績がより評価されるように、報酬体系そのものを見直すべきではないかと考えてございます。
また、工賃等の向上につきましても、安易に税財源に依存するのではなく、優良事例の収集展開等によって実現すべきではないかと考えてございます。
97ページに飛んでいただきます。次は、障害児向けのサービス、いわゆる放課後等デイサービスについてでございます。この障害児向け給付も急増しておりまして、中でも放課後等に障害児を預かり、生活能力の訓練等を行う、いわゆるデイサービスが大部分を占めておりまして、伸び率も非常に大きくなってございます。
次のページをご覧いただきますと、放課後デイサービスも左上に示しましたとおり、高い報酬水準などを背景に、多くの法人が参入している状況でありますが、右上や左下にあるとおり、支援の質や利用のされ方などの問題が指摘されてございます。
まとめといたしましては、先ほどの就労支援と同様でありますけれども、事業者の監督や必要な支援の評価といったものを適切に行うことはもとより、サービスの質や評価に見合った報酬水準体系とすべきと考えてございます。
次に、生活保護についてであります。資料で幾つか生活保護の現状と制度に関わる説明をつけてございますけれども、そこは省略させていただきます。
103ページに飛んでいただきまして、生活扶助基準や各種の加算・扶助についてご説明したいと思います。生活扶助基準は、一般の低所得世帯、具体的には第1・十分位の世帯の消費実態との均衡を図るという形で、これまで調整されてまいりました。両者の間に乖離がないか、5年ごとに検証を行うということで、本年がその検証の年でございます。
5年前の検証におきましては、右下の絵にありますように、生じていた乖離が完全には解消されてございません。本年の検証では、比較対象として、第1・十分位を捉えることがそもそも適切かといったことを検証するとともに、一般低所得世帯との間の乖離を適切に生活扶助基準に反映させる必要があると考えてございます。
次、104ページでございます。生活保護制度には、様々な加算や扶助がございます。多種多様な特別な需要に配慮しているということでございます。
105ページで、その一例をご紹介させていただきますと、有子世帯にかかる加算や扶助をまとめたものでございます。左下ですけれども、各種の加算によって、生活保護を受給しているひとり親世帯の生活扶助額は、おおむね世帯年収で500万円程度のひとり親世帯の消費水準に相当するものとなっております。
右下は、一般世帯も含めて受給する児童手当と、生活保護世帯のみが受給する児童養育加算との関係でございます。生活保護世帯の生活扶助額は、一般世帯の児童手当も含む収入全体から生活保護世帯では想定されない自動車関連の支出等を除いた額と均衡させるものであります。児童手当も含んだ上で、いわば背丈比べをしているわけでありまして、そこに児童手当見合いとされる児童養育加算を加えれば、それは、ある意味二重の配慮になっているということであります。
ページをおめくりいただきまして、教育の世界でも似たようなことが起きております。小学生から高校生のいる世帯には、毎月定額の学習支援費といったものが支給されています。生活扶助においても、教科書等の費用は既に勘案されているということであります。
また、青枠中の年表を見ますと、学習支援費は母子加算の段階的な廃止と同時期に設けられ、その後、母子加算が復活した後も存続しているという形になってございます。更に、自治体の方々に聞きますと、これらの扶助が、本来の目的である教育費以外にも充てられているのではないかという実感を多くお持ちのようでございます。
まとめますと、こうした有子世帯に対する加算・扶助について、整理を含めた見直しが必要なのではないか。その際、子供のためという目的をきちんと達成する観点から、現物給付への切りかえといった手法も検討すべきではないかと考えます。
次に、医療扶助についてであります。108ページからでありますが、生活保護費の半分程度は医療扶助が占めております。また、生活保護者の中の高齢化というのも進んでいる現状の中で、自己負担が完全にゼロの世界の医療扶助の適正化は急務だと考えてございます。
まず、ジェネリックに関してでありますが、骨太の方針でも後発医薬品の使用促進が掲げられておりまして、生活保護受給者は一般的な方と比べると、使用割合は順調に伸びているといった現状でございます。生活保護には、既に医師が使用可能と判断した場合には、可能な限り後発医薬品を用いるように努力義務規定が設けられております。
一方で、109ページをご覧いただきますと、使用割合には、いまだ地域差も大きく、また、先発医薬品が処方される理由の約7割が患者意向であるといったことも踏まえますと、さらなる使用促進には、もう一段の取組が必要かと考えております。
具体的には、医師が認めた場合には、後発医薬品の使用を原則とすること。あるいは、自己都合で先発医薬品を望む方には、先発医薬品と後発医薬品の差額は自己負担していただくといった対策は必要かと考えます。
次は、頻回受診対策であります。110ページでございます。生活保護受給者は、自己負担がないため、過剰受診の抑制効果が働きにくいとの指摘が、自治体等からも指摘されております。左下のグラフを見ますと、実際に生活保護受給者の医療の利用回数は、一般の方と比べて高くなっている現状が見てとれるかと思います。
また、現在、頻回受診として把握されるのは、同一傷病、同一月内に同一診療科を15日以上受診した月が3カ月以上継続する場合と限られておりますので、カレンダーに付した赤丸が1日でも欠ければ、頻回受診としては把握されないといったことになります。
111ページに飛んでいただきまして、左側の絵では、生活保護受給者の平均通院日数が、ほとんどの年齢層で高い地域では、頻回受診者の占める割合も高い傾向にあること。それから、右側のほうでは、そうした地域は生活保護受給者の通院日数が、それ以外のものと比べても多い医療機関が所在する傾向にある。頻回受診の発生状況には、地域差が伺われているということであります。こうした医療機関が標榜している診療科は、特定の診療科に偏る傾向も見られますし、レセプト請求件数の全件、または大多数が生活保護受給者にかかるものであるといった医療機関も見受けられるのが現状です。
112ページでございます。頻回受診者に対しましては、福祉事務所等で適正受診指導といったものを一生懸命やっているわけでございますけれども、そうした指導にも限界があるとうかがわれる中で、頻回受診者が多く発生しているような医療機関に着目した更なる対策の導入や、頻回受診者に対する自己負担、償還払い制度の創設などが必要ではないかと考えております。
113ページ以降は、時間の関係で省略します。
以上、少し駆け足になって恐縮でございますが、私どもからの説明は以上です。
〔 田近分科会長代理 〕 どうもありがとうございました。
ということで、医療、介護、子ども・子育て、障害福祉、生活保護と説明をいただきました。ここからは、皆様のご意見・ご質問を承りたいと思います。いつものとおり、ご意見のある方はネームプレートを立ててください。
では、早速ですけれども、小林さん、進藤さんという順番でお願いします。
小林慶一郎さん、お願いいたします。
〔 小林(慶)委員 〕 ご説明、非常に賛成するところが多いお話だったと思います。3点ほど、簡単に意見を言いたいと思います。
1つは、診療科の偏在の話が、最初の医療のところに出てきております。診療科の偏在に関連するのかもしれませんが、私の聞くところでは、例えば開業医のような医師の形態と、勤務医の医師の形態との間で相当程度の労働の密度、あるいは労働時間の違いがあって、それぞれの報酬なども、単価で見ると相当程度の差があるのではないかという話を聞きます。そのような医療サービスの提供の形が、やや開業医という形態にインセンティブを与え過ぎているのではないかという気がします。そういったところに対して、何か診療報酬のような制度の仕組みを対応させて改善することはできないのだろうかという意見を言いたいと思います。
もう一つは、これも診療報酬に関係するかもしれませんけれども、病気が深刻化する前の予防的な健康増進の活動やスポーツのような活動に対して、より公的な支出をすることで、予防的な活動にインセンティブをつけるということもあると思います。そのような取組は、更に強化される余地はあるのだろうかということをお伺いしたいと思いました。
それから、最後に、生活保護の頻回受診のところで、一部自己負担をさせていくという話が出てきたと思います。これは、私も賛成ですけれども、生活保護ではなくて、普通の医療費の窓口負担の問題にも敷衍して考えると、何らかの医療サービスの窓口負担は、より高くするということで医療サービスの提供を効率化できるのではないか、あるいは、年齢だけではなく、資産であるとか、診療項目に応じた窓口負担の率を変えるということが考えられないのだろうかということを意見として言いたいと思います。
以上です。
〔 田近分科会長代理 〕 では、阿久澤さん、開業医と勤務医の診療報酬と、予防に対する診療報酬の扱いを手短にお願いします。
〔 阿久澤主計官 〕 手短に答えさせていただきたいと思います。
まず、診療科及び診療所と病院の間の実質的な報酬の相違の観点であります。これは、議論としては、結構以前から行われてきております。診療所での評価と、病院での諸報酬評価の配分の在り方の問題ということでございます。
これにつきましては、今後、医療経済実態調査などによって、診療所の経営状況、それから、病院の報酬といったものも調査します。もしくは、病院での給与なども調査いたします。そういったことを踏まえながら、各科配分の在り方、もしくは診療報酬配分の在り方、報酬上の評価の在り方を検討していくことになるということでございます。
それから、予防についてのインセンティブでございます。これは、例えば、国保等におきまして、各団体が保険者機能の強化を行う。その先に、保険者機能の一環として、各種の予防事業を行うといった場合には、そこに一定の財政支援が行われるという仕組みを、平成30年度からは強化するということにしておりますので、こうしたインセンティブを通じた予防の取組が進むことを期待しております。
また、健保組合の場合は、後期高齢者の支援金の加減算を行います。取組が進んでいるところは減算するし、もう少しのところは加算するという仕組みを入れておりますので、健保組合についても、そういった取組が強化されていくということを期待しているところでございます。
最後に、自己負担の問題であります。これは、先ほど、私どもがご説明させていただきました改革工程表項目の中に、例えば、高齢者の自己負担の更なる引き上げについての検討や、薬剤の自己負担の在り方、更には、資産等も考慮した公平な負担への転換といった論点を示させていただいています。こうしたものにつきまして、改革工程表に沿って、しっかりと検討していきたいと考えております。
〔 田近分科会長代理 〕 では、続けて、進藤さん。
〔 進藤委員 〕 私の意見を2つだけ申し上げさせていただきたいと思います。大変マクロ的な言い方で申しわけありませんが、診療報酬本体、介護報酬については、マイナス改定とすべきだと思います。
先ほど、縷々説明がありましたように、診療報酬本体の水準は、賃金・物価の上昇率と比較してかなり大きな比率で増えており、高齢化の要素を加味しても、それよりかなり大きな率で伸びているということが理由です。
それから、もう一つは、介護ビジネス、介護事業者の収支差率についてです。これは、民間の企業にすればROSだと思いますけれども、決して低くはないですよね。かなり高いROSであるということから、調整すべきではなかろうか、マイナス改定とすべきだと思います。
その上で、限られた財源、資源を有効に活用する方向で、急性期病床の適正化、それから、調剤報酬の適正化、自立度の維持・改善をするという観点からの介護サービスの在り方等、様々な課題が今挙げられていますので、今回の改定で確実に方針をきちんと出して、対応を図るべきだと思います。これが1つであります。
それから、2つ目は、児童手当であります。中学3年まで、1万円から1万5,000円が1人につき出るということは、大変良い制度だと私は思いますけれども、この特例給付が問題であります。今の説明では、必要に応じて見直しとなっておりましたけれども、特例給付は、主たる生計者で960万円を超える人も、月5,000円出ているわけですね。この960万円というレベルは、決して私は低いレベルだとは思いません。更に、共稼ぎの要素が入れば、もっと上に行くわけでありまして、この家庭に月5,000円払うということが、これからの社会保障を考えるときに、負担能力のある人はきちんと負担する、支払い能力のある人は負担するという観点から見直されるべきではないかと思います。高収入の子育て世帯まで5,000円を配り続ける必要性は乏しいと思いますので、しっかりと廃止を打ち出すべきだと思います。
以上、2つであります。
〔 田近分科会長代理 〕 ご意見ということで。
〔 進藤委員 〕 はい。
〔 田近分科会長代理 〕 では、続けてご意見をいただくということで、武田さん、それから、田中さん、土居さん、お願いいたします。
〔 武田委員 〕 ありがとうございます。詳しいご説明もありがとうございます。
私からは、2点、意見を述べたいと思います。重複する部分もございます。
1つ目の意見は、診療報酬、介護報酬の改定について、改革の方向性はご説明いただいた内容に賛成でございます。特に総論の議論はもちろんのことですが、メリハリの重要性についても、改めて必要性を感じました。
先ほど、阿久澤主計官より、既に回答がございましたとおり、評価の在り方、つまり救急医療と開業医の差であるとか、あるいは産婦人科と、それ以外のところであるとか、介護でも頑張って経営努力をされ、質の高いサービスを実施しているところと、そうでないところの差といったところにまで目配りする必要があるのではないかと考えます。
2点目ですが、私は来年中に、必ず75歳以上の後期高齢者の自己負担の在り方について議論すべきと強く思っております。長期政権が実現している今こそ、中長期の視点で日本が今何をすべきか、直面している国家の危機は何なのかを真剣に考えていただき、大局的に議論を進めていただくことを望みます。
以上です。
〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございます。
では、田中さん。
〔 田中委員 〕 簡単に2点申し上げます。
まず、第1番目に、「新薬創出等加算のゼロベースでの抜本的見直し」とありますが、先ほどご説明にあったように、これは新薬の創出に逆のインセンティブが働いているように見えますので、抜本的な改革については賛成です。
2点目は、各論になりますが、105ページに関わるところです。母子加算等々の説明でありますが、これを拝見していると、今、無償化が議論されていますけれども、誰のための無償化なのか、よく分からなくなってきます。これだけ手厚く給付されているということです。
そう考えますと、まず、無償化を今後検討されると思いますけれども、その前に、現行のこうした制度に関して、適切に相手にサービスが渡っているのか、あるいは、分配の方法は適切なのか、適切に使われているのかというところを検証するべきだと思います。
以上です。
〔 土居委員 〕 ご説明ありがとうございました。
まず、資料の9ページにありますように、高齢化の範囲に診療報酬改定の下げ幅を2%半ば以上にしなければならないというところは、決して日本の医療の「森を見て木を見ず」という話ではなくて、保険料負担を我々はしていて、その保険料負担が雇用者報酬以上に診療報酬が増えると、保険料率が上がるという対応関係になっていることも含めて、国民に理解を喚起していく必要があると思います。
その点で、医療は医療、介護は介護で、それぞれの個別の論点で改めるべきところはしっかり改めていただくということが必要だと思います。その意味では、医療については、やはり薬価制度の抜本改革の具体的な内容をしっかり詰めて、しっかり報酬改定に反映できるようにしていただきたいと思います。
それから、次に、武田委員からも触れられましたけれども、61ページにあります高齢者医療の自己負担率であります。平成31年4月から75歳になられる方の負担率を改めるには、来年の通常国会で議論していただいて、お決めいただかなければならないという切迫感のある問題だと思います。もしここで変えられないと、そのまま75歳になって、1割負担が原則になってしまうということで、74歳まで2割負担だったのに、75歳の誕生日を迎えた途端に負担ができないということはあり得ないと思いますから、そこはしっかり改めていただく必要があるのではないかと思います。
それから、介護については、軽度者に対する報酬をしっかり見直していただく必要があると思います。この財政制度等審議会でも、軽度者に対する給付の在り方をこれまでにも、昨年、何度も議論をいたしました。ただ、あいにく全てが全て反映されたわけではなく、平成30年度からの介護保険法改正に反映できなかった部分が宿題として残されております。ですから、今さら介護保険法は変えられない面はあるわけですけれども、少なくとも介護報酬でしっかり軽度者に対する負担の見直しをしていただきたいと思います。
最後に、生活保護についてであります。生活保護は、これまで医療や介護と異なって、地域差に着目するということがあまり多くはなかったわけですが、ある種の都市伝説的に地域差があるということはよく知られていたことであります。医療や介護で地域差を縮減するということで、給付の出し方を見直すということをこれまで取り組んできたわけですから、生活保護も地域差の縮減をしっかりうたって、その給付の適正化をしていただく。特に医療扶助は、それが必要なものだと思います。
以上です。
〔 田近分科会長代理 〕 中空さん、よろしくお願いいたします。
〔 中空委員 〕 ありがとうございます。
1つ目は質問です。よく保育の受け皿拡大ということで、何万人増やしましょうとありますが、今22万人増えれば、女性就業率は80%ということですが、日本が目指すべきものはどこまでなのか。今の22万人が終われば、もうこれでオーケーなのか。その辺の全体的なプランがあれば教えていただきたい。
というのは、何でもそうですが、箱を全部つくってしまうと、当然要らなくなってくることが想定される。小学校などの例はそれを示しているとも言えるのではないかと考えます。今はたくさん要るのだけれども、そのうち要らなくなるという話だとしたら、ここにたくさんの税金を入れることや、企業に負担をお願いすることが、一体どうなのかという話になってくるのではないかと思っています。当然、全体的なプランがあると思うので、もしそういったものがあれば教えてください。これが1つ目です。
あと、医療においても介護においても全てのことは、『財政再建を行わなければならない国』がやれることには限界がある。公的なものでどこまでやるのかということを、私たちは常にきちんと冷静に見ていかなければいけないと基本的には思っています。
今回ご指摘になった面は、すべからく賛成なのですが、幾つかあって、私は昨年、財審海外調査でギリシャに行かせていただきました。そこで知ったことは、ギリシャで医療改革をし、医療に回すお金を減らしたということでした。結果どうなったかというと、医療従事者たちが、みんなこぞってどこかの国に行ってしまったのでした。その結果、ギリシャの医療サービスはものすごく低下したという事実があります。
なので、先ほど来、様々な先生がご指摘になっていますが、サービスが一律であるということのほうに不可思議なものがあると思っていて、やはり優良なサービスや高等なサービスには対価があって当たり前なので、医療のところにも一律でやるものと、そうでないものがきちんと分かれていていいのではないか、という点について強調しておきたいと思います。もちろん、そのかわり、公的なところはどこまでやるのかということをきちんと示していく必要があるということも踏まえるべきだと思います。
最後に、もう一つ定義についてですが、例えば、頻回受診者の定義についても、とても緩やかなというか、大まかな定義に見えます。こういった負担金や補助金が出るものというのは、誰でもこの業界にいれば、それをいかにもらえるか、そちらの方向に話を持っていくのは普通ですので、そういった今までの定義についても、もしかしたら見直さなければいけない時期が来ているのではないかなと思いました。
以上です。
〔 田近分科会長代理 〕 では、阿久澤さん。保育の受け皿について、お願いいたします。
〔 阿久澤主計官 〕 資料の82ページをお開きいただきたいと思います。これは、現行のプランであります。総理が前倒しを宣言する前のプランですけれども、基本的にこのプランの考え方では、今後、更に平成30年度から32万人程度の保育の受け皿の拡大をするとしております。
この場合、おおむね32万人程度の受け皿が拡大できれば、上のほうにありますけれども、女性の就業率が80%程度になったとしても、受け皿を確保できている水準であるということでございます。女性の就業率がどこまで上がるのかということについて、何か天井があるわけではありませんが、例えば、この小さい字でありますけれども、スウェーデンなど、女性の就業が進んでいると言われているところの就業率が82.5%ということでありますので、そういった国並みに就業率が伸びたことを前提にして、あと32万人ぐらい必要ではないかということで、それに向けた整備をしている。
以前、この場でご紹介もさせていただきましたが、人口構造の変化等を踏まえ、日本全体の労働力を考えれば、働く意欲のある女性の方にも働いていただく必要がございますので、そういったパーセンテージまでの整備は必要なことではないかと考えているところでございます。
〔 田近分科会長代理 〕 では、宮島さん、お願いします。
〔 宮島委員 〕 ありがとうございます。
まず、医療に関しましては、メリハリをしっかりつけていくことや、そもそも医療費というものは、国民から集めて、医療機関に支払うものであるということから考えると、保険料の上昇が賃上げ効果を相殺しかねないということも考えまして、それを丁寧に説明し、診療報酬は減額の方向とすべきと考えております。
加えまして、私は学生の動向が気になります。今、高校生の理系の優秀な層が、相当程度、医学部のほうに偏っているという印象を受けます。そして、産業界や先端技術の分野では、本当に優秀な人材が、この世代において集まらないのではないかという心配も生まれています。それは、ある意味、比較で言って、一定程度、お医者さんの収入が確実なものであるということを親たちが見ている部分もあり、子供の希望に加えて、親が医師になることを勧めるという現状があります。
これを、国全体として、どの程度の資源を医師に投入するのかという視点を持って、診療報酬も、それを考えながら、一般とのバランスを適切にとりながら進めるべきではないかと思います。
調剤報酬の改革や薬価改定の頻度を上げるということに関しては賛成です。
次は、この財審の大方の方と違うことを言うかもしれませんけれども、1つは、事実上、与党が幼児教育の無償化を進めることが見えている中で、無償化が待機児童の解消の前に進んでしまうと、大変なことになると思います。つまり、保育所のニーズが上がることが考えられるので、より待機児童が発生しやすくなることを考えますと、待機児童の解消のための財源をしっかり確保するということは大事だと思います。もちろん、使い方に関しては、箱物をつくるということではなく、将来にわたって無駄のない形が必要ですけれども、ここは重点的にお金を投入するべきだと思います。
この財源については、今、児童手当の特例給付の廃止が提案されている背景に関しては、私も十分に理解します。ただ、心配しておりますのは、世の中全体として、まさに今回の選挙で各党がそろってそうだったように、高齢者の世代から子供のほうにお金を回そう、あるいは教育の負担軽減、子育て支援をお金の面でもしようという空気感が非常に高い状況の中で、児童手当の特例給付を廃止するというメッセージが、世の中にどのように伝わるかということに関して、私は心配をしております。
つまり、3歳から5歳まで全面無償化に関しては、様々な意見があると思います。現実にこれを進めると、高所得の人の幼稚園や保育園代も無償になるわけです。これを許容している一方で、高所得者だからといって、児童手当を無くしますというメッセージがどのように伝わるのか。もしかしたら、財制審だけが、政権が掲げた選挙公約と全然違うことを言っていないか。あるいは、財務省だけ違うことを言っていないかという、逆方向のベクトルを子育て世代が受け取ってしまうことについて懸念があります。
つまり、私は財源が足りない中で、政策として特例給付の廃止そのものに完全に反対しているわけではないのですけれども、子育て支援に対するメッセージの伝わり方については、十分に気配りする必要があると思います。お金を投入して、子供をもつ意識を盛り上げようという流れを相殺する可能性があるからです。
やはり、今おっしゃった高齢者の医療費の部分、あるいは予算ではないですけれども、公的年金控除のあたりとか、そういったところから財源を出して、子育て支援に充てていくというのが今の流れだと思っておりまして、意見申し上げました。
〔 田近分科会長代理 〕 最後の部分、ご趣旨が完全には分からなかったのですけれども、子育てについてお金がある人にも無料化していて、一方、子ども手当がカットされるということは、子育てに対して政府は何をしているか読みにくくなってしまうというご意見でしょうか。
〔 宮島委員 〕 はい、そうです。逆のベクトルに通じると思います。
更に、個々を見ますと、結局、無償化の恩恵は3歳から5歳の家庭に行き、中学生までの児童手当の高所得者の人は負担増になるという、細かいところでプラス・マイナスが発生するのです。全体のメッセージに対して、一部分の人が全然違うことを言っているのではないかと感じるようになると、財審全体の意見が、世の中の議論と違うことを言っていると扱われてしまうことを懸念しているということです。
〔 田近分科会長代理 〕 またご意見がある人はフォローアップしていただくとして、宮武さん、お願いします。
〔 宮武委員 〕 各方面にわたって、本当に細かく調べて分析されていて、いつも感心をいたします。
医療分野については、ご指摘のように、薬剤費が膨張し、その使い方に無駄がある。MRIに代表されるような、非常に高度な検査機器が先進諸国においては飛び抜けて多く導入されている、あるいは、外来の受診の回数が先進国においては飛び抜けて多い。こういった日本の医療の特徴なり問題点というのは、詰まるところどこから来ているのかというと、それはやはりフリーアクセスを保障しているということ、それから、外来においても出来高払いの報酬体系になっているということから派生してくる問題なのです。そういったことを明確に是正していこうという戦略的な目標を立てなければいけないと思います。
フリーアクセスについては、明確にブレーキをかけていく。だめとは言いませんけれども、ある程度のブレーキを明確にかけていく。あるいは、出来高払いから、基本的には定額払いに変えていく。それぞれの診療内容によって、様々な加算をつける形で、ある程度包括的な報酬にしていく。
そういう方針を立てないと、毎年、毎年、対処療法で、モグラたたきのように社会保障費をたたいていますけれども、根本治療にはつながらないのだと思います。ぜひ、そこをこれから財審として、方針を打ち出していただきたいと思います。
今回、フランスの事例を再度出しておられました。私も行って見てきましたが、2つ学ぶ点があると思います。16歳以上の国民にかかりつけ医の登録を呼びかける。強制ではないです。任意です。ただし、かかりつけを持たず、病院に直接行けば、思い切り高い自己負担を覚悟してくださいと、こう迫ったわけですね。一気にこうでなくても、このような方式はあると思います。
それから、もう一つは、報酬面においても、外来は基本的に定額払いにしてあります。もちろん、これは様々な加算がついております。しかし、それはある程度我々が目指すべき方向性のところを打ち出しているのだと思います。直輸入はできませんけれども、学ぶべき点があると思います。
介護分野についても、非常に多くの問題点をご指摘されまして、確かに問題点が山積みになっています。ただ、これからの医療と介護の在り方を考えると、病院のほうは、規模別に再編成をして、病床数そのものも減らしていく。その中で、自宅、あるいは介護施設なりで療養し、介護のサービスを受ける人が増えていく。単純に見て、計画どおりに行っても、今より30万人自宅療養者が増えるわけです。要するに、ほぼ自宅、時々入院という体制をとるということになると、実は介護サービスは、これから更に拡大、充実させていかなければいけない分野なのです。
医療のほうは、質的な転換を図りながら、総量としては縮小していく。介護のほうは、やはり質的なサービスを上げながら、実は総量を増やしていかなければいけない。そういう大きなところで見ていただいて対応しないと、多少儲かっているだろうということで、どんどんブレーキをかけていきますと、小規模のところ等は運営できなくなって、倒産件数も過去最多になっております。気がついたら、全国展開の大手の介護事業者しかいなくなったみたいなことになっては困るわけであります。
その辺のところを、ぜひお考えの上、調剤薬局については、面分業をやっている良心的なところについては配慮をするとか、あるいは規模別に対応して収益率を考えていくということを書いてございます。介護のほうも、そういったことを考えていただきたいということであります。
それから、生活保護についてでございます。105ページのところに、ひとり親世帯に対する消費水準の比較があって、生活保護を受けている方で、子供を1.3人抱えている人は、17万6,000円とものすごく高くて、これを見ると、一般の生活保護も受けないで頑張っているひとり親家庭というのは、随分ひどい目に遭っている。生活保護を受けている人は、随分楽だなと思うわけであります。
この生活保護の家庭は、少なくとも預貯金はないし、家もないし、親戚縁者からの支援もないし、なおかつ、母子どちらかが病気とか障害があって働けない世帯なのですよね。そういった生活の背景は全く抜きにして、単純に数字で示すとこのような衝撃的なことになるわけです。そこは、やはり生活保護家庭が抱えている生活困難についての目がないと、間違ってくると思います。
特に、個人的には生活保護を受けている方の中で、この方は自分の責任だろうと思うような方が少なくないです。ただし、子供に責任はないです。生活保護家庭に生まれた子供に責任があるわけではないですよね。生活保護の目的は、自立支援なわけです。自立支援をするということで言えば、子供ほど自立支援をすることによって、必ずその効果が出てくる対象はいないわけです。だから、子供を持っている家庭に対しては、私はぜひ配慮していただきたいと思います。
以上であります。
〔 田近分科会長代理 〕 いずれも本質的な点で、宮武さんのご意見としては、これまでもそうだし、本日もそうだし、主計官からの説明は、微に入り細に入り、いろいろやって、きめ細かく検討している。私もそう思いますけれども、それに対して、それをくくるというか、横に概念的に捉えるという意味で、医療ではフリーアクセス、個別には、かかりつけのお医者さんを重視しろという形に、具体的にはなっていくわけだと思います。
それから、出来高から定額、事前払い。それから、介護においては、医療・介護連携。そして、生活保護では子供ということで、それぞれの中のメリハリというより、政策をくくるような視点をきちんと入れてほしいというご意見ですよね。
〔 宮武委員 〕 はい。
〔 田近分科会長代理 〕 個別にはそれぞれに対応していると思いますが、政策の体系と言うと大げさですけれども、その在り方として、1つそういった見方もあるということで伺いました。
続けて、岡本さん、老川さん、宇南山さん、井堀さん、伊藤さんと札が立っているので、お願いします。
〔 岡本委員 〕 ありがとうございます。
資料に基づいてですが、まず、9ページの上段の4行目に、「診療報酬改定1回当たり2%半ば以上のマイナス改定が必要」という文言が盛り込まれています。これは、土居委員もお話しされましたが、こうした具体数値は、私は初めて見るような感じがします。目標を明確に示すということは大変意義深いので、今後もこういった大枠をぜひ示してほしいと思います。
そして、その関連で、社会保障の見直しを行うに当たっては、量的な側面を重視し、予算額が大きく、削減の幅も結構出るのではないかと思われるような項目について、優先順位をつけながら議論する、検討するということが必要だと思います。
そういった中で、削減効果は分かりませんが、私は3つ申し上げたいと思っております。
1つ目は、86ページにある児童手当の特例給付です。ここで、「廃止を含めた見直し」という表現があります。これについては、進藤委員も話をされておられましたが、ぜひとも見直しではなくて、廃止にしてほしいと思います。
理由は、先ほどもありましたが、当分の間の措置としながら、既に制度発足から5年たっているわけです。5年たって、このままというのはいかがかということと、現金給付から現物給付に持っていこうという大きな方針がありますので、このような現金給付については、廃止の方向で臨んでいただきたいというのが1点でございます。
それから、2点目は、57ページにあるジェネリック医薬品の使用促進についてです。ジェネリックの使用割合については、私もこの委員になってから、当時は3割程度だったと思いますが、これが7割まで増えたということです。これは、財審でも何度も取り上げて、粘り強く取り組んできた結果だと思いますし、大変意義があったと思います。
そういう中で、いよいよ残りは3割だというところまで来ましたが、ここから先、移行が進むかどうかのポイントは、右側の赤いところにありますように、患者が新薬を希望しているというところです。そういった意味では、これを解決するための1つの方策が、ここにありますように、自己負担で賄うということでありますジェネリックの平均価格をどう算出するかとか、いろいろインフラ整備が大変なのかもしれません。やはり自己負担で賄うという考え方は妥当でありますので、ぜひ全力を挙げて取り組んでほしいと思います。
それと同時に、医療費の抑制という意味では、ジェネリックのある新薬の価格を予定以上に下げるということも、1つの解決策だと思いますので、ぜひ取り組んでほしいと思います。
それから、3点目は、67ページの介護の報酬改定についてであります。これは、諸情勢を考えれば、本当に危機的な状況にあります。下に青い字で「適正化」とありますけれども、何となく幅が小さいような感じがします。ぜひ適正化を超えて、大幅な見直しというところにも踏み込んでいただきたいなと思っております。
それとの関係で、70ページです。右のグラフにあるとおり、買い物など、生活援助サービスを月に100回以上利用するというのは、あまりにも異常です。削減額そのものは、あのグラフを見ると大したことがないのかもしれませんが、姿勢として問題があります。例えば、1日1回、月30回が限度とか、上限を設けることが必要ではないでしょうか。こうしたことは、一事が万事で、他の面でも少し緩いのではないかなど、様々な意見がありましたが、こうしたものをそのまま放置してよいとは思えませんので、ぜひ検討をお願いしたいと思います。
以上でございます。
〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございました。
では、続けて、老川さん。
〔 老川委員 〕 ありがとうございます。質問と意見を申し上げたいと思います。
83ページの事業主拠出金による子ども・子育て支援の充実。これについて、新しい保育事業について、もう既に申請が7万人に達しているというお話で、やはりそれだけニーズが高いということの証明であるし、大変良い仕事をされているなということで、高く評価をしたいと思います。
この場合の使途というのは、何か決まっているのですか。それが、まず質問です。
〔 阿久澤主計官 〕 この事業主拠出金で実施可能な事業というのは、基本的に法令で決められておりまして、決まったものにしか使えないということになっております。
〔 老川委員 〕 それは何ですか。保育所とか、何か。
〔 阿久澤主計官 〕 例えば、事業主保育所であったり、一部保育給付の中で、放課後児童クラブといった事業があるのですけれども、法令においてそれを限定的に明記されているということであります。
〔 老川委員 〕 なるほど。せっかくなので、これを、例えば従業員の住宅補助、第2子以降のお子さんがいる家庭にという形で補助すると、子供を増やす方向への大きなインセンティブにもなるかもしれないし、結局、それが社会の活性化にもつながっていくと思います。事業主拠出金の活用ということは、非常に大事なことだと思いますので、これを大いに活用していくことが大事ではないかなと思います。
それから、もう一点、これはまた別の話ですが、医療費の削減、効率化ということに関して言えば、小林委員が最初におっしゃっておられたように、予防医学、あるいはスポーツ医学を通じて、健康増進の努力をするということをおっしゃいました。
これは、私も全く同感で、ここ数日前に発表になっているように、糖尿病患者が1,000万人に達しているというお話で、これが日ごろの生活習慣の改善によって半分に減れば、これは大変な医療費の削減につながると思います。そういった面を、先ほどのお話だと、保険者に対する様々な支援ということがありましたが、同時に地方自治体で地域活動の中で、こうした運動を更に進めていくということも必要かと思います。そちら方面に更に力を入れて、全体としての国民運動という形で進められたらいいのではないかなと思いますので、これは意見として申し上げておきます。
以上です。
〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございました。
では、宇南山さん。
〔 宇南山委員 〕 大小5個のポイントをお話しさせていただきたいと思います。最初は意見というか、今後の話です。
予算執行調査に基づく薬剤師の改革で、35ページに相当するところです。今回、一定の調査に基づいて改革するということは、非常にすばらしいことだと思いますが、処方箋の集中度に1つ焦点が当たっています。例えば、かかりつけ薬剤師という観点を考えると、実は薬局の中で特定の病院からの処方箋がどれだけを占めたのかというのは、あまり重要な情報ではないと思います。
例えば、患者が一体何個の薬局に通っているのか。1人の患者に対する集中度のようなもの、また、処方内容のダブルチェックという観点からすると、今度は1つの病院で何個の薬局とつき合いがあるかという意味で、病院が発行した処方箋が何個の薬局で使われたかという集中度のようなものも非常に重要な情報になると思います。
これは、今年度、すぐにできることではありませんが、ぜひとも中期的に、もう少し目的に沿ったような尺度をとっていくことがよいのではないか。そのために、ぜひともこういったものを研究者にもデータを公開して、分析を進めるというのが重要なのではないかなと思います。
2点目は、スライド64枚目あたりの介護費用に関して、居宅サービスの伸びが非常に大きいということで、ここをある種、ターゲットにされているということについてです。これは、むしろ注目すべきは、施設の給付がほとんど伸びていない。これは、様々な努力のたまものではあろうかと思います。
1つは施設から在宅へという動きを反映したものだとするならば、在宅に問題があるのは、おそらく間違いないのだと思いますが、制度等の評価においては、本当に施設から在宅に移せているのだとすれば、在宅が伸びたことは、むしろ喜ばしいことです。例えば、生活支援が中心になってしまうことも、ある種妥当な、今までだったら施設で24時間見てもらっていた人が、外に出れば頻度が高くなるのはやむを得ないということを考えると、その効果は別途評価した上で、それとは関係のない在宅の無駄みたいなものに焦点を当てていく必要があるのではないかと思います。
3点目は、84ページ目辺りで、保育所の施設の収支状況が非常にいいということで、公定価格を適正化すべきではないかという話です。現状で、保育所が足りていないという状況で、保育に参入するインセンティブを下げるような政策が、果たしてインセンティブの構造からして正しいのか。もちろん、収支に余裕があるのであれば、それは引き下がってしかるべきだと思いますが、それは、何らかの保育所同士の競争みたいなものを促すことで、例えば、保育士の確保のために給料をどんどん上げていった。結果として、収支が悪くなったという形で実現されるべきで、もうかっているのだから、公定価格を下げますというのが問題解決の近道かというと、疑問があります。
4点目、これは、様々な議論があるところですが、特例給付の廃止についてです。これは、1点、質問になりますが、特例給付の前の所得判定基準の話と、特例基準の廃止の問題は、順序を間違えると非常に大きな問題がある。例えば、年収480万円と480万円で960万円という世帯と、1人で960万円という世帯と、もちろん様々な控除が違うから、1個の線ではないにしても、今まで普通にもらっていた人が、突然、特例もなくなって、妻が働いているからといってゼロになってしまうというのは、少しショックが大きいのではないかと思います。順序としては、第1に所得判定基準のほうを優先すべきだと思っていますが、その辺は、順序についてどういったお考えがあるか。
最後、1点だけ、非常に小さい話で、111枚目です。おそらく、頻回受診の話で、診療科ごとにリハビリや整形外科が多くて、あまり緊急性がないのに多く病院に行っているのではないかという印象で語られているのだと思います。その意味で言うと、まずは病院よりも、更に一歩手前になる、いわゆる接骨院や整骨院と言われる柔道整復師の部分で、まだ積み残しの部分があるのではないかと思います。病院の頻回受診に加えて、柔道整復師についても、ご検討を進められるのが重要ではないかと思います。
以上です。
〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございました。
時間が押してきたので、阿久澤さん、児童手当特例給付の所得基準と順番について手短にご説明ください。
〔 阿久澤主計官 〕 現時点で、どちらを先にやるということが決まっているわけではございません。
ただ、制度改正する際には、その影響がどういった形で出るのかという部分については丁寧に見ながら制度設計をしていきたいと思っています。
〔 田近分科会長代理 〕 では、井堀さん、手短に。
〔 井堀委員 〕 本日の様々な改革というか、効率化の多岐に渡るメニューというのは、それぞれもっともらしいと思うので、ぜひやっていただきたいと思います。
私も、先ほど岡本委員が言われたように、財政健全化との関係で、どの項目が財源を捻出する上で大きな弾なのかということが分かれば、優先順位がつけやすいのではないかと思います。なるべく量的な話も、データとして出せるものは出していただきたいと思います。それが第1点です。
それから、第2点は、感想ですが、今までは高齢者中心の社会保障だった、これからは、少子化対策で、子育てにも全方位型でやるという方向性は、財源の話を抜きにしてしまいます。要するに社会保障の給付を増やそうという話になってしまうわけですね。
今回、消費税の使い道を変更するということで、財政健全化に関してはマイナスに働きます。少子化対策が今後重要であるとすれば、そこで子育てにお金を積み増すのであれば、そこに必要な財源は高齢者の社会保障を削る形で、今の改革工程表で想定している以上の踏み込んだ形で、財源を捻出するべきではないかと思います。これは、感想です。
以上です。
〔 田近分科会長代理 〕 岡本さんと井堀さんのご意見につきましては、私もそう思っております。こういった取組の結果、財政への全体のイメージは重要だろうと私も思いました。
続けて、伊藤さん、角さん、末澤さん、佐藤さんということで、締めます。
〔 伊藤委員 〕 ありがとうございます。
財政健全化という視点で言うと、これは当たり前の話ですけれども、「入るを計って出ずるを制す」しかない。1つは、医療についてですけれども、医療でも、入るを計るという意味と、公平負担という意味で言うと、前にも申し上げましたが、高齢者の医療費の自己負担を、先ほど「検討する」と言われたので、ぜひお願いしたいです。一遍に自己負担を倍にするとか、そういうことではなくてもいいので、2割の人は2.2割にするとか、そのような刻みでもよいので、やっていただきたい。
それから、かかりつけ医ということを促進しようとするならば、初診料の見直しも、細かい話ですけれども、考えていただいたほうがよいのではないかということが医療の分野ではあります。
それから、こちらは単なる感想ですが、子ども・子育てについて、先ほど、幼児教育の無償化の話が出ましたが、やはりやるなら所得制限をつけるべきだと思います。そうすれば、宮島さんが示されたような懸念の一部は、多分解消されるのではないかという気がしているということであります。
同じく、子ども・子育てで言うと、83ページに事業主拠出金による支援というものがあります。1つ申し上げておきたいのは、子ども・子育て支援というのは、本来は政府が安定的な財源を確保してやるべきことなのだけれども、みんなで支えようという考え方でやっているので、事業主拠出金による支援はその基本になるところです。安定的な財源を政府が確保してやるという方向性を、やはり考えていただかないといけないだろう。
そういう意味で言うと、拠出金率を上げるという方向性が出ておりますが、それについては、企業主導型の保育事業に関わらず、放課後児童クラブや、事業主拠出金を財源とする事業全体の中長期的な事業計画と必要経費、あるいは必要な人材の確保等を含めて、慎重に議論をする必要があるのではないかと考えているということでございます。
以上です。
〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございました。
では、角さん、末澤さん、佐藤さん、よろしくお願いいたします。
〔 角委員 〕 ありがとうございます。
私も多くの委員の方がおっしゃったように、今まで高齢者に偏在していたお金の使い方を子育て世代等の若い人にも使っていくという方向性については大賛成です。今回の消費税については、景気条項もありませんから、確実に2019年秋にはやっていただけるものという中で、まさにおっしゃったように、子供さんに使うのであれば、その財源は、やはり何らかの形で拠出してくるべきではないかと強く思います。
これは、できるかどうか分かりませんけれども、軽減税率についても再度議論していただければと思います。我々事業者にとっても、軽減税率というのは非常にやりにくくて、困ったなと思っています。もう少しシンプルに、10と8が混在するのではなくて、例えば、思い切って8はゼロにするけれども、あとは全部10にしてしまうよという改革ができれば、我々としても非常にありがたいなと思います。
では、社会保障をどのようにして削っていくのかという中で、私は多くの方もおっしゃっておられるように、負担能力に応じて負担するということと、公平性の担保が必要なのだと思います。
したがって、例えば、企業主導型の保育所は非常に人気があります。これは、事業者がやっても、認可保育園と同じ補助が受けられる。ですから、保育所をつくるときに、75%の税金が入るわけですね。ですから、当然、一挙に7万人まで行きました。これを、少し見直すべきではないかということですから、事業主負担を上げていくということについては、私は事業主側ですけれども、賛成します。
車通勤をしているお母さんや、離れたところに工場がある事業所であれば、電車に乗りませんから、この事業者がつくった保育所にどんどん子供が入る。ところが、都心で事務職をやっているお母さんは、満員電車に乗せるわけにはいかないので、我々は3歳児まで、月額2万円の補助をしています。ですから、年間24万円の72万円を補助しています。保育所に通うお金を我々が現金支給する。これは、もちろん補助はゼロですよね。ですから、もう少し専門家は専門家に任せながら、そういった社内的な補助制度をつくったところには、多少のインセンティブをつけてもらうと、かなり多くの企業がそれに参加してくるのではないかなと思います。
それと、公平性の担保で受益者負担ということから言いますと、やはり生活保護の問題は避けて通れない。基本的に、私は、生活扶助が1兆2,000億円ですから、1割上げて1,200億円ですよね。それと同額の医療費。1兆8,000億円かかっている医療費を削減する。そのためには、例えば上限は月額5,000円とか1万円にして、それまでは負担してくださいよと。そのかわり、生活扶助を上げますよというふうにして、基本的に頻回受診をなくしていくには、自己負担、受益者負担というものを入れていくべきではないかなと思います。
そこまで一挙にいけないとすれば、少なくともジェネリックについては、生活保護の方だけではなくて全員が、医師が勧めた場合、その勧めを断れば自己負担するという考えは、一般の人も生活保護の人も共通して入れていただく。ただ、そのときに、生活保護の方の上限をどうするかという問題は、別途あろうかと思います。
それと、介護です。維持改善の我々がやっているデイサービスはリハビリ型ですから、大体今でも10%程度の人は改善します。等級が緩くなります。ですから、そういったサービスをやっているところとやっていないところのインセンティブ、あるいはペナルティーをつけていただくということも大事かなと思います。
以上です。ありがとうございました。
〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございます。
末澤さんと佐藤さん、よろしくお願いいたします。
〔 末澤委員 〕 どうもありがとうございました。
25ページのグラフの左上をご覧いただきたいです。薬剤師の人口比の国際比較がございます。日本の薬剤師数の人口比は大体平均に対して1.7倍程度ですかね。日本の場合のこの数字は相当多いと思います。もしかすると、これは高齢化の影響なのか、ドラッグストアが多いのか、最近は海外観光客のお相手をされているのか分かりませんが、ここまで多いというのは、どうも受給バランスが崩れているといいますか、市場機能が働いていないのではないかと思います。
なお、私は仕事柄、各党の公約の比較などをやりますが、見ていて2つ共通項があります。憲法改正内容などには違いがありますが、1つの共通項は、幼児教育の無償化。これは、全党入っている。もう一つの共通項が、社会保障の歳出カットを誰も言っていないということです。これは、ある面、選挙なので当然ですが、何を言いたいかというと、社会保障の問題は、頭では分かっていても難しい。どうやったらうまく行くのか。私は成功事例が1つあると思っています。
2ページ手前の23ページの「調剤医療費の推移」をご覧いただくと、左上の数字、2016年度と2014年度を比べると、増えているように見えておりますが、単年度で見ると、概算医療費全体が2015年度は前年比3.8%増だったのが、2016年度は0.4%マイナスになっています。このマイナスになっているのは、2002年度以来14年ぶりなのです。なぜそれができたかというと、調剤医療費が、2015年度は前年比で9.4%増だったのが、昨年度はマイナス4.8%減っているわけです。この背景は財審で、オプジーボの問題、相当議論しました。あの議論が相当マスコミ等にも広がって、国民、有権者全体に納得感が広がった。これはおかしいなと。だから、これだけのカットができたのだと思います。
つまり、社会保障の問題は、本当に分かりやすく有権者の方にお伝えして、これはそうだなとならないと、なかなか実現しないなと思ったのが今回の感想です。
以上でございます。
〔 田近分科会長代理 〕 では、佐藤さん、よろしくお願いいたします。
〔 佐藤委員 〕 まず1つ、60ページにありますけれども、「都道府県のガバナンス強化」です。実際、参考資料にうまい図があるのですが、医療費適正化や地域医療構想など、医療提供体制に対する責任に加えて、国保が都道府県化しますので、財政面でも責任を持つようになる。ある意味、提供体制と財政を一元的に都道府県が責任を持つという体制になっている。その中で、今、高確法第14条で話題の診療報酬の改定も、ある程度都道府県が独自にやったらどうか。実際、それを試みている県もあるわけなので、このあたりがこれからキーになるのかなと思います。
まずは、医療費適正化や地域医療構想は、どちらかというと数量を減らすもの、平均在院日数や受診率など、数量を減らすという改革ですけれども、もう一つは、単価を減らすという改革が必要になる。これは、やはり診療報酬しかないのです。ですから、ある意味、診療報酬の都道府県ごとの取組は、側面支援してもいいのかなという気がします。
ただ、それをやるに当たっては、実は前提条件が2つあって、1つは繰入金。同じページに書いてありますが、法定内繰入金というものがあり、これが結構入っている。これは、結局、保険者のコスト意識を希薄化させている面がありまして、順次やめていくべきです。
法定外繰入金を結構多く入れているのは豊かな自治体です。決して貧しい自治体が、これ以上保険料を上げられなくなって、やむを得ず入れているのではなくて、実態は、もともと保険料の低い自治体が入れているのです。ですから、このあたりは、むしろ廃止の方向は、公平の観点からも妥当だと思います。
あとは、これも参考資料にあったのですが、財政調整交付金についてです。これも、今のところ医療費の実績ベースで配っているのが実態なので、事実上の損失補填というか、ソフトバジェット化しています。このあたり、繰入金のところと、財政調整交付金のところを包括化、あるいは廃止、縮減して、ハードバジェット化して、初めて受益、つまり診療報酬の部分と保険料がつながるのです。それと、都道府県としては、財政規律を考える上で、保険料を上げるか、診療報酬で対応するか、あるいは、他の医療費適正化計画に取り組むか。この辺に規律が働きやすくなるということになりますので、この周辺環境を整備していくということが必要かなと思いました。
あと、金融資産等を考慮に入れた負担を求める仕組みの医療保険への適用拡大についてですけれども、高齢者は年金所得が少ないので、金融資産をいかに考慮するかというのは、給付面だけではなくて、税制面でも重要なのです。
例えば、高齢者についても、原則3割にしておいて、金融資産の低い人は2割とか、そういった形でのやり方があっていいと思います。2018年度から、改正マイナンバー法で預金等に適用されますけれども、新しい預金口座であるということに加え、任意で選択制の制度です。だとすると、なかなか普及しにくいかなという気もするので、それであれば、減免を受けたければ、しっかり自分の口座の情報を伝えてくださいというやり方。だから、デフォルトは3割という形で、金融資産の情報を活用していくということはあっていいのかなと思います。これは、介護保険についても同様です。
以上です。
〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございました。
多くの意見をいただきましてありがとうございます。司会をしていて、これだけの大部の資料の説明でどうなるかと思いましたが、方向性のある議論をいただけたと思います。
1つ、1分程度で言わせてもらうと、私が非常に興味深いと思ったのは、角さんも、井堀さんも、多くの方がおっしゃられましたけれども、子ども・子育てに関して、新しいフレームワークが提案されているわけですよね。それは、消費税の使い方も改めるという議論をしているならば、消費税のもらい方も考え直す必要があるのかもしれない。角委員は軽減税率についておっしゃったし、井堀委員はPay as you goで、Pay from old to youngで、公的年金等控除も見直さなければいけないとおっしゃった。
その観点で言えば、社会保障のフレームワーク、子ども・子育て支援を充実するということは、政策的な目標としてシェアするとしても、支援を広げていくわけだから、それを調達する財源の面でも、新しい視点を入れないとバランスがとれない。その議論はあり得るし、重要だと思います。
その観点では、これもまた、社会保障だけで閉じて財源論をやるのはきついなということで、建議に向けて、様々な課題をいただいたので、ぜひその辺も配慮していただきたいと思います。
そういうことで、続けて話させていただくと、まず、神津委員よりご意見をいただいていますので、それはご参考になさってください。
それから、次回、文教・科学技術の話や、防衛、地方財政の話もして、これで、いわば各論については終わらせていただきます。したがって、以上の議論に基づいて、建議の準備に入ります。建議の起草委員として、これまでお願いしています小林毅委員、土居委員、冨田委員、中空委員、吉川委員の5名にお願いしたいと思います。よろしゅうございますか。
では、5名の皆様には、ご多忙のところ、ご多忙のところ大変恐縮ですが、よろしくお願い致します。
会議の内容については、いつものとおり私にお任せいただき、会議後の記者会見で、本日の大方の議論を説明させていただきたいと思います。
皆様方から報道関係者に対してお話しすることのないようにお願いします。
次回ですけれども、10月31日の14時から開催することとしております。よろしくお願いします。
本日は、どうもありがとうございました。
午後3時00分閉会