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財政制度分科会(平成29年10月4日開催)議事録

財政制度等審議会 財政制度分科会
議事録

平成29年10月4日
財政制度等審議会


財政制度等審議会 財政制度分科会 議事次第

平成29年10月4日(水)16:00〜18:00
第3特別会議室(本庁舎4階 中-412)

1.開会

2.議題

  • 有識者からのヒアリング
    「社会保障制度を将来世代に伝える」について
    − 清家篤 慶應義塾学事顧問
  • 社会保障についてマル1
  • 識者からのヒアリング
    「Society5.0(知識集約型社会)への社会変革と大学の役割」について        
    − 五神真 東京大学総長

3.閉会

出席者

分科会長

榊原定征

岡本主計局長

茶谷次長

大鹿次長

神田次長

青木総務課長

奥法規課長

若原給与共済課長

関口調査課長

竹田官房参事官

江島主計官

安出主計官

湯下主計官

小宮主計官

高橋主計官

中島主計官

阿久澤主計官

岩佐主計官

前田主計官

中山主計官

内野主計官

北尾主計企画官

分科会長代理

田近栄治

赤井伸郎

黒川行治

佐藤主光

角 和夫

武田洋子

土居丈朗

中空麻奈

臨時委員

伊藤一郎

井堀利宏

老川祥一

葛西敬之

加藤久和

小林 毅

進藤孝生

末澤豪謙

田中弥生

冨田俊基

~子田章博

宮武 剛

五神真・東京大学総長
清家篤・慶應義塾学事顧問


午後4時00分開会

〔 田近分科会長代理 〕 本日は、冒頭でカメラが入りますので、そのままお待ちください。

(報道カメラ 入室)

〔 田近分科会長代理 〕 ただいまから財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。皆様にはご多用中のところ、ご出席いただきましてありがとうございます。

本日は講師として、慶應義塾大学の塾長をされて、現在学事顧問をされている清家篤先生、それから、東京大学の総長をなさっています、五神真先生のお二人にいらしていただいて、それぞれ社会保障、社会変革と大学の役割についてお話をいただきたいと思っています。

本日はまず、清家先生からお話を伺います。その後、社会保障の総論についてご審議いただきたいと考えております。その後に、五神総長からお話を伺う予定としております。

それでは、報道関係者の皆様方はご退出お願いいたします。

(報道カメラ 退室)

〔 田近分科会長代理 〕 それでは、議題に入らせていただきます。

最初は、清家先生より、「社会保障制度を将来世代に伝える」をテーマに、ご説明をお願いします。

〔 清家学事顧問 〕 ありがとうございます。ご紹介いただきました、清家でございます。本日は社会保障制度を将来に伝えるということで、社会保障制度のこれからのあり方についてお話をしたいと思います。

まず、最初に背景について説明いたします。もうこれは皆さんに言うまでもありませんが、日本は今、世界に類を見ない高齢化をしているわけです。レジュメの図表1によく使われるデータがございます。日本の65歳以上の高齢者人口比率が、直近の統計ですと既に27.5%に達しておりまして、世界のどのような国よりも高齢者人口比率は高くなっております。これは途中経過でございまして、もうすぐこれが人口の3分の1になり、2060年程には人口の5分の2が65歳以上の高齢者になるということでございます。また、折れ線グラフの角度からもわかりますように、日本の高齢化はスピードが非常に速いわけでございます。フランスなどと比べると4倍程度のスピードで高齢化が進んでおります。

もう一つ、図表1の左上に囲みで示してございますが、社会保障制度の問題を考える際に大切なのが、高齢者の中でも、とりわけ高齢の人口の比率が増えるということです。棒グラフは何を示しているのかというと、65歳以上の高齢者の中で、65から74までの比較的若い高齢者を1としたときに、75歳以上のより高齢の高齢者の比率がどういった値になるかということでございます。現在、ちょうどこれは1対1程度ですが、これが2025年には、概ね1対1.5になります。ご承知のとおり、2025年になりますと団塊の世代の人たちが全て75歳以上になるということで、75歳以上の人口比率が急速に高まってまいります。ちなみに、超長期の推計ですが、2060年にはこの比率が概ね1対2になります。

もちろんこれから生活習慣病の克服などによって健康寿命が延びていくことが期待されておりますが、少なくとも、今までの経験値で申しますと、75歳を越えると有病率、あるいは要介護率が統計的に有意に高まることが知られておりますので、特に75歳以上の人口の比率が高くなるということは、社会保障の問題を考える際に大切な数値になっております。

今、合計特殊出生率が少し回復して、1.45程度でございますが、人口置きかえに必要とされる出生率である2.07を大きく下回っておりますので、人口が減り始めております。人口が減るということは、人口を源泉とする労働力人口も減っていくということになります。図表の2を見ていただきたいと思います。これは厚生労働省の雇用政策研究会の推計でございますけれども、現在、約6,600万人いる労働力人口が、このまま何もしなければ、今から約13年後の2030年に、5,800万人にまで減ります。約800万人労働力人口が減るということです。

生産量、GDPというのは、労働力人口×1人当たり労働時間×時間当たりの付加価値生産性、この3つの変数の積です。労働時間はもちろんこれ以上は増やせず、むしろ減らしていかなければいけないということで、よほど時間当たりの付加価値生産性が高まらない限り、労働力人口が減るということは、すなわちマクロ経済のサプライサイド、生産面で成長を大きく制約するということになります。

一方、消費の面においても、労働者というのは年金生活者に比べれば、年金の代替率の逆数で見ればいいわけですけれども、ずっと高い所得を稼得しているわけですから、労働力人口が減るということは、その分消費が減退するという意味で、マクロ経済のディマンドサイドにおいても成長を制約することになります。

そして何よりも社会保障の持続可能性に大きくクエスチョンマークがともってきます。基本的には労働力人口が社会保険料、あるいは税の大宗を負担して社会保障制度を支えているわけですから、社会保障制度を支える労働力人口の減少というのは、まさに社会保障制度のサステナビリティーに疑問符をともすことになります。

ただし、人口が減るとしても、直ちに労働力人口が減るわけではありません。これも定義式になりますが、労働力人口というのは、人口×労働力率ですから、たとえ人口が減ったとしても、この場合には15歳以上人口ですが、労働力率を高めることができれば、労働力人口を維持、ないし、その減少幅を小さくすることができます。

そのシナリオが図表2の下の部分に書いてございます。労働力人口を高める余地があるのは、2つの人口グループということになります。20歳台後半から50歳台後半までの男性壮年層の労働力率はすでに限りなく100%に近いので、この人口グループは労働力人口を上げる余地がありません。労働力人口を上げる余地があるのは女性と高齢者ということになります。この図を見ていただくとわかりますが、例えば、女性の場合、30代の労働力率が今、約7割となっているわけですが、これを2030年に約85%まで、年率にしますと毎年1%ポイント程度ずつ引き上げることができれば、あるいは、高齢者、男性でも60歳を超えると労働力率が80%を下回るわけですが、現在、男性の60から64歳の労働力率が約78%ですが、これを90%に近づける、さらに65歳以上、65から69歳の労働力率、男性の場合で今、5割を少し超えたところですけれども、これを7割近くまで引き上げることができれば、図表2にありますように、2030年の労働力人口を約6,400万人のレベルに維持することができる。このレベルに維持することができれば、生産性を向上させることによって、少なくともサプライサイドの生産制約は克服できるかもしれないということでございます。

ちなみに、労働力人口というのは統計的に正確な定義のある、意味のある言葉ですが、労働力人口と似たような言葉でしばしば生産年齢人口という言葉を使うことがあります。これは政府の報告書などにも出てきます。15歳から64歳までの人口を生産年齢人口といって、これが減るからこれから困ったことになるといったような議論がされるのですが、私は生産年齢人口という言葉は非常にミスリーディングな、使うことをやめたほうがいい用語だと思っています。

理由は2つあります。1つは、15歳から64歳までが生産年齢人口で、それ以外の人口は従属人口だということになりますと、世の中は15歳から64歳の人たちが支えているのだというマインドセットが人々の頭にすり込まれてしまいます。ところが、今、労働力人口6,600万人の内訳を見ますと、65歳以上の労働力人口が786万人もいます。つまり労働力人口の1割以上は65歳以上です。さらに、もう少し言いますと、15歳から24歳の、生産年齢人口と言われている人たちの比較的若いところの労働力人口は539万人です。つまり生産年齢人口の若いところよりも生産年齢人口の外側にいる65歳以上の人のほうが、今や1.5倍近く日本の生産活動を支えているということになります。

もう一つ言いますと、これはこの後、五神先生がお話しになることとも関連しますけれども、そもそも15歳から19歳の人たちはほとんど学校に行っておりますので、労働力率は2割以下です。したがって、ここをいわゆる日本の経済社会を生産面で支える人口と捉えるのも間違っているということになります。その意味で、これは余談になりますけれども、生産年齢人口という考え方自体をやめるべきだと私は思います。

その上で、では、高齢者や女性の労働力率を高める、就労を促進するために、どのように制度を変えていく必要があるのか。1つは公的年金制度、例えば、高齢者の就労をさらに促進するためには、年金の受給資格を得た後に働き続けて収入が多くなると、その分、年金の給付額が減らされる、つまり長く働くことによって年金制度が見方によってはペナルティーを科していることになる現在の在職老齢年金制度などは見直す必要がさらにあると思います。以前に比べれば随分改善されましたけれども、さらに見直す必要がある。

あるいは、逆に今、年金をもらわずに繰り下げで受給するようになると、例えば65歳からもらえるはずだった年金を70歳からもらうことになると、年金の給付額は約42%繰り下げ受給によって増額されますが、このようなことをもっと周知して、年金制度上、長く働くことが有利なのだということを人々によく知ってもらうことも必要だと思いますし、できれば、今、繰り下げによる給付増というのは70歳までですけれども、70歳以上まで働き続けても、さらに年金の給付額が増えるようにすることも大切だと思います。

一方、年金制度の面で女性の就労を妨げる、あるいは、女性の就労を抑制しているのが、特に被用者の年金、厚生年金の加入資格に労働時間等の条件が課せられているということです。要するに、短く働いた人、労働時間が短いパートなどで働いた人は厚生年金の適用外になる。これは特に年金の保険料を負担している雇い主にとってはとてもありがたい制度ですので、労働時間によって適用対象を絞るという年金制度自体によって、雇い主に対してパートで雇うほうがお得ですよと言っているということになります。私はどのような雇い方、働き方があってもよいと思いますが、年金のような公的制度が一定の働き方を促すというのは、特にさらに女性のフルタイムの就労を増やすということが必要だと考えられる場合には、望ましくないと思います。

皆様方のご担当の税制についても、もちろん改善していただきたいところがございます。例えば、老齢年金給付に対する課税のあり方であります。ご承知のとおり、これは釈迦に説法ですけれども、公的老齢年金は雑所得扱いになり、なおかつ公的年金等控除によって、給与所得に対して税制上相当優遇されております。子育て世代の若い人が働いて得た給与所得に比べて、所得税法上、これだけ優遇されるというのは正当性がないだろうと思います。もう少し言いますと、高齢者になったときに、例えば同じ300万円稼ぐのに、働いて稼ぐのと年金で稼ぐのとどっちが税法上有利かというときに、税法が年金で引退して稼いだほうが有利ですというインセンティブをつける理由はないだろうと思います。

もう一つ、女性の就労については、ご承知のとおり、これも釈迦に説法ですが、配偶者控除という制度があって、専業主婦であったり、収入が一定額以下であると、配偶者控除を受けられるという形の制度がございます。もし日本の政府が、女性の就労を促進する、さらに子育てをサポートするというふうに言っているわけですが、それに一番整合的な税制改革は、おそらく配偶者控除をやめる、あるいは減らして、それを財源として年少扶養控除を復活する、あるいは増やす、また、子供子育て支援の財源にするということだろうと思います。そのような制度になっていないというのはいかがなものかと私は思っております。

もちろん雇用制度も変えていく必要があります。65歳までの雇用というものが標準化されつつありますけれども、定年については65歳までというのがまだまだ標準とはなっておりません。私は厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢が、2025年度に男性の場合は65歳となるわけですが、最終的にそこまでには定年の年齢を必ず65歳に接続すると、そのようなルールを雇用の側において確立すべきだと思います。最近、仄聞するところですと、公務員についてはそのようなことが進められようとしていると聞いておりますが、ぜひこれは週休2日制がそうだったように、65歳定年についても、公務員セクターが率先して模範を示していただきたいと思っております。もちろん定年を65歳まで伸ばす上では、年功的な賃金制度等の見直しというのも必要になりますので、これは労使が合意した上でやらなければ進まないわけですが、ぜひそのような方向で労使合意が進むことを期待しております。

ちなみに、年功賃金については、生活給という考え方があります。生活の必要に応じて賃金を決めるというのは当然なわけです。ただし、従来の非常に傾斜がきつい年功賃金というのは、いわば世帯主生活給という形の生活給であって、少し俗な言葉でいえば、例えば40代のお父さん1人が稼げば、家には専業主婦なりパートの奥さんがいて、子供が2人ぐらい大学に行くという設定を基としたものかと思います。しかし、もうそのような急カーブの生活給というのは、むしろ夫婦で働くことによって高い生活水準が達成できるというような形の生活給体系に、労使が努力して変えていく。逆にいえば、夫婦が働いて以前よりも高い生活水準が得られるような形になるように、労働時間のほうもそれに合わせて変えていく。そういう面では、賃金の改革と労働時間の改革は一体でなければいけないということだろうと思います。

社会保障制度については、皆様方に、釈迦に説法ですけれども、これから相当きつくなってまいります。団塊の世代が、先ほど言いましたように、全て75歳以上になってまいりますと、医療や介護の給付が大幅に伸びてくると思います。例えば、図表3を見ていただきたいのですが、認知症の患者さんは今は500万人程度ですけれども、これが約10年で700万人にまで増えていくことが予想されております。これに伴って医療、あるいは、介護の費用が急増してまいります。図表4は厚生労働省の推計ですけれども、社会保障給付費が、2012年度の値で約110兆円あります。直近の統計では2015年度で約115兆円でしたが、これが2025年度には約150兆円になる。先ほど言いましたように、2025年に医療需要、介護需要がこのあたりで急増するというのが最大の理由でございます。

この表からわかることは、さらに申しますと、年金、医療、介護の給付に比べて、いかに子供・子育て支援に対する給付が少ないかということです。その意味では今、進められようとしている、私も社会保障制度改革国民会議の会長として報告書の中にそのことを強調したわけですが、高齢者中心の社会保障から全世代型、特に若者世代への給付を充実した全世代型への社会保障給付への転換が必要だというのは、そのとおりだろうと思います。

同時に、この表からはっきりわかるのは、年金と医療・介護は全く別の問題だということです。年金はこれを見てもわかるように、増えるとしてもせいぜいリニアにしか増えません。さらに言えば、マクロ経済スライド制度等がきちんと機能するようになれば、実質ベースでいえば年金の問題はかなり解決に近づいているということかもしれない。問題は医療と介護がノンリニアに増えていくということです。これは2つ理由があって、1つはさっき言いましたように、高齢者の中でもより高齢の人が増えてくることと、もう一つは、これはこれでいいことですけれども、医療などは特に質が高くなってきますから、当然単価も高くなってくるということで、医療費の伸びが非常に高いということがあります。その意味では、ここのところを見直す必要があるということだろうと思います。

子供・子育て支援については、これを増やすためには恒久財源が必要です。よって年金、医療、介護と違って、社会保険制度にカバーされていない子供・子育て支援については、消費税等、何らかの税財源で充実していくことが必要だろうと思います。特にゼロから2歳の保育サービスというのは大幅に不足していますので、待機児童ゼロを目指すためにも0−2歳層の保育サービスを充実していくことが大切だろうと思います。

同時に、医療・介護の提供体制の重点化・効率化ということが大切でございます。高齢者が増えていく中で、日本では既に人口当たりの病床数、ベッド数というのは国際的に見ても最も高い水準になっておりますので、これ以上ベッドを増やすことはできません。ということは、高齢者が増えていく中で、ベッドを増やさないで何もしないと、どんどんベッドが高齢者によって埋められてしまい、本当に必要な入院患者にベッドが回らないということも起きかねないわけであります。その意味では、本当に必要な場合はいいわけですけれども、高齢者をできるだけ病院のベッドから地域の介護施設や在宅に移していくという、いわゆる地域包括ケアというものを、決してかけ声だけではなくて、本当に実現しない限り、日本の医療・介護提供体制は維持できないだろうと思っております。

時間の関係で簡単に申し上げますが、その際に、今進んでいる第4次産業革命の中での様々な新しい技術だとか生命科学の進歩などを使って、この問題を解決していくことも必要かと思います。いずれにしても、大切なことは、どこにも打ち出の小槌はないということなので、社会保障制度を考える際には、負担と給付を一体のパッケージとして考える。その中でどこに均衡点を見つけるか、最終的には、国民の選択になるということだろうと思います。

あと少し、福澤諭吉の言ったことを紹介しようと思います。福澤諭吉は、学者は国の奴雁であれということを言っております。奴雁というのは雁の群れが一心に餌をついばんでいるときに、1羽首を高く上げて周囲の危険を察知する、そういう役割をする雁を奴雁というと。学者もそのような役割を果たさなければいけない。福沢は学者と言っていますが、これはおよそ知性のある者はと私は解釈しておりますが、つまり世の中の人たちが目先のことに汲々としているときに、1人歴史を顧み、現状を冷静に分析してもって、将来にとって何がよいかということを考える者でなければいけない。これはまさに社会保障制度を考える際の基本的な視点だろうと思っています。

そして、経済の問題、社会保障もそうですけれども、必ずトレードオフがあるわけです。コストとベネフィット、あるいは、あちらを立てればこちらが立たず、そのどこに均衡点を見つけるか、これを福澤は公智と言っているわけです。つまり、単に勉強ができるというだけではいけないので、勉強の成果を駆使して、その時々の状況の中で相対的に大切なものは何かというものを大切にする。その公の智を身につけなければいけないと言っているわけですが、ぜひというか、皆様方はそういったお役割かと思いますので、奴雁の視点で公智を発揮していただきたいなと思って、私の拙い話を締めさせていただきます。どうもありがとうございました。

〔 田近分科会長代理 〕 どうもありがとうございました。社会保障制度を将来世代に伝えるということで、特に働き方と制度の関係について、具体的なお話も伺えたと思います。

ここからは自由討議ということで、いつものとおり、ご遠慮なく質問等してください。質問がある人はネームプレートを縦にして発言の旨をお知らせください。それでは、角委員、お願いいたします。

〔 角委員 〕 どうもありがとうございました。企業の定年延長の過去の歴史を見ますと、やはり公的年金の支給開始年齢が後ろへ遅らされると、それに応じて企業としては、横を見なくても全員が定年延長をしていくという歴史があるわけです。ですから、私は生産年齢人口という言葉がどうかは別にして、とにかくこれだけ寿命が延びているわけですから、ほとんどの健康な人は70歳まで働く。生産年齢人口という言葉を仮に使うにしても、それはもう70歳までである。ですから65歳定年にして、再雇用制度にするかどうかは別にして、定年延長的な5年間を義務づけて、公的年金は70歳からですよとすればよいと思います。

ただ、もう既に決まってしまっている部分があるので、これを今からはなかなかやりにくいとは思いますが、もちろん2025年度の社会保障給付費の約150兆のうちの年金の伸び率は比較的低いとはいうものの、早く70歳まで働く世の中に変えていかないといけない。まず、70歳まで健康な人は全員働くのだと。その中で健康寿命をいかに伸ばしていくかということと合わせて、企業は努力していくべきではないかと思いますので、どのようにして制度設計をしていけばいいのか、よろしくお願いします。

〔 清家学事顧問 〕 おっしゃるとおりだと思います。

2点ありますが、おっしゃった後のほうから言いますと、年金は問題がないといったら言い過ぎだったかもしれませんが、要するに、年金制度は少なくとも公的年金に限って見れば、保険制度の中でも問題は解決できるわけです。つまり保険料の上限を決めて、後は高齢化の程度に合わせて給付の実質水準をマクロ経済スライドによって調整する。私は年金が所得代替率50%を確保するという意味で支給開始年齢をもっと引き上げてもいいとは思いますが、その意味では医療や介護に比べると年金の問題というのは軽い。

もう少し言いますと、私はしたがって社会保険制度の中で解決できる年金の問題になけなしの税財源はもうあまり投入しないほうがいいと思います。つまり基礎年金の国庫負担2分の1まではいいですけれども、それ以外のところにはもう税財源は、他の分野で足りないわけですから、そんなに投入する必要はない。

その上で、おっしゃるとおり、年金の支給開始年齢に合わせて引退の年齢というものが決まってきましたので、今のところは50%の所得代替率が確保できるという意味での受給開始年齢は65歳ですけれども、その年齢自体を引き上げる、これは結局、生涯年金をカットしていくことにもなるわけですけれども、そのような考え方はあってよろしいと思います。

特に65歳でいいかといいますと、これも釈迦に説法ですけれども、65歳の人の平均余命はもう既に男性20年、女性24年ですので、65歳から年金をもらうということになると、男女とも20年間年金をもらうことになります。そうすると、それまで、これから進学率も高くなってきますので、20代前半から65歳ぐらいまで、ほぼ40年働いて20年年金をもらうということになると、現役期間2に対して、年金をもらう期間が1になりますので、このバランスがいかがなものかということになると思います。もう少し言えば、働き始めるまで20年間あるわけですから、要するに、80年の人生の中で半分は社会を支えていると。半分はもちろん年金ですので、賦課方式の年金は若い世代に支えられているという面もあります。

そうすると、このバランスは少しきついので、今おっしゃったように70歳程度までは社会を支えるという仕組みにしていく必要がある。ただ、これは個々の企業が労使で決める問題ですので、70歳まで働けるようにするためには、賃金制度等の見直しも当然必要になってきますから、一朝一夕にはいかないと思いますが、ぜひそれは進めていただきたい。

そこで先ほど言いましたけれども、少なくとも65歳まで定年を延長するというためには、年金制度もそうですけれども、私は公務員セクターなどが週休2日制のときと同じように、率先して模範を示すべきではないかなと思っております。

〔 角委員 〕 もし公的年金の体制はもう70歳ということになれば、全企業がよそを見ないで定年を伸ばすではないですか。でも、それは今だと2025年以降にしか計画すらできないですから、残念だなと思います。今決まってしまったことを今さら変えられるのかわかりませんが、何かの工夫で、とにかく70歳まで働くような時代にならないかと思います。

〔 清家学事顧問 〕 さきほど申しましたけれども、今でも70歳まで働けば年金給付は42%増えます。そういった制度を結構知らない人もいるし、もう少し周知する、もちろんそれは個人のほうのインセンティブで、企業のほうにどういうインセンティブを与えるかというのはあると思いますが、まずは長く働くことをもっと奨励する。私も年金の支給開始年齢に関しては、個人的には、研究者としては70歳程度まで引き上げていいとは思いますが、なかなかそこはそんな簡単にはいかないだろうとは思います。

〔 田近分科会長代理 〕 それでは、中空さんと井堀さんに発言いただいて、まとめてお答えいただくといたしたいと思います。

〔 中空委員 〕 ありがとうございます。2つ質問させてください。

1点目が、角委員がお聞きしたのとほぼ一緒なので、ヒントはたくさんいただきましたが、私もマクロ経済スライドだけでいいのかと思っていて、年金の実額が大きいことそのものについては少し見たほうがいいのではないかと思います。社会保障給付費におけるシェアや、あるいはリニアで伸びないということだけで年金の実額の大きさは見なくていいのかということについては、疑問を持っていますというのが1点目です。

2点目に関しては、先ほど労働力人口のところで2つの層、男性の層と女性の層、あえていうと、女性の高年齢の層もあるのかもしれませんが、それ以外に、例えば、先生は移民が入ることというのは中に入れておられるのかどうか、そこを教えてください。

〔 田近分科会長代理 〕 続けて、井堀さん、お願いします。

〔 井堀委員 〕 非常に有益なお話をどうもありがとうございました。労働力人口の話ですけれども、本日のお話ですと、確かに60代の男性、あるいは30代の女性の労働力率が上がると、それで全体の労働力人口が増えて、日本経済にとってプラスだという考え方でした。ただ、問題は60代後半になってきますと、私も含め、生産性が維持できるのかどうかということです。だから高齢者の方が、若い方と同じようにきちんと生産性に貢献できるのかと、それは確かに高齢者の場合は、人によってかなりばらつきがあると思いますから、そこは年功序列じゃなくて、その人の貢献度を考慮した賃金体系などの制度設計も重要ではないかと思うのです。

だから、例えば、年金を70歳まで上げるという話と、定年制を70歳まで上げるという話をリンクさせてしまうと、60代後半の方の貢献度がばらついているときに、うまくやっていけるのかと、それも含めて、要するに、60代後半の方も労働の生産性に関して、何かミクロ的にデータでもあれば教えていただきたいと思います。お願いします。

〔 清家学事顧問 〕 ありがとうございます。井堀さんも、そういえば、年金というのは、予想外の長寿のリスクに対する保険なので、平均寿命まで支給開始年齢は引き上げればいいのだとおっしゃっておりましたね。

〔 井堀委員 〕 そうですね。

〔 清家学事顧問 〕 井堀さんの質問からお答えしますが、OECDがアダルトコンピテンシーというものを発表しています。残念ながら日本の中学生とか大学生の能力はOECDの中でトップではありませんけれども、なぜか成人、アダルトは世界で、OECD諸国の中でトップなのです。そういった面で、それが何を意味しているかというと、この後の五神先生の話にも係るかもしれませんけれども、要するに、日本の企業内で人を教育訓練する力の高さをサジェストしていると私は思います。ですから高齢になっても能力が維持できるかどうかは、私は企業の中で人を再訓練したり、あるいは、仕事を通じて能力を高めたり、維持したりする力がどのぐらい維持されるかどうかに確かに依存していると思います。

もう一つは、これはもう井堀さんは経済学者、エコノミストで、釈迦に説法ですけれども、生産性が下がった人がコストになるかどうかというのは賃金との見合いですので、賃金体系をどのように調整していくかというのが、もう一つのポイントになるだろうと思います。

中空さん、ありがとうございます。マクロ経済スライドだけで大丈夫なのか、それは確かにそうだと思いますが、これは先ほど年金課税の話をしましたけれども、必ずしも給付そのものを削らなくても、年金課税等を通じて実態として財源を調達することはできると思います。おそらく、実質ベースではなくて、名目ベースで年金を減らすということになると、実態としてかなり難しいのではないかなと思います。

私は、これも政治学者ではないので印象ですけれども、2004年の年金制度の改正というのは、ほんとうに奇跡的にできたと思うのです。つまり毎年毎年、保険料率を自動的に引き上げ、しかも実質とはいえ、給付を下げるという改革が国会でとおり、保険料が18.3%まで自動的に上がることになったわけです。だから、これはやはり相当すごい改革だったと思います。その中でマクロ経済スライドとはいえ、実質だけとはいえ、給付が抑制される、つまり日本の年金市場、これは世界の年金市場もそうだと思いますけども、給付を下げるとか、あるいは、保険料率を自動的に上げるということについて合意形成を得られるということはそれほど多くないので、私はこれはとても大切にすべきだと思っています。

ただ、おっしゃるとおり、実質額でしか抑制できないのはいかがなものかという点については、年金課税等、その辺で調整できるのではないかと思います。

それから、移民については、私は移民は必要だと思います。特に、今の日本のビザポリシーでいえば、これもあまり知られていませんけれども、日本はスキルドレイバーについては、おそらく国際的に見ても相当ジェネラスなビザポリシーだと思います。BAを持っていればプロフェッショナルとして認めるという感じですから、そこの問題はむしろ有能な外国人が日本に来てくれるかどうかだと思います。問題はアンスキルドのところですよね。そこは私は日本の社会を分断しないためにも、アンスキルドの労働者をもう入れなければいけないと思いますけれども、入れるときに徹頭徹尾、労働基準や社会保障の適用などの制度をイコールにする。そこが最低限必要なところだと思います。賃金については様々あるかもしれませんけれども、もちろん最低賃金はクリアしなければいけない。この間、スウェーデンの労働大臣とお話ししましたが、スウェーデンは移民の導入についても、労働組合もとても好意的だということでした。それはなぜかというと、要するに、今言ったような条件が満たされているからだということです。ですから、移民を入れるときに、あるいは、外国人労働者を入れるときに、雇い主が移民とか外国人は単に賃金が安いから、制度的に安くつくから入れるという条件だけは発生させてはいけない。そこのところをきちんとクリアした上で、私は移民とか外国人労働力を受け入れる必要があると思います。

さきほど言いましたけれども、韓国とか台湾は日本以上に少子化が進んでいますから、中国もそのうちそうなるとすれば、実は東アジアの3国、中国が参入すればより激しくなるのですが、おそらく外国人労働者の奪い合いになりますよね。そのときに本当に日本に外国人労働者がきちんと来てくれるかどうか、そういうことも中長期的には考えなければいけないのかなと思います。

まずは、例えば、介護の労働力なども相当よくなりましたけれども、なかなか入りにくいバリアがあるわけで、そういったものをもっと低くしていくということを通じて、一方で、イコールフッティングといいますか、少なくとも公的な制度の適用は、これは当たり前ですけれども、内外、無差別化していく。特に社会保障制度も含めて無差別化していくと。これは女性のパートなどもそうですよね。先ほど厚生年金の適用のことを言いましたけれども、国の制度がこのような雇い方をすると得ですよとなっているのはよろしくないので、そういったところも含めて、平等にしていく。その上で、外国人、あるいは移民の受け入れを進めていくことが必要だとは思います。

ただし、どんな国でも無条件に、例えばスウェーデンなどもそうですけれども、外国人や移民を受け入れているわけではなくて、それは当然ですけど、一定のルール等を決めてやっている。それはそのときの政策判断になるかと思いますが、ただし、私は今の人口構造の変化を見れば、日本の経済社会をサステーナブルな形にしていくためには、当然移民はなければならないだろうなと思っております。ありがとうございました。

〔 田近分科会長代理 〕 感想のようなことを申し上げさせていただくと、本日、お話を伺っていて、私も興味深かったのは、メインの話は日本の労働力率をどう上げていくかという話で、よく考えてみると、制度的にやっていないことがたくさんあるではないかということでした。具体的な制度としては、在職老齢年金制度の問題もある。それから、雇用主にとっては社会保険料を考えるとパートとして雇ったほうが得だという制度。それから、公的年金等控除については、いうまでもありません。そして、配偶者控除については、清家さんがおっしゃったのは、配偶者控除で失っている税金、あるいは配偶者控除をやめて、そこで上がってくる収入を子育て等に使えばいいのではないかということでした。2004年の年金改革はそれなりの改革であったことは、私もそう思いますけれども、高齢化を目前にして、労働力率を上げていこうというときに、自分たちの制度で見直すべきことはたくさんあるのではないかと。そこで上がってきた収入は子育て等の財源として有効に活用できるというところで、財政制度を考える上では、私は非常に参考になるご意見を承ったなと思います。

医療、介護の重点化、効率化は当然必要ですけれども、それにより捻出された財源の大宗は、医療、介護の伸びにフィードバックせざるを得ないので、ここから他の分野の財源を出すのは難しいだろうなと思います。今後、財源について考えていく上で、具体的な制度改革を進めて、そこでどのくらい財源が捻出されるのか。そこは私は大切なご指摘をいただいたと思います。ありがとうございました。

〔 清家学事顧問 〕 どうもありがとうございました。

〔 田近分科会長代理 〕 清家先生はここで、所用のために退室されます。大変貴重なご議論をいただき、ありがとうございました。

〔 清家学事顧問 〕 どうもありがとうございました。

(清家学事顧問 退室)

〔 田近分科会長代理 〕 続いて、社会保障の総論について審議を行います。

診療報酬等の各論については、また機会を改めて議論をする予定です。阿久澤主計官より説明をいただきます。阿久澤主計官、よろしくお願いします。

〔 阿久澤主計官 〕 厚生労働第一担当主計官の阿久澤でございます。よろしくお願いいたします。

それでは、社会保障につきましては、2回に分けてご議論をいただくことにしておりますが、本日は社会保障の総論についてご議論いただきたいと思います。各分野の個別の改革項目等につきましては、2回目でご説明させていただきます。

それでは、資料2をご覧いただきたいと思います。資料2をご覧いただくと、例えばですけれども、5ページでは高齢化の進展等によりまして、社会保障給付費が一貫して増加し続けていること、また、6ページ、7ページにわたりまして、給付を賄う保険料や税負担といった国民負担も増加の一途をたどっていること。特に7ページになりますけれども、社会保障に支出されている公費の部分で、それに見合う税負担をいただけておらず、将来世代への負担のつけ回しが生じてしまっていること。また、8ページでは、今後、2025年に向けて団塊の世代が75歳を超えるようになってくること。

それを受けまして、12ページから15ページにかけまして、今後、医療費や介護費が大きく増大をしていくことが見込まれること。また、こうしたことから16ページにありますが、社会保障給付と負担のバランスを見ると、我が国は既に給付に見合った負担をいただけていないといったアンバランスな状態にあり、かつこのまま給付の見直しなどの改革を行わなければ、さらにアンバランスが拡大をしていくことが見込まれること。このため、社会保障制度の持続可能性を確保する観点から社会保障の抑制のための種々の改革と合わせ、18ページから23ページに示しておりますけれども、社会保障と税の一体改革に取り組んできていることといった資料を添付させていただいております。これらにつきましては、春の財審でもおおむね同様の資料でご説明させていただきましたので、この場では具体的なご説明は割愛させていただきまして、皆様のご議論の際に、適宜参照していただければと思います。

それでは、24ページをお開きいただきたいと思います。これが経済・財政再生計画で示された歳出改革の目安についてであります。経済・財政再生計画におきましては、真ん中の四角の2つ目の丸にございますけれども、社会保障関係費の増加につきまして、2016年度から2018年度までの3カ年で1.5兆円程度に収めることが目安とされております。なお、経済・財政再生計画におきましては、3つ目の丸にございますけれども、2020年度に向けましても、消費税引き上げとあわせて行う充実などを除きまして、社会保障関係費の伸びを高齢化による増加分に相当する水準に収めることを目指すとされております。2019年度以降も伸びを抑制すべく、引き続き社会保障制度改革に取り組んでいく必要があると、こういうことでございます。

それでは、続きまして、27ページについてですけれども、これは我が国の医療・介護制度の特徴と問題点、そして、それを踏まえた上での改革の視点をまとめたものでありまして、また、28ページが改革の視点ごとに改革工程表の主な項目をまとめたものでございます。これらの資料につきましても、春の財審でご説明させていただきましたので、本日の説明は割愛させていただきます。

その上で、29ページをお開きいただきたいと思います。29ページの資料で、30年度の社会保障予算をめぐる状況や課題につきましてご説明をさせていただきます。先ほどご説明させていただきましたように、経済・財政再生計画の集中改革期間であります平成28年度から30年度までの3カ年で、社会保障関係費の伸びを1.5兆円程度に収めることが目安とされております。

28年度予算におきましては、薬価改定等によって、また、29年度予算におきましては、高額療養費の見直しをはじめとした、様々な改革を積み上げることによりまして、それぞれ社会保障関係費の伸びを実質的に5,000億円に収めてきたところでございます。集中改革期間の最後の年であります30年度予算におきましても、自然増は6,300億円と見込まれる中、5,000億円に収めていくことが求められるわけであります。ただし、30年度予算におきましては、それだけではなくて、図の赤い字で書いてあります、保育の受け皿拡大のための財源確保という課題もございまして、このための追加的な歳出削減も行っていく必要があるということでございます。

この点について、解説をさせていただきますと、30ページにございますが、政府といたしましては、これまでも待機児童解消のため、保育の受け皿拡大に努めてきているわけでございますが、女性の就業率の上昇に伴って保育利用率も増加をし続けております。いまだ待機児童の解消には至っていないということでございます。このため、本年6月に、新たに「子育て安心プラン」が発表されました。「子育て安心プラン」では、30年度から2年間から3年間で約22万人分の保育の受け皿の拡大をするとともに、その後も、さらに2年間で約10万人分の拡大を行うこととされております。

ただし、先日の総理記者会見におきまして、このプランをさらに前倒しをし、3年間で32万人分の受け皿拡大を行うとされたところでございます。保育の受け皿を拡大した場合、その分、運営費が増加することになります。30年度にどの程度の受け皿拡大が見込まれるかにつきましては、今後の市町村における整備状況も踏まえながら、精査をしていくことになりますけれども、仮に32万人分の約3分の1、10万人分の拡大を30年度に行うとすれば、国費で500億円程度の増加要因になります。ちなみに、この増加分は6,300億円の自然増には含まれておりません。

29ページに戻っていただきますと、すなわち、30年度の予算で、社会保障関係費を5,000億の伸びに収めるためには、自然増の6,300億円から1,300億円削減するということだけではなくて、さらに保育の受け皿拡大の財源確保のための500億円程度の追加的な削減も必要となってくるということでございます。このために、赤い枠にありますが、診療報酬や薬価改定、薬価の抜本改革、また介護・障害報酬改定、生活保護制度等の見直しに取り組むこととしておりまして、また、それに加えて、子ども・子育て分野におきましても、春の財審でもお示ししたような児童手当の特例給付の見直しや、企業主導型保育の拡充などに取り組んでいく必要があると考えております。こうした各分野におけるさまざまな改革努力を積み重ねることによって、1,300プラス500億円の歳出削減を実現していくことが30年度社会保障予算編成の主な構図であります。

30年度の各分野における具体的な改革の議論は2回目の会でご議論いただければと思いますけれども、本日はさわりだけ幾つかピックアップして紹介させていただきます。まずは、32ページであります。診療報酬・介護報酬の同時改定についてでございます。診療報酬と介護報酬が同時改定となるのは6年に1回でございます。医療、介護の分野横断的な課題につきまして、一体的な対応を図ることができる絶好の機会ということであります。特に医療ニーズの変化も踏まえた効率的な医療提供体制を目指す地域医療構想との関係が重要であると考えております。30年度の同時改定では、地域医療構想の実現への動きが加速するような改定内容とする必要があると考えております。予算編成との関係では、改定率をどうするか、これが当然重要になってくるわけでございますが、それだけではなく将来の効率的な医療提供体制の実現に向けた改定内容としていくことも極めて重要でありまして、こうした点にもしっかり取り組んでいきたいと考えております。

また、薬価制度の抜本改革につきましても、極めて重要な課題になってまいります。34ページにありますが、昨年末に取りまとめられました「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」に沿って、十分な国民負担の軽減につながるようなしっかりとした改革にしていく必要があると考えております。

最後に、36ページでございますが、生活保護制度の見直しについてでございます。30年度は5年に1回の生活扶助基準の見直しの年でもあります。今回の見直しでは、そのほかにも、例えば頻回受診対策や後発医薬品の使用促進などの医療扶助の適正化、また就労の促進を通じた保護脱却の促進などにも取り組んでいくつもりであります。

以上が今年度の社会保障予算編成の主な課題ということでございます。私からの説明は以上でございます。

〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございました。

社会保障の総論、そして次回以降の論点の紹介をいただきました。ご質問のある方は、お願いします。加藤さん、それから武田さん、田中さん、土居さんの順で行きます。

〔 加藤委員 〕 どうもご説明ありがとうございました。総論の中身というよりも、気になっていることが2点ほどあるのでお伺いしたいのですが、消費税の2%の増収分について、よく借金の返済に充てるという言い方をされているところがあります。実際に私の理解しているところでは、借金の返済ではなくて将来世代の負担を減らすという意味合いだと思うのですが、そこら辺をはっきりさせなければならないのかなというのが1点目。

もう一つは、例えば、今後、教育の問題等が出てくるのだろうと思うのですが、特に最近新聞等では幼児教育の無償化については、これは社会保障として考えられるのではないかという論調を見たことがございます。社会保障制度を考えていくときに、そういった論調を広めていくこと、今、ご説明がありましたように、子育て支援の中で毎年500億円が必要になってくるという話が出てきますし、そういった形で考えていくと、これは全世代型というのは大事だと思いますが、どこまで広げていく必要があるのか、その点についてしっかり考えていかなくてはならないのではないだろうかと思います。

以上であります。

〔 田近分科会長代理 〕 それでは武田さんと田中さんと土居さんとご意見をいただきたいと思います。

〔 武田委員 〕 ご説明いただきどうもありがとうございます。意見を2点述べさせていただきたいと思います。1点目でございますが、32ページに団塊世代が全て後期高齢者となる2025年に向けて、効率的な医療・介護提供体制の構築を目指す必要とございます。実は、前回の建議、前々回でも申し上げてきているのですけれども、私自身は2022年に改革が終わっていないとなかなか難しいのではないかという問題意識を強くもっております。なぜなら、こちらの図にも示されておりますとおり、2022年には団塊世代が後期高齢者に入り始めるということでございます。また、先ほどの清家先生の資料にも社会的合意形成の必要性というお話がございましたが、同じ世代の中で、制度を変えることはできないことを考えますと、現実的に改革を進めるためには、また、財政の健全化という観点からも、2022年までに改革を終えていることが必要ではないかと思います。

2点目は、そこに向けての取組ということになりますが、2018年の中間評価に向けて、44項目の改革をぜひしっかり行っていくということを改めてお願いしたいと思います。特に負担能力に応じた公平な給付の適正化が進みませんと、全世代型の社会保障を目指す中で、全体が膨張していくのではないかということを危惧いたします。

私からは以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございました。それでは田中さん、よろしくお願いいたします。

〔 田中委員 〕 ありがとうございます。私はやや各論になるのですけれども、先ほど生活保護に関して、頻回受診の例が挙がっていましたけれども、これは医療と生活保護にまたがる話ではありますが、これは生活保護を受けている者だけではなく、病院側の経営の判断が働いて頻回受診ということが生じていると思います。

今までももろもろ議論してきましたけれども、これは病院、クリニック総体の構造を変えていく必要があって、病院に入る前のホームドクターとかゲートキーパーを設けない限り、この問題は解決しないのではないかと思います。この点もぜひ医療界のストラクチャーを変えるように議論の俎上に載せていただければと存じます。以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 土居さん、よろしくお願いいたします。

〔 土居委員 〕 ご説明どうもありがとうございました。まず、29ページですけれども、まさに来年度予算における社会保障の自然増の抑制というものが非常に重要になってくるわけですけれども、これは、まだ消費税が増税される前でありますし、消費税増収分の使途を変更する前の段階での予算編成ということですから、ここの部分で全世代型の社会保障を前倒しで、消費税増税よりも前に実現するという意味において、医療、介護、そして保育の予算を一体的に効率化していただいて、その中からしっかり財源を捻出して、そして3年で1.5兆という目標を達成していただきたいと思います。

それから、もう1点は、32ページのところでの地域医療構想にまつわる部分であります。地域医療構想に関しては、今までは診療報酬とは切り離した形で病床の再編、機能分化という話をしてきたと。これはこれで、医療界にある一定の先見性を与える、予見可能性を与えるという意味ではよかったと思いますけれども、いよいよ同時改定ということで、本格的に診療報酬を意識しながら病床再編の議論をしていただかなければならない段階に入っていると。

また、逆にいえば、医療界からすれば、診療報酬がどういう先行きになるかを予見可能にすることによって、病床再編もさらに進むことが可能になってくるということだと思いますので、無理やり診療報酬と病床再編をつなげるなという医療界からの声が仮にあったとしても、むしろ逆に病院経営などでの予見可能性を与えるという意味で、診療報酬と病床再編というのはしっかり結びつけていく必要があるのではないかと思います。以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございます。それでは、冨田さん、よろしくお願いいたします。

〔 冨田委員 〕 ありがとうございます。消費税収の使途について、税率の5%引き上げ分のうち、4%が借金返済、1%が充実だということがよく言われるのですけれども、基礎年金の国庫負担割合の引き上げのところを考えると、これも充実とも言えるわけですから、もし消費税率が上がっていなかったら、安定財源ではないのでできていないわけですね。だから、これを充実と考えると、半々程度なのではないのかというのが1つです。だから、やはり、これまで伝え方を、我々はもっと工夫すべきだったと思います。もっと大事なのは、今、加藤さんがおっしゃったことと関係しますが、4%が借金返済、もしくは半分が借金返済と言っても、返済というよりも、19ページにありますように、国債発行を抑制しているのですよ。だから、5%上げても、まだまだ赤字国債は20兆ほど社会保障だけで出るわけですから、そのような一番基礎的な計数を我々はきっちりと伝えていく必要があると考えます。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 それでは、中空さんと宮武さんと続けてお願いいたします。

〔 中空委員 〕 ありがとうございます。32ページで診療報酬と介護報酬の同時改定というものがありました。先ほど、清家先生のお話にも、医療の改革のほうをきちんとやりましょうということもありまして、せっかくの機会ですので、ここを重点的にやるべきだろうというふうに思っています。それが今回の財審の1点目の決意ではあるのですが。

2つ目として、冨田委員や加藤委員がおっしゃったように、消費増税の話については、少し気をつけておく必要があると思っています。消費増税を先送りしますという文言が出たときに、これは財政再建先送りですとなっているので、本来、日本のマーケットは大混乱して大売られのはずなのですが、今日、2つの現象をお話ししますが、株については比較的評価をされて上がっている。債券のほうに関しては、日本国債は40年債が売られましたという解説が新聞には出ていますが、実際はほとんど関係なかったということなのです。何が言いたいかというと、日本の財政再建なんかできっこないということをマーケットはもう読んでいるということです。プライマリーバランスがどうのこうのというのはネタにもならないということのほうが、私はより問題だと思っていて、より深刻なのです。唯一、日本国債のCDSというものがあるのですが、ここだけ8月3日に25ベーシスをつけているのですが、そこから9月26日時点では41ベーシスまで広がりました。なので、ここだけがわりと、財政再建に対する失望感、格下げがあるかもしれないという失望感をあらわしてくれていると思うのです。言いたいのは、マーケットが失望している、もう完全に財政再建なんかできっこないと思っているということです。

子育て支援の重要性は非常に理解できますが、財審ではもっとしっかりと全体像の話をしていかなくてはいけないなと思っています。

ということで、意見でした。以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 それでは、宮武さん、伊藤さん、老川さん、末澤さんの順でお願いします。

〔 宮武委員 〕 ありがとうございます。私も社会保障制度改革国民会議の末席に座っていた人間でございますので、一言申し上げておくと、あの会議でみんなで考え、まとめたことは、給付を改善するなら負担をしなくてはいけないという、負担と給付の緊張関係を取り戻すということを、あの会議の中では繰り返し申し上げたわけであります。その中で、当然ながら、全世代型の社会保障というものも打ち出して、少子化についても7,000億円の財源をまず振り向けるということを決めたわけであります。それ以上のものが必要であるならば、またほかの財源を探さないといけないわけでありますけれども、それを除いて、今や消費税率を2%上げたときに使い道を変更するということになったわけであります。使い道を変更する場合、それは内閣の裁量でできることなのか、それとも社会保障制度改革のプログラム法がございますので、このプログラム法に抵触するのかどうか、そこは少しご見解を聞きたいのであります。同時に、一部改正を必要とするのであれば、どのようなところを変えることになるのか、想定で結構ですので教えてください。

〔 田近分科会長代理 〕 それでは、茶谷さん。

〔 茶谷次長 〕 この消費税に関して、まず1つ、借金の返済という用語を使っているけれどもという話がございましたが、これはまさにご案内のとおり、消費税の増収分は、社会保障の充実と安定化のために充てるということでございました。安定化ということ自体は、公債発行で賄っていた分を税財源にすることによって公債発行を抑制するということで安定化と、それによって社会保障の持続可能性を担保するという意味で安定化と言っておりましたが、結果としてそれが、さらに言えば、将来の借金返済も抑制するという意味で、総理自身は借金の返済という用語を使われたものと考えておりますが、意図しておられるところは、基本的に皆さんの共通理解の中でございます。それでぜひとも、総理自身もプライマリーバランス黒字化を達成するという目標自体はしっかりと堅持するとおっしゃっていまして、財務省も引き続き、歳入、歳出両面からしっかり改革を続けて、プライマリーバランス黒字化達成に向けた具体的な計画というものを今後しっかりつくっていきたいと考えているところでございます。

その上で、いわゆる消費増収分の使途を1対4で充実と安定化に振り分けるというのは、プログラム法等に書いてあるかということでございますが、使途自体そのものは書いていないところでございます。ただ、今回の場合、例えば所得の低い方の高等教育の無償化とか、これをどうするのかという話は当然出てくるかと思いますが、少子化対策に資するものと考えれば、いわゆる消費税法の少子化対策の中でとも考えられますが、いずれにしても、ここについては今後、政策パッケージを年末までかけて詰めていくものですから、その中で法制上の整理というのもしっかりと検討していって、年内に政策パッケージができましたら、しかるべき時点でまた財審にもきちんとご報告をさせていただきたいと考えているところでございます。

〔 田近分科会長代理 〕 それでは、伊藤さん、老川さん、末澤さん、お願いします。

〔 伊藤委員 〕 ありがとうございます。教育無償化のお話が出ているわけですけれども、皆さんが言っておられるとおりなのですけれども、今出ている幼児教育の無償化、やはりここは慎重に考えないと、その恩恵を受けた子供本人が将来ツケを自分で払うことになりかねないので、社会保障と教育は別だという視点で見ておくことが必要だろうと思います。

それから、もう1点は、先ほどの清家先生のお話にもありましたが、医療費と介護費が急激に増加をしていくわけですけれども、今までの議論と違って、ここで一言申し上げておきたいのは、いわゆる自己負担の話です。医療費について言えば、皆さんご承知のように、70歳以降は2割負担で、75歳からは1割負担です。介護は1割負担なのですけれども、これが本当に妥当な数字なのかということです。これをいきなり、例えば1割の人を2割に上げろというような極端なことを言うと大変なのですけれども、毎年10%ずつ、例えば1.1割とか2.1割と1年ごとに上げていくような、応益負担の見直しということをそろそろ考えないと、将来危ないのではないかという気もするものですから、応益負担、自己負担という視点でも考えておく必要があるのではないかということです。

以上でございます。

〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございました。

それでは、老川さん、お願いします。

〔 老川委員 〕 ありがとうございます。消費税の増収分に絡んで、全世代型社会保障という考え方自体は、僕は必要なことだろうと思っているわけで、これは使途の変更云々からは少し離れて、基本的な考え方としては、私は賛成します。ただ、それに絡めて、教育の無償化、このような話になってくると、今お話がありましたように、事柄の性格が違うし、ましてや高等教育の無償化などという話になると、それが何で社会保障になるのか、大変違和感がありますので、あまり絡めて議論をしないほうがいいのではないかということが1つ。

それから、もう一つ、その議論に関連して、保育に力を入れていくと、これは私は非常に大事なことだと思います。その点について、29ページに、ピンク色の四角の中に幾つか課題が書いてあって、その最後のところに、企業主導型保育の拡充とあって、これは税財源ではなくて、企業に保育の努力をもっとお願いしたいと、こういうことだと思います。私はこれ、大変賛成でございます。経済界のほうは今も既に企業の拠出基金で、社会福祉関係、企業内福祉等をやる道があるようですけれども、それをもう少し規模を拡充し、そしてまた、使途をもう少し別の、少子化対策とか、そのようなことにも広げていってもらえれば大変ありがたいと思います。経済界の方からすると大変抵抗感のある話かもしれないのですが、長い目で見ると、これはやはり若い世代の負担が軽くなって、消費活動にも好影響を与えるでしょうし、また、少子化対策ということにつながってくれば、中長期的にはさらに、労働力の増加等、様々な効果が見込まれると思いますので、そのような意味で、大いに経済界のほうもご協力いただければありがたいなと思います。その場合に、国がやることを企業にただ代わりにやってもらうのではなくて、そういったことに協力する企業には税の優遇措置を講じるとか、国と企業、社会が一緒になってやっていく、そういった体制にしてもらいたいものだなというふうに希望します。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございます。

それでは、末澤さん、お願いします。

〔 末澤委員 〕 どうもありがとうございます。少し長期的な話になるのですけれども、8ページに人口ピラミッドの今後の推移やグラフが出ています。私は実はこの日本の人口ピラミッドを見て、前から懸念しているところがございまして、要は団塊の世代のこぶ、団塊ジュニアのこぶ、本来ならその下に団塊ジュニアのジュニアのこぶがあるはずが、ほとんど発現していない。これはやはり、そのころというのがちょうどバブル経済の崩壊後、私も銀行員でございましたが、不良債権問題等により、就職氷河期で人を相当とっていないということでした。ですから、この方々って本当に正社員になれていない方も多くて、その結果、ご結婚ができていない、お子さんもいらっしゃらないということになっております。

問題は、この後20年、30年たつと何が起きるか。厚生労働省のほうから生活保護の7月分の実態調査が出ているのですけれども、生活保護の人員数は2015年をピークにずっと減っています。ただ、世帯数は7月分が、今年の3月に次いで史上第2位数なのです。世帯数の数字は、大体年末、年度末が多いので、多分間もなく最高を更新します。つまり何が言いたいのかというと、今、生活保護というのは高齢者世帯が53%を占めている。どんどん人口がプロラタブルに減っていけばいいのですけれども、頭でっかちで減っていく。となると、生活保護の比率も増えるし、それではその介護を誰がするのだという話になる。今の団塊の世代というのは、まだ団塊ジュニアの方々が介護できます。先ほどの話、家庭内介護ができるのですが、20年後にはできなくなる。つまり、そのような極めて長期的なリスクがあるということを、やはり早く国民の皆さんに周知して、長期的な社会保障制度、また、人口政策を早くつくって実行していかないと、この手の話はやはり超党派で対応すべき問題ですから、じっくり、ゆっくりと議論していただきたいと思っております。

ありがとうございました。

〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございました。

それでは、続きまして五神総長より、「Society 5.0(知的集約型社会)への社会変革と大学の役割」ということで、20分程度お話をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

〔 五神総長 〕 ありがとうございました。ただいまご紹介いただきました、東京大学の五神です。今日は、私が民間議員として参加している未来投資会議などでも議論を重ねておりましたが、Society 5.0というものがやってくると。これは不連続な変化ということで、それに対して、それをどうやって日本が先取りできるのか。その中で大学の役割をどのように再定義し、そのためには大学を支える構造自身を、公共財としての大学を支える仕組み自身を変えなければいけない。その方策に向けて、東京大学全体で取り組んでいる改革を紹介しながらご議論いただければと思います。

前半は世の中がどう変わるかという話で、後半が我々の取組を中心とした中身の話をご紹介して議論いただきたいと考えています。

3ページです。東京大学はこの4月にちょうど140周年を迎えて、第2次大戦の終戦が真ん中辺の70年ですので、次の70年をどうするのかという議論で、UTokyo3.0というような言い方で、20歳程の学生さんが、多分彼らは90歳程度まで生きるだろうから、70年というのはちょうどよいということで議論していると。右側に、東京大学の規模について様々なデータがありますが、土地面積がやたらと広そうだとか、そういったことがあります。土地面積のうち94%は北海道の演習林です。

昨年、2016年は実に様々なことが起こりました。今年もそれが続いているということで、これはかなり変化のスピードが速いということですが、その背景として私が注目したものは、デジタル革命というものが非常に急速に進んでいて、日本でもここ2、3年、特にまた変化が急になっている。インターネットは各家庭に、多分もうお使いだと思いますけれども、それは既に普及という意味では飽和していたはずなのですが、この図は日本のインターネットの平均トラフィックの推移ということで、ここ2、3年急激に、ダウンロード数で見ると年5割のペースで増えている。これは動画配信などがかなりポピュラーになったということと、スマホの普及があります。これは何を意味するかというと、人と人のつながり方が質的に変わったということです。その中で、民主主義とか資本主義といったようなものが、従来のフィードバックスピードに追いつけなくなっているところがあって、調子が狂ってきていると。例えば、サイバーテロの問題、あるいはポストトゥルースの問題、あるいはポピュリズムの台頭、あるいは経済的に見ても世界で同時に起こってしまうというようなことは、過去にはあまりなかったことで、こういったことと関係している。これはよい面と悪い面の両面あるので、これをきちんと捉えた上で社会経済をスピーディーに変えていこうということであります。

5ページです。これは榊原会長も一緒に議論させていただいた未来投資会議で私が説明に使った図でありますけれども、いわゆるこういったデジタル化、IoT、あるいはAI、ビッグデータといったようなものが、サイバー空間上の蓄積がクリティカルな量を超えた中で、それを活用する新技術が至るところで同時多発的にできている。その中で、今までは労働集約から資本集約に持っていくということで経済成長が起こったと。特に日本の場合には、工業立国ということで工業化だと。そのとき、価値を運ぶのは物ですから、物流の拠点である港や高速道路が整備されているところに産業集積拠点ができた。ところが、今起こっている新たな産業というものは、そうではなくて、スマート化による高付加価値化というのを軸にしている。よくこれを、1次産業から2次産業への成長だから、次は3次産業でサービス業の生産性を上げるのだという議論になりますが、私はそうではないと思っていて、これは1、2、3問わず全てが変わると。例えば、農業のスマート化によって、小規模農地でも高付加価値が出てくるというような類いのものであって、この変化をどう捉えるか。そういう目で見たときに、これを知識集約型と呼んでいますけれども、その価値が知とか情報になったときに、価値を生み出すもの、運ぶものは今までとは違うということで、例えば情報を伝えるインターネットの通信網などが非常に大きな産業インフラになる。そういう意味で言いますと、巨大なデータを10年以上前から扱っていた人たちが大学にはたくさんいるわけであります。そういったノウハウやインフラというものが、実はかなりの価値があるということがわかってきている。ところが、それが産業として、どうシステマチックに使っていくかという政策はまだできていない。このデジタル化時代、このデータ活用型というのは、集めて、つないで活用するということですので、都市と地方の格差というものは日本にとっては大きな問題ですが、実はそれを逆転できるゲームチェンジのチャンスにもなっているということであります。北海道に置いたサーバーは、隣に置いたサーバーとほとんど同じように使えるという状況であります。

6ページです。大学というのはなかなか、一番変化が遅いところかもしれないわけですが、そのためには、とにかくみんなで急いで変えないと、という共通意識を持たなければいけないという中で、本日はたくさんこれについての議論がありましたけれども、超高齢社会の到来ということで、年齢分布の話をいつも持ち出します。これは確実に、ここに書いた2030年にはこの形になる。そんな大きな誤差なく起こるということが読めるからであります。現在団塊世代の方々は、60代の終わりごろということですので、2025年問題ということがあると。2030年には80歳を超える、これは当たり前のことであります。それが、要介護比率が今のままですと、団塊ジュニア世代の人たちが要介護離職ということで直撃を受けるという状況になる。それをどう解決するかということで、我々の立場でできることは、健康寿命を延ばす、そのためのテクノロジー、社会システムをどうつくっていくのか、それを大学が先導するべきだと思います。

そのために、私たちは昨年6月に先端スポーツ科学の研究拠点というものをアスリートの人たちと組んで発足させました。これは2020年のオリ・パラを狙ったものでありますが、身体科学を進めるときに、トップアスリートとトップサイエンティストのコラボレーションは極めて効果が高い。それはなぜかというと、「これが効きますか」と一般の方に聞いても、「何となく」という感じですが、スポーツ選手はそこが勝負ですから、「何番目の筋肉に効きますか」とか、そういった形になるので、そのフィードバックが速い。こちらの研究者もトップの研究者ということで、10倍加速で間に合わせようと。これはもちろん、オリ・パラ後の超高齢化社会に向けて大事な先行投資ということになります。

次のページです。もう一つは、先ほどスマート化ということで農業の話をちょっとしましたが、これは未来投資会議で山森さんという方が示したデータで、お話を聞いてなるほどなと思ったわけですが、従来の農業の成長モデルは集約化、要するに耕地を大規模化することで生産性を上げたいと思うわけですが、日本独自の土地文化、独特の土地文化がそれをなかなか進めないということがあると。東日本の大震災で被災したところでさえ、非常に大きな問題になっている。ところが、センサー、あるいはドローンを活用するようなものですと、耕地が10アール、10アールというのは小さな耕地ですけれども、それが分散していても、大規模農地以上に生産性を上げることができる。すなわち、このデータ活用型によって、ある種のゲームチェンジが可能だということを意味しているものと思っております。

8ページ、これが昨年9月以降、既に11回開催されておりますが、未来投資会議という中で、毎回スマート○○という話を様々な分野で聞くと。なぜこのようなことが起こったのかというと、サイバー空間上に蓄積されたデータを、ディープラーニングというアルゴリズムというAIの手法ですけれども、それを使うことによって、今までの計算リソースではできなかった大きな結果が、ほぼ確からしい形で出てきて、それを活用することがあらゆる分野で有効であるということが同時に起こってきたということであります。これは、今はしまってあるデータをスタティックに使う場合が多いのですが、リアルタイムになるということが現在のトレンドです。これは確実に数年以内にそうなるというふうに思っています。そうしますと、分散・遠隔・結合をキーワードとするような社会になるかもしれない。そのチャンスがあるということで、地方と都市の格差、あるいは高齢者が社会参加しやすくなる、あるいは女性も子育てと、男性も子育てに参加すべきですけれども、子育てとの両立などが成り立つインクルーシブな社会に転換するということが起こり得るだろうというわけであります。

次のページをお願いします。そういったことを考えますと、2025年というのはもう8年後ということで、8年前にさかのぼって、この8年間で何ができてきたのかと考えますと、今までの8年間と同じスピードでは、これは多分もう間に合わない。ですから、私たちがターゲットとして考えた2025年ぐらいの勢いを使って、その先を一気に行くぐらいのことを戦略的にやらないとまずいであろうと。しかし、短期的には今使える資源はそんなに変えられないので、今あるものの価値を適切に評価して、それを戦略的に使うということを急いでやるべきだと。大事なことは、公的資金の投入はその呼び水とすべきであって、やるべきことに全部公的資金を投入するのでは、お金が幾らあっても足りない。呼び水という意味は、産業界にストックされているようなお金を、産業界が出したいと思うような政策が重要であると。

私は大学ですので、長期の話も絶対必要だとは思うわけですが、長期は、例えば実学は短期で、基礎・文化は長期という単純な区別はよくないと思います。エネルギーの問題や、あるいは森林保全の問題などは実学でありますが、これは100年スケールの問題です。長期の問題は先送りしていいというわけではなくて、長期の問題も途切れないように今やらなくてはならない。国がきちんと、どこにどのようにお金を配分するかの戦略を立てる。そのときに、2025年ぐらいのところをターゲットとしておくことは、極めて議論を効率よくスピードアップできるのではないかと思っています。

10ページです。そういう意味で、私は物理学者なので、技術トレンドというのをずっと、子供のころから興味があって見てきているわけですが、この状態の中で、技術、テクノロジーとして鍵になるのは、実は半導体なのです。その証拠に、下の絵にありますように、2017年の世界の半導体市場の投資は過去最高です。これは、ソフトバンクが、なぜARMを買ったかというのを見れば明らかです。全てのものをインターネットにつなげるためには、全てのものにCPUチップをつけなくてはいけない。それを廉価に提供することが必要である。サイバーセキュリティーのことを考えれば、そこにはかなり機能の高いものをつける必要がある。そこをどうするかというときに、技術的にはムーアの法則において、半導体のデバイスの進化がとまると言われている中で、実はもう一歩進めるということが、ここ2年ぐらいに明らかになってきて、ですから半導体が活況を呈している。そのための、半導体のデバイスのシェアでいくと、日本は落ちましたが、実はレジスト技術であるとか、様々な周辺技術を考えると、日本はかなり半導体で稼げるのです。そういうところをどう活用するか。実際に、ここ20年ぐらいの間に、産業界に私の研究室からもたくさん行きましたが、最優秀な人材をストックしているのは、この分野の産業でもあるのです。ですから、それをどうやって多様な形で職場の形を開発することによって彼らに活力をもたらすのかということが、この数年勝負では鍵になるだろうというわけであります。

次のページです。もう一つは、価値を運ぶものが、物から情報、知恵になりますので、情報ハイウェイが重要だと。そういう点で見たときに、実は我々も改めて認識したところでありますが、学術情報ネットワーク、これは国立情報学研究所が運営しているものですが、SINETというのは全ての都道府県を100ギガバイトでつなぐという超高速なものです。未来投資会議でもこういう話をしましたら、産業界の方から、こんなものは幾らお金がかかるかわからないほどすごい話だと。なぜできたのかというと、これはアカデミック・ディスカウントなのです。アカデミアは、要するに大きなデータを、グーグルが今使っている規模に近いようなデータを、データ解析のために、CERNのデータを使ったり、スイスのデータを使ったりとかやっていたわけですから、それが先進的に構築されている。これを、産学連携を通じて民間でも活用できる形にすると、どこの地域でも、そこを知識集約型の産業集積拠点にすることができるだろうというわけであります。

このような中で、ただ、気がついたこととしては、実はSINETはすばらしい未来のインフラなのですけれども、それを運営している国立情報学研究所を中心とした体制は、非常に組織的には脆弱で、未来の、ここ数年の日本の産業を支えるインフラをお任せするにはかなり厳しい、気の毒な状況だということもつけ加えておきます。

いよいよ私の本業の大学の話に行きたいと思います。私は2015年4月に総長になって、ちょうど6年任期の2年半が終わったところで、まだ折り返していないのですけれども、この間様々な政府の議論の中で、大学に対する期待はどんどん高まっている。しかし、満足いただけていないと。ですから、大学改革が重要だという話になります。ここには、私も参加した未来投資会議の未来投資戦略2017、あるいは骨太の方針などにこういった形で、大学という言葉が出てきている。これをどうやって大学としてきちんと受け答えていくかということがポイントであります。

14ページです。昨今いろいろなところで議論されているように、東京大学では特に高度人材の育成ということで、博士の育成は本務であります。しかしながら、これは東大の例ですが、2001年に修士から博士の進学率が約42%あったものが、今は26%ということで、博士離れがかなり深刻です。これが現実であります。

次のページです。その原因は、様々あるのですけれども、左側は2006年と2012年の東京大学の教員の年齢分布で、右側が任期なし、パーマネント、安定ポストで、左側が任期つきです。このように任期なしの若手ポストが大きく減っており、その分人員が減っただけではなくて、実は任期つきという形でむしろ総数は増えている。しかし、40歳過ぎまで非常に不安定な状態で大学で研究しているという状況、それに依存している状況になっており、右側の40歳未満の任期なしの教員数、つまりパーマネントの数を見ますと、実は2006年に903人いたものが、2016年には383人まで減っている。実は、大隅先生の例を見るまでもなく30代というのは、新しい学問をつくる重要な年齢なわけで、そこのところで落ちついてできなければ、将来のイノベーションにつながるような、要するにほかの人と違ったものをつくることができないということで、未来の学問の苗床になるようなところを失っているというのが現実だと思います。これは、私は当事者ですので、恥をさらしているという言い方になります。

次のページです。そのような意味で大学側がよく言うことは、法人化後、運営費交付金が約10%削られたという話になりますが、実は大学の運営費が足りなかったのは、法人化より前の方が深刻で、1989年に有馬先生が総長になったときに、私はちょうど研究室をスタートしたんのですが、実に惨たんたるもので、今はそのときよりははるかにましであったと思います。しかし、大きな負担となっているのは、施設の維持費が全然足りていないということであります。法人化の大きな変化というのは、それについての維持管理責任が大学に来るようになったということで、例えばぼろぼろの施設の中で学生がけがをした場合に、これは国の責任ではなくて大学の学長の責任になるということですので、最低限のことはきちんとやらなければいけない。あるいは電気代の高騰などもあり、経常的な運営費というのはすごく圧迫されていることは事実であります。しかしそれをこの場で、運営費交付金を増やしてくださいとは、先ほどの議論を聞いていると、とても言えませんが、そうではなくて、このプロパティーは実は資源なのですね。それを重荷だ、重荷だというのではなくて、活用するという発想転換をするべきだというのが、我々の結論であります。

次のページです。そういう意味で、短期戦略、これは5、6年で結果を出さないといけないので、非常に急いでやれることをここに全て列挙してあります。この全ては、今、東大では既にスタートしているものであります。あとは中期、長期というものを、これは先ほども言いましたように、長期のものを今やらなくてはならないというものがあって、それを実現するために経営力をどう強化するかということが、ポイントになるということであります。

1つ大事なことは、産業界からなぜ大学に大きな期待が出るのかというと、やはり産業界は厳しいのですね、今まで自前で長期的な基礎研究からオン・ザ・ジョブ・トレーニングや人づくりまでも全部できていたのですが、やはり株主のプレッシャーはとても高い中で、中長期のことが必要なことはわかっていても、なかなか落ちついてできない状況になった。その受け皿を誰がどこでつくるのかというところが問題であるわけです。

18ページを見ていただくと、東京大学では年間1,400件ほどの産業界との共同研究をやっています。しかし、その中身を見ますと、年間の契約規模は200万円以下の小さいものが多い。これは産業界が絶対経営上必要なものの投資としては、小さ過ぎるわけですね。ですから、これは産業界の本気のビジネスの部分には食い込んでいないということであります。実際、そこでやった共同出願の特許の実施率は極めて低いということからもそれは裏づけられます。今やっていることはそうでなくて、産業界で次に何をしたらよいのか、what to doのところを一緒にラウンドテーブルをつくって議論し、それから、本気の事業につながるようなところまでもオーバーラップさせようという計画であります。それを連携ではなくて、協創、協力して創るということで、組織対組織の連携ということで新しいスキームで、日立、あるいはNECと既にこの方式で連携を始めています。

次のページです。しかしながら、私が総長になって、いろいろ学内の契約の仕方とかを見ると、産業界が大きなまとまったお金を大学に投資することは極めて難しいだろうと感じました。つまり、契約書を真面目に書く、きちんとした契約書を個別に書ける法務関係の人材等はほとんど雇っていないわけです。ですから、これでは例えば何億円のプロジェクトをきちんと事業費から出すということは無理だと。そのための制度整備を、そこに「New」と書いてあるようなことをやりました。それによって企業の中でも、研究、探索的なもののお金で200万円というのではなくて、やはり事業部門がハンドルするような規模の投資ができるような形に仕組みを変えていこうと。これを協創の仕組みの中で産業界と議論しながら進めているというわけであります。

20ページです。もう一つ大事なことは、スピードアップしなければいけないときに、20歳の学生さんの教育の中身を新しくすることももちろん重要ですけれども、その人たちを送り出す、彼らが活躍できるころにはゲームは終わっているということになります。しかし私たちは、10年、20年どういう学生を社会に送り出したかということを全部知っているわけです。そういう人たちをパラレルに動員して、同時にゲームチェンジに挑む仕組みをつくらなければいけない。そのプラットフォームを東大としては作っていきたいと考えています。これはリカレント教育という言葉でも言われているようなものですが、要するに全世代がキャンパスに出入りできるような形で、同時に変えられるという仕組みとして活用したいわけです。

21ページです。新しい事業モデルを社会に実装していくためには、やはりベンチャーというのは非常に重要なものであって、それを育成していくということが大事であります。東京大学は既に10年以上の実績があって、東京大学関連のベンチャーキャピタルとしての東京大学エッジキャピタルは、相当よいモデルを実践してきたと言えます。東大発のベンチャーは300社を超えていますし、株価の時価総額でいきますと、1兆を超えているという程で、これはスタンフォードなどに比べると全然大きくないのですが、世界で見ても20番には来る程で、実はタイムズ・ハイアー・エデュケーションの大学ランキングよりは上というような状況になっています。

これは2012年の補正予算の官民ファンド事業ですけれども、これをさらにステップアップするにはどうしたらよいかということが問題になったわけです。もともとこれは大学に関係したベンチャーキャピタルをつくれというファンドでしたが、東大には既にあったので、それでやるわけにはいかなかったのです。それで、私が総長になってから方針を変えて、間接投資もできるような、つまりプレシード、シード、アーリー、ミドルという全てのラインを一気通貫で強化できるような総合エコシステムを構築するということをやっています。

次のページです。これは、世界的に見ても新しいモデルなので絵を出しましたけれども、そこでつくった協創プラットフォーム開発株式会社の主力事業の一つとして、間接投資をやっています。これは、日本には非常にすぐれた材料の研究者がいる。私は材料に近い分野はよく知っています。しかし、それをビジネスにするよいベンチャーキャピタルがないということが起こります。それで、民間からのお金も入りにくい。そういったところに、ポートフォリオをコントロールするという意味での間接ファンド投資をすると。これは学理と、それから、未来がどのようになるのかということを学問的に予測する。その中でこういったことが可能になるだろうと。そのときに未来をよくしないといけないので、東大がもうかるために動かしてはいけないということで、東大としては駆動の原理として社会をよくすると。今ここでは詳しく述べませんが、そういう意味で、国連のSDGsと経済のリンクということを詳細に取り込んでいるところであります。

次のページです。こういうことをやろうとするときに、決定的に足りないのは、インキュベーションを行うための場所です。オンキャンパスであることは極めて重要です。いろんな知恵があるだけではなくて、ウェットな研究ができるという環境を提供する必要があります。現在3,600平米、0.36ヘクタールなのですが、これを既に場所を1ヘクタール以上確保し、急速にこれを伸ばしていくということを今進めているということであります。

24ページは、その1つの象徴として集中的に行う場所として、柏にあるキャンパスを強化するということで、国立情報学研究所も先ほどのSINETの関係で一緒にやろうということもありますし、産総研、あるいはNIMSなどと連携しながら、地域とも連携してやる、非常に新しい知識集約型の産業モデルをつくれるのではないかというふうに進めています。

25ページ、こういう知識集約型への展開は、インクルーシブな社会、あるいは地方の格差をなくすのだという話をしましたが、8月にはその状況を視察するため北見工大を訪問いたしました。北見工大は、SINETというものの一番北限に相当します。確かにここには非常によいネットワークがあることによって、ここは東大との連携というのは、距離を超えてできるということを実感した。既に地球環境情報のプラットフォームのサーバーを設置させていただいているというわけであります。

次のページです。そうはいっても、世界の中で埋没しないという意味でいうと、日本の強みは何かというと、やはり総長室にいて、海外からの有名大学の人たちは、どの大学も基礎科学、自然科学のトップの研究者と連携したいとおっしゃる。そういったものをどのように維持していくのかということが重要だと思います。そこに象徴的な例として、カミオカンデの次世代計画はもう青写真ができていますが、実はそこのぴかぴか光っているものは、浜松ホトニクスという会社がつくったフォトマルチプライヤーですが、これは今、中国に出荷されているという状況でよいのだろうかという状況もあるわけであります。このあたりはやはり国が支えないといけないところだと思います。

27ページです。大学が運営だけではなくて、ちゃんと経営をするということであれば、これは企業の方から見れば当たり前のことだと思いますが、どのような価値創造をするか、どのようなビジネスをしたいのかによって、必要なものに先行投資をしていくことが必要だというわけです。この10年間520人、パーマネントの若手が減ったということは、そういったセンスでの経営はできていなかったと言わざるを得ないわけです。私たちは若手の雇用を回復するために、アディショナルな財源を使わなくてもパーマネントに安定化ができるという手法を幾つか導入して、幸い去年と今年の間で少し効果が見えてきたというのが、その図であります。

28ページは、もちろんそういった環境をよくすることを見せて、勉強したい学生を集めてくる。特に大学院では、優秀な学生を世界市場から集めてくるということで、これについても、今、卓越大学院というのが来年度の施策で文科省から出ていると思いますが、我々は既に先行実施をしておりまして、きちんと工夫をすると、東京大学の学術ステータスは、やはりまだある程度は維持できているということで、トップの学生を受け入れることができるということがコンファームされているわけです。

29ページ、多分これが今日の中で一番重要なポイントになると思いますが、高等教育をどのように支援するのがよいのかを考えるときに、ここでは大学院の例を示しています。大学院生は、これはもう一人前の年だし、全部生活費を支給しなければいけないのではないかということがあります。1人月当たり20万円程度を給付されるべきだと。東京大学で現在約8万5,000円なのです。これは様々なものを平均したものです。学振のDC、奨学金、あるいはリーディング大学院などの補助金事業によるTAなども入っています。これを全員に与えるには財源は非常に多く必要だと。これは不安定だと。しかしながら、彼らがどのような人材かというのを見ると、大学が行っているゲームチェンジを行うための今のアクションに資する活動ができる人たちがたくさんいるわけです。そういったことをやるために、補助金をまた別にもらって、お金を使って外部に発注するということをやったりしているわけです。そのパフォーマンスに満足できないみたいな話です。

そんなことをやるぐらいであれば、オンキャンパスにジョブをつくって、彼らを使えば一石二鳥であろうと。そのようなジョブの管理は、これは教員がやる必要があるのですけれども、現役の教員の仕事をこれ以上増やしてしまうとパフォーマンスが落ちますが、先ほども議論がありましたように、65歳から75歳ぐらいの先生は、学者さんは元気な人が多いという感じがします。ストレスが少ないのかもしれないですけど、総長はストレスが多いのですが。そういうわけで、そのような形を活用したいと。

大事なことは、シニアの場合でいくと、社会につながっていることが重要だということです。そうすることによって、給料をもらうということで社会につながっていることによって健康管理もできて、期待されている、活動することが、健康寿命を伸ばすには一番手っ取り早いということで、シニアを活用するような制度を今導入している。この間、入学式でその話をしたら、東大は定年を延長するのかというのが新聞記者に言われましたが、その気はありませんが、そこの層の活用を、それから、もう一つは、20万ずつ博士で支給することができれば、あるいは稼ぐことができれば、カップルであれば40万ですから、子育てができます。大学院時代というのを思い出しますと、やはり自分で時間をマネージできるので、ライフイベントという意味では最適なのですね。だから、そのために子育て中の大学院生を支援できるように、保育園を増やすということを、この4月にも45名増やしますし、やっていこうと。

ということで、インクルーシブな社会のモデルを大学が率先してつくることで、それで社会を変えていくということをやりたいと。つまり何でも税金でぶら下がっているということだけではないというモデルを大学というやりやすいところからやって、社会保障のような難しい問題につなげていきたいというのが、私の思いであります。

30ページですが、そう言いますと、大学の経営改革をどうするのかという話のときに、この間も指定国立大学の審査のときに、外国のいい大学をどこか選んでベンチマークにしろと言われたのです。これはほとんど実効性がないと思います。社会の環境も違いますし、まず財源構造が全然違う。その一例として、東大とUCバークレーの資産の比較ですけれども、このようになっている。青い部分は不動産ですね。当然のように、東大は本郷の一等地に莫大な土地を持っている。これが実は経営資源ではなくて、負担になっているという非常に不幸な状況なので、これをきちんと活用することで、要するに、自分でやらなくてもいいことを自分で無理してやって赤字を出しているみたいな話とか、あるいはそこには資金を投入したいという人がたくさんいれば、そこで好循環に持っていくということをやっていって、安定財源を別の形で確保していこうというわけであります。

31ページは、今お話ししたこと、あるいは少し話し足りなかったものもありますが、後ろに参考として付録のリストがありますので、もしご興味のある項目があれば、後で見ていただきたいと。

最後のページですが、要するに好循環をつくるべきだと。つまり公共財としての大学をどう支えるのかということの機能を明確化した上で、資金の流れを新たにつくっていく。一番期待しているのは、榊原会長のところの経団連とも連携していますが、産業界であります。産業界も大学に出資することが、経営が好転するという中で、その経済活動が資本主義の問題点を修正するような方向、つまりよい社会に向かうような活動を大学が駆動力となって回せるような仕組み作り。つまり東大に投資することが、企業の経営にとってもよいことであり、そうすることで、産業活動も国際的にも強くなるという形に持っていきたいという、これはかなり大風呂敷の野望ではありますけれども、今の改革は全てこれに向けて進んでいるということを述べさせて終わりにしたいと思います。ご清聴ありがとうございます。

〔 田近分科会長代理 〕 五神先生、どうもありがとうございました。委員の皆様におかれましては、せっかく機会でもありますし、発言をお願いします。

~子田さん、お願いいたします。

〔 ~子田委員 〕 NHKの~子田と申します。本日はどうもありがとうございます。先ほどの清家先生の話でも、優秀な人材の日中韓の間での取り合いという話がありまして、今、中国がアカデミズムの世界でも、例えば論文の数が非常に増えていて日本よりはるかに多いとか、今後、日本はノーベル賞がとれないけれど、中国はとるのではないかと言われていて、その辺、アカデミズムの世界でもどの程度の脅威を感じていらっしゃるかというのをひとつお聞きしたいのと、一方で、インターネットを通じて自由に情報が流通する社会で価値が生まれていくということになりますと、中国の場合、かなりネット上の情報の流通を規制しているということがありまして、もちろん思想の自由という点でもかなり当局がネット上の情報をウォッチしていたりとか、監視していたりという中で、自由であるべき知的活動の制約というのもあるのではないかと思います。そういったところから真のイノベーションが生まれるのかどうかというところが疑問に思っているのですけれども、そこについての先生のお考えをお聞かせください。

〔 五神総長 〕 今、産業だけではなくて社会構造全体がパラダイムシフトしているという中で、当然のことながら、資本の利益と国家の利益のような国の考え方についても多元的に捉えないと、パラダイムシフト後の社会はイメージできないと思います。そのような目で見たときに、どの国がどうであるべきかということは、今議論すべき場所ではないと思いますが、そういったことを多角的に捉えるということと、狭い意味での国境というものが溶けてきて、グローバルになっているということは、例えば産業活動の資本の外国資本比率なども待ったなしで伸びているわけですから、そこは不可逆的な部分であると。そういったものをどう捉えながら、日本としてのアイデンティティー、強みをそのように活力につなげていくかということで、もちろん東京大学の場合、日本人の学生が圧倒的に多いので、そういったことを考えつつも、多様な人たちが国内も含めて、自由にできる場として、それが人類全体をよくする場として価値をつくっていく。結果として、多くの日本人にとってもよい社会になっていくというモデルをどうつくれるかという視点でやっています。

〔 田近分科会長代理 〕 よろしいですか。赤井さん、田中さん、佐藤さんの順でまとめてご発言いただいて、五神先生からお答えいただきたいと思います。

〔 赤井委員 〕 簡単に。教育財源がどうあるべきかという点は、今まさに無償化の話もあると思うのですけれども、財政を考えると増やすのが難しいとなったときに、どのように配分していくのが望ましいかで、先ほどの発表資料の最後のところで、運営費交付金と競争的資金の配分の話がありました。運営費交付金は減らされている一方で競争的資金は逆に増えているのですけれども、そのあたりの任期つきなどは、運営費交付金の影響が出ていると思うのですけれども、運営費交付金よりもやはり競争的資金を伸ばしたほうが望ましいのか、運営費交付金は、競争的資金の伸びをとめてでもある程度確保したほうが望ましいのか、合計値が一緒になった場合にどうなのかというところだけ教えていただきたいと思います。

〔 田近分科会長代理 〕 運営費交付金と競争的資金のバランスですね。

〔 五神総長 〕 もちろんそれも大事だと思います。

〔 田近分科会長代理 〕 田中さん。

〔 田中委員 〕 手短に2つだけ。1つは、大学院生、特に博士課程の学生に対して給与を払うというのは、ヨーロッパ、北欧などでも特にランキングが上がっている大学では当たり前のことだと思います。ただ、その場合には、キャンパスの外のジョブをするというよりは、大学の中の教育や研究をサポートするというところで給料が出ていて、子育てができるぐらいの給料の額になっていると。私はそこに集中させて給料を出したほうが、研究者は伸びるような気がいたします。

それと2番目なのですが、ここが実は本題であります。大学改革といったときに2つあって、1つは研究面の改革と、それから、教育面の改革があります。今日は五神先生が産業界のプレッシャーといったときには、研究を中心としたイノベーションのプレッシャーをおっしゃったと思いますが、産業界の悩みというのは、雇った社員が使える、使えないという社員のコンピテンシーの問題で、なかなか最近は即戦力になる、あるいは望ましいような若い人たちを雇えないというところがあって、そこが産業界のフラストレーションになっています。

その目線でお伺いしていると、今日は教育面ではリカレント教育というところは出てきたのですけれども、一体大学の教育をどう変えたらいいのか。ここはおそらく東大特有というよりも、ほかの大学にも共通の悩みでありますので、この点をお聞かせいただけたらと思いました。

〔 田近分科会長代理 〕 佐藤さん、お願いいたします。

〔 佐藤委員 〕 ありがとうございます。私、一橋大学に勤めていますが、一橋大学でも指定国立を目指していた際に、まさにご指摘のベンチマークで、例えばLSEや、あと、シンガポール国立大学、そのあたりの大学と比較したことがあります。そこで1つわかってきたのが、彼らの財務状況が非常によくなっている、収入が増えている1つの要因は、もちろん外部の企業から資金をもらっている面もありますが、やはり授業料なのですね。今でも大陸ヨーロッパのほうはまだ授業料無料の国もありますけど、イギリスに至っては授業料を上げているわけですね。

そこで思ったのは、これから大学は独自の財源を確保しろと言われたときに、実は授業料というのも大事なレベニューになっていて、もちろん所得の高い方に支払っていただくというのが基本だと思いますが、あとは大学院生、リカレント教育でもそうですね。要するにお金を負担できる人はいるわけで、それなりの教育にお金を払って、それでも受けたいと思っている人はいる。具体的に言うと、富裕な子弟とか、あと留学生も今豊かなのです。それから、もちろん社会人も結構それなりに企業からお金をもらえるというケースもあるので、そうなってくると、今の大学の無償化というのはこの逆になってしまうのです。つまり無償化という言葉は、聞こえはいいけれど、大学は要するに授業料を取れないと言っているようなものなので、これは大学のマネジメントとしてはどうなのだろうということで、もし何かご意見があればということです。

〔 田近分科会長代理 〕 それでは、五神先生、まとめてお願いします。

〔 五神総長 〕 先ほど答え忘れて、中国の脅威の話ですけれども、中国の人口は日本の人口の10倍ありますよね。ですから、北京大学と清華大学だけではなくて、東大、京大に相当するものが20校ぐらいできて当たり前という状況になっている中で、中国の場合は、平等投資する必要があまりない。だから、選択集中はしやすい。ですから、当然のことながら、投入額は東大では全然勝負にならない水準です。だから、同じ土俵で同じスキームで競争したら、これは負けるしかない。しかしながら、どこを攻めるべきなのかというと、やはり場所はいろいろある。その中の一例として幾つかお示ししたということであります。勝てるとわかっているところに投資しないのは、非常に残念だという話であります。

それから、運営費交付金と競争的資金のバランスですが、実は法人化のころに競争的資金への傾斜が急激に進みました。そのときには、しかし間接経費をきちんとつけるという中で、競争力を上げていけば、全体のオペレーションのベースも増えていくという仕組みが導入されたのです。それは民主党の政権のときに削減されて、そこで中折れしてしまいました。しかし、今となっては、競争的資金も含めて、国家財政が厳しい、もとはと言えば財布は同じですから、それとは別のところに求めていくということが極めて重要だろうということで、我々の最近の戦略の中では、持っている資源をもう一回全部見直した中で、やはりアセットを全然使えていないということも確認できたので、そこを適切にやっていこうという戦略に変えました。

それから、教育については極めて重要で、教育は継続性と安定性が重要です。だから、システムがばらばら変わると、子供は勉強できなくなると。そのような意味で、数学教育等の日本の強みのあるものをきちんと維持できるかどうかが1つの鍵であり、また国語の力が大事です。

何よりも大事なことは、学び続けることがおもしろいと思う心をどう育てるのかということと、人と違うことにチャレンジする意欲を持つ人をどう増やすか。そのための、例えば東大でいえば、駒場の1、2年生の教育の刷新というのは極めて重要で、これは前総長の濱田先生のときに随分注力して、その成果はかなり出てきています。1、2年生でかなり新しい専門教育をインプットするというようなことをどう広めていくか。それから、今、非常に必要とされているデータサイエンスのようなものについては、これは教育パッケージを急いでつくる必要があって、それは配信していく必要もある。もともと強い数学教育などは、これは輸出モデルにすべきだと思っています。それぐらいレベルの高い教育が今手元にあって、しかし、それは放っておくと劣化してしまう。だから、売れるものに価値がなくなるというフェーズにあるので、そのあたりは東大としても、東大の中のためというよりも、全体のために今整備を急いでいるということであります。

それから、ベンチマークの話や、授業料の話について、東京大学の財務構造を詳しく説明する時間はここにはないですが、東大として、運営費交付金は法人化後1年あたり110億円減ったわけですね。それを補うことは必須なのです。なぜかというと、法人化直後の年でも全然足りていなくて、建物の維持ができなかった。その規模の財源をどう工面するかというときに、授業料の議論は、議論のコストがかかり過ぎる。これはむしろ1大学の経営の観点で議論するべき問題ではないというのが、前、吉川洋先生にも聞かれたときにそう答えたのですけれども、私のスタンスです。それはなぜかというと、5年以内に実効性のある改革をやることのほうがより重要であるということから、そういう判断をしました。ですが、中長期的には当然そこをやらなければいけない。

それで、無償化の議論は、非常にやり方は考える必要があって、学ぶ側のインセンティブ、それから、教育する側、大学側のインセンティブを高めるような仕組みでないと意味がないのですね。ですから、それをどう設計するのか。機会均等はものすごく大事です。ですから、大学院で言えば、授業料を無料にするという話よりも、オン・ザ・ジョブで何か価値の高い作業をしたら、そこに短時間でも高い給料を出して、勉学の時間を損ねずにきちんと生活できるようなスタイルをつくっていくことが重要で、学部生をどうするかは、政治のレベルで議論すべき問題ではないかと思います。

〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございました。本日の議題はこれで終了させていただきたいと思います。五神先生、どうもありがとうございました。

では、時間も参りましたので、以上で本日の議題は終了とさせていただきます。お手元に本日ご欠席の岡本委員、神津委員より意見書をご提出いただいております。

本日の会議の内容については、私にお任せいただき、会議後の記者会見でご紹介させていただくことにさせていただきます。また、会議の個々の発言につきましては、皆様方から報道関係者等にお話をすることのないよう、ご注意いただきたいと思います。

次回は10月17日10時から開催を予定しております。よろしくお願いします。

これにて本日は閉会とさせていただきます。ご多用中のところ大変ありがとうございました。

午後6時06分閉会

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