財政制度等審議会 財政投融資分科会
議事録
財政制度等審議会 財政投融資分科会議事次第
平成30年11月9日(木)15:00~17:02
財務省第3特別会議室(本庁舎4階)
1.開会
2.議案 平成30年度財政融資資金運用計画の一部変更について
質疑・応答
3.平成31年度財政投融資計画の編成上の論点について
① 官民ファンド
質疑・応答② (独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構
質疑・応答
4.閉会
議案 | 平成30年度財政融資資金運用計画の一部変更について |
議案説明資料 | |
資料1 | 財政制度等審議会 財政投融資分科会 説明資料(官民ファンド) |
資料2 | 財政制度等審議会 財政投融資分科会 説明資料 ((独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構(建設勘定(海外業務))) |
出席者(敬称略)
分科会長 | 池尾和人 | 可部理財局長 古谷理財局次長 井口総務課長 橋本財政投融資総括課長 金森管理課長 湯下計画官 若原計画官 谷内資金企画室長 山本財政投融資企画官 | |
委員 | 川村雄介 土居丈朗 野村浩子 | ||
臨時委員 | 江川雅子 翁 百合 冨田俊基 冨山和彦 林田晃雄 渡部賢一 | ||
専門委員 | 中島厚志 沼尾波子 |
〔池尾分科会長〕定刻になりましたので、まだ出席予定で到着されていない委員の方がおられますが、時間の制約もございますので、ただいまから財政制度等審議会財政投融資分科会を開催いたします。
本日は、議事次第が出ておりますが大きく2つ、平成30年度財政融資資金運用計画の一部変更についてまず御審議いただいた後、平成31年度財政投融資計画の編成上の論点に関して御議論いただきたいと考えております。
それでは、まずは平成30年度財政融資資金運用計画の一部変更につきまして、湯下計画官より御説明をお願いします。
〔湯下計画官〕湯下でございます。
ただいまの議題につきまして、まず議案説明資料というものがございますので、そちらをお開きいただければと思います。
議案説明資料の2ページ目でございます。去る11月7日に大阪北部地震、平成30年7月豪雨、また台風21号、平成30年北海道胆振東部地震といった災害からの復旧・復興や学校の緊急重点安全確保対策等のための平成30年度補正予算(第1号)が成立したところでございます。
この補正予算の成立に伴いまして地方公共団体が行う事業に必要となる資金を確保するため、財政融資資金の貸付けを2,821億円追加することにつきましてお諮りするものでございます。これによりまして、追加後の計画は3兆1,381億円になるということでございます。
次のページでございますが、ただいま申し上げました中の詳細な数字となっております。今回の30年度補正予算による歳出の追加額が9,356億円、それに伴います地方負担額が4,155億円、この一番上の表の追加額となっているところの4,155というところでございます。これにつきまして、まず地方債計画のほうが12兆1,215億円となります。なお、今回の弾力追加は、先の2回の予備費の使用に伴う弾力追加に引き続き30年度の地方債計画の3回目の改正ということになりまして、これに伴って行うものでございます。
その下の参考2でございますが、今回の財融資金2,821億円の追加の内訳を掲載させていただいております。こちらも前回までの追加と同様でございまして、30年度当初予算の地方債計画における財政融資資金のシェアによりましてそれぞれ計算しておりまして、公共事業について109億円、災害復旧事業は100%財融で引き受けておりますが、こちらが1,726億円、学校教育施設等983億円、公営住宅2億円、一般補助施設等1億円となっております。
5ページ目に推移を載せております。こちらによりまして財政投融資計画の総額、30年度でございますが約14.8兆円となります。
6ページ目以降が地方債計画の詳細となっております。
私からの説明は以上です。どうもありがとうございました。
〔池尾分科会長〕どうもありがとうございました。
ただいまの湯下計画官からの御説明を踏まえまして、委員の皆様から何か御意見あるいは御質問はございますでしょうか。特に御意見、御質問等はございませんでしょうか。
それでは、本議案につきまして、御異議ございませんでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
〔池尾分科会長〕どうもありがとうございました。それでは、本分科会としては了承したということにさせていただきます。
それでは、続きまして、平成31年度財政投融資計画の編成上の論点として、本日は官民ファンド及び鉄道建設・運輸施設整備支援機構について御審議いただきます。
ただいま4つの官民ファンドの関係者及び関係省庁の担当部局の方々が入室されておりますので、少しお待ちください。
(A-FIVE、CJ、JICT、JOIN 着席)
〔池尾分科会長〕それでは、各官民ファンドの要求の概要及び編成上の論点につきまして、山本企画官より御説明をお願いします。
〔山本財政投融資企画官〕財政投融資企画官の山本でございます。よろしくお願いします。
私からは資料1について御説明させていただきたいと思います。1ページお進みいただけますでしょうか、目次がございます。1番のところでは官民ファンドについて総論、2番では各論、具体論についてという2部構成になっております。
2ページお進みください。4ページを御覧ください。官民ファンドの成功についてでございます。今年6月の財投分科会で産投としての成功を明確化するという論点をいただいておりますが、今回、産投の成功としては政策性と収益性の2つがあるとした上で、本日の分科会では収益性について、最低限確保すべき収益水準について御議論いただくということにしております。
1枚お進みください。5ページでございます。最低限の収益水準といたしましては、官民ファンドは解散・清算する時点におきまして累積損益がボトムラインを超えると、こういうことが必要であるとした上で、ボトムラインとしては産投が出資した元本の機会費用を上回る収益を官民ファンドが達成する必要があるとしております。そしてその達成のためには、官民ファンドの業務期間中の期中管理の在り方が課題であるとしております。
次のページを御覧ください。累積損益の構造を示しております。中央のキャッシュ・フロー図を御覧ください。これは業務期間が20年間の官民ファンドを仮定いたしております。20年間全体で見ますと累積損益というのは11年目から20年目の緑色の部分、投資収益の合計額と、1年目から20年目の赤色の部分、毎年発生する経費の合計額、これの差が累積損益になるという構造を示しております。
次のページを御覧ください。7ページでございます。先ほど20年間のキャッシュフロー図を御覧いただきましたが、これの累積損益の経年の推移を示したものが青色のグラフ、いわゆるJカーブと呼ばれるものでございます。このJカーブについて見ますと、だんだんグラフが下に下がっておりますが、長期投資を行う官民ファンドの場合、当初は累積損失を計上することが通例という特徴が見えるかと思います。期中管理においては、こういったことを踏まえて行うことが必要であろうということでございます。
次のページ、8ページを御覧ください。2つグラフがございます。投資実績(小)という棒グラフと、投資実績(大)という棒グラフがございますが、この2つ、投資実績の大小を除きますとほかの条件は同じでございまして、右側の投資実績(大)では累積投資収益が経費総額を上回って黒字という形になっておりますが、このインプリケーションとしては官民ファンドの経費というのは固定的な要素が強いということで、この図でいきますと400億円でございますが、この経費総額をカバーするような一定の投資実績を積むことが必要であるということを書いてございます。
次のページ、9ページを御覧ください。官民ファンドの累積損益を悪化させる要素として、①として投資実績の下振れ、②として収益率の下振れがあるということを、下の①②のグラフにおいてビジュアル化しているものでございます。当然投資実績が減るほど、収益率が低下するほど累積損益が悪化するという関係でございますが、両要素、投資実績と収益率を比べますと、投資実績の落込みというのは初期段階から把握が可能、グラフでいきますと1年目から10年目、左側でございますが、初期から把握が可能である一方、右側、収益率のほうは初期の段階はどうしても間接的把握という形になるという違いがあるというものでございます。
次のページ、10ページを御覧ください。今申し上げた投資実績、収益率から管理をするのですが、管理に当たって必要な対応というものを3つの場面に場合分けして整理しております。一番左、ケース①は予定どおりですので対応不要。中央のケース②につきましては、例えば初期段階の投資実績が想定を下回るなどして累積損益のボトムラインを達成できない見通しが予想される場合、主務省、ファンドによって改善計画の策定・公表といった対応が必要となるのではないかという想定。一番右のケース③でございますが、改善計画を策定した後も、なお下振れが予想される場合と、こういう3段階を想定しております。
次のページにお進みください。11ページでございます。今の議論のまとめでございますが、官民ファンドの初期段階においては投資実行の進捗のモニタリングというものが非常に重要であると。もちろんあわせて収益性についても確保していくことは当然必要でありますが、その上で期中管理として場面に応じた対応、判断・管理の仕組みが考えられないかというのが総論のまとめでございます。
総論は以上でございます。
続いて各論でございます。2ページお進みください。まず1番目に取り上げる各論は、クールジャパン機構(CJ機構)でございます。13ページはCJ機構の30年度当初計画、31年度要求を記載したものでございます。
次のページにお進みください。14ページでございます。CJ機構の平成29年度の貸借対照表と損益計算書を記載したものでございます。
続きまして、15ページを御覧ください。CJ機構の事業状況ということで、投資の計画と実績の状況をまとめてございますが、平成29年度までの状況としては投資執行率が20.9%という状況でございます。
続いて、次の16ページを御覧ください。CJ機構のこれまでの投資状況を見ますと、小規模案件が中心であるとか、あるいは減損処理の案件が生じるといった状況が見られます。中央には折れ線グラフと棒グラフがございますが、これは現状を踏まえたCJ機構の収益見通しでございます。CJ機構としては、今後案件選択の見直し等による中期的な収益構造の改善というものが課題となっていると言えるかと思います。
次のページ、17ページを御覧ください。CJ機構におきましては、今年6月に経営陣を交代いたしまして、7月には投資方針の見直しというものを行っております。具体的には中央にある①から⑤のような投資方針の見直しということを既に行っており、収益構造の改善の取組みがなされているところでございます。
18ページを御覧ください。先ほど申し上げた投資方針のもとでどのような案件がということで、今年9月、新方針を決めてから2カ月後でございますが、アメリカのベンチャー企業であるTastemadeという会社に出資を決定しております。これによって日本の食文化や観光といった魅力などをグローバルに発信することを企図しており、早速その新方針のもとで案件が出ておりまして、今後とも着実な取組みというものが必要ではないかというのが論点かと思います。
CJ機構は以上でございます。
2ページお進みください。20ページを御覧ください。続きまして、A-FIVEでございます。A-FIVEは30年度計画は措置せず、31年度要求はありませんでしたので、今御覧いただいているページは29年度のA-FIVEの損益計算書、それから貸借対照表の状況でございます。
続きまして、21ページにお進みください。A-FIVEの計画と実績の状況でございますが、投資執行率が平成29年度までにおいては5%という形になっております。
続きまして、22ページを御覧ください。A-FIVEについては投資実績が計画を大きく下回っているところでございますが、A-FIVEによる収益見通しは中央のグラフのとおりでございまして、今後、収益性にも留意した上で投資案件の積上げが必要であろうということが言えるかと思います。
23ページにお進みください。左下の表を御覧ください。各ファンドの1件当たりの支援(同意)決定額というものでございます。A-FIVEは一番下のところですが、1件当たり決定額が0.7億円となっており、ほかのファンドより小さくなっております。一方、件数を見ていただきますと126件ということでほかのファンドよりも多いという結果が出ておりまして、1件当たりの決定額が少し小さいというところが、先ほど申し上げた投資実績が計画と乖離していることの1つの背景となっているものと思われます。
24ページを御覧ください。現状を踏まえまして、今後A-FIVEはどういう取組みをしていく必要があるかという話でございますが、中央の青色の取組みの例というところの1点目を御覧ください。A-FIVEは地銀とサブファンドを形成しているケースが多くございます。そのため地銀などとの連携強化を今模索しておりまして、既に地銀協会等と意見交換を実施しており、早速取り組んでいるところでございます。また、サブファンドの投資活動をよりしやすくするという観点から、出資手続の迅速化の検討といったものも必要ではないかと考えられます。
A-FIVEについては以上でございます。
また2ページお進みください。続きまして、JOINでございます。30年度の当初計画、31年度要求は記載のとおりでございます。
27ページを御覧ください。こちらはJOINの平成29年度の損益計算書、貸借対照表の状況でございます。
続きまして、28ページを御覧ください。JOINの事業状況でございますが、投資執行率は平成29年度までで6.3%という状況でございます。
29ページを御覧ください。JOINについては投資実績が計画を下回っているところでございますが、記載のようなJOINによる収益見通しがございます。今後、これに向けて収益性の確保に留意しつつ、投資案件の積上げが必要ではないかということが言えるかと思います。
続きまして、30ページを御覧ください。JOINの現状と課題ということでございますが、JOINの場合は自ら案件を発掘するというよりは、支援を求める事業者から案件が持ち込まれる、相談案件というものが多くございます。この中から実際の案件組成に持っていくのがJOINの業務ということになるのでございますが、JOINの場合、投資対象が海外のインフラであり、それゆえに案件組成の有無に対して海外の現地政府の影響があるといった特有の事情、特有のリスクというものがございまして、JOINだけではなく、いわゆる主務省や海外に強い他機関の協力、関与といったものが重要ではないかということがあるかと思います。
続きまして、次の31ページを御覧ください。JOINの今後の取組みとして必要と考えられることでございますが、1点目、2点目にありますとおり、例えば主務省が海外案件の把握をするとか、相手国政府との交渉を行うといった形でもっと主務省が積極的に取り組んでいくということも必要でしょうし、また海外に専門性を持つような他機関との連携といったものが今後の取組みとして必要ではないかと考えられます。
JOINは以上でございます。
続きまして、また2ページお進みください。33ページからはJICTでございます。30年度当初計画、31年度要求は記載のとおりとなっております。
続きまして、34ページを御覧ください。JICTの平成29年度の貸借対照表と損益計算書でございます。
続きまして、35ページを御覧ください。平成29年度までの投資執行率でございますが、JICTの場合、3.5%という状況になっております。
続きまして、36ページを御覧ください。JICTにつきましては投資実績が計画を大きく下回っているというところがありまして、JICTによる収益見通しは記載のとおりでございます。やはり今後収益性にも留意しつつ、投資案件の積上げが必要ではないかということが言えると思います。
続きまして、37ページを御覧ください。JICTの現状と課題でございます。JICTはJOINと同じように相談案件の持込みというのはありますが、件数がほかのファンドに比べて少なく、数字としては下の表に記載のとおりとなっております。それから、JICTはJOINと同じく海外のインフラへの投資を行うファンドであると。それゆえに、先ほどのJOINについて御説明したのと似たような特有のリスクというものがありまして、そういうことを踏まえますとJICTだけではなくて、主務省の関与や、海外に強い他機関の協力などが重要ではないかと言えると思います。
次のページへお進みください。38ページでございます。JICTの今後の取組みとして必要ではないかということで、取組みの例の1点目、2点目にありますとおり主務省が海外案件の把握、相手国政府との交渉を行う、あるいは海外に強い他機関と連携していくなど、案件組成の取組みを強化することが必要ではないかということが言えるかと思います。
私からの説明は以上でございます。
〔池尾分科会長〕どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの山本企画官からの御説明を踏まえて、皆様から御意見、御質問をお願いしたいと思います。本日は4つの官民ファンドの関係者の方々に来ていただいていますので、関係者の方々に御質問いただいても結構です。
特定の官民ファンドに関わる個別的な論点は後回しにしていただいて、最初は総論的ないし複数の官民ファンドに共通して当てはまるような論点からまず議論していただければと思いますが、いかがでしょうか。どうぞ、渡部委員。
〔渡部委員〕質問を2点。1つ目は収益性、政策性という2つの観点のうち、今日は収益性ということですが、ベンチマークではなくてマジノ線が国債の金利、仕方がないかなと思います。資本コスト云々というと少し頭が痛くなりますし、ほかに適切なものがないので1つの指標として。そして、今日の議論ではないんでしょうけど、政策性についても、当然、官と民のファンドですから、数値的なKPIというのがあるのかどうかが質問です。いろいろなモニタリングのときに結果としてこうだというのを見るにあたって、できればお互い合意した数字があったほうがいいような気がしての質問です。
それから、2点目は今後の流れという意味で、Jカーブも分かるんですが、流れとすればファンドごとの管理、あるいはモニタリングのコスト、あるいは1件当たりの投資サイズが小さくて云々、一方管理コストは一定がかかるみたいな議論があります。従ってファンドごとではなくて、これは産業投資のようにグロスしていく、合計していって一定の広い意味の管理、モニタリングをやっていく方向なのかどうなのか、そうした検討もお考えなのかどうかをお聞きしたい、この2点です。
以上です。
〔橋本財政投融資総括課長〕まず1点目につきまして、政策性のところでございます。6月の当分科会で御議論いただいて取りまとめいただいたように、来年6月までかけて産業投資の管理運営について検討を深めていくということにさせていただいておりまして、今回は31年度編成の中ででき得るところというところで収益性を取り上げさせていただいているところです。したがって、まだ今現時点で政策性についてどのように検討を進めるのか、方向性が見えていないところではありますが、渡部委員の御指摘のようなKPIの形は、内閣府の官民ファンド幹事会ではKPIの設定が政策性についても行われているところでありますので、そういった議論なども参照させていただきながら進めさせていただければと考えております。
2点目につきましても、まだ今の段階でそこまで視野を広く持って検討できるのかどうか分かりませんけれども、御意見をいただきましたので、そういったことも含め今後考えていきたいと思っております。
〔池尾分科会長〕続きまして、いかがでしょうか。では、冨山委員、お願いします。
〔冨山委員〕どうもありがとうございます。
まず、4ページ目のフレームワーク自体は、私もよく整理されていると思っていて、こういうふうにもともと整理すべきものであったと思っています。
その脈絡で今の収益性の観点で言うと、恐らくこれは枠的に考えてしまうと資料に書いてあるとおりで、産投は国債金利なので恐らくこうなるのでしょうと。ただ一方では、逆に言うと機会費用的に資本コストを捉えると、おそらく各ファンドによってリスクプロファイルが違ってくるのは、それは機会費用が違うはずなので、それはどちらかというと産投サイドというよりは、本来ファンドそれぞれに、恐らくそのことは渡部委員もおっしゃりたかったことだと思うのですが、本来ファンドのネーチャーとしてこのくらいの機会費用ベースの資本コストを考えてターゲットを設定するというのは、私はあってしかるべきだと思っているので、それは今後の議論なのだろうと思っております。これが1つのコメントです。
それから、ある種その表裏の話になるのですが、まさにこのJカーブ的な議論と、先ほどの管理コストの議論で言うと、一般のいわゆる民間でPEファンドとかVCファンドを作ると、恐らくこの経費の部分というのはいわゆる管理報酬ですから、ファンドサイズに対して5%とかああいうところでカバーしていく話になるわけで、要はその中で運営して、かつ収益を上げて、その5%分の管理費をネットで差し引いて何%の利回りですかという計算を普通はするわけですね。その脈絡で言うと、本来は投資案件があまり伸びない状況というのは、普通は組織はあまり拡大しないわけです。赤字になってしまうから。それでそういうある種のディシプリンが働くわけです。
ただ、一方でこういう官民ファンドの特性上、かなりの投資をするという前提で最初に組織を作ってしまうものですから、恐らくコストオーバーランとなってしまう。もしこれを管理報酬型でやっていったら、この幾つかのファンドはもう倒産しているはずなのです。普通はキャピタルコールですから、実際の投資案件がないとお金は入ってこないので。自分の組織を維持するためにキャピタルコールしても誰もお金を出してくれないので、そういうことが起きかねない状況が起きているということだと思うので、要はそういう状況によってどういうディシプリンを当該機構を運営している人に対して働かせるかというのは、これだけ投資実績が下回るということが起きてくると、やはり考えるべきなのではないかと思っています。少なくとも私は自分でやったときはかなりそれを意識していたので、一応頭の中で普通のファンドだったらこのくらいのお金を預かる計算になるからということは考えて組織の拡大ペースはコントロールしていたので、そこは是非この後の1つのディシプリンとして入れてもらえたらなと思っています。
それから3点目ですが、このJカーブの議論というのは、いうなればこれは、バランスシートベースの実体価値として最終的に何%の利回りで終わりますかということが大事だということをここで言っていると思うのですが、逆に言うと、やっている立場からすると、実はそのことは逆に常に気にしてモニタリングしているはずなんですね。だとすると、当然のことながら既に投資したものに関しては毎年、毎四半期ごとくらいにマーク・トゥ・マーケット、あるいはマーケットプライスがないものは何らかのイントリンシックバリューを自分なりにはじいて、それをずっとシミュレーションして、仮に今解散したらどういう収支で終わるのか、あるいは今の投資想定でシナリオどおり、例えば最終的に終わるところまでいったらどのくらいで着地になるのかということはかなり緻密にシミュレーションをすべきだし、しているはずなのですが。かつて私はやっていたので。自慢話になってしまいますけど、産業再生機構はかなり正確に終わっています。恐らく財務省はよく知っていますけど、かなり緻密にシミュレーションをかけて、プラスマイナス10%ぐらいの誤差で終わっているはずです。普通それはやっているはずなのですが、実際今の各官民ファンドはどういう管理をされているのかなというところが質問です。
〔池尾分科会長〕それは各ファンドごとに聞きましょうか。
〔冨山委員〕本来そういう質問です。
〔池尾分科会長〕いかがでしょうか。
自らとしてどういう管理をしているかということについて、概略をできるだけ手短に順番にお答えいただけますか。
〔川村委員〕最初に総論的な質問をということなので、今の冨山委員の御質問と同じものがあるので、先に総論でもいいですか。各ファンドに聞きたいことがあるのですが。
〔池尾分科会長〕はい、ではどうぞ。
〔川村委員〕総論的なことを申し上げれば、私は4ページにあるこの政策性と収益性の話がとても大事だと思っていて、実は最初は非常に政策性リジッドに始めるわけです。ところが、世の中にそういうものがそうごろごろ転がっていないという現実に気づいてくると、一方でどういうことが起こるかというと、政策性をルーズにして、ともあれ案件を積み上げようとか、収益性を追求しようと。そうすると、これが反対側に振れるといわゆる民業圧迫みたいなところにいきかねないところまでいく。つまり、官民ファンドとは何だというところが、実はこの政策性と収益性がある種トレードオフみたいな関係にあって、ここのところをしっかり、これは今ということではないのですが、問題意識としては持っておく必要があるのではないかと思います。例えばファンドごとにファンドのマルチプルが10年後に1.5倍と言っているけれども、財投あるいは産投自体がどうなのかということをむしろベンチマークにして、それにコストを乗せるというようなことにしていかないと、1.5倍というのが偏差値90取りなさいみたいな話ではないかと。偏差値60で十分だよ、ぐらいになってくると、ボトムラインがどのくらいかということは改めてきっちりし直す必要があると感じています。
それと2点目は、今の冨山委員の意見とも大変合致するのですが、どのファンドに対してもモニタリングをきっちりしなさいと言って、各ファンドはそのとおりきっちりやっておられると思うのですが、問題は、例えば株主間契約なんかで結んでちゃんとやっているのだけれども、途中からへたり始める案件がたくさん出てくるわけです。そこがモニタリングだとかハンズオンだというところの真骨頂なのですが、実はそのときに民間の本気度が結構緩いということがあって、話が通じないところがあるわけです。そうすると、最初の株主間契約だと、まだこちらが手をぐっと入れる段階ではないのだけれど、これを放置したら間違いなく破綻するようなケースがあって、その辺の厳しい現実のモニタリングというものを、これは逆に言うと各ファンドにどう苦労されているのか、どう対応されているかお聞きしたいなと思うところであります。
もう一つ、また総論的になるところなのですが3点目として、先ほどおっしゃった内閣府の幹事会では当初から官民ファンドショッピングというものが問題になるのではないかと言われていたんです。つまりAという官民ファンドがあって、似たようなところの民間業者がAファンドに断られたから、じゃあBファンドに行きましょう、Cファンドに行きましょうというようなショッピングというのは、これは問題ではないかと。しかし他方で、だんだんやっていって、この現実を見てみると、官民ファンド間のより具体的な提携といった話のほうが現実的ではないかと。そうすると、官民ファンド側から見るとちょっと矛盾する議論で、官民ファンドへのショッピングのようなことはやめろという方針が出ている一方で提携しろというような。その中に今日の4ファンドの中でも具体的な提携実績が出てきているものもある中で、ここをどう考えるのかと。私の個人的な結論としてはどんどん提携を進めるべきだと思うのです。利益相反だとか、コンプライアンス上問題があるようなショッピングは無論論外ですが、そうでない範囲内ではどんどんやっていくべきではないかと。
あとは最後に1点、今日の読売新聞で、普通の人が誤解していることに非常にびっくりしたのですが、例えばあるファンドはこれまで1,800億円の計画なのに100億円しか使っていないので、まだ1,700億円使えるじゃないかという問い合わせが複数ありまして。これは現実にはキャピタルコールなので、例えば、来年度以降、そのファンドに1,700億円がプラスオンで乗っかるわけでは全くないのですが、結構そういう誤解をしている人もいるので、逆に理財局としては、そこは注意喚起というか啓蒙をやっていただきたいなと、これはお願いであります。
以上です。
〔池尾分科会長〕どうもありがとうございました。
では、もう少し委員の方から意見をいただいてから、各官民ファンドの方にレスポンスしていただくということにしたいと思います。では、江川委員、お願いします。
〔江川委員〕ありがとうございます。
2点あって、1つは規模の拡大に対するディシプリンと冨山委員がおっしゃったことです。資料の8ページのところで、一定の収益率を想定すると、経費との関係で一定の投資実績を達成することが必要と、この言っていること自体は誠にもっともなのですが、私はこう言うよりは、むしろそれぞれの政策目的があるわけなので、先ほどのプレゼンテーションにもあったように、それぞれの目的に応じて適正な投資案件の規模も違うというお話があったので、政策ニーズに応じた規模や投資規模というものがあるはずです。規模に合わせて経費をコントロールすべきと冨山委員がおっしゃっていたことと共通しますけれども、収益率を前提にして経費をカバーするために大きくしなければいけないというよりは、そもそもその政策目的を達成するためにどのくらいの適正規模かということはしっかり押さえておく必要があるし、それに応じて規模のディシプリンを効かせる必要があると思います。それで、逆にクリティカルマスに達しないので経費がカバーできないということであれば、先ほど少しお話が出ていたように幾つかのものを一緒にする、今、川村委員がおっしゃったように提携を進める、ファンドの例えば管理部門だけを共通にする、など様々な工夫ができるので、その規模に対するディシプリンというのは重要な視点だと思います。
それから2点目は、ガバナンスに関して事前と事後という考え方があると思っていまして、つまり実際に投資をする前にこれは収益が出るかとか政策目的に合致しているかということ、特に今回は収益性が重要なのでそれにフォーカスして言うと、収益性という面できちんと確保できるかということをきっちり確かめてから投資するということがとても重要です。そのときにいろいろな形でうまく牽制が効いて、それによってスクリーニングされるという仕組みをビルトインしておくというのが重要ではないかと思います。よくモニタリングというか、事後に検証して、それを次に生かしましょうというのはもちろんやっていく必要があるのですが、投資をしてしまうとどうしてもそれに引きずられてしまう面があります。それから第三者委員会を作って検証しましょうというのも、それなりにコストと時間がかかります。ですから、事後ではなく事前のガバナンス、つまり、最初の仕組みの中に良い形でマーケットメカニズムのような感じで牽制が効く仕組みを入れていくということが重要だと思います。
その2点です。よろしくお願いします。
〔池尾分科会長〕ありがとうございました。
では、土居委員、お願いします。
〔土居委員〕事務局からの御説明にありましたように、官民ファンドとはどういう定義でもって成功と考えるかということをより明確に議論するということは非常に大事なことだと思います。この分科会で私も何度か申し上げていたとおりであります。特に今回示された収益構造に関する指標については、非常に有益な指標の提示があったと思いますので、今後はよりシスティマチックにこの財政投融資ないしは産業投資において、こういう指標を財投編成に合わせて理財局でなり、ないしはこの分科会でなり、明示的に議論に用いられるようにしていただくというのは非常に重要なことかなと思います。
特にこれまで主に財政融資のほうでということでありますけれども、政策コスト分析というものをツールとして使って、かつそれを定着させてきたということですけれども、こういう官民ファンドという形態は今後もしばしの間続きますので、単に産業投資を中心に新規要求が上がってくるというその刹那でこういう収益構造の分析ということをするけれども、残存の残高がある機関、新規要求のない機関だからといって分析をしなくていいと、ないしは表立って議論するような形で収益構造を見せなくていいということにはならないと私は思っていて、そういう意味では新規要求がなくても出資の残高があるということであれば、その出資が今後どういう形になるのか、何らかのリターンが産業投資にもたらされるものなのか、ないしは産業投資の出資が毀損するというようなことになりはしないかということを常時確認できるような体制を理財局の中でも構築していただきたい。そういう意味では9ページにあるようないわゆる投資実績、それからIRR、この2つの指標というのは非常に象徴的で、かつ直感的で、これを国民に示すことによって、官民ファンドの現状がどうなっているかということをよく分かるように示すことができるのではないかと思います。
どこまで政策コスト分析のような形で定着させるかというのは、私もよく分かりませんけれども、少なくともある種のお手本として政策コスト分析を恒常的に行っているという見本が1つありますので、その見本を見習いながら産業投資ないしは官民ファンドの適切な管理というところに取り組んでいただきたいと思います。ひとまず総論としては以上です。
〔池尾分科会長〕それでは、林田委員、お願いします。
〔林田委員〕ありがとうございます。
この資料を拝見して、各ファンドのJカーブは成功する状態、つまり10ページの図でいえばケース①ないし②なのかなと思いますけれども、現状の投資実績を考えますと、ほとんどのファンドはもしかしたらケース③になってしまうのではないかという危惧を抱かざるを得ません。改善計画を作成するタイミングに関してですけれども、今、投資実績は計画を大きく下回っておりますので、できるだけ早く作成したほうがいいのではないかと私は思います。作成に当たりましては、当然のことですけれども累損解消のゴールから逆算して作成するというのではなくて、あくまで現状の投資規模や仕掛り案件の状況、そういった実態を踏まえた内容にする必要があると思います。
それぞれファンドで努力されていると思いますし、改善計画は現時点でないわけですので、ケース③にならないように頑張ってくださいとしか言いようがないのですが、改善計画が作成されてなお数年改善の目途が立たないようであれば、累損が将来大きく拡大していくことを防ぐためにも、ファンドの整理統合も含め何か抜本的な手を打っていかなければいけないのかなと私は思います。
二度指してもらえると思わないので最後に質問ですけれども、CJ機構に質問ですが、経営陣が交代されて投資方針や体制の見直しに取り組んでおられるようですが、その後の進捗状況等を簡単に御説明いただければと思います。
以上です。
〔池尾分科会長〕どうもありがとうございました。
中島委員、お願いできますか。
〔中島委員〕大変詳細な中味、ありがとうございます。私も今までの委員の、とりわけ林田委員のお話に近いのですが、長いところだともう既に6年間の実績があるのですが、他方で投資執行率を見ると1桁台のところも結構あるということで、その意味では資本コストをカバーするというのが、もう既に何らかの少し大胆とも言えるような手も入れて打たないと難しくなり始めているのかなという気がするわけです。ただ、これは例えばこういう現状をベースに考えていくと、資本コストを賄う必要があるということで、新たな投資案件がまさに大型化するとか、あるいは手堅いものを考えるとかというようなことになってくると、先ほど来の話にありました政策性とかそういう話と比べて、果たして本来的な意味でのこういう官民ファンドの趣旨にかなったものであり続けるのかどうかということがあります。したがって、積上げ案件が少ないから一律大型案件というのも危険であるし、他方で資本コストを意識するから手堅くということであれば、本来のファンド的な性格から離れかねないということがあるので、先ほど林田委員がおっしゃったように、私もこれは早急に個別に見直していく必要があると思うし、まさにその意味では収益性だけではなくて、それをカバーするやり方がうまくあればいいのですが、ただ政策性との絡みで本来の当初の大きな官民ファンドの意図というものを逸脱するということは、これはあってはならないことですので、是非その意味では早急にバランスのとれた形で見直し、必要であれば統合という形を含めて検討していただきたいと思います。
以上です。
〔池尾分科会長〕冨田委員、お願いします。
〔冨田委員〕事務局より、各官民ファンドの投資実績等を評価できるような、非常に明確な定規を示していただけたと思います。
それを踏まえて議論ですけれども、1つは投資件数というか、投資実績についてです。これは質問なのですが、CJ機構について、これはかなり大きな投資規模にしないと、これから先、まずだめだということになるわけですけども、これまでの投資案件の実績を見ていますと、LP出資ですけども京大のベンチャーキャピタルに投資したりしています。もともとクールジャパンというのが日本ブランドの国際的なプレゼンスの向上ということなので、極めて多くの案件に適応するように私は思うのですけれども、今言ったベンチャーキャピタルへの出資もそうですが、そういうことがジャパンブランドのプレゼンス向上ということと、どの程度の距離があったら件数として増やしていく形の運営をなさっているか。どこで線を引くのか、あるいは線がもうなくなってしまったのか。先ほど川村委員の御指摘もそうですが、政策性と収益性のトレードオフの話ですね、そういう観点から御説明いただきたいというのがCJ機構です。
同じようにA-FIVEですけれども、確かこの場所でA-FIVEの出資先を拡大しようということで、これまで農家に限定していたものを企業にも拡大したのですが、その成果がどうなっているかということをお聞きしたい。それからリターンのほうですが、減損処理を随分なされております。特にJICTがものすごい金額でなされていますが、まだ設立間もないのに何でこんなに投資が減損処理をせざるを得ないのか、これはA-FIVEもそうですけれども、件数で言ったらとても多いわけです。こういうことを反省して、今日の物差しが示していることは、やはり投資の実績を増やすこととリターンを上げることなのですが、今、JOIN以外のところは全部質問させていただいたので、後でお答えいただければと思います。
〔池尾分科会長〕それでは、4つの官民ファンドの方からお答えいただきたいのですが、最初に冨山委員からありましたようにファンドとして適切な運営管理を本当にやっているのかということで、それに関連して私から具体的な論点として、これまでの実績に対して今後の見通しとして出されている数字が、CJ機構の場合はこれまでの実績が年平均80億円に対して264億円ですから3倍強になると。CJ機構の場合、経営陣も変えて取り組まれているというのがありますが、その後のA-FIVEだと15億円が71億円ですから5倍以上というのは、先ほどの林田委員からあった逆算で決めた数字ではないかという疑念を持たざるを得ないようなところがあって、それからJOINの場合もほぼ5倍を想定されているということです。最後のJICTだと6倍を想定されているということになるのですが、これが本当に冨山委員がおっしゃったような適切な運営管理をしてシミュレーションした上での数字であれば結構なのですが、最終的に収益が累損を解消できるように逆算した数字でしかないとすると、極めてゆゆしきことだということになりますので、その辺を含めて、資料の順番で、まずCJ機構から御説明をお願いします。
〔海外需要開拓支援機構加藤専務取締役〕ありがとうございます。CJ機構の加藤と申します。よろしくお願いいたします。幾つか御指摘をいただいておりますので、まず私のほうから簡単にお答えさせていただきたいと思います。
まず、冨山先生からいただきました管理の手法についてということでございますが、CJ機構では投資管理委員会という委員会を設置いたしまして、四半期ごとに各ポートフォリオ会社、投資案件のレビューを行いまして、非常にスタンダードな方法でバリュエーションの見直しを行っております。各社別の評価、それからトータルとしての評価というものを海外需要開拓委員会、普通のファンドでいうところの投資委員会に報告を上げているという形になっております。これについてのディスクロージャーにつきましては今のところ未定でございますので、今後慎重な話し合いをして決めていきたいと考えているという状況でございます。
次に、林田先生から御指摘いただきました新しい経営方針ということでございますけれども、今年7月の初めに経営陣が交代いたしまして、すぐに着手いたしましたのは、当然のことながら投資方針の見直しということでございます。CJ機構のみにとどまらず、経済産業省様、それから社外取締役の方々、皆さんに御参加をお願いいたしまして、オフサイトミーティングを何回か開かせていただきました。その中で経済産業省様、それから社外取締役の方々を含めた総意といたしまして、資料にも書かせていただいておりますような投資方針、それから投資のやり方ということを全体として投資戦略、投資方針として策定いたしたところでございます。例えば5つの投資方針、それから投資の4分野、それから投資の手法について決めた上で、系統だってストラクチャーの持った形でオリジネーション等々を、新経営陣としてプロアクティブに推進してきているという状況でございます。
お時間もあまりないと思いますので、個別の方針等についてはここでは割愛させていただきたいと思っておりますが、17ページ目に書いているような内容で、これは対外的にも発表させていただきまして、我々の中だけではなくて、アドバイザーのコミュニティなどといった方々にも広く知っていただいた上で、オリジネーションにも役立てるということを考えながらやらせていただいているという状況でございます。
最後に、冨田先生から御指摘いただきました、そもそもCJ機構の投資の領域についてということでございますけれども、まず御指摘の京大ベンチャーの話は一回置きまして、そもそもの投資領域でございますけども、これは海外需要開拓支援機構法に書いてあるとおり、むしろ日本名で理解していただいたほうがいいと思っておりまして、海外需要開拓を支援する機構と、それに資するような投資を行うというのが基本になっていると思っておりまして、それは例えば海外のプラットフォーム、ディストリビューションのプラットフォームや放送事業者、メディア会社などに投資を行って、そこに日本のコンテンツや商材をのせていくというような考え方とか、それから日本で海外に出あぐねているような方々に投資させていただいて、その方の海外進出を助けるとか、あとはメディア会社に投資を行うと、そういった意味ではいずれにしてもBtoC、いわゆる消費財の世界で海外アングルのあるものに投資するという形で、設立当初からぶれはないと思っております。変わったのは、手法の適用、投資の手法が少し柔軟になってきたというところだと考えております。
京大のベンチャーキャピタルにつきましては、当機構の若井から御説明させていただきたいと思います。
〔海外需要開拓支援機構若井専務執行役員〕CJ機構、専務執行役員の若井でございます。
冨田先生から御指摘のあった京大みやこキャピタルへの出資でありますが、CJ機構に対しましては、政府のほうからアジア健康医療戦略構想の一環として、しっかりとこういった海外アングルのものについてはヘルスケアの分野についても出資を積極的に行うべきというような御示唆、御指導も受けているところでございまして、その関係でみやこキャピタルの海外展開が見込まれるパイプラインが相当程度見込まれたということもありまして、投資させていただいたということであります。今、加藤から御説明いたしましたように、海外の需要がある程度見込まれるということが当然我々の投資のスコープとして必要な分野でございますので、そういった判断であったと御理解いただければと思います。
以上でございます。
〔池尾分科会長〕それぐらいでお願いします。
〔冨山委員〕先ほどのディクロージャーの話ですが、主権としては国民ということになるので、もう5年経っているので、それをディスクロージャーは微妙だからしないというのは、やはり私は変だと思っています。これが普通のファンドであれば、もしこれである種決定権限を持っているとすれば、こういう実績があるからもう一回、キャピタルコールしてくださいとお願いに来ていただく立場なのですが、それに目をつぶって、ちゃんとやっているから出せと言われても、難しいと思うのですけれど、これをディスクローズする予定はないのでしょうか。要は1年目、2年目はさすがに投資が積み上がらないし、ランニングコストも分からないからできないというのは分かりますが、別に変な話、債務超過でもいいんですよ。だって途中はそうなる可能性があるんだから。その問題って、ちょっと話が違っていて、やはり僕はディスクローズすべきだと思うのですが、そういう予定はないのでしょうか。
〔池尾分科会長〕結論的な答えだけお願いします。
〔海外需要開拓支援機構加藤専務取締役〕ありがとうございます。御指摘も踏まえまして、今後ディスクロージャーについて検討を進めて参りたいと思っております。
〔冨山委員〕是非よろしくお願いしたいのと、あと、もう一つの脈絡で言うと、先ほどの江川さんの話とも繋がるのですが、固定費です。組織運営上の固定費の問題について、このペースでもし投資行動が行われているとすると、多分今の4分の1か5分の1に落としたほうが僕はいいと思うのですけれど、その辺の実際の雇用の形とか、雇用の柔軟性はどのくらいダイナミックにやっているのかちょっと心配になってきたんです。というのは、今後、投資案件が積み上がらないとすると、少しでも損失を最小化しようと思ったら組織をダウンサイズするしか恐らく方法がないんですね。この辺、どのぐらい柔軟な経営ができるようになっているのか、それは雇用形態を含めてどうなっているのかというところを疑問に思ったのと、さっきの京大の話は、先ほどの説明ではあまり納得がいっていなくて、経済産業省が何か言ったからやるというのは、申し訳ないですけど、これは官民ファンドのあるべき姿ではなくて、経済産業省が何を言おうがノーはノーだし、イエスはイエスなんですよ、官民ファンドというのは。それで昔ダイエー問題で僕は経済産業省と大げんかしたんだから。だから先ほどのは説明になっていなくて、それは官民ファンド、CJ機構としてやるべきだと思ったからやるというのが正しい判断であって、僕は、悪いけど経済産業省は言い訳にならないと思っていますけど、いかがでしょうか。
〔海外需要開拓支援機構加藤専務取締役〕まず、最初に御指摘がありました固定費の部分ですけれども、現状、我々新経営陣のもと、パイプラインの積上げに努力しておりまして、本年度の段階で、現状におきましては実行段階のものは約200億円、実行段階に至っていないのですがパイプラインに入っているものを含めて600億円程度ございますので、現状では今の組織の規模が適切なものであると考えております。
〔冨山委員〕それは全然質問の答えになっていなくて、要は、例えば状況が変わったときにどのぐらいのターンオーバー、あるいは簡単に首を切れるようになっているのですか、という質問です。
〔海外需要開拓支援機構加藤専務取締役〕これは日本の会社で雇用の問題等々についてはなかなか難しいものがございますので。
〔冨山委員〕僕は、300人雇って4年で組織解散しているんですけど。
〔海外需要開拓支援機構加藤専務取締役〕組織は、むしろ組織をサイズに合わせてというよりは、今のクールジャパンファンドのミッションに合わせた組織が作られておりますので、その組織サイズに合わせた案件作りを行っていくということだと考えております。
〔冨山委員〕申し訳ないですが、それは納得できない答えになっていて、要はこれだけの組織があって、これだけの人数を食わせなきゃいけないからこれだけの投資をしますというのは、典型的に投資会社で失敗するパターンなので、そこは是非とも見直してください。
〔池尾分科会長〕まずはここで一旦、次、A-FIVEの方、同じ質問ですが、お答えいただけますか。
〔農林漁業成長産業化支援機構佐藤取締役専務〕A-FIVE取締役専務の佐藤と申します。
まず、冨山委員からいただきました意見でございますが、管理につきまして申し上げますと、これまで弊社の投資後の管理というモニタリングですけれども、フロント業務の一環としてやっておりました。これを昨年の夏にモニタリング業務をフロント業務から切り離しまして、バックのほうで見るということになりました。そういう意味では一定の牽制機能を働かせるという体制を整備したところでございます。さらにそのモニタリングのやり方につきましても、全ての出資先について1年に最低1回以上実施するということで、さらには事業の進捗状況の深掘り報告をしてもらうとか、また動向注意先事業体の資金繰りの現況ですとか、あるいは資金繰りの際の対応をどうするかといったようなことにつきまして、これも随時報告をするということにしたところでございますが、本日の資料の24ページ、弊社の論点の中で、今後の取組みの例といたしまして投資判断プロセスやモニタリングの在り方について検証して改善していくという記述がございます。冨山委員御指摘の点も含めて、さらには投資前の審査の中でも一定の牽制機能を働かせるにはどういうやり方がいいのか、こういったものを我々が早急に検証いたしまして、速やかに改善していきたいと、さらなる改善を図っていきたいと考えております。
また、冨田委員から御質問がございましたA-FIVEの出資先を企業にまで拡大したその成果はどうかという点でございますけれども、昨年8月に、これまでは6次産業化に支援する場合に新法人を作らなければいけなかったものを、既存の法人でもよくしたというような制度改善を行いました。また、同様に昨年でございますけれども、6次産業化の支援とは別に事業再編等を行おうとする農業生産資材の製造業者等に対する出資ということも、新たに弊社の業務として法律上、位置付けられました。また、本年の10月には流通構造改善に取り組む流通関係事業者に対する出資業務も、新たに法律の施行に伴いまして位置付けられました。そういったこともございますので、今弊社挙げて出資先の案件組成に全力を挙げているところでございます。
ちなみに、この事業再編等、昨年に追加されました事業再編等でございますが、今年度、これまでにない企業に拡大した結果の新たな出資ということで、4件出資決定をいたしております。
最後に分科会長からの御質問、御指摘でございますけれども、御指摘のように弊社のこれまでの実績と目標とする出資額との間で乖離がございました。理由につきましては、例えば農林漁業者を起点とした6次産業化支援が中心でありますので、どうしても小規模な案件が多くなって投資金額の積上げがなかなか思うようにいかなかったという点があろうかと思いますし、また大規模な直接出資案件を組成していくための戦略的な組織体制がなかなか十分整備できていなかったのかなというようなことを我々は考えております。
今後でございますけれども、ただいま申し上げましたとおり農業競争力強化支援法に基づく事業再編等に取り組もうとする農業生産資材の製造者、さらには今年の秋、先ほど申し上げました食品等流通法に基づく食品事業者、流通事業者に対する支援が可能となりました。これらの企業、事業者の方々といいますのは、各地方銀行が地域で非常に関わりを持っている企業でありますので、地銀との連携強化を図ることで出資の拡大につなげていきたいと思っております。
資料の24ページにありますとおり、地銀を初めとした関係機関との意見交換を通じて、コストに見合った案件組成のための連携を、これはもう真剣に取り組んでいきたいということで、今週、地方銀行協会、第二地銀協とそれぞれ意見交換ということでキックオフのミーティングをさせていただきまして、これを今後さらに各地銀レベル、あるいは実務者レベルに下ろしていって、真剣にこの地銀との連携を取り進めて参りたいと思っております。
そのようにして小規模間接出資案件の組成をこの地銀と連携強化する中でサブファンドに任せるといったようなことを行う中で、弊社といたしましては大型の直接投資を行うような専門チームの体制を強化することなどを通じて、直接投資の案件組成に全力で取り組むような体制を早急に整備していきたいと考えてございます。
以上でございます。
〔池尾分科会長〕どうもありがとうございました。
〔冨田委員〕お聞きしたうちの1点まだお答えいただいていないのがあって、減損の件数が非常に多いことの原因、それをどのようにこれから見直していくのかという話、お願いいたします。
〔農林漁業成長産業化支援機構佐藤取締役専務〕失礼いたしました。減損処理でございますけれども、弊社におきましては資本毀損率が50%を超えた場合で、かつ回復可能性が認められない場合などに減損処理を行うとしております。本年3月期決算での減損額は25件、6.5億円となっております。この減損処理案件でございますけれども、これまで弊社の業務の中心でありました6次産業化事業体への支援ですが、その多くが新たに法人を立ち上げる新規事業体の設立を要件としていたために、例えば事業の立上げが予定していたよりも遅れてしまったことですとか、あるいは原料の農産物の調達が安定しなかったこと、さらには事業規模に比べて過少資本傾向にあったといった理由から、創業後間もなく減損判定が行われることにつながっていったのではないかと考えております。ただ、減損判定が行われた事業体でありましても、その後の経営支援によって黒字になった事業体もございますので、そういったことも留意していく必要があるかと思います。今後は、弊社のIRR5.5%の確保に向けまして、先ほど申し上げました6次産業化事業体に対する間接投資ですとか直接出資、さらには事業再編等をしようとする企業、さらには食品流通合理化事業を行おうとする流通関係者、そういった方々を含めたポートフォリオの管理ですとか出資事業体への経営支援を行いまして、A-FIVE全体としての収益を確保していきたいと考えてございます。
〔池尾分科会長〕一応一通り伺ってから、個別ファンドの方について追加的にまた質問していただきたいと思います。
それでは、JOINの方、お願いします。
〔海外交通・都市開発事業支援機構稲川常務取締役〕JOINの稲川です。よろしくお願いいたします。
まず、最初に、私ども対象が海外のインフラ、特にグリーンフィールドという建設の案件を対象にしておりますので、まだ投資をしたものが建設中ということなので、マーク・トゥ・マーケットという考えで対応していないのですけれども、それは違った方法で一件一件、個別案件についてはキャッシュ・フローのプロジェクションに基づいてどのくらいのIRRが期待できるかということと、それを合わせて全社レベルでどのくらいのIRRが期待できるかというものをチェックしております。建設期間にいろいろなイベントが起こった場合には、キャッシュ・フローの見直しをするような体制にしております。
具体的にモニタリングをどういう形でやっているかということでございますけれども、昨年、事業推進をする部署とモニタリングする部署を分けまして、プロジェクト管理部というものを新たに立ち上げました。こちらのほうで実際に出資が終わった案件、最初の出資が終わった案件については事業推進のほうからそちらのほうに全部移管して、より客観的に一つ一つの事業を見ていくという体制にしています。
モニタリングのところでもう少し詳しくお話ししますと、やはり私どもは建設のリスクというのが非常に高いということを認識しておりまして、新たに建設管理ユニットというのをプロジェクト管理部の中に設置しました。そこはそういうバックグラウンドを持っている人がいて、大体プロジェクトの場合、プログレスレポートというのが毎月出てくるのですけれども、その建設の進捗状況、これはコストも含めてそこのところを今管理しています。そこで何らかの大きなイベントが発生した場合には、それをキャッシュ・フローに反映させて実際のバリュエーション、バリュエーションというほどのことではまだないのですけれども、IRRがどのくらい変わるかという管理をしております。
実際には昨年は155億円の投資だったのですが、今年度は今までのところ138億円の投資をしておりまして、下期、これから3月にかけてあと240億円ぐらいの投資をするということになりますので、全体として今年度は380億円ぐらいの投資を今考えています。それを踏まえたコストを反映して全体のIRRを今計算しているというところでございます。
以上です。
〔池尾分科会長〕ありがとうございました。
では、JICTの方、お願いします。
〔海外通信・放送・郵便事業支援機構齋藤常務理事〕JICTでございます。
まず、モニタリングに関してでございますけども、私どもは本年1月からモニタリングに関するチェック項目の点検整備を行っており、多様な観点から複層的にチェックが行われるようにモニタリングプロセスを強化しているところであります。
具体的に何かということでございますけども、個別の投資案件を継続的に取り扱っている部署、これは投資戦略部というのがございますけども、それとは別に機構全体の経営、財務の健全性を管理する投資管理部というのがございます。その相互の間で検討の節目、節目で相互牽制が機能するようにしているものでございます。
さらにそれが具体的にどういうことをやっているかということでございますけども、投資管理規程を我々は規定しておりますけども、その中でモニタリングのチェックリストというものを定めております。どういうものかと申しますと、対象事業の主要なKPI指標でありますとか、投資先の主要な財務諸表といったものを特にモニタリング対象としていると。その数字が計画と乖離がある場合には、その背景や理由などを投資管理部のほうで確認すると。あるいは契約の履行状況であるとか政策的意義、その他許認可の状況等をチェックリストの中の項目として確認していくこととしております。
投資管理部がチェックしたもの、これはモニタリング会議というのが四半期に1回開催されることになっているのですけれども、そのモニタリングの結果につきましては、事業委員会、投資委員会のほうにも御報告させていただくことになっております。
それから2点目、冨田委員から御指摘のありました減損の関係でございます。いわゆる2号案件に関しまして、私どもが減損を計上したことについて、大変申し訳なく思っております。本件につきましては、どういった事情だったのかということでございますけれども、いわゆるベンチャー企業に対する投資であったわけでございますが、投資を行うに当たっての投資判断というのは必要となる精査検討を重ねたものでございましたけれども、その後のいわゆる急速な事業拡大を行っているこの会社の財務活動というものが特定の人材に頼らざるを得なかったという、ベンチャー特有の資金繰り面のリスクというものが短期間で顕在化してしまったものと考えております。したがいまして、私どもとしましては問題顕在化後、日時報告を求めるなど、人材を派遣することの検討などを進めたのですけれども、投資実行直後からまさに財務面に深くリーチできるような実効的な手法を検討すべき余地があったのではないかと考えております。その辺の反省も踏まえて、先ほど申し上げましたような投資管理プロセスの強化を図って参っている状況でございます。
それから、分科会長から御質問のありましたJICTの数字が、来年度以降6倍に増えているという投資額のお話でございますが、こちら、私ども、ようやく今月末にまもなく3年を迎えるということで、初年度は実質4カ月ほどしかなかったという事情がございます。投資の実投資額は確かに2年あまりの間に48億円ございますけども、支援決定額というものは出融資の合計で138億円という数字ではございます。こちらにつきましては、実際のところプロジェクトの進行に沿って実投融資を行っていく性格のものでございます。ただ、件数としては御指摘のとおりまだ少ないので、相談件数あるいは組成する件数も、増やしていかなければならないと考えております。
具体的には何をしていくかということにつきましては、海外の案件につきましては、これまでも広く総務省様や持込み案件でありますとか、株主や金融機関の方々からも案件の紹介というのはございましたけれども、今後はさらに主体的に海外展開を考えるパートナー企業というものを直接発掘していかなければいけないと考えております。突っ込んだ対話のできる信頼環境を構築することが重要であると考えておりますので、そういった関係ができる企業とこれからも関係を構築していきたいと思っております。
これまでなかなか案件検討が乏しかった地域というのもあるわけですけども、この辺は現地政府等とのコネクションの構築ですとか、そのコネクションを活用した投資需要の確認でありますとか、こういった手だてを講じていきたいと思っております。
金額面では今後の平均百余億円という数字でございますけども、1件当たりの投資規模等、我々も今後のポートフォリオを考えていく中では、M&Aという一定の金額規模になるような案件も含めて今後投資を実行して参りたいと思っております。
以上でございます。
〔池尾分科会長〕どうもありがとうございました。
それでは、特定の官民ファンドの個別的な論点に関わることでも結構ですので、追加の御発言を。では、川村委員、お願いします。
〔川村委員〕本当はクールジャパンも含めて質問したいのですけれど、ウェイバーしたほうがいいと思うのでそれは避けて、ある意味共通しているところとして、やはり各ファンドそれぞれのターンアラウンド計画をきっちり立てていただく必要があるのではないかと思うのです。いろいろ個別にお話を伺うと、皆さんの大変な御苦労、御努力というのはよく理解できるのですが、一方で、同情するなら金をくれというわけにはいかない世界でありますので、例えば2年後、3年後とかに、各ファンドの今の実績を見ると、残念ながらものすごく期待を持って頑張ってねと言い切れないところが正直あると思うんです。であるとすると、各ファンドがどうやってターンアラウンドを考えていくのかと、恐らく一番厳しく言えば冨山委員のような御指摘になるのだと思います。CJ機構の場合は経営陣を変えて、方針を変えて云々という、そういう意味でいけば1つのターンアラウンドの着手はされているのだと思うんですが、他の3ファンドの皆さんにおかれては、それぞれ大変な事情はよく分かるのだけれども、例えばA-FIVEなんかを拝見していると、若干生き返る見込みがあるものもあるのだけど、実際に4割が減損です。1件当たりが7,000万円ですとなると、これってもともと補助金の世界なのではないのかという原点に戻ってしまうんですよね。そうすると、6次産業化というスローガンというのは実はイリュージョンだったということを、その犠牲をA-FIVEが押しつけられていると。別の見方をすると、そういうこともあるのではないかと思うのです。ですから、これは無理してそのファンドが非難されて苦労させられるだけではなくて、やはりしっかりしたターンアラウンドを作っていかれる中で、例えばJOINなんかも素朴に外から見ると、何でJBICと一緒にやらないのだろう、それからAIIBなんかに比べるとファンド規模が二桁、三桁小さいよね、こんなもので海外インフラ、日本の官民ファンドは勝てるのかというのは最初からあるわけです。どうせならもっとドンと大きくやればいいではないかと、海外建設ファンドのようなものを作ってやるべきではないかという考え方もある中で、ある種中途半端になって御苦労をされているのではないかと思うのです。
JICTなんかも、単純に言えば総務省と経済産業省と別だけれども、似たようなことをやっているのだから海外のソフトのインフラ系はJICTがやって、コンテンツはCJ機構でやって、両方をくっつければいいのではないか、というようなことが、外部から見ると割と自然な見方だと思うのです。それぞれの無理が無理を呼んでいる部分があるので、やはり5年、6年たったので、あまり自分で苦しまず、悩みは正直に口に出したほうが解決できることも多いので、私の認識としてはこの財政投融資分科会はとにかくサポートする立場なのだけれども、このままいくと自爆しちゃうよという一歩手前に来ているという感じもするんですね。ですから、ある程度期限を切って、是非それをお願いしたいなというのが私の意見です。
〔池尾分科会長〕追加で委員の方から御意見を伺ってからにしたいと思います。野村委員、お願いします。
〔野村委員〕遅れて申し訳ありません。議論がかなり具体化、深掘りされている中で、そもそもの話で話の腰を折ってしまうかもしれませんが、1つだけ意見を言わせていただきます。
官民ファンドの成功について、政策性と収益性という2つの側面があるという議論がずっとなされてきており、今回この収益性についての収益基準を設けるべきだという問題提起がなされていますが、私は、あくまでも政策性と収益性は常に1セット、両にらみでないと評価ができない、それが官民ファンドの性格ではないかと考えております。これは言わずもがなですが。政策性に関しての指標、基準づくりが難しいということで来年3月までに取りまとめるということは承知しておりますが、数値で見えやすい収益性の基準のみを先行して議論をすることに対して、本当にそれでいいものか、少し違和感を覚えるところです。非常に政策性が大きければ収益性はミニマムでいいという評価もあり得るのではないかと思っております。もし政策性を置いておいて収益性だけ見るならば、ゼロを上回るということを最低基準としましょうということぐらいしか言えないのではないかと思います。成果が出てこないとすぐに収益性ばかり取り上げられ、メディアでも報じられるということになる、そういう風潮がある中で、常にこの両にらみで評価していくことを貫いたほうがいいのではないかと思います。
以上です。
〔池尾分科会長〕どうもありがとうございます。それはおっしゃったとおりですけれども、現実に、そこであまり時間をかけていったらますます損失が大きくなるのではないかという懸念に直面している状況だということで議論しているということを理解していただきたいと。
〔翁委員〕先ほどの御質問で、冨山委員が、マーク・トゥ・マーケットでの管理ということで皆様に御質問したのですけれど、必ずしもそういった意識があるわけではないのかなという感じがいたしましたので、やはりそういった管理をしていくということを是非今後やっていただきたいのと、あと、やはり財務省のほうの書きぶりでは、投資実績を上げるために経費との関係でこれぐらいの投資実績が必要だという考え方で書いてありますけども、やはりこういう状況になってくると経費をいかに削減するかということも織り込んだ上での投資のこれからの考え方というのを置いていかないと、発想をもう少し変えていったほうがいいのではないかと思いました。
池尾会長が御指摘されたように、私自身も今後の投資実績見込みというところのフィージビリティというところにどうしても疑問を感じざるを得ませんので、そういったところについてもう少し具体的な話が必要だなと感じております。
あともう一つは、さっきの御説明で気になったのですが、委員会と主務官庁の関係というところで、主務官庁が個別案件についてどのぐらい言っていくのかというところが少し気になりました。監督するということは重要な役割ではあると思うのですけれども、決定するのは委員会でありまして、そこで政策性も考えた上で収益性を考えて決定するわけですので、そういったところがきちんと制度として担保できているのかなということについてお伺いしたいなと感じたということです。
〔池尾分科会長〕土居委員、お願いします。
〔土居委員〕個別の機関に関してなのですが、先ほど来の議論を伺わせていただいていて、独法ではなくて株式会社なのだというところが全然感じとれないという気がするわけです。せっかく会社法を基礎としつつ、個別設置法はありますけれど、独法は独法通則法で会社法とは違うガバナンスの構造になっていて、私の理解は会社法のガバナンス構造よりは弱いガバナンス構造だと。けれども株式会社なのですから、やはり原則としては会社法によりつつも、個別設置法でもちろん個別対応はあるにしても、よりガバナンスが効いた形での運営というものを襟を正してやっていただきたいなと思います。どちらかというと先ほど来の御答弁というのは独法なのか、株式会社なのかがよく分からないように思います。当然独法も主務大臣がいての独法ということではあるので、立てつけとしては似ているけれども、やはりガバナンスの構造は独法通則法より会社法のほうがよりガバナンスを厳しくして、しっかり規律を働かせて運営していただくというところになってくると思いますから、その点は各機関ともそういう心構えでいていただきたいなと思います。
それともう一つは、先ほど川村委員も御指摘されましたけれども、海外案件に専門性を持つ他の機関と連携するということです。それが資料の31ページにはJOINの話でそう書いてありますし、38ページにはJICTの話で全く同じ文言で書いてあります。やはりそこは連携するというか、もう連携を踏み越えて統合するなど、それぐらいのことも視野に入れないと、規模が小さいということによる不利益、規模の経済性、規模の利益が働いていないというところのディスアドバンテージが、相当強く今日の説明に反映されているので、そこは今後速やかに検討していただきたいと思います。
以上です。
〔池尾分科会長〕それでは、以上の委員からの意見を踏まえて、官民ファンドの方に追加でレスポンスしていただけることがあればしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。別に順番ではなくても結構です。お答えいただけますか。
〔国土交通省岡西国際統括官〕それでは、JOINの連携の話ですけれども、おっしゃるとおり、我々の場合、JBICさん等と大変よく連携させていただいてやっています。我々は投資の部分を担って、ローンの部分をJBICさんに持っていただくということで、具体的にはテキサスの新幹線などについては我々のほうが冒頭出資して、建設時のローンについてはJBICさんにやっていただくこととなっているなど、まさに連携してやらせていただくと。今我々としてはそれがとても機能しているので、今の状態でしばらくやっていきたいと思っております。
先ほど稲川常務が申し上げましたとおり、だんだん実績が出てきていますので、ここに出ている330億円ぐらいの実績見通しについては、来年度以降は何とか実現できるのではないかということを前提にしておりますので、ターンアラウンドの議論なども、そういうことを踏まえてしっかり見ていきたいと思っております。
あとガバナンスについてですけれども、我々は大臣認可で一件一件プロジェクトを見ておりますけれども、これは先ほど来御議論がありますように、政策的に本当にこれが国の機関、国の関係する官民ファンドが出すべきなのかというところをチェックしているものでありまして、収益性につきましては、あくまでも会社のほうで御判断いただくということを徹底していきたいと思っております。
以上でございます。
〔池尾分科会長〕どうぞ。
〔農林水産省倉重食料産業局審議官〕農林水産省でございます。
先ほど川村先生から6次産業化について、イリュージョンもあったのではないかという御指摘をいただきましたけれども、まさに6次産業化という新しい農家、1次、2次、3次という取組みをやってみまして、やはり案件が小規模にとどまるなというのは実際感じたところでございます。本日の分科会に当たりまして、資料の24ページにございますけれども、その意味では小規模案件が多数であることを前提としたというようなことをこの段階で我々もきちんと再認識した上で、それを前提に今後、先ほどの地銀との連携などもございましたけれども、どういうふうに行っていくかということを再チャレンジしたいというのが現状でございますので、御指摘を踏まえてきちんとやっていきたいと思っております。
〔農林漁業成長産業化支援機構佐藤取締役専務〕A-FIVEでございます。
土居委員から、独法ではないと、株式会社としての存在意義について御発言がございました。肝に銘じて、これまでも意識としては我々は会社法を原則として、それに則って行うべき株式会社だという意識でおりましたけれども、今日、明確に指摘を受けましたので、そのことを十分踏まえて、主務省庁との関係というお話、御指摘もありましたけれども、取り組んで参りたいと思っております。
〔経済産業省島田商務・サービス審議官〕経済産業省でございます。先ほど土居委員のほうからも主務省庁との関係というお話がございましたが、例えば個別の事業を行う場合に、法律に基づきまして経済産業大臣から意見を述べるという機会がございますが、あくまでも政策目的をしっかりと達成できそうかということを、我々もしっかりと見ていきたいと思っております。収益についても、もちろん誰が見てもおかしいねというものは当然申し上げますが、なかなか専門家が見ても、これが本当に収益が上がるのかどうかというのは100%分かる訳ではございませんので、そこはまさに株式会社としての機構でしっかりとある程度専門的な見地から見ていただきたいなと思っております。ただ、例えば経済産業省におきましては全世界にJETROのネットワークもございますので、そういったさまざまな政府のネットワークもしっかりと生かして、CJ機構の今後の収益の改善というものにできる限りバックアップしていきたいと思っております。
〔総務省吉田国際戦略局長〕総務省でございます。一言だけ。
総務省として、個々の案件についての関与については、今各省から御説明があったのと基本的には同じような認識で取り組んでおります。
あと、関連機関との様々な連携といったことにつきましてですが、基本的には私ども、まず最大の問題は、資料にもありますように、まず案件が積み上がっていないと。これはやはり総務省自身もかなり、ここにありますように前に出てそういう案件の発掘をやっていかなくてはいけないと思っておりますけど、そのことに際しまして、海外について知見のあるさまざまな機関と連携していくことも必要だと思います。ただ、私もやっておりますが通信・放送関係のICTインフラ自体の数自体がそもそも今まであまり多くなく、それぞれのそういう対外関係、海外に知見のある機関においても、それほど多くの案件が来るわけではないというのが実態でございます。その中で3年目ということでございますけれども、JICTはようやくICT投資の少し専門的なノウハウですとか、あるいは海外展開の志向の強い複数の民間企業のコネクションですとか、あるいはさまざまな現地政府とのコネクションなどを築きつつあるということでございまして、そういうものを生かしまして、関連の機関とも協力しながら今後とも案件の積上げに努力していくと、そういうことが必要であろうかと考えております。
〔池尾分科会長〕どうぞ。
〔冨山委員〕1つの整理として、資料の政策性と収益性のページを御覧いただけますか。この2つは、アンド条件なんですよ。要は官民ファンドは政策性と収益性の両方の条件をみたす領域、案件数がそれなりに大きいという仮説で始めているのです。小さいということが分かったら途中でやめるべきなのです。これは今日来ている皆さんに言っても仕方がないのですけれど、やはり役所の側は少なくともこれが本当にその空間が、アンド条件の空間があるのかないのか。要するに、政策性があるから収益性はどうでもいいのであれば、最初から補助金を出せばいいんですよ。別に機構を作ってやる必要はなく、株式会社でやる必要も全然ないんです。正々堂々と補助金を使いますと予算申請して、主計局に行けばいいんですよ、理財局ではなくて。そういう話なんです。なので、官民ファンドというのは要するにアンド条件においてのみ成り立つのです。ということは、政策的に言うと、やってみてアンド条件のゾーンがないことが分かったら、潔くやめますというのが正しいのです。だから、この後何らかのレビューをかけるときには、まず必ず主務官庁、監督官庁の中でそれは考えてください。「アンド条件のゾーンが実は小さかった、ごめん」、でいいではないですか。だってそんなことはやってみなければ分からないのだから。これが1つです。
それから、先ほど、僕がCJ機構に対して厳しいことを言ったように聞こえたかもしれませんが、今回は経営者が変わったわけでしょう。これは、はっきり言ってターンアラウンドですよ。ターンアラウンドする経営を引き受けている立場からすれば、過去は一旦清算してほしいんですよ。今仮に資産が毀損しているのであれば、毀損しているという結論を出して、明らかにしたほうがいいのです、新しい経営陣にしてみれば。だってその部分は前任者の責任であって、今の人の責任ではないのだから。要するに再建するときの一番の基本は、今現在の状況というのをシリアスにリアルに正確に把握して、これだけ悪くなっていますということを全てつまびらかにすることなのです。その観点で言うと、はっきり言ってCJ機構とA-FIVEは、残念ながらある意味ではこれは完全にターンアラウンドです。なので、ターンアラウンドモードに移るのであれば、ちゃんとそこで不連続を作ってあげないと、今度やる経営陣がかわいそうです。そう思って、実は親心で、結構厳しく聞こえるかもしれませんけど、愛情を持って言っているつもりなのです、本当に。だからそこは、是非ともそういう前提でターンアラウンドのプランを考えてください。
JOINとJICTに関しては、もう今はJBICが出資できるようになったわけですよ。この状況下で、世界的にさして知られていないJOINが頑張る意味がどれだけあるのか、あるいはJICTも同じような問題があるわけで。ですから、これはひょっとしたら前提条件が変わってきて、先ほどのお話というのは、実は重複ゾーンがあまり多くないかもしれないと皆さん言っているんです。政策性と収益性を兼ね備えているような案件はあまりありませんということをおっしゃっているわけで、だから案件が少ないんですと言うのだとすれば、それが本当であれば、もうやめたほうがいいです。むしろ、変な話、JBICに出資してもらえばいいので、これは内閣マターになってしまうかもしれないですけど、そういう整理をある種政策的なレビューをちゃんとかけないと泥沼にはまりますよ。だから、そこを是非考えてください。
〔池尾分科会長〕では、江川委員。
〔江川委員〕一言だけ。先ほど主務官庁が前面に出るべきか、委員会がやるべきかという話がありました。私は個々の状況は分からないのですけれども、やはりマネジメントを考えるときに一番重要なことというのは、本気で自分事としてやる人をちゃんと連れてきて、その人がフルタイムで一生懸命取り組むという、そういう状態を作ることだと思います。つまり、官民ファンドの難しいところというのは、その辺の責任が曖昧になってしまって、結局誰も本気ではなかったというか、本当に全部コントロールして責任をとるという体制になっていないというところだと思うので、いろいろな制度上の制約はあるかもしれませんけども、そういうことを考えていただきたいと思います。
実は私が東大でベンチャーキャピタルを作るときにすごくこだわったのは、ある程度若い人で、10年経った後、自分が下した投資判断の結果と向き合わなければいけない人を連れて来ようと思っていました。そういういろいろなことを考えた上で、やはりしっかりとした牽制の仕組みが効くように、それぞれのファンドの状況に応じて考えていただきたいと思います。
〔池尾分科会長〕どうもありがとうございました。
十分議論をし尽くしたということではないのですが、時間的な制約もありますので、本日に関しては質疑をこのあたりで終了させていただきたいと思います。
ただいまの議論を踏まえまして、今後さらに検討を進めたいということで、来年6月までに産投の在り方についての考え方を整理するという予定にもなっていますから、さらに検討を事務局でも進めていただきたいと思います。
それでは、各官民ファンド及び関係省庁の担当部局の皆様、どうもありがとうございました。御退席ください。
(A-FIVE、CJ、JICT、JOIN 退席)
(鉄道建設・運輸施設整備支援機構 着席)
〔池尾分科会長〕では、次の鉄道建設・運輸施設整備支援機構の要求の概要及び編成上の論点につきまして、若原計画官より御説明をお願いします。
〔若原計画官〕それでは、資料2を御覧いただければと存じます。3ページをお開きください。こちらは海外インフラ展開法という、今年の上期に通常国会で成立した制度でございます。これは法律の略称が示すとおり、いわゆるインフラ輸出をさらに加速させようという施策でございますけれども、その中で下の(2)と書いてある箱、一番上の丸印の部分の記載のとおり、新幹線システムの海外展開、我が国民間事業者参入促進の観点から、鉄道・運輸機構の業務として、①が機構自身が海外高速鉄道、すなわち新幹線の海外版について、自ら調査、設計、工事管理等、そして②がそういったものを行う事業者というのが海外にいるということを前提とした、そこへの出資ということがこの法律において措置されております。
4ページで、出資ということが追加されたことに伴って31年度に32億円という要求が出てきた次第でございます。
5ページ目でございますけれども、相手国との交渉等とありまして、32億円の積算はこの場では説明を控えたいと思いますが、ここに書いてあるような案件が一応出資対象になり得るようなものの1つの御参考と御承知おきいただければと思います。
この要求につきまして、先生方の御指導をいただきたいと思っております論点を整理した見取図が6ページ目でございます。本日のこれまでのところではファンドの議論もありましたけど、今回のこの鉄道機構自体はファンド、いわゆるビークルとしてのファンドという法形式をとっているわけではございませんけれども、出資ということを行うということで官民ファンドの議論等々を参考としながら、1つ目の論点として、出資をやるとしたら機構はどのような体制を整備すべきなのか、裏側から言いますとどういう体制を整備したということが認められないと、産投としては出しがたいのかというような話が論点の1つ目でございます。
そして論点の2つ目といたしまして、それをどのようにガバナンスの枠組みとしてきちんと確保して、実現していくかということでございます。
7ページ目でございます。体制整備でございますけれども、論点①と書いてあります青い箱でございますが、これまで機構は、国内の整備新幹線等々で工事管理、建設をやってきておりますので、そういうところには当然ながらエクスパティーズがあるわけでございますけれども、新たに出資業務を行うということでは、当然現在の機構にはそういったことについての組織的なノウハウ等は全くない状態でございますので、まずスタートといたしましては基準を作って、それをチェックするための投資委員会を作ってくれというのが、まずはスタートラインなのかなと。
ただ、下の丸でございますけれども、法律上、単に出資を行うということでございまして、どのような出資をどのような形式で行うのかは、制度的には一切決まっておらず、運用に委ねられている状態でございますので、例えば子会社を作りますと、本体でやるのだけれども、現地の事業執行上、何らかのJVを組んで、そこで出資という形をとらざるを得ないと、そういったようなほぼ自分のエンジニアリングの延長にあるような趣旨であったならば、そこまで本格的ないわゆる出資をするための体制というのは、そういうことは要らないかもしれないですけれども、これがいわゆるファンドの行うような投資行為に近いようなものを仮に行うということであるならば、それに応じたミドルやバックといったようなものも備えないことには、適切な出資及びその出資後の管理はできないのではなかろうかということでございます。
さらに次のページでございますけれども、一番下の表の赤で囲った部分というのが今回の出資の対象範囲でございまして、いわゆるコンサル的な部分で実際の建設、さらにはそこの運行に向けたファイナンスというのは今回の出資の対象に入っておりませんけれども、他方で出資する事業体自体が現地において、そういうところまでやることを必ずしも制度的に排除しているわけではないと。逆に言いますと、建設・運行までやるような事業体の出資ということでございますと、最終的な産投から見ての出資の回収というのは、そこの運賃収入がちゃんと上がって、配当が上がってくる状態、単にコンサルをやっているんで適正なフィーを受け取ったので、それで産投に返ってきますというスキームなのか、事業収入がちゃんと上がらないと返ってこないのかということにつきましては、そこに大きな差があるということでございますで、仮に海外での新幹線事業そのものの成否に絡むような出資を行うということであれば、さらに一段と高度なリスク管理体制、モニタリング体制等々が必要ではなかろうかというのが8ページ目でございます。
そして9ページ目が、それをどのような枠組みで担保するかということでございますけれども、先ほど、官民ファンドの議論でもございましたけれども、やはり出してしまうと、その出資に引きずられる等々ということがあってはいけないというのが、これまでの官民ファンドでの議論でもあるところでございまして、逆に言いますと、ファンド側もしくは出資を行う側であっても、いわゆる箸の上げ下ろしのようなことを言われると適切な投資活動はできないということでございますので、できる限り事前にきちんとこういう出資をやるから、そのためにはこういう体制を整備しました、その中でこういうようなモニタリングをこのようにやっていきますということをきちんと事前に決めていくという、これまでの官民ファンドにおきます皆様の御議論等を踏まえた形で、ファンドではないにせよ、準ずる形でやっていきたいということでございます。
私からは以上でございます。
〔池尾分科会長〕どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの説明を踏まえまして、委員の皆様方から御意見を伺いたいと思います。国土交通省及び鉄運機構の方にも来ていただいていますので、そちらに御質問いただいても結構です。では、冨山委員、お願いします。
〔冨山委員〕説明についてですが、コンサルモードで終わってしまうのであればあまり出資の問題はないと思いますが、割としっかり事業リスクもとりますというモデルの場合のストーリーに関する確認なのですが、これは、要は海外の鉄道インフラに割と主体的に出資して、O&M型で建設もやって、その後の運営もやって、要は中長期的に投資を回収していくというモデルを想定されているのでしょうか。
〔池尾分科会長〕どうぞ。
〔国土交通省岡西国際統括官〕主体的に投資するというよりは、そこにございますようにあくまでも機構の対象範囲であります調査、測量、設計、工事管理などの部分に自分たちが、受注を受けることなどを前提にして、その範囲で一定程度のレベルの出資をするということを考えております。
〔冨山委員〕そこはどこに出資するのですか。それはその鉄道の運営会社に出資するんですか。
〔国土交通省岡西国際統括官〕調査、設計、工事管理を行う会社で、その会社がさらに運行を行う場合もございますし、上下分離ということで作って終わりという場合もございます。いずれにしましても、鉄運機構は設計、工事管理をやる部分の会社に対して出資を行うと、こういうことでございます。
〔冨山委員〕そうすると、基本的には作ったところで1つのストーリーが終わるわけですか。
〔国土交通省岡西国際統括官〕はい、その場合もございます。
〔冨山委員〕だからどちらがメーンなんですか。要するに何が言いたいかというと、コンサルモードで関わるケースと、でき上がったところで終わる話と、その後ずっと事業が運営されてメンテナンスも含めてトータルな事業リスクを負うケース、この3つはビジネスモデルが全く違うし、投資回収モデルも全く違うので、これもあります、あれもあります、それもありますと言われてしまうと、恐らくモニタリングのしようがないと思うのですが、結局どれがメーンシナリオなんですか。
〔国土交通省岡西国際統括官〕メーンシナリオは、法律の規定にあるとおり今我々が思っているのは、基本的には設計・工事管理段階での貢献を中心に考えております。
〔冨山委員〕それはでも結局フローのビジネスですよね。建設プロジェクトに対する関与なので、あまりよく分からないのですが、そこに何で出資しなければいけないのですか。要するに、作ったら終わりということなのでしょう、それはプロジェクトではないですか。
〔鉄道建設・運輸施設整備支援機構北村理事長〕鉄道・運輸機構でございます。我々からすると、今国土交通省から説明していただいたのが基本だと思っていますが、結局同じように、例えば我々はインフラ整備だけが技術的には得意であり、その仕事が一番メーンですけれども、実際に鉄道を運行して初めて完成するわけですから、その意味では、日本側から同じような企業からも出資してほしいという要請もあるだろうし、相手国からもあるだろうし、我々からすると建設だけが終われば退出を検討するのが基本だと思っていますが、そこで終わるかどうかは、申し訳ないのですが、そのときの状況で考えていくしかないのではないかと思っております。
〔冨山委員〕そのシチュエーションはよく分かるのですが、そのシチュエーションの問題と、もしその先のO&Mまで踏み込んでいった場合のさまざまなリスクは全然次元が違うはずで、私は今電力会社の役員になっているのでよく分かるのですが、原発を作る会社が原発を作って終わりという話と、原発を作った後の運用をするのでは全然話が違うわけですよ。もしそうだとしたら、今GEは大変なことになっているので、ということなのですよ。ということは、完全にリスク管理の次元が全く違う話になってしまうので、もし今おっしゃったように運営のところまで、O&Mまで入っていくという前提で、それがあり得るというストーリーだったら、それを前提のストーリーでリスク管理をしなければならないということに、まずなります。その場合に、例えばこの日本国で、海外でそこまで主体的な鉄道運営をやって、そのO&Mのリスクをとって成功した事例は過去にあるのでしょうか。もしないとしたら、日本国内の誰もこれはマネジメントできないということになってしまうのです。
〔鉄道建設・運輸施設整備支援機構北村理事長〕おっしゃるとおりだと思います。したがって、我々も実は今まで人材派遣だけしか海外の案件は関わっていません。過去で言えば台湾であり、最近であればJR東がやっているインドに人材派遣という形で関わっています。今おっしゃったようなO&Mまで含めた関わり合いは、我々は全く経験がありません。ただ、そういうことも可能性としてはないわけではありませんから、今思っていますのは、実はメーンではないけれども、我々は今までそういう仕事は携わっていませんから、我々としては、逆に海外のプロジェクトファイナンスを手がけた経験を有する金融関係者なりに我が社に来ていただいて、それを中心にしてチームを作って、今おっしゃったようなさまざまなリスクに対応するような体制を作っていくしかないのではないかと思っております。
〔中島委員〕よろしいですか。
〔池尾分科会長〕どうぞ。
〔中島委員〕今の話なのですが、私も冨山委員と全く同じで、これは、リスク管理といっても、リスク管理の体制をどう作ればいいのか、全く次元の違う話が全部混在しています。場合によってはコンサルフィーで終わるかもしれない、出資も運営管理するというところまでいかない形かもしれない、あるいは運営管理かもしれないといったら、リスク管理体制も、あるいはこういうための審査とか、管理運営するような人材なり組織も全く違ってくるので、どんな体制を作ったらいいのか全く分からないのですね。ですから、これをどこまでやるのか、あるいはどこから以上はできないとか、そういうのをきちんと決めておかないと、リスク管理体制はできないと思います。
〔池尾分科会長〕7ページの論点①にありますように、だから何をやるのかに照応した形の管理体制も含めてセットで持ってきてもらうという、そういうことですね。セットで持ってきてもらって、それをこちらで評価するということですね。
では、土居委員。
〔土居委員〕今までは鉄運機構はそういう手段を持っていなかったので、何となくその政策意図というか、こういう出資を政策手段として使いたいというところは分かりますが、出資ができるというところまではいいとしても、やはり先ほど来議論があるように、本当に大丈夫なのかというところについての担保がないまま、では、どうぞというわけにはいかないと思います。
特に、先ほどこちらから質問したわけではないけれどもJOINの方が、テキサスの高速鉄道計画にJOINもお金を出したし、JBICもお金を出したと御回答されているわけです。そうすると、ますます聞いている我々からすると、鉄運機構とJOINとJBICは一体何が違うのか、デマケーションがあるのかないのか、そんな変なデマケーションを作ってもらっても良いのか悪いのかなど、そういうことで役割分担していますと言い過ぎてもらっても困りますし、役割分担は何もなく、とにかく手当たり次第というのも困るところなので、きちんとリスク管理を含めた機構の在り方及びその出資の仕方、そこの整理がもっと国民にも分かるような形でお示しいただきたいと思います。もし何か今既にお答えいただけるものでお示しいただけるならば、お示しいただければと思います。
〔池尾分科会長〕では、渡部委員。
〔渡部委員〕そういう意味では、分科会長もおっしゃったように何の事業をされるのかを確認したい。コンサル云々の単純にPLだけ、PLしか使わないというところの管理なのか、重たい物を、バランスシートを使っていくのかどうかで性質は大きく異なってしまう。さらに、建設などにも入っていく、あるいはその後のオペレーションについても責任をとるようなものにも入っていくのか、その辺りを整理されたほうが、皆さんも安心というか納得されるのではないかなという気がします。ですから何のリスクをとるのですか、カウンターパーティーは日本ですか、そうじゃないのですか。そうするとそこに政治リスクというのも入ってきますし、そういうのを整理されたほうが良いと思います。
以上です。
〔池尾分科会長〕川村委員。
〔川村委員〕多分各委員と共通していると思うのですけれど、資料の8ページで、これが頭の混乱の1つにもなるんですね。一番下の赤い箱で囲っている部分が出資対象範囲ですと書いてあるのですが、本文を見ると「だけではなく、建設や運行まで」と、要するに全部入る。ですから、委員がみんな混乱するのは、まず31億円という金額規模とか、いろいろ考えると恐らくここのいわばソフト部分であって、それこそ渡部委員の言葉を借りればBSまで踏み込まない、PLのところまでなんだよねというふうになってきたら、何かその先もあり得る、これは出たところ勝負ですという答えが返ってくると、出たところ勝負でリスク管理をやられても、お金はつけられませんよねというのは、恐らく皆さんの本音だと思うのです。それともう一つ言うと、7ページにもあるミドルやバックといった体制整備とおっしゃっていますが、これに人件費や経費がどのぐらいかかるのか、31億円のソフトの部分のためだけにどれだけのコストがかかってしまのだろうか、あるいはモニタリングだとかと見ると、これはもう少しきっちり整理していただいて、僕もこの限りでいけば、新幹線の海外はとても大事で、政策目的というのもよく理解しているつもりで、必要だとは思うのですが、8ページの赤箱の中に限定し、それだと商売にならないのだというのであれば、JOINやJBICにやってくださいでいいのかもしれないのですが、このままだと何か全く分からないのですね。ですから、この箱に限定し、その31億円という金額が適当かどうか分からないけども、その限りでやっていくというふうにしていかないと、正直、建設・運行までやることもあり得るならそのリスク管理の次元が全く変わってくる話じゃないですか。それと、カントリーリスクまでそれで負えるのですか、というような話も出てくるので、ここはきちんと整理して、これをやるのでこうだといふうに出していただきたいと思います。
〔池尾分科会長〕冨田委員、手短にお願いします。
〔冨田委員〕手短に申し上げますと、5ページにあるような海外のプロジェクト候補ですね、これについてのフィージビリティチェックの機能が今の鉄運機構にないのだと。だからそういうフィージビリティスタディをするような、調査をするような調査機能を持つための出資だというふうに理解しないと、我が国全体で考えれば、その後ろの工程は、例えばJRのどこかの会社とかそういうところが海外事業を行う、そのために先ほどのJOINだとか、JBICかもしれませんけどもそういうところがあるのだと。そうすると、やはり鉄運機構はその前段階の、先ほど来、皆さんが御指摘のこの8ページの赤いところにやはり限定したものなのだというのが理解の仕方だと思うのですね。だからそれに合ったようなリスク管理体制というのが課題なのではないでしょうか。
〔池尾分科会長〕以上の委員からの御意見は共通していると思いますので、それを踏まえて財投計画の編成過程でしっかりとチェックしていただくということで、よろしく対応をお願いいたします。
〔若原計画官〕皆さんからいただきました意見を踏まえまして、編成過程も大分押してしまっておりますけど、最後まできちんとやらせていただきたいと思います。
〔池尾分科会長〕それでは、どうもありがとうございました。
予定の時間を少し過ぎましたので、本日の議事はここまでにしたいと思います。議論いただいた内容のほかに追加の御意見や御質問がございましたら、いつものように事務局までお寄せください。また本日の議事内容につきましては、この後、事務局より記者レクを行います。議事録につきましては、委員の皆様の御了解をいただいた後に、いつものように財務省のホームページに掲載いたします。
本日は、御多用の中御参集していただき、誠に熱心に御議論いただきまして、大変ありがとうございました。これで閉会といたします。