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財政制度分科会(平成30年4月6日開催)記者会見

平成30年4月6日
財政制度等審議会 財政制度分科会

 
〔田近分科会長代理〕 本日の14時より、財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたしました。 本日の議題は大きく分けて2つありました。1つは、委員からのヒアリングでして、冨田委員及び土居委員から、お手元の資料1、資料2に基づいてお話をいただき、質疑を行いました。第2の議題は防衛でして、事務局から資料3に基づいて、御説明がありました。通例どおり、個人の名前は伏せて様子をお伝えしたいと思います。

 冨田委員からのヒアリングの様子ですけれども、タイトルは「「経済・財政再生計画」の下での財政健全化の取組 ~新しい財政健全化計画に向けて~」ということで、文字どおり経済・財政全体の推移を踏まえて、この3年間の計画を評価したというものです。

 詳しい内容は資料1を御覧いただければと思いますが、冨田委員からは、第1点目として、計画に沿った歳出改革が着実に行われたのは、バブル崩壊以降の累次の財政健全化計画の中では初めてであるとの御説明がありました。この辺は、私の説明の最後に資料1を用いて、もう一度振り返ってみたいと思います。一方で、プライマリーバランスは、2018年度に赤字対GDP比でマイナス1%とするという目安のみならず、計画策定時の自然体の見通しすら実現できない見込みであること。これを踏まえて、新しい財政健全化に向けて、できるだけ早期にプライマリーバランスの黒字化を達成すべきで、そのために年次計画を明確に設定すべきだ。予定どおりの消費税率引上げは不可欠だ。新しい計画も、現行の計画と同様の考え方、枠組みとしつつ、さらに取組を充実させるべきだ。余裕を持って目標を達成できるよう歳出改革を徹底すべきだ。取組の進捗状況に応じて、歳出、歳入両面から必要な措置を検討する枠組みとすべきだ。以上のような御説明をいただきました。

 少し敷衍すると、お手元の資料1では、スコープを広く議論されていらっしゃいます。本体資料の31ページの「新しい財政健全化計画に向けて(3)」というページの真ん中に、新しい計画でも歳出改革は継続されるべきだという記載がございます。

 その下ですが、このように冨田委員は御説明になり、我々も納得したところです。つまり、当初、財政健全化目標である国・地方のプライマリーバランスの目安として、2018年度に対GDP比でマイナス1%にしようとしておりましたが、計画策定時の自然体の試算であるマイナス1.7%も実現できなくて、直近ではマイナス2.9%になった。それはなぜなのかということで、これは内閣府のほうも分析していますけれども、1つ目の要因は消費税率引上げ時期の延期。それから、2つ目の要因は、経済パフォーマンスに関する楽観的な見通しに伴う税収の下振れ。税収ががんと大きく減ってしまったというよりは、当初考えていた成長見通しから推計される税収に未達だった。それから、3つ目の要因として、補正予算の影響。つまり、これらの要素が加わって、この3年間、「経済・財政再生計画」の間、社会保障関係費の増加を5,000億円以下に抑える等の歳出改革の目安に関しては達成されているところもありましたが、結果として、こうした要因で赤字が増大してしまったということです。このようなことをもとに、今後の健全化計画を立てていこうということが、先ほど指摘した点になります。

 それから、土居委員から「我が国の財政に関する長期推計」という御報告がありました。かなり長期である2060年度までを視野に置いて、2020年度にプライマリーバランスをどの程度改善すると、2060年度に債務残高対GDP比が安定するかという試算を行ったところ、2020年度で6.26%、つまり6%から7%は必要だという結果になった。

 これは一見すると、前回、2015年度に行った推計よりも低い値のように思われますが、実は足元のPBは先ほど言ったように悪化しているわけです。それから、少子高齢化に伴う歳出増に伴って必要となる収入は非常に大きい。ということで、経済の将来推計といったものではないのですが、その指標の読み方というのは、依然として足元のPB赤字が大きく、また、少子高齢化に伴う今後の歳出増が大きい。そして、現在、金利が低いことが影響を与えているけれども、この環境自身がフラジャイルである。最後に、改革が遅れた場合、どの程度の歳出改善努力を追加で行わなければいけないかということを御説明いただいたわけです。

 通例どおり、委員の個人名を伏せて、主な御意見を御紹介いたします。私がキャッチできた範囲でお伝えすると、最初の議題である冨田委員の「「経済・財政再生計画」の下での財政健全化の取組」に対しては、やはり補正予算のあり方が問題の一つで、補正を前提に予算を組むべきではないという意見がありました。

 それから、財政健全化、つまり経済・財政の一体改革を進めていくためには、上から意見を言うだけではだめで、改革マインドを現場が受け入れなければいけない。そうすると、見える化とEBPM(Evidence Based Policy Making)が必要だという御意見がありました。

 次の方は、以前、この審議会の場でお話をいただきました大和総研の熊谷チーフエコノミストの、成長、歳入の確保、歳出削減が三位一体で重要であるという御説明内容を踏まえて、これが「経済・財政再生計画」の中間評価でも明らかになったという指摘でした。

 それから、これも何人かの委員の方が指摘され、これまでの財政制度分科会の審議でも何度も出ておりますが、推計に当たって、今の言葉で言うと成長実現ケースが結果的には楽観的だったのではないかということです。

 それから、先ほど冨田委員が御説明になった資料の最後のページについて私の口から説明させていただきましたけれども、やはりプライマリーバランスの改善が遅れた要因の一つに消費税率引上げの延期があり、この点は財審の場からきちんと指摘して、さらなる延長をすべきでないと言うべきだとの指摘がありました。また、繰り返しになりますけれども、経済推計に当たってはベースラインケースを前提にした計画をつくるべきということを指摘されていました。それから、歳出に関する目安はそれなりに機能したのだから、補正予算についても何らかのフレームワークが必要ではないかという御意見をおっしゃっていました。

 それから、これは土居委員の御発表に対する御意見に対応するわけですけれども、内閣府の中長期試算では2027年度までしか示されていないので、それをもっと長期的に見通すような長期推計は重要だという御意見でした。

 2つ目は、これから財政健全化を進めていく上で増税や歳出削減をするときに、これと成長との関連を検討していくべきであり、同時に、ここでも申し上げていることですが、財政を健全化することで将来不安が取り除かれ、結果的に経済成長につながるということならば、そういった成果をもっとポジティブに審議会で議論してもいいのではないか、その材料も提供していいのではないかという御意見です。

 あと、政策的な話になるのかもしれませんけれども、ここでも御説明しましたけれども、ヨーロッパ、EUでは成長安定協定に基づいて、各国が欧州委員会を通じてお互いをモニターし合って財政健全化を進めている、あるいは保っている。アメリカは、債務上限が定められている。日本でも、そういった意味で、債務管理、財政管理に当たっては、この方の言葉を使わせていただくと、抑止力的なものが必要なのではないかということです。

 あと、土居委員の報告については、既に申し上げましたけれども、一見、金利が下がっていることで財政健全化に対しては負担が軽減されているわけですけれども、ただ、先ほど申し上げた繰り返しですが、足下のPBの赤字が大きくなっており、また、高齢化が進む中で社会保障負担が増えるということを考えると、金利と成長率の関係だけで議論をとめてはいけないという内容です。

 次に、防衛の話に移ります。私からは、防衛予算についての説明は省かせていただいて、委員の意見、それに基づく質疑を紹介させていただきます。委員の中に防衛予算についてお詳しい方が何人もいらっしゃって、防衛は重要だけれども、日本の兵器の値段は世界と比べて高いのではないかという御意見がございました。

 それから、地政学リスクが高まっているが、これから中期防を策定していくところ、防衛装備の開発には時間がかかることを踏まえて戦略的に予算をつけていくべきだという御意見でした。

 それから、主計官の説明を聞いて、防衛はそれぞれ特別に配慮しなければならないことがあるとしても、普通の企業が調達、購買の際にやっていることをもっと適用したらどうだという感想もございました。

 それから、調達のコストをどう見積もるかということを中心に議論しましたが、そういったことも重要だが、あらゆるものを自分で調達する必要はないとしても、物によっては自分で技術を持っていなければいけない、そういった見極めをしっかりしてほしいという御意見もありました。

 あと、繰り返し的になりますけれども、防衛予算に関しては手続の透明化、情報開示が必要だという御意見もありました。防衛予算の中期防の策定を前にしてのポイント等は本日は割愛させていただきます。

 以上です。

〔幹事〕 ありがとうございます。

 冨田委員の資料の31ページですが、真ん中の青枠の「同様の考え方・枠組みとしつつ」というのは、基本的にこれまで3年間の目安がうまく機能して、同じような仕組みを今後3年間もやっていこうという理解でよろしいでしょうか。

〔田近分科会長代理〕 3年間かどうかはともかく、冨田委員の指摘は、プライマリーバランスの黒字化に向けて、これまでの3年間、「経済・財政再生計画」として予算の目安を定めた、歳出を管理したということです。その枠組みをこれからどう定めるかは分かりませんが、「経済・財政再生計画」の評価としては、歳出枠組みを決めて、それによって歳出管理が予定されたとおり出来たのではないかという評価があったということです。

〔幹事〕 これに関して、委員の方の議論の中で、いわゆる目安のようなものをさらに延長していくですとか、あるいは金額をどうするかとか、そのような意見というのはありましたか。

〔田近分科会長代理〕 まだその段階ではないですが、我々としては、3年間のレッスンをここで評価したわけです。目安に関しては、歳出の管理が実現したと。ところが、歳入のほうは、先ほど申し上げた幾つかの理由で思うように進まず、目安のマイナス1%どころか、出発点の自然体の推計である対GDP比マイナス1.7%を下回るマイナス2.9%になってしまった。そうしたことを踏まえて、これから健全化のフレームワークをどう策定していくか。その中で歳出管理を考えていく上で、今回のフレームワークというのは参考になると、そういった意味です。

〔幹事〕 あと、今後のスケジュール感として、また春の建議があると思いますが、大体、時期的にどれぐらいを目処に出されるのでしょうか。

〔田近分科会長代理〕 経済財政諮問会議で新しい計画を策定するわけです。それに対して今回、我々の考えはそこで表明したいと、そのようなスケジュール感でやっているということです。

〔質問〕 土居委員の長期推計のお話で、債務残高対GDP比を長期にわたって安定的に下げるためには、巨額の収支改善、40兆円程度必要だと思いますが、田近分科会長代理ご自身は、この実現可能性というか、必要性についてどのように思われますか。

〔田近分科会長代理〕 私の頭にあるのは、資料2の10ページです。社会保障基金を加えた一般政府ベースで、債務残高対GDP比を2060年度以降に安定させるために必要な収支改善幅、これが日本は8から9%というところで突出しているわけです。だから、これからどのように健全化計画を組んでいくかはまさに議論していきますけれども、やはりこれは出発点の一つだと思います。これがどの程度大変な問題かと言えば、日本の経済・財政の最も重要な問題の一つであるということは認識していますけれども、これを踏まえて、いよいよ新しい健全化計画をどう組んでいくかということです。この段階で、それが何%の債務残高対GDP比で、それをどう実現するかというところまで私も言えませんけれども、この結果を踏まえて財審でも健全化計画をつくっていきたい。また、債務残高対GDP比を2060年度以降に安定させるために必要な収支改善幅については、単に日本の必要な収支改善幅が突出しているだけではなくて、欧州主要国と比べても突出していることは明らかだと思います。

〔質問〕 同じ土居委員の資料で、今回、PBの黒字化の達成時期が2020年度から1年間遅れるたびに1兆円から1.2兆円の追加的負担が必要になってくると。この試算に関してはどのような評価が出たのかということと、こういった試算を見ると、やはりPBの黒字化の時期というのは、今、言われている自然体の27年度よりは大分前倒しにしないといけないのではないかと、そのような意見が出たのかどうか。

〔田近分科会長代理〕 この推計は、先ほど言ったように経済成長率云々を基に推計したわけではなく、2020年度に仮にプライマリーバランスを黒字化したとして推計するというように、What ifのことをやっているので、これを踏まえて具体的な政策の数字が出てくるわけではありませんが、今の御質問に対するお答えとしては、黒字化の達成年度を1年遅らせると追加的負担が1.2兆円発生するのだという気持ちは、委員の方、全員がお持ちになったと思います。

 ただ、これが実際に計画を策定する上でどうなっていくかというのは、それは違う推計になるわけです。この推計は何度も言うように、メカニカルだから分かりやすいのですが、What ifの推計と経済のプロジェクションとは必ずしも一致していないということは理解していただきたいと思います。

〔質問〕 冨田委員の発表の中で、歳出改革の目安が達成されたのは近年で初めてだというような御指摘があったそうですけれども、今回、どうしてそれが可能だったのかという理由について、例えば骨太2006のときはリーマンショックがあってだめだったと記憶しておりますが、その辺の理由について何か御説明があったかどうか教えていただけますでしょうか。

〔田近分科会長代理〕 御質問は、歳出改革の目安がどうして実現したのかということですよね。冨田委員の御報告なので、できるだけそれに沿ってお話しさせていただくと、4ページを御覧いただいて、目安ということで、特に目安の3です。個別にはもう説明する必要はないと思いますけれども、社会保障関係費の目安をつくった。それから、地方の一般財源の総枠を管理したというところで、マクロ的には3年間で一般歳出の増加は1.6兆円にする。それを個別に落としていくときに、社会保障と地方財政を軸にそれを実現した。3年間で一般歳出の伸びを1.6兆円にコントロールする、それを実現していくためには社会保障の伸びを1.5兆円、それから、地方は、一般財源総額を管理した。これが3年間を通じて見ると機能したのではないかということです。 〔質問〕 防衛に関してですけれども、中期防に向けて、個別の効率化以外の全体の枠組み的な議論について、何らか財務省側から考えが示されたのか、委員側から何か意見が出たのかお伺いできますでしょうか。

〔田近分科会長代理〕 私が説明を聞いた範囲では、本日の主計官からの説明は、これから中期防衛力整備計画について予算を組んでいく、それに向けての準備と、特にその中で調達の改革について議論しましょうということでした。主計官の言葉で言えば、選定前と選定時と選定後に分けて考えるということで、だから、御質問に対しては、中期防がどうあるべきかということではなくて、基本的には、予算を組むに当たって調達費用をどう見直していくか、選定前・中・後について議論したということです。

〔質問〕 現時点で、全体の枠について何らかの考えというのはお持ちなのでしょうか。

〔田近分科会長代理〕 春の建議としての論点を整理していただいたということで、非常に明瞭で分かりやすい説明だったと思います。

〔質問〕 本日、早速、防衛の議論に入って、この後、また各論について話されていくと思いますが、新しい財政健全化計画に向けて具体的な歳出改革をどう進めていくかとか、そういったことについても議論を進めていくことになると。

〔田近分科会長代理〕 それも含めて、これまで様々な方、大和総研の熊谷さんや、NIRAの森田先生、岩本先生、また、海外調査報告等の材料を整えて、本日、冨田委員から、今、おっしゃったところも射程に入れて3年間のレビューをしたというところです。今後、どういった計画を策定できるか分かりませんが、その準備をしているということです。

〔質問〕 提言が、建議という形で5月いっぱい辺りにはまとまることになると思いますが、それは当然、財政健全化計画だけではないと思いますが、新しい計画に向けての提言も含めていくということでよろしいですか。

〔田近分科会長代理〕 私がここで先走りして言えませんけれども、繰り返しになりますが、新しい財政健全化計画を考えていくときの重要な要素として、先ほど申し上げたように、財審の建議が一つのインプットになって先ほどの3年の計画もつくられていくわけですから、これは若干、個人的な意見になりますが、これからのフレームワークに対する重要なインプットをつくれればいいなと思ってやっています。

(以上)