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『令和の財政の在り方を考える ~いのち輝く未来社会へ向けて~』議事録

財政制度等審議会 財政制度分科会
「令和の財政の在り方を考える ~いのち輝く未来社会へ向けて~」
議事録

令和元年5月13日
財政制度等審議会


財政制度等審議会 財政制度分科会
「令和の財政の在り方を考える ~いのち輝く未来社会へ向けて~」議事次第

令和元年5月13日(月)13:00~16:00
大阪商工会議所 国際会議ホール

1.基調講演
  『財政制度等審議会の役割と我が国の財政事情』

2.関西知事による改革取組事例紹介
  『国民健康保険における受益と負担の見える化』

3.パネルディスカッション

配布資料

○ 資料1 財政制度等審議会の役割と我が国の財政事情

○ 資料2 何故、国保改革を取り上げるのか

○ 資料3 「健康しが」を支える健全で安定した国保財政 

○ 資料4 奈良県における国保改革等の取組について

○ 資料5 大阪府における国民健康保険制度改革の取組について

○ アンケート用紙

出席者

榊原定征    財政制度等審議会財政制度分科会会長

増田寛也    財政制度等審議会財政制度分科会会長代理

赤井伸郎    財政制度等審議会財政制度分科会委員

上村敏之    財政制度等審議会財政制度分科会委員

角 和夫     財政制度等審議会財政制度分科会委員

竹中ナミ     財政制度等審議会財政制度分科会委員

三日月大造 滋賀県知事

荒井正吾    奈良県知事

濵田省司    大阪府副知事

松本正義    関西経済連合会会長

尾崎 裕      大阪商工会議所会頭

西村貞一     大阪商工会議所副会頭

伊佐進一     財務大臣政務官


午後1時00分開会

〔 事務方(髙木近畿財務局総務課長) 〕 ただいまから財政制度等審議会財政制度分科会地方公聴会「令和の財政の在り方を考える~いのち輝く未来社会へ向けて~」を開会いたします。

本日の司会進行を務めます財務省近畿財務局の髙木でございます。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)

財政制度分科会は、財務大臣の諮問機関として財政に関する調査・審議を行い、財務大臣に意見を述べるという役割を担っております。ふだんの審議は東京で行っておりますが、本日は、ここ大阪を舞台にしまして、テーマにありますように、日本の財政状況、財政健全化や社会保障改革の必要性の議論を通して令和の財政のあり方について議論を行います。

本日は3部構成になっております。詳細はお手元にお配りしております議事次第に沿って進めさせていただきます。

なお、本日のご出席者をご紹介します。前方のスクリーンをご覧ください。

ご覧の方々にご出席いただいております。なお、出席者お一人お一人につきましてはご発言の機会にご紹介があろうかと思いますが、本日、うえの財務副大臣におかれましては国会へのご出席のためご欠席となっております。また、大阪商工会議所の尾崎会頭ほか一部の方におかれましては途中でご退席される予定でございます。あらかじめご了承ください。

また、本日は財政制度分科会初の試みとしてインターネット中継も同時に行っております。インターネット中継をご覧の皆様も、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。

では、早速、第1部に入ります。

第1部は、財政制度等審議会財政制度分科会、榊原定征会長による基調講演でございます。タイトルは「財政制度等審議会の役割と我が国の財政事情」でございます。

お手元の資料1をご覧ください。

それでは、榊原会長、よろしくお願いいたします。拍手でお迎えください。(拍手)

〔 榊原分科会長 〕 皆さん、こんにちは。ただいまご紹介いただきました財政制度等審議会会長の榊原でございます。

本日は、財政制度等審議会財政制度分科会の地方公聴会にこのように大勢の皆様方にご出席いただきましてまことにありがとうございます。

この地方公聴会でございますが、こうした会合を開催するのは13年ぶりでございまして、当地大阪では15年ぶりの開催ということになります。令和という新たな時代の幕開けに開催させていただくことは大変意義深いと考えているところでございます。

また、公聴会開催にご協力いただきました滋賀県、奈良県、大阪府の皆様方、それから関経連、大阪商工会議所の皆様、そして近畿財務局の皆様方に対しまして、この場をお借りして心から感謝申し上げたいと思います。

また、私はこの3月末まで2025日本万国博覧会誘致委員会の会長も務めさせていただきました。改めて、2025年大阪・関西万博の誘致成功を皆様とともにお喜び申し上げたいと思います。

今日の地方公聴会のテーマは「令和の財政の在り方を考える」としておりますが、副題として、万博のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」にちなんで、「いのち輝く未来社会に向けて」とさせていただきました。

それでは、早速、講演に移らせていただきます。

本日の講演のテーマでございますが、2つございます。1つは財政制度等審議会の役割についてご紹介をする。2つ目は我が国の財政事情についてお話をさせていただきたいと思います。

それでは、財政制度等審議会のご紹介から入らせていただきたいと思います。

財政制度等審議会は財務大臣の諮問機関でございまして、その下に分科会が5つございます。その中心となる分科会が財政制度分科会でございまして、国の予算に関する調査・審議等を行う、そうした役割を担っております。

写真をご覧いただきたいと思いますが、これが審議会の議事の模様を写した写真でございます。委員の方が45名ということで大変大きな会議体でございます。

この財政制度等審議会は昭和25年に設置されました。我が国の財政制度は、戦中の戦費調達のために多額の国債を発行して、戦後、厳しいインフレになった、そうした反省から成り立っておりまして、戦後初めて国債を発行したのは昭和40年になってからでございます。その後、この審議会は体制を充実いたしまして、平成13年の中央省庁再編を経まして今の体制になっております。

右側、少し字が小さいんですけども、歴代の会長の名前を挙げさせていただいております。私は2年前からこの財政制度等審議会の会長と財政制度分科会の会長をあわせて務めさせていただいております。

次のスライドでございます。これも字が小さいんですけども、財政制度分科会の委員の一覧でございます。委員の数は45名ということで、ご覧いただきますように経済界、学者あるいは報道機関などの有識者で構成されております。全員ご紹介できませんけども、左の一番上に、今日お越しいただいている赤井先生、その幾つか下に上村先生、左側一番下には阪急電鉄の角会長。それから、右側上から3番目の竹中理事長にお越しいただいております。それから、下から6番目ぐらいに増田会長代理のお名前をご覧いただけると思います。こうした方々が一堂にそろって日本の財政問題について議論をする場というのは、唯一この場だけでございまして、大変貴重な場と思っております。

財政制度等審議会は、審議の節目ごとに財務大臣に対しましていわゆる建議を提出しております。建議の提出は例年春と秋の2回行っておりまして、春、今年も間もなくですけども、政府の骨太方針の取りまとめの前に、5月か6月に第1回の建議を行うと。また、秋にも建議を行っておりまして、これは予算の概算決定等に向けて、時期的には11月の下旬ごろに建議を行うということでございます。

この分科会では、建議の取りまとめに向けまして、社会保障あるいは地方財政などの個別の歳出の分野について各委員による非常に活発な議論を行っております。また、議論の模様につきましてはホームページで公表させていただいております。

以上が財政制度等審議会の概要のご紹介でございまして、本題に入りまして、我が国の財政事情についてご説明したいと思います。

まず、昨年11月、秋に公表した我々の建議で平成の財政について総括をいたしました。その内容をご紹介いたします。下線を引いた部分を読み上げますと、「税財政運営の要諦は国民の受益と負担の均衡を図ることにある」と書いてございます。しかしながら、上から3行目ですけども、税財政運営は常に受益の拡大と負担の軽減・先送りを求めるいわゆるフリーライダーの圧力にさらされる。平成という時代は、人口・社会構造が大きく変化する中で、国、地方を通じて受益と負担の乖離が徒に拡大をしてしまった。税財政運営がこうした歪んだ圧力に抗い切れなかった時代であったと評価せざるを得ないと、大変厳しい評価を下しております。その中略の下ですけども、こういう状況について、平成という時代における「過ち」と言っていますが、厳しい評価を行っておりまして、この過ちを二度と繰り返すことがあってはならないということを指摘しております。

この中で受益と負担という言葉が出てまいりましたけども、財政の問題を考える上での重要なキーワードでございますので、とどめていただきたいと思います。

次のスライドですが、我が国の財政事情として、一般会計の歳出と歳入の状況でございますが、ご説明いたします。

図の赤い折れ線グラフでございますが、これが歳出でございます。行政サービスを通じた国民の皆様方の受益に当たります。これが歳出。それから、青い折れ線が税収です。国民の皆様のご負担でございます。

左の上にワニの絵を描いてございますが、歳出と税収の差がまるでワニの口のように、先に行くほど開いているというのが今の日本の財政状況でございます。特にオレンジ色の枠囲みをしている平成2年、平成が始まった最初の2年度のところと、一番右側、令和元年、今年ですけども、これをご覧いただきます。平成は一貫してこのワニ口が拡大していると。ピンクの棒グラフですけども、受益と負担の差を公債発行で賄ってきた時代。平成の初期のころは何年か、赤字公債がゼロになっています。そこから徐々に増え始めて、毎年毎年、赤字公債発行をしているという状況であります。

次のスライドですが、この中身をもう少し詳しく見てみたいと思います。

平成2年度と令和元年度の歳入、歳出の比較でございますが、歳出のところで、赤色の社会保障関係費とオレンジの国債費が増えています。その分、右下ですけども、黄色の特例国債、いわゆる赤字公債の発行が、平成2年はゼロだったんですけども、今は25.7兆円と大幅に膨らんできています。その他の歳出項目をご覧いただきますと、ほとんど数字が変わっておりません。我が国の財政問題は社会保障の問題そのものであるということをご理解いただけると思います。

次の図ですが、ストックの状況、公債残高の累計でございますが、毎年の歳出と税収の差を公債発行で穴埋めしてきた結果、国の公債残高は増え続けております。平成2年度の末で166兆円だった。この公債残高が令和元年度末では5.4倍に拡大していまして897兆円に増える見込みということでございます。

次の図でございますが、この増加要因を分析したものでございます。左側、歳出面では、プラス316兆円と書いてございますが、高齢化の進行等に伴う社会保障関係費の増加。それから、歳入面、これは減税などによる税収の落ち込み、マイナスの194兆円という数字がご覧いただけると思いますが、こういったことが主な要因になると。国民の皆様方の受益である社会保障の費用が膨らむ一方で、それに見合うご負担を十分いただけてこなかった。こういった説明で、この分析の7割は説明できると思っております。

次の図でございますが、その結果として、各国の比較でございますが、経済規模、GDPに対する債務残高の割合、日本は右下にございますが、対GDP比235.6%と188カ国中で最も高い、最も財政状況が悪い国だということであります。

次の図をお願いいたします。

社会保障についてもう少し詳しく見てみたいと思います。

我が国の社会保障、基本的には社会保険方式です。すなわち必要な給付を保険料でいただくということであれば給付と負担の関係も分かりやすいはずでございますが、しかし、実際は高齢者の医療・介護給付費などを中心に、先ほどから説明していますように、公費の負担、いわゆる税財源で賄われる負担でございますが、この公費の負担がかなり高い構造になっています。ところが、右図の赤い点線の囲い部分をご覧いただけますように、この公費の負担を賄う税財源が十分に確保できていない現状です。国債発行によって給付の一部を賄った結果として給付と負担のバランスが損なわれている。こういう図式でございます。将来世代に負担が先送りされているという姿でございます。これが財政悪化の最大の要因になっているわけでございます。

次のスライドをお願いします。

特に75歳以上の方の1人当たりの医療費、あるいは要支援・要介護認定率は大幅に上昇しますので、今後、高齢化が進みますと医療・介護費用がGDPの比率でも、この図のようにだんだん増加していくということが見込まれるわけでございます。

最後、17番目の図でございますが、まとめといたしまして、この図をご覧いただきたいと思いますが、国民の受益のGDPに対する比率を縦軸に書いてございます。それから、国民の負担額のGDPでの比率を横軸にとってございます。各国の数字をこの中にプロットしてございますが、OECD諸国のほとんどは受益と負担が水色の囲ったところ、我々は天の川と言っていますけども、この天の川の上に乗っているわけです。右に行くほど給付も多くて負担も多い高福祉高負担の国、左のほうが低福祉低負担の国になるわけでございますけども、日本は、赤い線ですけども、ご覧いただきますように天の川から外れておりまして、左上のほうに位置しています。2015年のところを見ていただきますと、赤く丸をつけてございますが、社会保障給付が中程度、25%程度であるのに対しまして国民負担が低い。だから、中福祉で低負担の国であると。中福祉であれば中負担でないといけないんですけども、日本は中福祉低負担の国だということがご覧いただけると思います。

この中福祉低負担にあらわれる受益と負担のギャップが現在の政府の借金である赤字公債、将来世代への負担の先送りの原因になっているということです。そして、このまま何も対策をせずに高齢化が進みますと、将来的には我が国はますます天の川から外れていく。上のほうに点線で描いてございますけども、支出だけ増えて負担のほうは一向に増えない構図になっているということが懸念されるわけでございます。

こうした状況が続きますと誰が困るかといいますと、私たちの子供、孫、あるいはひ孫の世代であります。令和という新しい時代、さらにはその先の時代を生きる人たちが大きな負担を強いられることになることは明らかであります。今の時代を生きる私たちがこの受益と負担のバランスを回復しなきゃいけない。自分たちの給付は自分たちの負担で賄う、そういった責任を果たしていくことがやはり必要ではないかと思います。

私たち財政制度等審議会では、平成の時代の過ち、こうした状態にしてしまった、これを繰り返さない、将来世代の代理人になるんだと、そういった固い決意のもとで、令和の時代の財政の在り方というのをしっかりと検討して、また、改革をしてまいりたいと思っております。

今後とも私どもの取組みに対しまして皆様方の色んな形でのご理解、ご支援をいただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

以上で私の講演を終わらせていただきます。ご清聴、まことにありがとうございました。(拍手)

〔 事務方(髙木近畿財務局総務課長) 〕 榊原会長、ありがとうございました。

第2部に移る前に準備を行いますので、しばらくお待ちください。

(会場準備)

〔 事務方(髙木近畿財務局総務課長) 〕 準備が整いましたので、第2部を始めさせていただきます。

第2部のテーマは、「関西知事の改革・取組事例~国民健康保険における受益と負担の見える化~」でございます。

司会は、財政制度分科会、増田寛也会長代理に交代します。それでは、増田代理、よろしくお願いします。

〔 増田分科会長代理 〕 皆さん、こんにちは。ご紹介いただきました増田でございます。着座のまま、失礼いたします。

本日は、この地方公聴会にお集まりをいただきまして大変ありがとうございます。また、インターネット中継も行われておりますけれども、ご覧をいただきましてありがとうございます。

財政制度等審議会 財政制度分科会の会長代理を務めております増田でございます。

これから第2部として、3府県の知事、そして副知事の皆さん方のプレゼンを行って、その上で議論を行ってまいりたいと思うんですが、第1部の榊原会長の講演、そして、この第2部への橋渡しとして、第2部でこれから国民健康保険について取り上げるわけですが、なぜいわゆる国保を取り上げるのか、私のほうから簡単にご紹介をして、それからプレゼンに移りたいと思います。

お手元の配付資料、資料ナンバー2でございますが、こちらをご覧いただきたいと思います。2枚の簡単な資料ですが、1枚目を今、スライドで投影しております。

実は国民健康保険法というものが成立しましたのは戦前です。昭和13年にこういった法律が制定をされ、これがスタートなんですが、次の大きなポイントは昭和36年(1961年)になりますが、いわゆる世界に冠たる国民皆保険制度が実現したと。東京オリンピックの3年前になるんですが、健康保険証を持って医療機関に行けば、財産の有無にかかわらず、皆さんきちんとした治療を受けられる。ほかの国々では保険に入っているかどうかを聞かれて、そうでない場合には診療拒否されると、こんな国柄もあるわけですが、日本の場合には国民皆保険、こういう制度がスタートしたわけであります。

その後、平成30年、国民健康保険の、これからプレゼンの中にも出てくると思いますが、都道府県化というものが行われました。先ほど、第1部の榊原会長のご講演の中でも再三出てきたキーワードとして、受益と負担のバランスをとっていくことが重要と、こういうお話がありました。医療給付、それには必要な負担が伴うんだと。「中福祉・中負担」というような言葉がありましたが、やっぱりそうあるべきではないかということなんですが、今私が申し上げました国民健康保険、国保は世界に冠たる国民皆保険制度の最後のとりでと言われているものであります。その国保が昨年の4月から都道府県広域化をされました。

次のスライドのほうに移っていただけますか。

少し字が細かいんですが、このスライドの真ん中から下が、左側が昨年4月以前の姿でございまして、国保を市町村が個別に運営すると、そういう形になっておりました。そうしたスタイルを、責任を都道府県が担うということで右側のほうに移行させたわけであります。そうなりますと、従前から都道府県というのは地域医療提供体制を整備するという、そういう責任を担ってきました。いわゆる給付側の責任を担ってきたわけですが、そこに保険料という負担を、バランスをとるために都道府県が全て一本化して、それでバランスをとっていこうと、そういうバランスをとりやすい仕方に変えたと、こんなふうにご理解いただければよろしいかと思います。

そうなりますと、実は左側の市町村が個別に運営していたときには、それぞれの市町村長さんの判断などで、いわゆる法定外繰入れと言われておりますが、一般財源のほうから保険のほうに支援をして保険料を切り下げると。負担とバランスをいわば少し崩すような形が多く行われていたわけでありますけれども、受益と負担の関係をわかりやすくするというためには、市町村独自のそのような法定外繰入れを解消していかなければいけない、そういったものをやめていかなければいけないと、こういうことになります。

そこで、実は今日、こちらにおいでになっている、まさにこの近畿圏の地元の3県でありますが、滋賀県、そして奈良県、大阪府が、府県内の保険料を一本化という非常にわかりやすい形、住民に見やすい、そういう形できちんとした府県の責任を果たしていこうと、そういう府県でございます。要はそのような大きな保険制度の改革、持続可能性を高めるための改革にチャレンジしている3府県がここ関西であって、その3府県を代表する知事さん方が今ここにそろっていらっしゃると、こういうふうにまず皆さん方にご理解をいただきたいと思います。

具体的な取組みはこれからプレゼンがありますので、そちらを拝聴していただいた後、議論ということでございますが、恐縮ですが、各県の知事さん方には10分程度で冒頭ご説明をいただきたいと、こんなふうに思っております。

改めて私のほうから3名の方々をご紹介したいと思いますので、ぜひ拍手でお迎えいただきたいと思います。

まず、滋賀県の三日月大造知事さんであります。よろしくお願いいたします。(拍手)

続きまして、奈良県の荒井正吾知事でございます。よろしくお願いいたします。(拍手)

大阪府の吉村知事の代理で濵田省司副知事でございます。(拍手)

ありがとうございました。

それでは、パワーポイントが切りかわったようでございますので、滋賀県の三日月知事からご説明いただきますが、滋賀県、「『健康しが』を支える健全で安定した国保財政」、サブタイトルとして「国民健康保険制度改革の取組」と、こういうことでございます。それでは、知事さん、よろしくお願いいたします。

〔 三日月滋賀県知事 〕 ありがとうございます。

滋賀県から参りました。今、滋賀県はちょうど琵琶湖でアユがはねております。また、田んぼに水が張られて、稲が植えられて、山々に新緑がまぶしく育っていると。ツバメが営巣活動をしております。

その滋賀県では、「健康しが」というものを進めております。柱は3つございまして、私たち「人の健康」と、地域や経済「社会の健康」と、さらには琵琶湖や山々を含めた「自然の健康」。多様な主体の協力のもと、一緒に考え、進めていきたいと考えています。SDGsとはご案内のとおり国連の持続可能な開発目標でございますが、誰一人取り残さない持続可能な共生社会の実現を目指すものでございまして、滋賀県は県の政策にこのSDGsの視点を入れているところでございます。

平均寿命は男性が1位、女性が4位ということで、何でやねんということで内外から注目をいただいているところでございます。

一方、健康寿命は、客観的指標、これは介護保険の要介護認定による指標では男性が2位、女性が3位となっているんですが、主観的指標、国民生活基礎調査で「健康上の問題で日常生活に影響がありますか」との回答をもとに算出いたしますれば、男性は16位、女性は42位となってございます。

こうした2つの指標の間に隔たりがあります。県民の願いは、健康で長生きすることです。県民の皆さんの健康感を高めて、生き生きと生活していただきたい。その意味では、平均寿命と健康寿命の差を小さくしていきたいと考えております。

滋賀県はなぜ長寿なのか、その背景を分析いたしました。これは滋賀大学データサイエンス学部とともに分析をいたしました。全国47都道府県の統計データと平均寿命、健康寿命と生活習慣と生活環境との関連を分析いたしました。

結果は、寿命が長いことの直接の理由は想像にかたくないと思うんですが、主な病気(がん、脳血管疾患など)の死亡率が低いこと。なぜそうなのか、さらに理由を探りました。わかってきつつあることは、生活環境が整っていることと、生活習慣のよさと、そして寿命の長さが関連するということでございます。例えば完全失業率が低ければ多量飲酒する人の割合が低く、多量飲酒者が少なければ当然のことながら平均寿命、健康寿命が長くなります。また、自己啓発やボランティアの実施率が高い県ほど平均寿命、健康寿命が長いというデータ結果がございます。

健康であるためには生きがいを持つこと、社会との関わりを大事にすることも重要な要素であります。従来の健康医療福祉分野にとらわれず、色々な分野を巻き込んで、この「健康しが」の取組みを推進していきたいと考えています。

さて、滋賀県の国保については、今申し上げた「健康しが」を支える基盤でございます。本県の国民健康保険の基本理念は持続可能な国民健康保険の運営ということでございまして、この基本理念を実現するために3つの方向性を掲げています。保険料負担と給付の公平化、保健事業の推進と医療費の適正化、そして国保財政の健全化でございます。

本県の市町国保の財政状況は比較的ようございます、おかげさまで、平成29年度収支差額は全市町で黒字でございますし、平成29年度決算補填等目的の法定外繰入れはございません。平成28年度収納率は全国で5番目となってございます。本県は、国保改革以前から国保財政の健全化が図られているというところでございます。

本県の国保の現状でございますが、市町の医療費水準の格差は1.2倍。これは全国で最小レベルだと伺っています。出産育児一時金、葬祭費(お葬式の費用)など、支給基準が全市町で統一できております。市町間での国保の共同事業も進んでおります。市や町の意向も、保険料水準の統一に向け、前向きな市町が多いということがございます。

本県の考えといたしましては、国保改革は県内の助け合いの輪を大きくするための改革であると認識しています。したがって、住民の方の保険料負担の算定過程を見える化してわかりやすくすることが肝要だと考えています。こういったことで、県全体の被保険者の負担と受益の公平化を図っていくこととしたところでございます。

本県が目指す保険料水準の県内統一のイメージでございますが、現在は市町が個別に保険料を算定しております。本県の目指す保険料水準の統一につきましては、県内のどこに住んでいても、同じ所得、同じ世帯構成であれば同じ保険料とすることでございます。

保険料水準の統一については、環境が整っていただけではなくて、県内市町に保険料水準の統一の意義を丁寧に説明し、協議を重ねてきた結果、現在のこういった状況に至っております。平成27年度に首長会議で、これは知事と市長と町長が集って議論する場なんですが、その場で出席された市長から保険料水準の統一に向け前向きなご発言をいただき、アンケートでも保険料水準の統一に前向きな考えの市町が大半を占める結果を確認しております。平成28年度には、同じ首長会議におきまして保険料水準の統一について大きな方向性を確認し、おおむね合意形成をいたしました。一昨年度、平成29年度には、保険料水準の統一と納付金算定において、医療費を各市町で支え合うことを決定したところでございます。

本県のもう1つの特徴といたしましては、滋賀県国保連合会を中心に、国保改革以前から事業の共同化が進んでおります。全国で唯一、平成20年特定健診の制度施行当初から県医師会と集合契約を実施いたしました。これにより、県内どこの医療機関でも健診を受診できる体制を構築しておりました。医療費等データを集約した基礎資料作成など、質の高い国保事業への支援が行われております。今後も被保険者の給付サービスの平準化に向け、さらなる取組みを進めております。

負担と受益の公平化。特に保険料水準の統一に向け、本県では段階的に取組みを進めています。第1段階は2017年度まででございまして、都道府県単位化への移行。現在でございますが、真ん中の第2段階、保険料水準統一方法の策定を現在行っております。次の第3段階では、これは2023年度までをターゲットイヤーにしておりますが、保険料水準統一までの準備期間といたしまして、2024年度以降、できるだけ早い時期の統一を目指して現在進めているところです。

本県では、単なる保険料水準の統一だけではなくて、医療費の適正化が必要と考えております。そのため、県民みんなでつくります「健康しが」によって、県民の願いである健康で生き生きと暮らす、活躍することの実現ができることを目指しております。結果として、医療費の適正化、国保の安定運営につながると確信をしております。

その「健康しが」の取組みについて、一部ご紹介申し上げます。

健康意識は高まっているんですが、若い人、とりわけ、私も40代なんですが、40代、30代、そういった世代はまだまだ自分事と思っていないという傾向がございます。そこで、誰でも意識しなくても健康的な生活習慣が身につくように、おのずと楽しく健康的に過ごせる環境をつくっていきたいと考えています。

例えば「健康しが」ツーリズム。健康づくりに関連づけられる県内の地域資源の発掘でありますとか、発信・整理。また、それらを組み合わせた周遊来訪コースを魅力的にお伝えすること。民間企業の皆さん、団体等の皆さんが、健康プログラムの企画に活用する素材の提供などを現在行っているところでございます。また、こういった取組みをお互いに共有する場といたしまして、「健康しが」共創会議というものを立ち上げ、地域の企業、団体など現在141団体にご参加いただいて、様々な取組みを共有する場というものをつくっているところです。例えばそういった中で、宿泊施設が地元産食材を使って食事メニューを提供されたり、老人クラブが情報を活用してウォーキングイベントを企画なさったり、おいしい食とアクティビティを体験する日帰りツアーなども企画が始まったところでございます。

また、民間企業の皆さんとの協働が非常に重要だと考えておりまして、例えば「滋賀めし」は、滋賀県産野菜を塩分を増やさずにおいしく召し上がっていただけるメニューの提供でございまして、味の素株式会社様と滋賀県とで「勝ち飯」×「滋賀めし」メニューのPRを展開させていただいたり、カゴメ株式会社様と滋賀県とで「滋賀めし」のメニューコンテストなどを行っているところでございます。

ご清聴ありがとうございました。こういったことで国保の健全運営にこれからも努めてまいりたいと存じます。ありがとうございました。(拍手)

〔 増田分科会長代理 〕 どうも、知事さん、ありがとうございました。

続きまして、奈良県の荒井知事からご説明いただきたいと思います。10分程度でご説明いただきますが、会場の皆様方、資料4でございます。奈良県の資料は4でございます。それでは、知事さん、よろしくお願いいたします。

〔 荒井奈良県知事 〕 奈良県からは、国保改革の取組みでございます。「受益と負担の総合マネジメント」という題でございます。三日月さんは40代ということでございますが、私は70代でございますので、それなりの説明をさせていただきたいと思う次第でございます。

1ページ目でございますが、「奈良モデル」の中で行ってきましたということでございます。

奈良モデルというのは、奈良県と市町村の連携・協働の仕組みでございます。真ん中に書いてある「奈良モデル」における県の役割の考え方は、サッカーのミッドフィルダーということでございます。オシムさんが「よく考えて、よく走れ」。配球が一番大事なんですけど、場合によってはゴールも入れますよということでございます。県と市町村は、予算、土地など総資源を総動員して活用しようということでございます。「奈良モデル」の取組みは、消防の広域化とか医療の病院の再編、ごみ処理広域化などで成功しておりますが、国保の県単位化もこのようなやり方で行ってきております。

2ページ目、国保県単位化のこれまでの取組みでございます。

県・市町村サミットというのをほとんどの会議でやっております。これまで100回以上やってまいりましたが、県内の市町村長と知事が合意形成の場、勉強の場としてやってきております。そこで全国に先駆けて国保改革をスタートさせたという経緯がございます。平成24年5月に国保の県単位化(統一保険料)を目指すことを提案いたしまして、平成27年には平成30年度からやろうよということになってまいりました。その際、市町村からは業務の共同化もしようというような提言がありまして、平成29年には合意の形成が図られたという経緯がございます。

3ページ目でございますが、国保改革の取組みでございますが、3つのポイントがございます。県の受益と負担の総合的なマネジメント、2つ目は法定外繰入れの解消、3つ目は保険料格差の解消=保険料負担の平準化ということでございます。これは県内どこでも、同じ所得、世帯構成であれば同じ保険料にしようということはサミットで合意した方向でございます。国の取組みと同じ方向だというふうに思っております。

4ページ目でございますが、県民の受益と負担の総合マネジメントをどのようにするかということでございますが、先ほど榊原会長は、国のマクロの観点から受益と負担のマネジメントとおっしゃいました。これは国保というフィールドでのどちらかというとミクロなマネジメントだと思いますが、これまでは市町村の中で均衡が図られていなかったのを県域にして均衡を図ろうという取組みだと認識をしております。

具体的な受益と負担の数字を申し上げますと、そこに書いてございますが、令和6年で達成しようという目標でございますが、医療費受益でございますが、医療費の支出は1,177億と見込んでおります。現在の受益水準、医療費水準をトレンドで伸ばしたものでございます。また、右のほうでございますが、それぞれの負担のホルダーがいますが、保険料における負担は218億でございます。これを県内の被保険者数が30万6,000人おりますので、それで割り戻しますと7万1,158円になります。それに介護保険と後期高齢者保険の納付金を加えますと11万3,736円というのが平均の負担になるという計算をしております。

受益と負担が均衡しない場合、2つのケースがございますが、医療費受益のほうが負担の割合よりも多い場合、これは国においては今財政で説明されたとおりでございます。それをどのようにするかというオプションでございますが、赤字補填の法定外繰入れはその場合もしない、事後補填はしない、決算後補填はしないというふうに考えております。そういたしますと、保険料負担の引き上げか、支払い診療報酬総額の引き下げかというふうに理論的になるわけでございます。

県民の負担のほうが医療費を上回る場合、これは余りが出ますので、将来の医療費増に備えた基金の積み立てか、保険料による総額負担の引き下げか、支払い診療報酬の引き上げかというふうなハッピーエンドになるわけでございます。

このようなことを発表しますと、地域診療報酬の引き下げがあり得るということを申したわけでございますが、医師会が反発しまして、そこで選挙もありますのでこのような文書を約束いたしまして、医療提供者が全体として効率的な医療提供を行うのであれば、地域の医療費に特異な増嵩が生じない限り、地域別診療報酬は引き下げないということを私は文章で書いたわけでございます。これは前から言っていることを文章にしたわけでございます。誤解があった面がございますが、医師会は納得されて、これでやってくださいと。

そこで議論をしてわかったことは、個別の医療行為じゃなしに全体として保険でございますので、特異な増嵩があると困るねということと、特異な増嵩というのはまだわからないんですけど、どんなものがあるのかと。このようにトレンドに沿って伸ばすのはいいということでございますが、特異な増嵩というのは色々なケースがあろうかと思いますが、意図的な増加というようなことはめったにないことでございますが、そのようなことも考えられます。

その地域別診療報酬は、医師会の方が言っておられましたが、「伝家の宝刀ですね。刀を用意するのはいいですけども、めったに抜かないでくださいね。床の間に飾ってくださいね」というふうにおっしゃっていますので、非常に真剣にこの医療費適正化を考えていただけるような気配ですので、時々床の間に手をかけるような格好をするわけですね。場合によっては抜きますよというような格好だけするんですけども、いやいや、そういうことはまねでもやめてくださいと、こういうような感じでございますので、めったに抜かないと思いますけれども、理屈としてそのようなことがあると。顛末でございます。

5ページ目でございますが、法定外繰入れについてはしないと。法定外繰入れは現在ほとんど解消しております。この中の数字は平成29年の実績でございますが、30年度は解消しております。

その中で、累積赤字のための法定外繰入れがあったわけで、累積赤字が数億、奈良県でもございます。4町村ありますので、どのように累積されたか調べたら、4年ごとに累積がぽっぽっと上がっている町もあるんですね。4年ごとというのは、選挙の年に、選挙の前にぽっぽっと法定外繰入れをして保険料を上げない、見事な首長さんがおられたというふうに、いや、それは確かめていませんが、そのようにも見えますので、これはあまりやっちゃいけないことかなと思いますが、そのような実績がある中での、あるいは財政が弱いという市町村もありましたので、実績としてたまっております。これはほかの市町村でもたまってきておりますので、これは過去債務ということでございますが、別途整理のやり方が必要かと思います。

6ページ目でございますが、どのように受益と負担の均衡を図るのかということになります。1つ、見える化というのを大きな手法で使いたいと思います。

この6ページ目にあります、左のほうが現行でございます。法定外繰入れが現行は行われております。真ん中の下のほうでは、市町村と協議をして保険料改定の方針を策定しようと。これが「奈良モデル」的であるわけでございます。この過程を見える化しようと。その中で、国のほうで激変緩和措置を入れていただきましたので、国の公費を活用するというのを前提にして激変緩和を図るということでございます。

その右のほうでございますが、抑制のためには公費の有効活用、それから抑制的な医療費目標、医療費適正化に向けた取組み。伝家の宝刀、伝家でもないんですけども、床の間の飾りの宝刀でございますが、地域別診療報酬の活用というようなことで、このトレンドを守るようにしようと思っております。結果として、県内の統一の保険料が達成できて、法定外繰入れが廃止されると。

7ページ目でございますが、組織はこのように変えましたということでございます。

8ページ目でございますが、一体的な実施体制を整えました。国保事務支援センターをやって、そこで県が参画してやろうということでございます。大きな業務の効率化もありますが、エビデンスをつくって医療費適正化の見える化を図ろうというのが大きなことでございます。

9ページ目でございますが、医療費適正化の推進でございますが、ジェネリックから重複抑制とか色んなことを考えて。県では、市町村別も1人当たり医療費は1.6倍の差があります。それはどうしてそういう差が起こったのかということを研究しながら分析をして、起こらないようにしようよということをずっとやってきております。

10ページ目でございますが、医療構想の推進で、総合的マネジメント、これは県域で3つの責任が生じているということでございます。

11ページ目でございますが、医療提供体制の明確化。一般病床中心でございましたが、病院機能、病床機能を分化しようといった中で、急性期至上主義がずっと出てきた7対1(ナナイチ)看護から、診療報酬が高いところへ医療提供者はなびくという傾向がございますので、あまりなびかないでくださいと。断らない病院と面倒見のいい病院ということを一般病床でも分けていこうというふうに考えて、それを説得しております。武器としては、エビデンスを持って説得するという手法でございます。鞭と通達じゃなしに、エビデンスと説得でこれを達成しようという試みをしております。

12ページ目でございますが、このような医療構想実現に向けて地域金融機関との連携を図りたいと考えて、新しいニュープレーヤーだと思いますが、病院は必ずある程度借金をされておりますので、借金をして投資される、その投資の方向が地域のマーケットの動向にフィットしているかどうかということを金融機関からも判断してもらおうと。金融機関と我々がつくったエビデンス、マーケットのトレンドの将来の行き着く需給バランスの情報を共有化しようと。金融機関とも共有化して、そんなところに投資してももうからないよということを共有化されたら説得してもらうといったような、プレーヤーになっていただきたいと思っております。

13ページ目は参考で、医療資源の適正化。これは県立、公立病院の適正化で成功した例を挙げております。

以上でございました。ご清聴ありがとうございました。(拍手)

〔 増田分科会長代理 〕 どうもありがとうございました。

限られた時間で恐縮でございますが、続きまして、大阪府の濵田副知事からご説明をお願いしたいと思います。10分程度で恐縮ですが、お手元の資料5のほうを皆様方ご覧いただきたいと思います。それでは、濵田副知事、よろしくお願いします。

〔 濵田大阪府副知事 〕 それでは、大阪府の国民健康保険改革の状況のご説明をいたします。

資料の1ページをお願いいたします。

国民健康保険は、ご案内のように自営業者の方とか退職されたサラリーマンの方々が中心の保険でありますけれども、上に書いてございますように平均年齢が高うございます。ほかの被用者保険が30歳代なのに、国保は50歳代とかですね。医療費も高くかかっております。下をご覧いただくと、倍ぐらいかかっているという感じがあります。そうなりますと保険料の負担がどうしても高くなるということがありまして、特に大阪府は、表の一番下をご覧いただければわかると思いますが、ほかのサラリーマンの方々の健保よりも高い、その国保の中でもさらに高いという形で、非常に国保の財政状況は厳しい状況にございます。

次のページをお願いいたします。

その上に、このままの状況が続きますと、将来、大阪府内の市町村間の保険料の負担水準の格差が非常に拡大をするということが見込まれました。一番上にございますように、平成28年現在、この格差は6万円ぐらいでございますが、2040年、二十数年先にはこの格差が19万円になる。全体の水準も上がるんですが、格差も3倍ぐらいに上がってしまうということでございます。これですと、非常に保険料が高い市町村では、国民健康保険といっても破綻状態になってしまうんじゃないかという心配がございました。

下に書いてございますように、保険料上昇自身はやむを得ないわけですが、全体としても、府一本でやっても下にありますように倍ぐらいにはなってしまうわけですが、とんでもない高い保険料は是正されて、府内の負担の公平性を確保すると。こういう意味で、府内の統一の保険料に持っていこうと、こういうコンセンサスが市町村内の間にも生まれたということでございます。

3ページ目をお願いいたします。

ただ、先ほど申しましたように、非常に大阪の国保は全国にもまして厳しい状況でございました。非常に所得の低い方も多いということでありまして、いただくべき保険料が集められていないということが主たる原因で、下の左のほうに書いておりますが、平成20年度にはこの国民健康保険が累積赤字で全部で800億円以上の大きな赤字があるという状況でございました。

これでは府のほうに一元化をしていくといっても重荷が大き過ぎますので、これを計画的に解消していってくれということを我々のほうで平成24年に要請をいたしまして、赤字解消計画をお立ていただいて、これがほぼ順調に計画どおりに減ってきておりまして、直近では右下にありますように62億円、7団体までこれが減っておりまして、一番下に書いてございますように再来年ぐらいまでにはこの累積赤字は解消できるという見込みになりました。

それから、4ページをお願いいたします。

こういう形で保険料の統一を進めていこうというところが、どうして進んできたかということでございます。

右上に書いてあります、平成22年に大阪府・市長会、それから町村長会、3者が共同してこの保険料を統一していこう、国に対してそのための制度改革をしてほしいという要望をいたしました。これは先ほど申し上げましたような市町村間の格差をこのまま放っておきますと、二十数年先にはすごいことになってしまう。これではとても持続可能性がないので、これを何とかしてほしいという要望をしたということでございます。

国のサイドは、こういうこともありまして、税と社会保障の一体改革の一環として、国保の改革の法案の成立を図っていただいたのが平成27年5月でございまして、この法改正を受けて具体的な取組みを市町村と相談してまいりました。

5ページをお願いいたします。

具体的にどういった考え方でこの改革をしてきたかということでございます。

左側にございます、先ほど来、滋賀県さん、奈良県さんからもございましたように、被保険者間の負担の公平化を目指すというのが一番左側の柱でございます。そのためには府内の統一保険料を実施する。同じ所得の人だったら同じ保険料にしていくと。それから、法定外の国の基準以外の赤字を出していると、こういうものを解消していくというようなことでございます。

右側にありますように、医療費もできるだけかからないようにしていかなければいけませんので、同時に健康づくりとか医療費適正化というものを進めていくと。このために、医療費の状況を、市町村間で格差が色々ございますので、これを見える化をしていこうでありますとか、府独自のインセンティブの仕組みをつくっていこうと、こういうような取組みをしてきたというところでございます。

6ページ目をご覧いただきますと、こうしたことで、これまで滋賀県さんなどもおっしゃいましたように一遍になかなか保険料の統一は市町村間でできませんので、我々も6年かけてやっていこうと。

右下のほうがこの計画でございます。43の市町村のうち、半分以上は6年かけた最終年には保険料を統一したいということがございますが、逆に、受診時の一部負担金の減免基準なんかは制度スタートと同時に、平成30年ぐらいから半分ぐらいの団体は統一をしていくというような動きで来ております。

それから、7ページ目でございます。

法定外繰入れ、実質的な赤字を解消していくという問題でございまして、これは国の定義に大阪府の場合はさらに追加をしまして、いわゆる実質的な赤字、これをなくしていこうという計画を立てております。

これを見ますと、平成28年度、都道府県移管の直前、府に移管される直前でございますが、府の定義では123億円ほどの赤字がございました。実はこの3分の2は大阪市さんということだったわけでございますが、これをかなり劇的に改善していただきまして、平成30年度には20億円という数字まで改善をしております。1つには、これは国のほうが消費税率の引き上げ分で国庫負担金の充実をしていただいたという要因が大きいわけでございますが、左下に書いておりますように、各市町村も保険料の収納率の引き上げといった努力をした結果であると考えております。

それから、8ページは飛ばしていただきまして、9ページ目をご覧いただきたいと思います。

健康づくりとか医療費適正化でございます。

これは、先ほど三日月知事からありました滋賀県さんのうらやましい状況から比べますと、大阪府の場合、よくございませんで、健診の受診率は低いし、平均寿命も健康寿命では全国平均を下回っているという状況でございます。

そういう中でございますので、下の左側に書いてございますように市町村の保健事業の支援を大阪府も強化していこうということにしておりまして、1つは、市町村の課題を詳細に分析して、医療費適正化に向けた課題の見える化をしていくということをやっております。もう1つは、「重点課題への取組み強化」と書いてございますが、3つ掲げておりまして、糖尿病性腎症の重症化の予防、2つ目はいわゆるジェネリック医薬品の使用促進、3つ目が、重複して受診したり薬をもらったりと、こういうものをできるだけやめていこうと、この3本柱の取組みを進めているところでございます。

10ページも飛ばしていただきまして、11ページ、健康づくりということで、少しユニークな取組みということでご紹介をさせていただきますと、「アスマイル」とつけておりますが、一種の健康ポイント制度をかなり大々的にやっております。今年の1月から試行的に3市町でスタートしておりますが、12ページにも書いておりますように向こう三、四年の間に大阪府内、参加目標30万人まで、全国一ぐらいの規模になるまでこの健康ポイントを拡大していきたいと思っております。健診を受けたり運動したりということでポイントをとっていただきまして、抽選に当たると電子マネーが当たると、こういうことで健康づくりを進めていくインセンティブを個人の方にも高めていこうということでございます。

13ページをお願いいたします。

こうしたことで取り組んでまいりましたが、今、我々が一番悩んでいることは、やはり保険料がどうしても上がっていかざるを得ない状況だということでございます。

上に書いてありますように、統一した30年度は12万7,000円ぐらいの平均保険料が、31年度、国の示したルールに従って計算しますと伸び率9.2%、1割近い増になっています。毎年1割の保険料が上がっていきますとなかなか保険の制度としてきついということで、伸びの分析をしますと、下に書いてありますように医療費が増えていくところで半分ぐらい、それから国保の高齢化で加入者の方々が減ってしまうと、こういうことで半分ぐらいの影響があるということで、後者はしようがありませんけれども、何とか医療費はできるだけ上がらないような努力をしていかなきゃいかんと思っております。

そうした中でございますので、14ページの国に対する要望でございます。

色々書いてございますが、4行目ぐらいに書いてあります、当面の重要事項の1に書いてありますように、被保険者の保険料負担ができるだけ軽減と書いてありますが、上がらないように我々も努力していきたいと思っておりまして、そのための財源の確保ということについて国からはぜひご協力をいただければと考えているところでございます。

以上でございます。(拍手)

〔 増田分科会長代理 〕 お三方の知事さん、副知事さんにご説明いただきました。ありがとうございました。

今、最後のほうで国への要望等もございましたが、いずれにしても3県が三者三様のそれぞれ取組みをしていると。保険料県内統一という目指す方向は一緒なんですが、三者三様の取組みをしているということですが、その取組みをさらに進めていくに当たってどのような課題があるのか。それから、今、少しご披露ございましたが、国に対してどのような後押しをしてほしいのか、国がどのような後押しをすべきなのか、この点についてまた知事さん方にご意見、ご発言をお願いしたいと思います。すいませんが、お一方2分程度でお願いしたいと思うんですが、三日月知事からご順にお願いします。よろしくお願いします。

〔 三日月滋賀県知事 〕 ありがとうございます。2点ございます。

1点は、都道府県の努力を後押しする仕組みづくりでございます。保険料水準統一に向けた取組みを進めているのは、我々3府県に加えて、聞きますと広島県ということで、まだまだ少ないということでございます。国では保険者としての努力を評価して、その評価に応じて交付金を交付する保険者努力支援制度を設けていただいておりますが、この支援制度において、今紹介させていただきました保険料水準統一でありますとか法定外繰入れの解消に向けた取組みを重点的に評価していくと。そういった制度をつくることによって、受益と負担の見える化を後押ししていく必要があるのではないか。

2点目は、保険制度にかかわらず、健康づくりを考える事業を展開していることをもっと応援できないだろうか。将来の被用者保険も含めた医療保険制度の一元化を見据えますと、例えば今回新たに創設された都道府県国保ヘルスアップ支援事業については、国保における保健事業を支援することに限定されておりますが、これを国保だけに限らず、広く県民全体に活用できるなど、柔軟な対応ができる公費に再編していただきたい。

以上、2点でございます。

〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。

それでは、奈良県の荒井知事、お願いします。

〔 荒井奈良県知事 〕 我々の目標は、国保と、保険という分野でございますが、受益と負担の現世代での均衡というのが共通の目標でございます。

その観点から、1つは、先ほど累積赤字があると、色んな選挙のたびに増えたとちょっと揶揄しましたけども、そういうのもあると思いますが、そうでないのもあるわけでございます。財政がいいところは累積赤字がなしに、一般繰入れ、法定外繰入れでも解消している。このような過去債務をどうするかというのは、保険でやるとまたちょっと理屈がなかなか立たないところがございますので、別扱いで解消に向けた取組みを、このようないざというときは国の出番というふうに思うところでございますので、ご検討をお願いできたらと思います。

2つ目は、健康長寿、健康増進は色んなことで、三日月知事がおっしゃられましたように色んな分野でされています。その主体は、国でもありますし、県もありますし、市町村もありますし、老人クラブもあるわけでございますが、我々行政の目標として、健康長寿日本一になろうと、滋賀県を抜かそうと、こういうようなことを言っているんですけども、そのときの指標がばらばらであれば、知事さんはいいほうをとって悪いところを捨てて、うちは1位だとか3位だとかと、こういうことを言う可能性がありますので、できれば統一を。

強制できないですけども、客観指標がいいかと思うんですね。できるだけ客観指標で、これに依拠した目標にみんな寄り添って目標にしましょう、競争しましょうというようなやり方になればと。私どもは市町村を競争させているんですね。健康寿命と医療費を市町村別に比べると、必ずしもリンクしないです。医療費が高くても健康寿命が低い。市町村に「何をやっているんだ」と、こんなようなことを言うわけですけども、客観指標があればありがたいと思います。

〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。

今の健康寿命なんですけども、ご承知のとおり、さっきの滋賀県知事さんの資料のとおり、客観指標が非常に高いんですよね、滋賀県さん。主観指標のほうは、これは色んなとり方があるんですが非常に低くて、厚生労働省なんかはこっちを重視したりしているんですが、今の話なんかもまさにそのとおりかなと思って聞いておりました。

それじゃ、大阪府の濵田副知事さん、お願いします。

〔 濵田大阪府副知事 〕 我々のほうは、先ほど最後にも申し上げましたが、このまま推移しますと保険料の負担がどんどん上がってしまうということを心配しております。高齢化が進む以上、ある程度は仕方がないのですが、それを抑えるためには医療費の適正化の努力も我々はしていかなきゃいけないと思っております。

その点で、1つ具体例を出して国のほうにも協力をお願いしたいのが、色んな医療費適正化のためのデータが必ずしもオープンになっていないというところでございます。具体的には、糖尿病の重症化予防の取組みを一生懸命、今我々はやっているんですが、では、全国の各市町村でどれだけ透析の患者がおられて、透析の医療費が使われているかというデータがまだオープンにされていないのが現状でありまして、大阪府内の分は国保のレセプトデータをコンピューターを回しましてとれるんですが、全国的にそういうデータが全然ないので、色んな取組みが行われて、うちは先進事例ですと手を挙げるところはたくさんあるんですが、どこにどれだけ、どの町に、どこの市で、どういう成果が上がっているかというところがなかなか見えにくいということがあります。一旦透析になってしまうと年間500万とか600万という医療費がかかると思いますから、ここを目に見えてちゃんと抑えていければ、非常に効果が目に見やすい形で取組みが進むと思うんですが、それを評価していくためのデータが国のほうで必ずしもオープンにされていただいていないところがございますので、こういうものを進めていただくと、我々も先進的な団体に学んで医療費適正化の取組みを進めていく上で助かると思いますので、そういった面での国の支援もお願いできればと思っております。

以上でございます。

〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。

今、お三方からお話しになった点はこの後の国に対する申入書の中にも入っているかと思いますし、いずれにしても国のほうでしっかりこういった問題提起を受けとめていく必要があるなと私は思いました。

それでは、今の3県の、まさに近畿圏内で行われているすぐれた3県の取組みをお聞きになったかと思うんですが、実はこれから大事なのは、近畿圏でもほかの県もありますし、そして、全国の都道府県がこういった問題に全体として取り組むことが社会保障制度を持続可能なものにしていくということになるので、今後取り組む都道府県に対する先発県、先行している県としてのアドバイスやメッセージ、あるいはせっかく今日おいでになっている会場の皆さん方にさらにPRするようなこともございましたら、こちらも恐縮ですが2分程度で各県のほうでお願いしたいと思います。それでは、三日月知事さんからお願いします。

〔 三日月滋賀県知事 〕 アドバイスなんておこがましいものはないんですけど、3府県に共通しているのは、見える化で課題を共有し、そして、目標を共有した上で次のステップに進んでいくという、このプロセスを丁寧に大切に行っていくということが肝要ではないかと思います。

その上で、言わずもがなですけど、例えば生活習慣の改善でありますとか、各地域にいらっしゃいます健康推進員さんの地道な取組みでありますとか、医療関係者の方々のご尽力。床の間の刀の話は、私は県内でしたことないんですけれども、例えばそういう危機感や状況をしっかりとお伝えするということも含めて大変重要な取組みかなと思って聞いておりました。

また、一部ご紹介いたしましたけれども、企業の皆様方との連携。最近では滋賀県の人は長生きだということで、例えば生命保険会社さんから連絡があるとかですね。そのほうがいいんでしょうね、長く保険料を払っていただくという意味においては。例えば食品メーカーや色んなメーカーさんとの連携、こういったことをこれからも積極的に自治体としても展開してまいりたいと考えておりますので、ぜひ今日ご参集の企業の皆様方のお力添えや、また、そういった先進的な取組みを応援していただく国の取組みをこれからもお願いできればと存じます。

〔 増田分科会長代理 〕 それでは、奈良県、荒井知事、お願いします。

〔 荒井奈良県知事 〕 三日月さんと濵田さんがおっしゃいましたように、我々に共通しているのは健康長寿でありますけども、その手法として医療費適正化というのが大きなテーマでありまして、どのように達成するかということでございますが、目標を共有化、大賛成でございます。それと行動共同化、そこからプロセスの見える化というのが共通したことでございますが、そのような中で、端的に言うと、結局首長のやる気で随分違うのかな。それから、医療提供者が非常にモデストになれば随分違うのかな。そのような目標共有化というのは、医療提供者も一緒に医療費適正化にも向けていただきたい。

地域診療報酬の話をしたら、非常に「俺たちはちゃんとやってるよ」という声があって、それはミクロでございますのでそのとおりなんですが、全体として増えるのはどういうわけかということは、これはデータでしか分析できませんので、見える化というのは差異分析が必要かと思います。差異分析は、「そこでどうして奈良県みたいなところでも1.6倍も1人当たり医療費に差があるの?」、それが年度で変化するんじゃなしに、ずっと定常的に続くんですね。「何か構造的に医療費が高いんじゃないの?」「あんたはちゃんとやってるの?」と首長を冷やかすわけです。そのようなことはずっと長年しているんですけども、原因がなかなかすぐにはわかりませんが、それをわかるように分析をできたらと思います。

それにはこのエビデンスの世界。エビデンスは大変な武器だ。もう1つ、それをどう使うかというのは、奈良県やったらナッジなんですね。エビデンスとナッジで戦おうということであって、通達と鞭でやる従来の霞が関手法から、エビデンスとナッジで、説得と証拠でやろうということを地方では今心がけておりますので、ご紹介したいと思います。

〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。

お二方から、見える化とか、それから首長のやる気とか、エビデンスとナッジという、こういうお話があったかと思います。

すいません、最後になりましたけれども、それじゃ、濵田副知事さん、お願いします。

〔 濵田大阪府副知事 〕 今回こういうテーマをいただきまして、府庁の中でどうしてこういう形で大阪府の場合、保険料の統一という動きが進んだのかなと部内で聞いてみますと、やはり先ほどお示ししたように、このまま放っておくと二十数年後には市町村間の保険料の水準がすごい格差になって、これはとても立ち行かない市町村がたくさん出てくると。この見通しを市町村長さん方と共有して、これはいかん、手を打たにゃということになったというのが非常に大きかったと聞いております。

実際、特に大阪府の場合は、面積は全国で2番目に小さい府県でありますし、わりあい市街地も連担して、人口密集地ということもありますから、国民健康保険に限らず、水道でありますとか、消防ですとか、そういったものも含めましてできるだけ大阪府内1つの事業体で統一をしていきたいと、将来的にそういうものを目指して広域化を進めていくという動きが進んでおりますけども、それにしてもやはり20年、30年の先の姿を見たときに、このままではもたないという共通認識を持ったところが大きかったと思います。

それで、各府県、まだ取り組めていない府県におかれましては、ぜひ20年、30年後の姿の推計というようなものを府県でも明らかにして、これをどうしていくのかと。特に保険料がどうなっていくのかというところで、まさしく受益と負担の問題というのを我が身のこととして考えていくような工夫をされたらいいのではないかなと思います。

以上でございます。

〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。

この後、第2部は、それぞれの各県が今お話しになったようなことを、国だとか財政審の我々のほうに手交すると、申し入れをすると、こういうことでおしまいになるんですが、私のほうでまとめといいますか、受けた私の印象を申し上げたいと思うんです。

1つは、府県内の保険料の統一ということで3県とも共通をしているわけですが、知事さん方の強いリーダーシップで市町村を巻き込んできちんと改革を進めていると、そういう3県であるということが1つであります。

さらに、三者三様と先ほど申し上げたんですが、あえて言いますと、滋賀県の場合には健やか力のようなものですね、健康の健ということですが、健やか力ということを大変感じられる、それだけそういうことに力を入れて進めているなという印象と、それから、奈良県の場合には、市町村との連携、あるいは金融機関との連携、様々な取組みを1つのパッケージとして奈良県としては進めているなという印象がございました。それから、大阪府のほうは、まさに厳しい状況の中で果敢に改革を進めるという、突破力というようなものを背景に進めているなと、私も、これもまさに主観的な印象ですが、そんな感じを受けました。

この申入書の中にもあるんですが、先ほどもご指摘がございましたけども、特に滋賀県の場合に健康面での取組みですね。客観的な指標がと、これは滋賀は非常に高いんですが、主観的な指標ということで、ここで非常に大きく揺れ動くというのは本来は不思議な話で、こういう指標をきちんと統一して、それぞれの県民の皆さん方、あるいはほかとの比較がきちんとできるような仕組みにしていく必要がある。これはぜひ国でも考えていただきたいなと思います。

それから、奈良県の地域別診療報酬の検討ですとか金融機関との連携も、まさに国において真摯にこれを受けとめて検討していく必要があるのではないかと、こういうふうに思いました。

大阪府のほうで先ほどお話がありましたとおり、保険料率が上がっていくということで、それをうまくコントロールしなければいけないと。それも持続可能性と医療費適正化とをどういうふうに両立させるという切迫感のようなものを感じたわけですが、これもどこの県も直面する課題ですので、きちんと国としてどういう対応ができるか、受けとめていく必要があるのではないかと思います。

法定外繰入れがそもそもなかった、これは滋賀の場合がまさにそういうことだったと思うんですが、奈良や大阪では公費をうまく保険料上昇を抑止する激変緩和に使っているというお話がございましたし、そういうこともほかに全国の自治体に周知徹底するということも必要だろうと思います。

それから、奈良、大阪で府県庁内の組織再編に取り組んだと。ここも推進していく上で1つの鍵かと思いますし、それから、滋賀や奈良のお話の中で国保連の活用ということもございました。これも今後の体制整備を考える上で重要な点かなと、こんなふうに思ったところであります。

国としてこういった3県からの提言、申し入れをきちんと後押しをしていくと。そして、さらに模範例として広めていくということが喫緊の課題であるなと、こういうふうに思いました。私も財政審の立場で、こういったことを今後の建議の中にも反映していく必要があるなと、そんなことを思った次第でございます。

第2部は以上にいたしたいと思いますが、ここで3府県から、先ほど言いました国とそれから財政審への申入書の手交ということが行われますので、以降の司会を事務局にお返しをしたいとます。それでは、よろしくお願いします。

〔 事務方(髙木近畿財務局総務課長) 〕 それでは、申入書の手交をとり行います。

財政制度分科会を代表して榊原会長、増田会長代理、財務省を代表して伊佐財務大臣政務官、ステージ中央にお願いします。三日月知事、荒井知事、濵田副知事におかれましてもステージ中央にお願いいたします。

まず、三日月知事から申入書を読み上げ、伊佐政務官に手交していただきます。次に、荒井知事より榊原会長に申入書を手交していただきます。その後、全員で写真撮影となります。それでは、よろしくお願いいたします。

〔 三日月滋賀県知事 〕 国民健康保険制度改革の加速化を図るための申入れ。

3府県は、平成30年度からの国民健康保険の都道府県単位化を契機として、府県内の国保保険料水準の統一の具体的道筋をいち早く付けることにより、受益と負担の関係の「見える化」を進めてきた。

3府県は、3府県が進める種々の取組みこそが、持続可能な社会保障制度の構築に向けて、国保の財政運営の責任主体として果たすべき役割と認識している。このような認識のもと、3府県は以下を国に要望する。

1.3府県をはじめとする都道府県内の保険料水準の統一や法定外繰入れの解消等の取組みについて、優良・先進事例として認識いただき、保険者努力新制度の拡充の際の公費配分にその進捗を反映するなど、後押しをすること。

2.健康寿命の延伸に係る指標が様々であり、横比較や先進事例の把握・奨励がしにくい現状を踏まえ、信頼性が高く、毎年の動向を市町村単位で把握できる指標を検討すること。

3.3府県が進める医療費適正化に向けた様々な取組みが円滑かつ実効的なものとなるよう、国としてデータの提供を含め、必要な協力を行うこと。

4.市町村国保特別会計になお残る累積赤字について、府県内の保険料水準の統一の観点からは他の法定外繰入れとは別扱いすべきものであり、地域の実情を踏まえ、別途その解消に向けた取組みを国として強化すること。

令和元年5月13日、滋賀県知事 三日月大造、大阪府知事 吉村洋文、奈良県知事 荒井正吾。

よろしくお願いいたします。(拍手)

(写真撮影)

〔 事務方(髙木近畿財務局総務課長) 〕 ただいま申入書の手交がございましたが、榊原会長、伊佐政務官から一言お願いいたします。

〔 榊原分科会長 〕 ただいま3府県知事連名の申入書を受領いたしまして、大変重要な国保改革の加速化に向けてご提言をいただきました。財政制度審議会 財政制度分科会におきましては、この点をしっかり受けとめて議論に生かしてまいりたいと思っております。ありがとうございました。

〔 伊佐財務大臣政務官 〕 財務大臣政務官の伊佐進一でございます。本日は、麻生財務大臣にかわって申入書を頂戴いたしました。

様々、3知事からいただいた先進的な事例も含めて、国としても本当本当に非常に勉強になりました。いただいた要望については国としても真摯に受けとめて、しっかりと財政運営に取り組んでまいりたいと思っております。また、関係する会議体等もございます。経済財政諮問会議等、こういうところもしっかりと情報共有してまいりたいと思っております。

ありがとうございました。

〔 事務方(髙木近畿財務局総務課長) 〕 榊原会長、伊佐政務官、ありがとうございました。

申入書の手交は以上でございます。(拍手)

ステージ上の皆様はお席にお戻りください。

以上で、第2部を終了いたします。司会の増田代理、ありがとうございました。また、三日月知事、荒井知事、濵田副知事におかれましては、お忙しい中、出席いただきましてありがとうございました。皆様に拍手をお願いいたします。(拍手)

現在の時刻は、会場内の時計で14時28分でございます。ここで休憩を入れさせていただきます。14時45分まで休憩時間といたします。

(休憩)

〔 事務方(髙木近畿財務局総務課長) 〕 休憩時間は終了しました。皆様、ご着席ください。 

それでは、これより第3部を始めます。第3部は、地方公聴会のテーマにもなっております「令和の財政の在り方を考える」をテーマとしてパネルディスカッションを行います。また、後半では、一般公募でいただいた意見の紹介も予定しております。

モデレーターは、伊佐進一財務大臣政務官でございます。

それでは、伊佐政務官、よろしくお願いいたします。

〔 伊佐財務大臣政務官 〕 皆さん、こんにちは。ご紹介いただきました財務大臣政務官の衆議院議員の伊佐進一です。

本日は、皆さんお忙しい中でこうしてお集まりをいただきまして、ほぼ満員という状況で、本当にたくさんの方々にお集まりをいただきました。また、インターネット中継を見ている方々も含め、御礼申し上げたいと思います。

私自身、この大阪の選挙区、大阪6区というところでございますが、この私の地元大阪でこうして地方の公聴会が財政審で開かれるのは13年ぶりと。この地元大阪でということ、非常にうれしく思っております。もし今回この大阪、今13年ぶりと申し上げますが、もし成功すれば、これから事務方もさらに違う地域で、地方でということで開催も考えていくのではないかなと思っておりますので、しっかりと盛り上げていきたいと思っております。

今回のパネルディスカッションも、引き続いて、この「令和の財政の在り方を考える」ということでございます。私自身、当選させていただいてから社会保障、介護や医療、あるいは子育て支援について様々関わらせていただいて、そこで法案も色々と審議させていただきました。常にやはり政治家の中でも頭にあるのは、この財政との関係をどうしていくかと。どうこの社会保障を持続可能化ならしめるかという点でございます。

もちろんこの各分野分野でそれぞれの課題解決に向けて議論していくというのも大事なんですが、これ、どこかで根本的に財政との在り方について徹底的な議論が要るんじゃないかと考えておりました。こういう折に、今回、財務大臣政務官という任務をいただきまして、省内でも精力的に今議論をさせていただいておりますが、また、財政審の先生方からもご示唆を様々いただいておるところでございます。

先ほど榊原会長のほうからも基調講演でありました。我が国の財政事情というのは非常に厳しいと。昨年11月の財政審の建議、この平成という時代における過ちを二度と繰り返すことがあってはならないという非常に厳しいご指摘を政府に対していただいております。この新しい時代の財政と社会保障をどうしていくのかというところを本日議論させていただきたいと思っております。

また、同時に、地方公聴会でありますので、地方と東京都はそもそも違う点も多々ございます。そういう意味で、3知事からも色々とご意見、ご示唆いただいたところでありますが、このパネルディスカッションにおきましても、関西、また、大阪の事情というものも踏まえつつ、地方財政について議論させていただきたいと思っております。

それでは、パネリストの皆さんから自己紹介も兼ねて1人4分以内でお話をいただきたいと思います。順序につきましては、まず、関経連の松本会長から時計回りで西村副会頭という形でご発言いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

〔 松本関西経済連合会会長 〕 皆さん、こんにちは。関経連の松本でございます。1番バッターでございますので、ちょっと緊張しておりますけども、言いたいことは言わせていただきます。

本日は、このような地方公聴会を開催いただきまして、まことにありがとうございます。かねてから日本の税財政の在り方につきまして、国に対する意見発信を行ってまいりましたが、このように広くご意見を交換させていただく機会は大変貴重であると考えております。

関西では、現在大きなプロジェクトが多数進行してございます。ワールドマスターズゲームズ2021、それから、2025大阪・関西万博、また、夢洲へのIR誘致などは、関西の活性化につながり、ひいては日本の経済成長も牽引するものと期待しております。こうしたプロジェクトによる経済活性化が期待されるものの、経済成長と合わせて財政健全化、歳出改革に取り組まなければならないということは言うまでもございません。こうした観点から当会では財政健全化に向けて意見書を取りまとめておりますので、これに沿って見解を述べさせていただきたいと思います。

左側のグラフにございますとおり、アベノミクスによる経済成長などにより、税収はここ数年増加傾向にあります。ただし、右のグラフのとおり、国・地方の財務残高は1,000兆円を超えており、我が国の経済・社会の持続的な発展を実現するには、これ以上将来世代に負担を先送りすることは許されず、財政健全化を強力に推し進めていくことが最大かつ喫緊の課題であります。

スライド2、財政健全化と経済成長は我が国発展の両輪でございます。将来世代に負担を先送りしないためにも、社会保障費の抑制など歳出面での改革を進めるとともに、歳入面につきましても、国、地方ともに税制改革を進め、安定的な財源を確保していく必要があると思います。

この後、私のほうからは歳入面の改革について申し上げます。後ほど、阪急電鉄、角会長より歳出の面からご発言をいただければと思います。

グラフの赤い点線部分をご覧ください。当会の視点では、2021年以降、足元の潜在成長率を下回る名目1%程度で経済が推移しまして、かつ、支出の抑制がない場合、2025年度のPB(プライマリーバランス)は約9兆円の赤字となります。

グラフの黄色い点線の部分は、2回の消費増税を実施した場合の試算になりますが、このように消費税率を2025年に再び15%程度に引き上げを行ってもこの成長率が鈍化した場合は、その後も緩やかにPBが悪化していくため、支出の抑制などに努めなければ、2028年度には再びPBが赤字に転落することになるのではないかと思っております。

成長が想定よりも停滞したり社会保障改革が進まない場合には、財政健全化の道が閉ざされてしまうことになりかねません。他国に類を見ない厳しい財政状況を踏まえ、国民の理解を得ながら、15%超を視野に入れた消費税率の引き上げを検討していく必要があるのではないかと思います。

また、国民に負担を求める以上、経済界としても相応の負担を負うべきと考えております。こちらのグラフのとおり、法人実効税率については、我が国も既に20%台を達成しておりまして、OECD平均に近づいてきております。厳しい財政状況のもとで、当会としては、実効税率の一律の引き下げ論にはピリオドを打つべきではないかと考えております。

一方で、研究開発や先端投資、人材育成など、経済の好循環につながる的を絞った政策部門に重点を置くべきと考えます。とりわけ、企業のイノベーション創出につながる研究開発、先端投資などを後押しする税制の拡充が必要と思っております。

いずれにしましても、今回のような機会を通じ、財政再建は待ったなしといった状況を全ての国民とともに共有する努力を続け、その改革に取り組む必要があるものと考えます。

以上です。

〔 伊佐財務大臣政務官 〕 ありがとうございました。

引き続いて、西村副会頭、よろしくお願いいたします。

〔 西村大阪商工会議所副会頭 〕 大阪商工会議所副会頭を務めております株式会社サクラクレパスの西村でございます。

本日は、このような貴重な機会をいただきまして、まことにありがとうございます。時間も限られていますので、早速中身に入らせていただきます。

私からは、社会保障制度の改革の在り方、とりわけ経済成長と財政再建の両立に向けた改革の方向性について、簡単にお話し申し上げたいと思います。

まず、財政再建に対する基本的な考え方を申し上げます。

財政再建のためには、歳出削減と経済成長は車の両輪であると考えております。そして、歳出削減の鍵は、言うまでもなく膨張を続けている社会保障費の抑制でございます。

一方、経済成長の観点で見ますと、企業や国民が背負う社会保障負担が増えることで、我が国の成長が下押しされているのではないかと危惧をいたしております。実際企業が負担する社会保障料は増加の一途をたどっている上、現役世代の所得の手取り額も減少傾向にあります。中小企業が雇用を確保し、利益を上げ、賃上げができる好環境を生み出すためには、社会保障給付の重点化・効率化と応能負担の徹底など、社会保障制度改革を断行しなければならないと考えております。

また、財政再建のためには、経済成長により税収を増やすことも重要でございます。そのためには、生産性向上など供給サイドの対策を講じ、低迷する我が国の潜在成長率を高めることが喫緊の課題でございます。

以上のような考え方に沿って、本日はお話を進めてまいります。

まず、社会保障給付費が国民所得に占める割合の推移とその予測を示したのがこのグラフでございます。

財政再建の観点から見て、社会保障給付が増加しても、同時に所得が増加するのであれば、まだ対処は可能かもしれません。しかし、高齢化が進む中、社会保障給付費が国民所得に占める割合は上昇し続けると予測されます。財政健全化のために、膨張を続ける社会保障給付の抑制が急務であることはたしかであります。

次に、企業が負担する社会保険料の伸びと賃金の伸びの比較をしたものがこのグラフでございます。

これを見ますと、企業の社会保険料負担は伸び続けており、その上、この伸び率は賃金の伸びの率を大幅に上回っていることがわかります。

また、可処分所得の減少を1世帯単位でその推移を見たのがこのグラフでございます。

失われた20年とも重なるこの時期、2000年4月の介護保険制度の開始や社会保険料の総報酬制の導入、厚生年金保険料の引き上げ、定率減税の廃止、各種控除の見直しなど、現役世代の所得が減少する中で、社会保障・税負担が増加し、可処分所得が減少を続けております。足元の所得は増加に転じたものの、それでも可処分所得の増加は非常に鈍い動きとなっております。

そこで、本日、私から改革の方向性について2点申し上げたいと思います。

社会保障は元来、国民が生活する上で最後の砦となるセーフティネットの役割を果たしてきました。しかし、その役割は時代とともに拡大していき、救貧・防貧の対策から、今や子育て支援・少子化対策として幼児教育の無償化までも始まろうとしております。国民の最低生活の保障という社会保障のもともとの役割を踏まえた上で、まずは社会保障給付の重点化・効率化と応能負担の徹底を図ることが最優先ではないでしょうか。例えば、後期高齢者医療制度の自己負担割合の引き上げや在職老齢年金制度の見直しなどを図ることが必要だと考えます。

また、政府が目指す全世代型社会保障制度への転換は、我が国財政状況が厳しさを増す中、真に支援が必要な人へ範囲を限定するなど、一定の規律が必要ではないでしょうか。

また、財政再建のためには、こうした社会保障制度だけではなく、経済のパイの拡大を通じ税収を増やすことも重要でございます。我が国経済は足元需給ギャップがプラスで推移しており、さらなる経済成長を続けるには、生産性向上や人手不足対策など供給サイドの対策を講じ、低迷する我が国の潜在成長率を引き上げることも必要でございます。

とりわけ、我が国の労働生産性は主要各国に比べて低く、引き上げが急務でございます。政府では、2020年までを「生産性革命・集中投資期間」と位置づけ、生産性向上のためのあらゆる施策を総動員する方針でございますが、特に政府、行政の効率化も大事ではないかと感じております。また、大阪商工会議所といたしましても、会員中小企業の生産性向上を全面的にバックアップしてまいります。

また、社会保障の担い手を増やすため、女性や高齢者など多様な人材の活用も重要でございます。我々企業も多様な働き手の雇用に積極的に取り組むともに、社会保障制度給付に極力頼らないよう、従業員の健康管理への目配りも忘れてはならないと思っております。

最後に、参考までに、大阪商工会議所の取組みを紹介したいと思います。

大阪、京都、神戸と一緒になりまして、関西ウエルネス産業振興構想を推進しております。皆様もご承知のとおり、2025年大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」でございます。万博の開催をチャンスと捉え、成長産業の育成と健康寿命の延伸に貢献してまいりたいと思っております。

私からは以上でございます。どうもありがとうございました。

〔 伊佐財務大臣政務官 〕 ありがとうございました。

では、引き続き、赤井委員、よろしくお願いいたします。

〔 赤井委員 〕 ありがとうございます。財政審の委員をしております大阪大学の赤井です。

ありがとうございます。では始めたいと思います。

私のほうから、タイトルといたしましては、「少子高齢化時代に対応した持続可能な新たな地方行財政運営のステージへ」ということで発表させていただきたいと思います。

時間も限られておりますので、簡単に3つほどポイントを述べさせていただきたいと思います。

2ページ目ですが、1つ目が、地方の債務をどのように考えるのかということ、それから2つ目に、最近、景気がよくて税収も上がってきているので地方財政が改善していると言われているのですが、その裏側でどういうことが起きているのか、本年度の予算についてお話ししたいと思います。この1番と2番がマクロ的なお話。3番目が少しミクロ的になりますけども、今注目されているインフラ。今日は社会保障のお話も多いんですけれども、もう1つ、地方のインフラですね。特に大阪でもインフラの在り方というのが議論はされておりますし、今後、万博などもありますから、その在り方について議論をしたいと思います。

3ページ目ですが、まず、マクロの話で見ますと、地方財政全体の借入金残高、これはもう皆さんご承知のグラフだと思います。ずっと増えてきて、最近は200兆円で安定しているということで、それほど増えていないのではないかという議論があるのですが、これを見ていただきますと、下のほうに赤い部分がどんどん増えています。全体としては増えてないですけれども、構造が変わってきているというのがわかるかと思います。特にこの赤い部分というのが、詳しい方はご存じだと思いますが、何かちょっとややこしい臨時財政対策債と呼ばれている債券の残高です。それが徐々に増えてきているということで、これがどのような意味を持っているのかということをまずちょっとお話ししたいと思います。

4ページ目ですが、この臨時財政対策債というのは、国と地方で財源不足が生じた場合に、それを両者で折半するわけなんですね。国が一部、地方が一部、折半するんですけれども、地方のほうにはなかなかお金がないということで、そのかわりに少しの間少しお金を借りようということで臨時的に発行された債券を臨時財政対策債と呼んでいます。ここで1つ大きな問題なのは、これは実はそれぞれの自治体の債務をはかるときには、債務ではないとされています。結局地方全体で返すということになっているんですけれども、地方自治体は直接返さなくていいと認識しています。では、誰が返すんだという話になるんですが、それが曖昧なものになっているのが問題です。逆に言いますと、前のページのこの赤いところの部分というのは、地方自治体は認識してないけれども地方としては返さないといけないもの、それが増えてきているということになります。

5ページ目です。その結果、地方は返さないといけないものと地方自治体が認識しているのがこの一番下の水色の部分であり、それはそれほど増えずに、逆に減っているじゃないかという議論があるのですが、実際返さないといけない部分、この臨時財政対策債というのを考えると、地方自治体が返さないといけない、それを認識すべきものというのは現在増えてきているということが実態でわかるかと思います。そういう意味では、地方債務をまず再認識するということが大事かと思います。

6ページ目ですが、2つ目のポイントです。最近、これ、今年の予算が、景気が拡大してきて税収が増加してきて、またややこしいのですが、国と地方で折半する予定の財源というのは、これはめでたいというか、いいことに、今年は解消されているんですね。ということは、それなりにお金に余裕が出てきたということですが、その一方で、その外枠で公共事業という部分が拡大しておりまして、公共事業というのは国と地方で折半する財政赤字とまた違う部分で将来の地方の債務を生んでおり、その部分が見逃されているということです。公共事業というのはインフラですけれども、つまり、今年はそれなりにお金が足りていると見えるんですが、それは将来のインフラのための将来の債務というのを増やしながら今年の予算ができているという点に、もう1つ気づくべきだと思います。

7ページ目ですが、3つ目の点ですが、インフラの選別です。まちづくりと公共インフラと財政コスト明示の視点、それらが重要かなと思っておりまして、特にまちづくりをどうするか、どういうものが必要なのか、それから、財政コストということになるわけですけれども、この財政コスト明示という点では、例えば将来どのぐらい更新費がかかるのかというのをしっかり推計することが必要です。続く8ページと9ページでは、私の研究の結果なんですけど、例えばコンパクト化をするとどのぐらいコストが節約できるのか。例えばここだと4,000億円とか8,000億円とか、そういう推計もできていますので、そういう推計を行っていくということが重要かと思います。

最後に、10ページ目ですが、もう1つ、最近議論されている上下水道の分野に関しては、この国保の問題と同様、やはり受益者負担を徹底していくとか、広域化・共同化・一体化を行っていく、そのような新たな構造の変化というものを生み出していくことによって、持続可能な地方行財政運営というのができるかなと思います。

以上です。ありがとうございました。

〔 伊佐財務大臣政務官 〕 ありがとうございます。

では、上村委員、お願いします。

〔 上村委員 〕 皆さん、こんにちは。関西学院の上村です。

私からは、地方の歳出改革について話をします。今日の皆さんの話を聞いていると、エビデンスとかデータとか見える化が大事だという話になっていると思います。

まず、地方自治法に「住民の福祉の増進」とか「最少の経費で最大の効果」と書かれています。これらをまとめると、同じ費用のもとで効果を最大化する有効性と、同じ効果のもとだったら費用を最小化するという効率性、これが地方の歳出に求められているということです。

ところが、どうしても行政は前年度の踏襲型になって、昨年やったら今年もやるとなりがちです。その一方で、業務改革や働き方改革、RPAやエビデンスベーストという話が出てきているので、そういったものを取り入れながら歳出改革につなげていくということが大事になっているということです。

さっき赤井委員も言われましたけれども、人口減少社会のもとではコンパクトシティを進めていくことが非常に大切で、その上で都市マネジメントを確立するということが大事だということです。

マネジメントというとピーター・ドラッカーさんが有名ですけど、彼は非営利組織にも重要な問いかけをしています。ここに掲げているものですけど、特に我々の成果は何かということに注目したいと思います。

成果を意識した都市マネジメントの事例にアメリカのボストン市があるんですけれど、先ほど第2部で見える化とかエビデンスという話が出てきましたが、このボストン市は、市民向けのウェブサイトに様々な行政分野をアイコン化して、その行政の成果を公開するということをやっています。成果を市民と行政でシェアするような都市マネジメントをやっています。

Libraryと書かれた黄色の丸がありますけれども、そちらに子供たちが1カ月の間に383枚の図書カードにサインしたと書かれています。図書館のアイコンをさらにクリックすると、例えば図書館の貸し出し数のグラフが出てくるわけです。これには実績値と目標値があって、いわば目標を持って実はマネジメントをしていることがわかります。

ボストン市のような成果指標を生かした都市のマネジメントにたどり着くのは、そもそも成果をエビデンスで測っていくことが非常に大事です。日本には5,000ぐらいの国の事業があるんですけど、その国の事業について行政事業レビューシートという書類にその成果指標が書かれてあって、ウェブサイトで公開されています。

これが行政事業レビューシートで公開されているものですが、特に経産省はさらに進んで、こういうロジックモデルというのをつくって、何をインプットとして入れてどういう効果を段階的に生んでいるのかということまでシートでやっているということです。こういう資料を使って個々の事業の歳出の効率化を図っている。これは国がやっていることです。

ところが、地方自治体はなかなかそこまで進んでなくて、私が見る限り、歳出改革の取組みの度合いというのは非常にばらつきがあります。進んでない地方自治体はたくさんあります。これをどうやって改善していくかというのは非常に大切で、地方自治体の歳出改革を阻む理由というのは幾つかあるんですけれど、私がちょっとここに書いてあるのは、そもそも事業シートというものがちゃんと存在しないとか、事業についての情報公開が不足しているとか、評価ができる人材が不足しているとかです。あと、行革に関わる職員さんの不足とか、首長さんなりのトップマネジメントの意識の問題があると思います。最終的には、やはり成果の上がらない事業を自治体が自発的に削減できたり、もしくは自発的にやり方を変えていくような、そういう環境の整備をどうやって進めるのかということが大切かなと思っています。

以上です。

〔 伊佐財務大臣政務官 〕 ありがとうございました。

では、引き続き、角委員、よろしくお願いします。

〔 角委員 〕 阪急電鉄の角でございます。関経連では都市・観光・文化委員会を担当しております。よろしくお願いいたします。

我が国の財政が危機的状況にあることは各委員の皆様がおっしゃったとおりでございますが、そういう中で国家財政のガバナンス体制の強化・改善と、それと、社会保障制度の持続可能性の確保という観点からお話をさせていただきます。

まず、国家財政のガバナンスの体制改善のためには、財政規律の確保が必要であることは言うまでもありません。将来世代に負担を先送りしないためには、財政や社会保障に関する透明性を確保し、状況を正しく把握する必要があります。

具体的には、例えば財政健全化基本法、仮称ではございますけれども、そういった法律をもって財政目標を定めた上で財政運営を進めていくべきだと考えます。そして、それとともに、より信頼性の高い正確な財政目標を定めるためには、客観的・中立的な立場での経済分析、将来推計などを行う独立した財政機関を設置し、その財政見通しを政府公式の唯一の試算として位置づけて、財政運営に活用していくべきと考えます。

若い方は、この基本法のようなものを定めるというのは、少し、そんなことできるのと思う方がおられるかもしれませんけれども、実は消費税が3%から5%に上がりました1997年、このときには財政構造改革法という数値目標まで入れた法律が定められました。ところが、その翌年98年に、ご承知のようにアジア通貨危機が起こり、そして、日本の金融機関も多くの金融機関が破綻をするという経済危機に見舞われましたので、残念ながらこの財政構造改革法は停止されるという残念な結果になりました。

ただ、前回3%から5%に上げたときに日本経済が非常に長期にわたって低迷したというのは、何も消費税が上がったからではなくて、アジア通貨危機とかバブルのときの傷の処理をせざるを得なくなったということでありますので、その辺は誤解がないようにお願いしたいと思います。

海外を見ていただきますと、例えばアメリカでは、議会に所属する議会の予算局、ここが経済推計を出しています。

そして、次、マイナンバーなんですけれども、もともとマイナンバーが計画されましたのは、要するに税を広く薄くシンプルに、かつ公平にということですけれども、当然税には所得再分配機能が求められると。しかし、消費税というのはそれがないので、例えば軽減税率を入れるということで非常に複雑な制度になりつつありますけれども、そういったことじゃなくて、マイナンバーによって個人の資産・所得を正確に把握することによって、いわゆる弱者の方にそれを救済するということがこのマイナンバー制度であり、例えば銀行口座と全てリンクをするということによって可能になるということをなかなかご理解いただいてなく、現在はまだカードをつくっていただいているのは10%強ということですので、これをぜひとも早期に前へ進めていただければと思います。

社会保障制度につきましては、もうこれは皆さんご説明になったので省略をいたしますが、これを達成するためには4つの視点が必要ですが、特に2つ目、医療費自己負担を3割に引き上げると書いておりますが、これもいわゆる公平に一旦は負担をする。しかし、セーフティネットは絶対に要りますので、先ほど言いましたように真に困っている方をきちんと把握した上で、その還付をするやり方もありますし、現金を給付するということも可能であると思います。

そして、最後に、我々、我々と言うとおかしいですね。団塊の世代がいよいよ22年から75歳になっていきます。もうあと3年しかありませんので、この3年が税と社会保障の一体改革を含めたこういう取組みのまさにラストチャンスと考えますので、ぜひよろしくお願いをいたします。

以上です。

〔 伊佐財務大臣政務官 〕 ありがとうございました。

では、竹中委員、お願いします。

〔 竹中委員 〕 皆さん、こんにちは。プロップ・ステーションの竹中ナミこと、ニックネーム、ナミねぇといいます。よろしくお願いします。

私も資料はちょっとこの写真だけなんですが。もう少し会場をこの写真が見えるように暗めにここだけしていただいていいですか。すいません。

プロップ・ステーションが何をしているかというと、実は、重い障害があっても、コンピュータネットワークなどを活用することによってベッドの上でも働いてタックスペイヤーになろうという活動を日本で約30年前に始めまして、現在に至っているということなんですね。

思わぬ情報通信、ICTとかIoTとかいっぱい言われていますが、そういう技術が格段に進化したことによって、多くの方々がどんどんご自分の力を世の中に発揮してタックスペイヤーになっていただいているということなんですけれど、なぜそのようなことを私が始めたかというと、この写真のナミねぇと娘なんですが、この娘が46年前に大変重い脳の障害を持って授かりまして、完全なベイビーということで、今もいわゆる色んな測定不能の状態ですが、とても元気にというか、一応丈夫なので元気に生存をしてくれておりますが。彼女を授かって、自分が元気な間はいいのやけど、彼女を残して安心して死ねるためにはどうするかというと、支えてくれる人をたくさん増やすしかないなと思って、とりわけ支えることが無理と言われているような人の中から支えられる人を生み出すことができたら、かなり大きな社会の転換になるのと違うかということで、たくさんの仲間たちと約30年間このプロップの活動をしてきたということです。

(別の)彼女は耳の聞こえない方で、聴導犬と暮らされていて、初めてお会いしたときは本当に耳の聞こえない嫁は出ていけとか言われて大変な目に遭っていらっしゃいましたが、今は聴導犬とともに全国を飛び回って活躍をされていて、しかも息子さんは手話で歌うシンガーソングライターになられた。

(また別の)彼女は全身麻痺の方なんですが、大変グラフィック、外で遊べないので絵を自分で描くのがすごく大好きだった方ですが、進行性の難病で、現在は手をこのようにつって、タッチのコンピューターでグラフィックを制作されて、今もう国際的な絵本作家になっていらっしゃる女性です。

これ、プロップ・ステーションの事務所の様子なんですけど、ここにちょっと端っこだけ写っている青年が一番プロップで若くて、弱冠25歳の全盲で脳性麻痺で車椅子に乗っているという男の子なんですが、全盲で脳性麻痺ですから点字とかが読めなくて、でも、コンピューターで全ての仕事をやりこなして、見えなくても音声装置でばりばり、国際大学も出たというすごい青年ですね。

こういう活動を支えてくれた人の2人が、こちらにいるのがマイクロソフトの社長をしていた成毛さん、こちらが霞が関の方はよくご存じの村木厚子さんなんですが、プロップ・ステーションが草の根から社会福祉法人化したときに1億円積めとか国家に言われてですね。そのときに誰も何も金持ってないぞと言うたときに、成毛誠さんがビル・ゲイツと相談してその1億円をつくってくださったという、足を向けて寝れない恩人です。国の障害者施策がやはり障害者というのは福祉の受け手だというときに、彼らもタックスペイヤーに、支え手になれるようにという国の政策を方向転換していただいたときの障害者雇用対策課長が村木厚子さんだということで、最近でも東京へ行ったらこうやって居酒屋で飲んでいるという写真ですね。

こちらは日清製粉さんと組んで、超一流のシェフの方々が知的や精神の方で日ごろお菓子づくりに励んでいる皆さんに超一流の技術を教えてくださるということで、たくさんの方々がプロフェッショナルなパティシエに成長してきました。

つまり、ナミねぇが何が言いたいかというと、やっぱり人間は働く誇りというのがすごく大切で、それをみんなで力を合わせてその働く誇りを世の中に発信できるようにすることこそがナミねぇは究極の社会保障ではないかなと思っているということです。ぜひフェイスブックとかでお友達申請してください。よろしくお願いします。

〔 伊佐財務大臣政務官 〕 ありがとうございました。

では、引き続き、増田代理、よろしくお願いいたします。

〔 増田分科会長代理 〕 今までの登壇された皆さん方から社会保障の話がございました。そして、大学のほうから来られている赤井委員や上村委員からは地方財政のほうのお話がありましたので、私のほうからは、その両者をつなぐようなプレゼンを少しさせていただきたいと思います。

それで、お手元のほうにも資料はあるかと思いますが、これが国と地方の歳出の目的別にこのように分けたものです。一体どれだけ地方が実施しているかというの、これ、黒い色で塗られているところがそれぞれあると思うんですが、実際に歳出につながっていくわけですが、ほとんどの身近な生活分野に関する行政というのは地方自治体が行っていると。全部で白く塗られているの、これは国がやっていると。例えば防衛費とか社会保障分野の中でも年金なんかは全部国がやっているわけですが、この赤枠で囲っているところが社会保障関係ですけれども、この中で実は黒いところがいかに多いかということがおわかりになるかと思います。総計でいいますと、こちらに出ていますが、国が42、それから、地方が58と書いていますが、額でいうとそれだけ地方自治体が行っているということです。

このうち社会保障分野のほうにさらに焦点を当ててみますと、社会保障、医療についても介護についても、保険料を納めたり、それから、先ほどありましたように税金で公費投入して負担をしたりということも様々あります。したがって、ここ、色々分けておきますと、私が申し上げたい地方負担というのがここに13.8兆とございますけれども、実は全体の中でこういう国が負担する分、地方が負担する分、それから、保険料という形で入ってくる分と、それぞれ大きく言うと3方向から入ってきますが、地方負担というのがかなりの割合を占めているということ、そして、そのうちで高齢化の影響を受けるいわゆる医療・介護が、13.8兆のうちの8.1兆がこの高齢化の影響を受ける医療・介護の分野だということでございます。もちろん若年層に対しての児童手当等々もございますが、そこの部分はずっと少ないということがおわかりになると思います。

それから、次2枚がそういう社会保障についての給付と負担の今後の見通しです。

一番左の柱のとこが2018年度ということになりますが、この給付のほう、いわゆるサービスに係る部分は今大体120兆ぐらいなんですが、この後2040年にかけて大体190兆ぐらいまで膨れ上がると。内訳はあえて申し上げませんが、特に先ほど言いました医療・介護のところがかなり膨れ上がってくるということですね。

それに対して負担のほうも当然どんどん増えていくわけで、公費負担の中で地方負担がどのくらいの割合かというのは制度の変更等によって変わってきますが、いずれにしてもかなりの部分を負担していかなければいけないということであります。

こういう状況の中なんですが、一方で支え手のほうの観点を少し考えてみますと、実際にご覧のとおり、医療・介護分野で働いている人というのは非常に若い就業者が多い。これは各産業の働いている人たちの中で特に高齢で働いている人たちの数とか割合を見たものですが、医療・介護はこのあたりでございます。かなりの人数になるんですが、ここですね。実は高齢者の割合というのは低くて。ちょっと左側、農業の分野があります。非常に農業に携わっている人たちの中で高齢者の割合が高いので、ほとんど高齢者と言っていいかと思いますが、医療・福祉分野というのは若い人たちの割合が多い。

それで、ご覧いただきたいのはこの赤のところです。特に若者を中心に地方の人がこれから東京のほうに人材流出していってしまう可能性が高い。要は首都圏のほうがどんどん高齢化がこれから本格的に始まりますので、そうすると、今、ただでさえ若い人手が少ない地方からどんどん流出が加速していってしまうという、そういう可能性があると。

これに対してどういうことを考えていかなければいけないかということですが、これは総務省のほうでつくった研究会での資料。それで、左側が、キーワードだけ見ていただきますと、やっぱり圏域全体で、フルセットじゃなくて圏域全体でマネジメントする必要があるのではないかなということと、二層制、都道府県と市町村という二層制になっていますが、そこを柔軟化して、それぞれがどんどん入っていくと。先ほど奈良モデルという話がございましたが、後で色んな形で必要なときは都道府県が入っていくと。こんなこともこれから考えていく必要があるかと思います。

以上であります。

〔 伊佐財務大臣政務官 〕 ありがとうございました。

それでは、第1ラウンドの最後に、榊原会長のほうからもよろしくお願いします。

〔 榊原分科会長 〕 ただいまパネリストの皆様方から様々なご意見を頂戴いたしまして、多くの方から社会保障制度の課題あるいは地方財政の課題についてご意見をいただいたと思っております。

我が国の財政を考える問題の根底にあるのは、やはりポイントになるのは受益と負担、これをどのようにマッチさせていくか。これが令和の財政の在り方の大きなポイントであろうと考えます。

先ほど基調講演でも申し上げましたけども、まず、社会保障については、我が国の制度というのは本来、給付と負担の対応関係が明確な社会保険方式を基本としているはずですけども、現実には負担の一部が特例公債を通じて将来世代に先送りされている。このため、給付と負担のミスマッチが生じている。これが現実の姿であろうと思います。本来、負担が増えれば、給付の水準が高過ぎるんじゃないかと、そうしたチェックが働くはずですが、チェックが働かないまま給付が増えてしまってきた。これが今の社会保障制度の姿、現実であろうと思います。

地方財政についても同じことが言えると思います。先ほど赤井先生の話に地方債務の負担認識が曖昧といったご指摘もありましたけれども、地方債も将来世代への負担の先送りになっている。しかも、国からの交付税措置などによって一部の負担が全国的に賄われたりするという、この結果、受益と負担の関係が世代を超えて、さらに地域を超えて分断されてしまっている。その結果、地方団体の歳出に対するチェックも結果的には甘いものになっていると、こういう姿であろうと思います。

こうしたことを踏まえますと、現世代の責任として現世代が受け取る給付は自ら負担する。受け取る給付は自分で負担する。この原則を徹底していくことがやはり重要だと思います。そうした意味で、今年10月に行われる予定の消費税率10%の引き上げを計画どおり進めることが、重要なステップであろうと考えております。

どのようにして将来世代に負担を先送りしないか、子や孫、さらにはひ孫たちにツケを回さないかと、この責任は私たちが果たしていかなきゃいけないわけです。そのためには、まずは財政の現状について私ども財政制度等審議会が今日やっているように情報発信をする。そして国民の皆様方に現状を正しくご理解いただき、自分の問題として考えていただく。そうしたきっかけをつくっていくことが必要であろうと思っております。今日の地方公聴会もインターネット中継を行っておりますけども、こうした発信力を強化して、当地区はもちろんのこと、全国の皆さんにご理解していただきたいという願いを込めた公聴会であります。

ツケ回しを受ける子供や孫、あるいはひ孫たち、こういった世代の方々は自分から声を上げることはできない、回避する行動をとることができないわけです。我々は彼らの立場をきっちりと代弁して、こうしたことを先送りしないようにするのが我々の責任であろうと思っております。私ども財政制度等審議会、彼らを守る代理人でありたいと、そうした考え方で今後とも財政審議会の活動を続けてまいりたいと思っております。

私からは以上です。

〔 伊佐財務大臣政務官 〕 会長、ありがとうございました。

今それぞれパネリストの皆さんから発表いただきました内容について、少し私のほうから質問をさせていただきたいと思っております。

まず、松本委員と西村委員と角委員に質問させていただきます。今日、3人の委員の皆さんは社会保障について触れていただきました。その中で、今の会長の話にもあります給付と負担のバランスをどうしていくかと。つまり、給付、介護や医療のサービスのところと負担、いわゆる保険料、税金、ここのバランスをどうしていくかということです。榊原会長の特に基調講演で各国比較のグラフがございました。通称天の川と言われるものですが、このバランスの天の川から日本は今少しはみ出ているんですよと、このまま行くとどんどんはみ出ますという話がございました。今現状において日本はこの中福祉・低負担と、ミスマッチだと。つまり、サービスは中程度あるんですが、国民負担について保険料や税金は低いんだと。だから、その差の部分は借金で埋めていますと。こういう認識でございました。

そこで、少しちょっと留意をしなきゃいけないと思いますのは、我々政治家が地域、地元を回っていますと、現場の声、感覚として、本当にこれ、低負担・中福祉なのかと。国民の実感もそうなのかというところもあると思います。この辺は私なりの実感、理解としては、マクロな視点の財政的な視点とミクロな視点の一人一人の実感とは、またこれ、別の話じゃないかと思っているところもございます。つまり、少子高齢化がこれだけ進みますと高齢者が増えると。そうすると、当然マクロの世界では社会保障に対して多く支出をしていると。中福祉だと言えると。ところが、1人当たりで割ってみると、それほど増えている状況ではないのでないか。あるいは、逆に働く世代がどんどん減っているという中でこのマクロの世界では全体として低負担かもしれないけど、1人ずつで割ってみると実は負担はそれなりのものがあるんじゃないかと。こういうところも、ミクロの視点というのは実は留意しておく必要があるのかなと思っております。

その上で質問ですが、この将来の給付について、負担の望ましい形、給付と負担のバランスはどうか。つまり、低福祉・低負担なのか、中福祉・中負担、あるいは高福祉・高負担と。財政的な観点でいえば、この○負担・○福祉と○を合わせないといけないということだと思います。少子高齢化の中でもしかすると中福祉・高負担しかできないんじゃないかと、あるいは低福祉・中負担しかできないんじゃないかと言う方もいらっしゃいますが、このあたりをどう考えるかということにつきまして、まず、松本委員、西村委員、角委員の順で、お一人3分以内でご発言いただければと思います。

〔 松本関西経済連合会会長 〕 ちょっと角度を変えて、考えているところを述べさせていただきます。

関経連のほうは、色々な提案をしまして、社会福祉のサスティナブルということから色々提案をしております。それで、色々バックグラウンドがありまして、これは3分ですからちょっと早口で言いますけども。

2018年1月に公表されている内閣府の中長期試算によりますと、社会保障費が高齢化の要因とか賃金・物価上昇に伴って増加することを想定した場合、この2018年から2027年の10年間で医療費及び介護費は、これ、8から10兆円増加すると出ているんですね。この上に、さらに年金の上乗せもあるというわけでありますので、この急増する会社負担、これはきっと消費税以外に、これ、会社負担がものすごく出てくると。それから、会社負担というのは要するにそれは裏表で個人負担、これも出てくると。ですから、今ここで中福祉・低負担とか中福祉・中負担、高福祉・高負担云々の話よりも、現在の制度設計をどう修正していくかを考えて工夫する必要があるのではないかと私自身は思っています。

社会保障につきましては、全国民に対して一律に給付や負担の水準を決めるのではなくて、負担については能力に合わせて負担できる人間が引き受けて、給付については真に本当に必要とする人に適切に給付を行う仕組みとするように現在の制度設計を変えていく必要があると。そういう前提で、もう随分前から関経連は一貫してその制度設計をこうしてくださいということを言い続けています。これは政府のほうにも色々と申し上げております。

この図は、これは簡単な図でして、サポートするエリアを大きくする、サポートする人を増やすということをここに描いてあるわけですね。

この右側の目指すべき再配分のイメージでありますけども、負担につきましては年齢層、支援の必要度ともこれまで支える側になかった層は負担能力に応じて支える側に回ることで、この全世代が広く公平に負担を分かち合う制度とすべきであると、こう言っている。

ただ、細かいことは要望書にいっぱい書いてあって、こういう形になりますよと。この要望を政府が取り上げてやっていただくとこうなりますよというのは20項目ぐらいいつも言っているわけですね。

また、給付につきましては、給付対象者や給付方法が適正であるかは定期的にチェック、フォローする仕組みへと変更し、この方法は色々あります。図の色が薄くなっている部分のように、この支援の必要度の低い層に対しては、過剰な給付を抑えて世代内及び世代間の不公平感の軽減を図るべきだと思っています。

社会保障の財源としまして、やはり消費税が重要な役割を果たすことになります。これは将来世代に負担を先送りしないためのその役割についても国民理解を得ながら着実に、また、先ほど言いましたけども、15%超というのが見えてきているんじゃないかと。つまり、着実に税率を引き上げていく必要があると。あわせて、中間層や現役世代が疲労、疲弊しないように、税と社会保障の一体的な見直しが求められると。格差の拡大を防ぎ、現役世代に光の当たる制度を構築すること。これは非常に細かい配慮を必要とするわけでありますが、光の当たる制度を構築することで、我が国経済の健全で安定した持続的な成長につなげていかなければならないと考えます。

以上です。

〔 伊佐財務大臣政務官 〕 ありがとうございました。

それでは、引き続き、西村副会頭、お願いいたします。

〔 西村大阪商工会議所副会頭 〕 西村でございます。

先ほど問題提起されました低福祉・低負担、中福祉・中負担、高福祉・高負担という3つの選択肢を挙げられましたが、大阪商工会議所で昨年度実施いたしました社会保障制度研究会でも、この問題につきましては、この3つのうちのどの選択肢をとるかということでは残念ながらコンセンサスをとることができませんでした。なぜコンセンサスをとれなかったかといいますと、やはり社会保障を持続可能とする給付と負担に関する選択肢で、こういう抽象的な言葉ではなく、もっと具体的な、こういうサービスは必要ならこれぐらいかかるんですよというあたりでの提示がされてないために、本当に抽象論だけで、ああでもない、こうでもないという形で結論が出なかったと考えております。そういう意味では、財政制度等審議会はまさしくそういう役割、具体的な形を出すという役割を担っておられるのかなという具合いにして期待をしているところでございます。

一方、中小企業の立場から申し上げますと、先ほど松本会長は企業というか、どちらかというと大企業の立場でおっしゃられましたが、中小企業も企業としてはやはり基本的には社会保障の負担というのは限界に近いと考えております。そういう意味では、逆に、まず給付の部分を見直していただくということを最優先していただきたいなと感じておりますし、さきにも述べましたが、真に支援が必要な人にもその範囲を限定するという形でやっぱり給付をしていくと、そういう規律が必要ではないかなと感じております。

基本的なこの社会保障制度の安定財源としては、国民が広く薄く負担する消費税の活用が必要であるということは言うまでもございませんが、まずは膨張を続ける社会保障制度の改革を断行し、歳出削減の徹底を最優先に取り組むことが重要だと感じております。

以上でございます。

〔 伊佐財務大臣政務官 〕 ありがとうございました。

それでは、角委員、お願いいたします。

〔 角委員 〕 ありがとうございます。

昨年度も、世界で一番幸せな国はフィンランドに決まりました。高福祉・高負担の代表的な国で、かつ、世界一国民が幸せという国になったんですけれども、日本が一挙にそこへ行って国民が幸せな国と思うかというと、それは不可能だと思いますので、この少子高齢化の世界の課題先進国トップランナーとして一番その対策が求められるわけですよね。そこをどうやって中負担で中福祉を実現するかということは、今までお二人もお話しになったとおりだと思うんですね。

私は大阪大学で年1回新入生を対象に講義をするときに、財政規律の話をさせていただきます。そして、年金につきましては、マクロ経済スライドも入っているし、皆さんが年がいっても多分年金制度は維持できていると思うと言っても、誰も信用してくれないんですね。そんなの絶対破綻するでしょうと。ですから、若い人たちは今貯金のほうにお金を回すということになっていると思うんですね。それがひいては消費に力強さが出てこないということにもつながるので、何とか皆さんがおっしゃった、竹中委員もおっしゃっていただきましたし、支え手を増やすと。

支え手を増やすためには、まず、年金について言うならば、とりえず70歳以降の選択制を着実に進めていただくと同時に、2025年以降も継続をして公的年金の支給開始年齢を遅らせていくと。そのことによって、年金のいわゆる支給率といいますか、それも維持できていくように思いますので、ぜひとも働き手を増やすということをお願いしたいなということで、その中では、我々企業もやはり働き方改革の中で色んな形で働いていただくとか、あるいは健康経営を推進することによって健康寿命を延ばすように各企業が努力をするとか、そういった歳出を抑止するような方向も含めて企業としても頑張っていくべきではないかなと思います。

以上です。

〔 伊佐財務大臣政務官 〕 ありがとうございました。

次に、赤井委員と上村委員に質問させていただきたいと思います。お二人からお話をいただいたのは、地方の歳出の改善、この重要性についてお話しいただきました。地方公共団体の皆さんだけではなくて、おそらく住民の皆さんにとってもこれは関心の高いテーマじゃないかなと思っております。お二人のほうから見て、参考にすべき先進的な取組み、こういうことをやっているような自治体の事例みたいなものをぜひご紹介いただければと思います。

まず上村委員、赤井委員の順でご発言いただければと思います。よろしくお願いします。

〔 上村委員 〕 私が関わっている自治体で幾つかご紹介します。まず、京都府の福知山市と大阪市の事例です。福知山市は8万人で、大阪市は270万人ということで、全く規模が違いますけれども、歳出改善のアプローチも本当に違います。そういう意味では参考になると思います。どちらも、ただ同じ点は外部評価を入れているということで、私のような外部有識者が入って事業のチェック、点検しているということです。

福知山市は、当初約800事業あったんですけれども、全ての事業を4年間かけて点検するということをやっています。まず、適切な事業シートにその事業の情報集約をしないといけません。そこからスタートしました。そこから1つの事業について、例えば30分とか40分かけて担当事業課に事業の説明をしていただいて、その事業の改善点についてみんなで考えるということをやっています。この取組みをやると、徐々に職員の方に成果とは一体何なのだというところの浸透が出てきたということです。

もう1つは大阪市ですけれども、大阪市は政令市ですので、非常に事業数が多くて、福知山市みたいに全事業点検ってやっぱりなかなかできないです。なので、大阪市では各局に、局が目指す成果って一体何なのかを考えてもらい、複数の事業の束をまとめてもらいました。それを運営方針と言っていますが、その局の運営方針を私たち外部有識者とチェックするということをやっています。そうすると、事業間のロジックがうまくいっているのかというところについてチェックをして、改善点はないかということを話し合いして、これをダイアログ、対話という形で続けてきています。

アプローチは全然違いますけれども、どちらの市も非常に行革に熱心で、ある程度うまくいっていると思います。その最大の推進力ですけれども、やはり首長さんをはじめとするトップマネジメントの非常に理解があって、行革をやるんだという意識が非常に強いということと、あと、やはりトップマネジメントの理解がないとなかなか行革は進まないということがあります。この意識があるということと、あとは、やはり行革を抱える人がちゃんといるということ、この人材の育成がきっちりあるというところが大切なのかなと思っています。

以上です。

〔 伊佐財務大臣政務官 〕 引き続き、では、赤井委員、お願いいたします。

〔 赤井委員 〕 続きまして、赤井から述べさせていただきます。

今、上村先生もおっしゃったように、行政の意識ってすごく大事なんですが、それに重ねてもう1つ意見を述べたいと思います。私も幾つかの市に関わっておりまして、今日、滋賀県の知事も来られているので、私が関わっている大津市の事例も重ねて少し述べたいと思います。

今、事業の効率化ということでAIとかRPAとかいう言葉を聞かれていると思うのですが、現在、ロボットを使うとか、何か自動化、共同化をしていこうという流れになっておりまして、それによって効率化は進むと思います。その自動化ってそう難しい話でもなくて、例えば大津市の事例ですと、大津市、30万人ぐらいですが、南北に距離がありまして、なかなか移動するのが難しいということで、各地に市民センターがあるんですね。市民センターはその地域にとってはすごく重要なんですけれども、人口が減っていく中でコストもかかると。そのときに、市民センターにやはり自治体職員がいてほしいという気持ちはわかるんですが、それほどしゃべることは少なくでもそこにいてほしいとなると、なかなかコストもかかります。

そういうときに、例えばテレビシステムであたかもそこに人がいるかのようにすれば、その市民の方が行ったときにいつでも話ができる、それが重要であれば、そういうテレビシステムを入れるとか、あまり難しい高度な技術じゃなくても、そういう新たな仕組みを入れることで効率化していくということができるのではと思います。もちろん、その新たな技術を理解するためには、そういうテレビシステムを入れても今までどおり普通に話せますよと、市民にそういうことを伝えていくことが重要で、市民センターの在り方を考える会みたいなのを何回も開くなど、行政の意識に加えて市民の意識を高めるために話し合いの場を持つなど、そういうことも重要なのかなと思います。

以上です。

〔 伊佐財務大臣政務官 〕 ありがとうございました。

最後に、竹中委員に質問させていただきたいと思います。この支え手についてでございます。今、2025年、団塊の世代が75歳になる2025年度、この後は高齢化率は一定化なんですが、問題は、この後、支え手がどんどん減少していくと。この2040年に向けてどうしていくかということだと思います。竹中委員のほうからは、障害のある方々の就労と。高齢者や女性もそうなんですが、この障害のある方々、チャレンジドと言われますが、この就労を一層促進していく必要があるんだと、支え合っていくことが重要だと、こういう訴えがございました。

そこで、女性、特に障害のある方の就労を今後一層促進していくという上で何が今必要なのかということについて質問させていただきます。

〔 竹中委員 〕 先ほど角さんからも団塊の世代というのがありましたけど、私もそうなんですけど、団塊の世代が通り過ぎた後にはぺんぺん草も生えないとか言われるぐらいすごい数なんですけど、だからこそ、逆に私たちのような世代も色んなことを世の中に貢献していかないかんだろうというのをものすごく思うんですね。そういう中で、たまたま自分自身が重症のずっと永遠のベイビーの娘を授かって、逆に私はすごくそれで問題というか、課題をもらったなという気がしましてね。

うちは貧乏で、父ちゃんはぽよよんとした人で、母ちゃんがもう遮二無二働いて私は育ててもらったんですけど。だから、女も働くというのは私の中ではもう当たり前のこと、何の不思議もなかったんですね。人を支えるためには働くんやというのがあって。ですから、社会の制度に求めることがあるとしたら、人が働きたいと思ったときに絶対それの邪魔をしない、むしろその働く意欲を引き出す政策がどこまでやれるかという、これに尽きると私は思って、それが先ほども言ったように究極の社会保障なのかなと。給付することではなくて、一人一人の力を完全に引き出せる、余すところなく引き出せるような、みんなが支え合えるようにするのが究極の福祉やろうと私は思っているんです。

そして、そういう活動をさせてもらっているということは、私、娘にすごくやっぱり恩義を感じているというか、娘が恩師で、自分にとって本当に恩師やなと思っているんですけど、その自分が身につけたことをこうやって人に伝えていく場をまたこうやって財政審の中でもいただいた。実は財政審の委員になって、私、18年という、おそらく一番古いぐらいのほうにいてると思うんですよね。やっと一番新しい今回の建議に、高齢者、女性も障害者も社会を支えれるようにという文章が実は建議に入りました。私、18年やってきてとてもうれしかったです。それと、2年前に始まった働き方改革の中で、その考え方の中に障害のある人が在宅ででも働けるようにという一文も入ったんですね。これによって、実は非常に大きく重い障害の人がベッドの上でも働けるんやということが認められて、政策がその方向に転がり始めました。

ですから、私はやはり女性が働くであれ、障害のある方が働くであれ、一人一人の能力を発揮するためには本人の意欲だけではだめで、やはり政策の後押し、それへ向けた後押しというのが絶対必要やなと思っています。それと、やはり働けることは尊いし喜びやということを、やっぱり働けることはしんどいことでもあるし、納税者になることも大変なことでもあるんだけど、実はそれが生きている人間の誇りなんやということを自分も伝えていきたいし、そういう方々と一緒にこれからも日本の少しでも財政に貢献できるようなことができればなと思っております。

以上です。

〔 伊佐財務大臣政務官 〕 ありがとうございました。

私のほうからの質問は以上とさせていただきますが、ここで、会場の皆様から事前に財政に関するご意見、質問というものをいただいておりました。この意見、様々たくさんお寄せいただきましたが、少しご紹介をさせていただきたいと思います。ご応募いただいた、様々お寄せいただいた意見については、ここでは全て紹介できませんので、会場の出入り口の近くに掲示をさせていただいておりますので、お帰りの際にご覧いただければと思います。

それでは、その幾つかについて事務局のほうから紹介をいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

〔 事務方(髙木近畿財務局総務課長) 〕 それでは、私から3名の方のご意見を紹介させていただきます。

お一人目、Aさんから、将来不安に関するご意見です。

日本の借金が1,000兆円を超え、さらに増え続けている一方、人口減少、超高齢社会とともに社会保障費が逼迫している中、どのように財政バランスをとっていこうとしているのか、我々の子、孫の世代を考えると大変不安になります。寿命が延び、高齢者率が急速に高くなることで、年金、医療、介護等の費用負担が必然的に増える日本の社会の中で、国家財政と社会保障費のバランスがとれなくなるのは目に見えているのではないでしょうか。ポピュリズムが決して悪いとは言いませんが、耳ざわりのいいことだけを言い、負担を次世代にツケ回すのではなく、この実情を改革する具体的工程を明確にしていかなくては、次の世代のモチベーションは上がらず、ネガティブスパイラルに落ち込むのではと心配しています。

お二人目、Bさんから、こちらも将来不安に関するご意見です。

日本財政が悪化、税負担増、社会保険料増、医療費の窓口負担引き上げ、年金の給付減など、将来が不安で仕方がありません。おそらく国民の八、九割が私のように感じているのではないでしょうか。本当に希望のある未来を描くことができるのでしょうか。新しい時代にふさわしい未来像を示していただけたらと思います。よろしくお願いいたします。

最後に、3人目、Cさんから、社会保障に関するご意見です。

後期高齢者医療への人口は増加する一方で、支える生産人口の減少により、公費に頼らざるを得ない状況をどう打破していくのかについては強く感じるところです。社会保障・税の一体改革の財源とする消費税についても、その使途は流動化しているように感じます。令和という新たな時代を迎え、また、2040年問題を考える上で、後世にこれ以上の財政負担をかけないために、どこに焦点を当てて議論し進めていくのか、方向性についてお聞きしたいです。

私からは以上です。皆様、ご応募ありがとうございました。

〔 伊佐財務大臣政務官 〕 ありがとうございました。

ただいま紹介いただきました、主に最初のお二人については将来不安についてのご意見でございました。最後、3人目については社会保障について触れていただいておりますが、それぞれの意見について、榊原会長、また、増田代理にご発言をいただきたいと思っております。

まず、最初のこのAさん、Bさんの将来不安について、お二方の意見については、まず、榊原会長のほうからよろしくお願いいたします。

〔 榊原分科会長 〕 ただいま、Aさん、Bさんから貴重なご意見いただきました。いずれも、財政健全化の議論は出口が見えるような、将来の希望が持てるような議論にしてほしい。そうした切実なご意見であったと思います。このような意見の背景には、やはり社会保障に対する将来不安ですね。それから、国家財政に対する将来不安があるわけで、これを払拭することが必要であろうと思います。そうしたことをするための回答が、ご指摘にあったような根拠のない楽観論を振りまくようなポピュリズムであってはならないことは当然のことであります。

まずは、具体的には先ほども言いましたけども、2025年度のPB黒字化、これを実現していく必要があるということ、それだけではなくて、財政の問題は中長期的な視点で考えていかなければならないわけで、2025年度には団塊世代が全て75歳以上、後期高齢者となります。そして、2040年には団塊ジュニア、その子供さんたちの世代が全て高齢者となる。また、そのころには65歳以上の人口はピークを迎える。これはもう必ずこうなるわけですね。したがって、少なくともこの高齢者数がピークを迎える2040年代半ばごろまでの中長期的プランというのをしっかりと構築する。リスクマネジメントの原点に立った財政運営というのを行っていくことが肝要であろうと思います。

既に社会保障については、昨年5月に2040年を見据えた社会保障の将来見通しというものが示されておりますけども、社会保障と財政は一体的なものであるため、財政についても2040年代半ばごろまでを見据えた中長期的な推計、社会保障に対しての見通し、それから、財政についても中長期的な推計、こうしたものをしっかりとつくることが大事だと考えております。

財政健全化の議論を出口が見える希望の議論、将来に希望が持てるような議論に変えていくためには、やはり国民に財政健全化を自分の問題として理解して受けとめていただく。そうしたためにも、中長期的な推計を土台にして、中長期を見据えた包括的な財政健全化プラン、この選択肢というのを提示していく。これが将来国民の皆さんの安心につながるんじゃないのかなと思っております。

こうした意見が財政審、我々の分科会の中にも多く出されておりますので、今後、作業に取り組んで、社会保障の中期的な推計、それから、財政についての中長期的な推計を出して、国民の皆さんに選択肢としてお示しするということで、将来に対する不安というのを少しでも解消していただけるんじゃないのかなと思っております。

〔 伊佐財務大臣政務官 〕 ありがとうございました。

次に、じゃ、社会保障については、増田代理、お願いいたします。

〔 増田分科会長代理 〕 ご意見ありがとうございました。ご意見の中で、消費税の使い道、使途ですね。消費税の使途が流動化しているのではないかというご指摘がありました。おそらく今年の10月から予定をされております幼児教育の無償化、このことを指しておられるのではないかなと、こんなふうに思います。

別の切り口で考えますと、例えば消費税の8から10、2%上がる。それだけ負担をすることによって大事な3~5歳児の幼児教育の無償化が実現をするということですから、今言いました見方を変えると、その両者の給付と負担の対応関係がこのことによってより一層実感しやすい形になっているとも言えるわけです。もちろん過去債務の問題、天の川から外れているというこの問題をどうするかって非常に重要な問題なんですが、いずれにしても、これから給付と負担をどれだけバランスとっていくのかというのが今日の大きなポイントかなと、こんなふうに思います。

それで、その上で財政の健全化をきちんと実現していかなければいけないので、どこに焦点を当てるのかというそのあたりが見にくくなっているのではないかというお話でしたが、まさにこれは私は社会保障分野、ここに焦点を当てて、これから給付と負担をどのように見直ししていくのか、しかも、これは議論の中でもありましたように、一時的な負担の見直しということではなくて、中長期を見据えた継続的な取組みでなければいけないと、こんなふうに思います。

したがって、これは第2部のところで3府県の取組みのご紹介がありましたが、1つは、やはり見える化を行うといったことや、それから、給付と負担を両者の牽制・抑制機能の構築ということを実際に行って、コスト意識というのを県民の皆さんあるいは府民の皆さん方に常に持っていただくような取組みを行う、こんな、滋賀、そして、奈良、大阪の取組みが非常に重要ではないかと、こう思います。

社会保障の分野、それぞれ色々ございますけれども、特に医療分野については、これから都道府県が様々な保険者機能の中心になって実行していかなければいけない分野が大きいので、こうした先進県の取組みを全国展開していくといったことが非常に重要だろうと。そして、それを中長期にわたって進めていかなければいけないので、これは奈良県知事もちょうどおられますけれども、その中で奈良方式の中で少しご紹介もございましたが、診療報酬改定、あるいは、場合によっては介護報酬改定もこれから考えられるわけですが、その中で様々な在り方の議論は、避けて通れない。荒井知事がご提起されたような地域別の診療報酬のような話などもこの中で検討していくことも必要ではないかなと、避けて通れないのではないかなと、私はこんなふうに思っております。

以上であります。

〔 伊佐財務大臣政務官 〕 ありがとうございました。

それでは、最後に、私のほうからこの第3部のまとめに入りたいと思います。

パネリストそれぞれの皆さんから貴重なご意見いただきました。順不同でございますが、私なりに整理させていただきましたので、最後、取りまとめさせていただきます。

まず、榊原会長のほうからは、やはり新しい令和の財政という点で受益と負担をどのようにマッチさせていくのかということだと。これはもうパネリスト皆さんの共通認識だろうと思っております。その上で中長期的な視点というのを持っていくことが大事だということでした。

社会保障に関連してですが、関経連の松本会長からは、主に歳入面についての改革についてご発言がありました。この安定財源を確保していく必要性と、15%超の消費税というご発言もございました。なかなか10%でも今苦労している状況でありますが、そこが15%というご発言もございました。

その次、西村副会頭からは、社会保険料、税負担、この負担を増加させていくということは可処分所得への影響が大きいんだと。だから、まずは給付の部分の見直しを優先すべきだというご発言だったと思います。

角委員のほうからは、財政目標の設定と、あるいは法律の制定をすべきだという点、あるいはマイナンバー制度の定着と活用ということもご発言がございました。

あと、竹中委員からは、障害のある方の就労促進という観点で、この支え合いというものがまさしくこれが社会保障の一丁目一番地だと。この持続可能な日本を目指すことになるんだと。共生、共助といいますか、こういうところを力強いメッセージをいただいたと思っております。

増田代理からは、給付面の見直しにしろ、医療・福祉のこの支え手の確保にしろ、都道府県の果たす役割が大きいということでございました。

また、地方歳出の見直しという観点から、赤井委員と上村委員それぞれご発言がございました。

まず、赤井委員からは、この地方債務の負担の認識というのをしっかりと明確に持つべきだという点、あるいはインフラの選別化というものが必要だという点がございました。

上村委員からは、歳出改革に向けた地方の財政の改革のための業績評価という点、そもそもやはりトップマネジメントの意識が大事なんだという点であるとか、あるいは、評価ができる人材をいかに確保していくかという点でした。

冒頭、最初、榊原会長からも基調講演でございましたように、平成の時代というものを振り返りますと、受益と負担の乖離というものがいたずらに拡大をして、そして、この受益の拡大と負担の軽減、先送りを求める圧力に抗い切れなかった時代という建議が昨年11月、示されました。この過ちを繰り返さないためにどのようなことをしていかなければいけないかと、そういう思いで、我々、本日議論させていただきました。

私のほうから最後に1つだけエピソードを紹介させていただきたいと思います。それは、政務官として実は地方へ色々と行かせていただく中で、大学の学生と車座トークという形で色んなざっくばらんに議論する場所がございました。そこで学生の皆さんからこの財政について色々と言いたいことがあるということで、私、行かせていただいたんですが、おそらくこれだけツケ回しをすることはどういうことだと色々と詰められるんじゃないかという思いで私は行かせていただいて、覚悟を持って行ったわけですが、ほとんど全ての学生が私に質問してきたことは、これだけの借金、様々な債務がある中で、若い世代としてどういうことで貢献できますかという非常に前向きな意見がほとんどでございました。こういう若い世代の皆さんの思いというものを我々こうして政策に関わる者はしっかりと胸に刻んで財政運営を行っていかなきゃいけないと思っている次第でございます。

強いて最後、総括申し上げれば、この受益と負担のバランスというのは国と地方とそれぞれが主体的な役割を担っていくという必要があると。さらに言えば、国と地方だけではなくて、行政だけではなくて、あるいは働く世代だけではなくて、高齢者の皆さんあるいは女性の活躍もそうです。チャレンジドの皆さんの活躍もそうと。こういうところ、もう全体野球で取り組んでいくしかないのではないかと思っております。

時間が参りましたので、この第3部のパネルディスカッション、これで終了したいと思います。本日の議論が皆様にとっても財政を身近な問題として考えていただく機会となればありがたいと思っております。

本日はお付き合いをいただきまして、また、パネリストの皆さん、また、両県知事、奈良県知事、滋賀県知事も最後まで聞いていただきました。ありがとうございました。

ありがとうございました(拍手)

〔 事務方(髙木近畿財務局総務課長) 〕 伊佐政務官、それから、パネリストの皆様、ありがとうございました。

以上をもちまして、「令和の財政の在り方を考える~いのち輝く未来社会へ向けて~」を終了いたします。

(以上)