財政制度等審議会 財政投融資分科会
議事録
財政制度等審議会 財政投融資分科会議事次第
平成29年11月8日(水)9:33~11:40
全省庁共用1208特別会議室
(中央合同庁舎4号館12階)
1.開会
2.今枝財務大臣政務官挨拶
3.議案 平成29年度財政融資資金運用計画の一部変更について
質疑・応答
4.平成30年度財政投融資計画の編成上の論点について
官民ファンドの概要等
質疑・応答
5.株式会社商工組合中央金庫の調査結果等の報告について
質疑・応答
6.閉会
議案 | 平成29年度財政融資資金運用計画の一部変更について |
議案説明資料 | |
資料1 | 財政制度等審議会 財政投融資分科会 説明資料(官民ファンドの概要について) |
資料2 | 財政制度等審議会 財政投融資分科会 説明資料(官民ファンドに係る論点等) |
意見書(冨山委員) | |
資料3 | 財政制度等審議会 財政投融資分科会 説明資料(株式会社商工組合中央金庫) |
出席者(敬称略)
分科会長 | 池尾和人 | 今枝財務大臣政務官 長峯財務大臣政務官 太田理財局長 市川理財局次長 中村総務課長 冨安財政投融資総括課長 木㔟管理課長 橋本計画官 廣光計画官 谷内資金企画室長 松田財政投融資企画官 | |
委員 | 川村雄介 土居丈朗 野村浩子 | ||
臨時委員 | 江川雅子 翁 百合 冨田俊基 林田晃雄 渡部賢一 |
〔池尾分科会長〕それでは、予定の時間、過ぎましたので、ただいまから財政制度等審議会財政投融資分科会を開催いたしたいと思います。
本日のアジェンダは大きく3つで、まず平成29年度財政融資資金運用計画の一部変更、続きまして、平成30年度財政投融資計画の編成上の論点をご審議いただきました後、最後に、商工組合中央金庫の調査結果等について、中小企業庁よりご報告をいただくことになっております。
本日は、今枝財務大臣政務官、それから長峯財務大臣政務官にご出席をいただいております。開催に当たりまして、今枝政務官からご挨拶を頂戴したいと思いますが、報道が入りますので、少しお待ちください。
(報道カメラ 入室)
〔池尾分科会長〕それでは、今枝政務官、お願いできますか。
〔今枝財務大臣政務官〕皆様、おはようございます。財務大臣政務官の今枝宗一郎でございます。
池尾分科会長をはじめ、委員の皆様におかれましては、平素から財政投融資について貴重なご意見を賜り、心から感謝申し上げます。ありがとうございます。
安倍政権においては、先般、総理も記者会見で述べられましたように、2020年までの3年間を生産性革命・集中投資期間に位置づけ、大胆な税制、予算、規制改革、あらゆる施策を総動員して、生産性を大きく押し上げることで4年連続の賃上げの勢いを更に力強いものとし、デフレからの脱却を目指していくこととしております。
財政投融資につきましても、真に必要な資金需要に的確に対応し、持続的な経済成長の実現につなげていく必要があると考えております。本日は、日本政策金融公庫に係る財政融資の弾力追加や、編成上の論点として官民ファンドについてご議論いただくこととしておりますが、委員の皆様方におかれましては、専門的な見地から、率直で忌憚のないご意見を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。
〔池尾分科会長〕どうもありがとうございました。
それでは、報道の方はご退室をお願いいたします。
(報道カメラ 退室)
〔池尾分科会長〕それでは、議事を進めます。
最初の議案は、平成29年度財政融資資金運用計画の一部変更についてでありますが、まず橋本計画官よりご説明をお願いしたいと思います。
〔橋本計画官〕それでは、今、会長からお話のありました、「平成29年度財政融資資金運用計画の一部変更について」という議案につきましてご説明申し上げます。
議案でございますけれども、平成29年度における財政融資資金運用計画につきまして、株式会社日本政策金融公庫が、現計画3兆3,850億円に対しまして、追加として1,175億円させていただきますと、追加後計画3兆5,025億円といたしたいと、このような議案でございます。
この趣旨でございますけれども、議案説明資料をおめくりいただけたらと思います。日本政策金融公庫の農林水産事業につきましては、29年度におきまして、事業規模として4,200億円の貸付けを計画しておりまして、財政投融資計画につきましては、先ほど申し上げた日本政策金融公庫全体の3兆3,850億円の内数として、2,350億円を計上しているところでございます。
最近は、規模拡大を目的とした畜産分野の設備投資等の資金需要が急増しているということに加えて、日EU・EPA交渉が急速に進展したことによる経営環境の変化に伴い、さらなる設備投資の意欲が旺盛となっているところでありまして、本年の3月、4月ごろから同公庫への融資申込みが急増している状況にございます。一例申し上げますと、スーパーL資金の畜産向け融資で、件数で1割程度、1件当たりの融資額で2割ほど増えていて、1件当たり6,000万円程度であったものが8,000万円ぐらいになっているということで、非常に強い資金需要があるということでございます。
足元の状況を踏まえました29年度における同公庫の農林水産事業における貸付額は、当初計画4,200億円に対しまして5,500億円程度と見込んでおりまして、1,300億円程度の資金不足となる見込みとなってございます。
ご案内のとおり、財政融資資金の長期運用予定額は、特別会計予算総則におきまして、予見し難い経済事情の変動その他やむを得ない事由により長期運用予定額の増額を必要とする特別の事由があるときは、100分の50に相当する金額の範囲内において、当該長期運用予定額を増額することができるとされております。先ほど申し上げました状況に鑑みまして、農林漁業の競争力強化を図る観点から、同公庫の財政融資資金につきまして1,175億円を増額することをお諮りするものでございます。
私からは以上です。
〔池尾分科会長〕どうもありがとうございました。
本日は、審議に際しまして、農林水産省担当部局の方にもご出席いただいておりますので、ご質問等をしていただいて結構です。
それでは、委員の皆様から、本議案に対してご意見、あるいはご質問がございましたら、よろしくお願いいたしたいと思いますが、いかがでしょうか。特に、これはお認めしていいという話でしょうか。前向きな話は前向きな話ということなので、そんなに大きな問題があるということはないかもしれませんが、何かご意見、特によろしいですか。
では、どうぞ。
〔川村委員〕あまりにないのは寂しいので。
これ、農水の方というよりも、この予算総則の読み方の中で、ほかの案件にも絡んでくると思うのですけれども、第19条の3項にある「予見し難い経済事情の変動その他やむを得ない事由」というものに、EPAの急進展が該当するという全体の建てつけだと思うのですけれども、EPA交渉の急進展がなぜ予見し難いことになるという判断になったのか、ちょっと教えていただければと思います。つまり、その辺の基準が、大変抽象的に書いてある文言なので、いろいろなケースによって、よく言われているデフレ不況対策とか、円高不況対策とか、ずるずると長いマクロの現象については大変判断しにくい部分もあると思うのです。だから、それを個別に当てはめていくときに、本件についてはどういう根拠でこれに当たるとご判断されたのか、ちょっと教えていただければと思います。
〔冨安財政投融資総括課長〕弾力追加する場合に、例えば政府が経済対策を打つということがございます。今、委員おっしゃったマクロの状態というのは、いろいろ続いていく中で、どうしてそこを切り取ってという話があるかと思いますけれども、例えば経済対策などを打つ場合には、そこで政府として意思決定をする、何か対応しなければいけない。それは、当初計画をつくった段階ではなかなか予見できなくて、やはりこのタイミングで政府全体として対応しなければいけないという全体の意思決定がある。それに応じて弾力するなり、補正予算を打つなりということになっていくかと思います。今回につきましては、個別の機関の個別の状況を踏まえて、去年の計画を作成した段階ではなかなか見通せなかったということでございます。
ちょっと回答になっているか分かりませんけれども、すみません。
〔池尾分科会長〕ほかに追加で、ご意見、ご質問等ございますか。特にございませんようでしたら、審議はここまでといたしたいと思いますが、本議案につきましてご異議ございませんでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
〔池尾分科会長〕それでは、本分科会として了承したことにさせていただきます。どうもありがとうございました。
ここで、農林水産省担当部局の皆さんはご退席されます。
(農林水産省 退席)
〔池尾分科会長〕2番目のアジェンダである官民ファンドの議論に移っていきたいのですが、官民ファンドの方、たくさん来られます。お手元の配席図にありますように、4つの官民ファンド、及びその関係省庁の担当部局の方々においでいただくのに加えまして、平成30年度財投要求はございませんが、設置法である産業競争力強化法において、来年3月までに検討・見直しを行うことにされております、産業革新機構の関係省庁の担当部局の方にもご入室していただくことになっております。
(A-FIVE、CJ、JOIN、JICT及び関係省庁 着席)
〔池尾分科会長〕それでは、ご入室いただいたようですので、審議に入りたいと思います。
平成30年度財政投融資計画の編成上の論点につきまして、ご審議いただきます。まず、資料1「官民ファンドの概要について」を松田財政投融資企画官よりご説明いただいて、続いて資料2「官民ファンドに係る論点等」を橋本計画官よりご説明をお願いいたします。
それから、本日、欠席されておりますが、冨山委員より官民ファンドについての意見書が提出されておりますので、あわせて御紹介をお願いします。なお、この会議はWi-Fiの電波が飛んでいないということで、いつもと違って紙ベースなので、意見書もお手元にあると思いますので、ご覧いただければと思います。
それでは、松田企画官、ご説明をお願いいたします。
〔松田財政投融資企画官〕財政投融資企画官の松田でございます。「官民ファンドに係る編成上の論点等」の説明に先立ちまして、私から資料1に基づきまして、産業投資と官民ファンドの概要について説明させていただきます。
1ページ目をご覧ください。産業投資につきましては、政策的必要性が高く、リターンが長期的に期待できるものの、リスクが高く、民間だけでは十分に資金が供給されない事業に対しまして、長期リスクマネーを供給するという役割が期待されております。従来、産業投資は、政策金融機関や独立行政法人などに対し、資本性資金の供給や政策的必要性の高いプロジェクトを支援するための出資を実施しておりましたが、近年は官民ファンドを通じまして、(参考)のから
にございますような分野への長期リスクマネーの供給を強化しているところでございます。
2ページ目をご覧ください。2ページ目では、産業投資総額に占める官民ファンド合計額の割合を円グラフでお示ししております。平成21年度以降、官民ファンドが順次設立されましたことに伴い、官民ファンドを通じた長期リスクマネーの供給が増加しており、平成29年度には産業投資総額の45.1%を占めております。
3ページ目をご覧ください。平成23年度以降の官民ファンド別の産業投資計画の推移をお示ししております。
4ページでございますが、産業投資を措置しております8つの官民ファンドにつきまして、設立日や設立目的を記載しております。
5ページにおきましては、29年3月末時点におきます投資勘定、民間からの各ファンドに対するこれまでの出資額又は貸付額、支援決定件数・金額、役職員数を記載しております。
6ページをご覧ください。官民ファンドは、設立して終わりにするのではなく、日本経済の成長のために政策目的に沿って運営されるよう、その活動を評価、検証し、所要の措置を講じていくことが必要との観点から、平成25年9月に開催されました官民ファンドの活用推進に関する関係閣僚会議におきまして、官民ファンドの運営に係るガイドラインが決定、公表されたところでございます。同ガイドラインに基づきまして、平成25年12月以降、関係閣僚会議の下に幹事会を設置し、投資実績や収益性、政策目的等の達成状況を年2回、定期的に検証しております。検証方法といたしましては、達成状況につきまして、事後検証可能な指標でありますKPIを各ファンドが自ら設定しまして、これに基づき評価をしております。
7ページ以降は、本年6月に開催されました第8回幹事会での検証結果の一部に関するものでございます。
7ページの右側の円グラフは、官民ファンドの呼び水効果としての民間投融資額が官民ファンドによる実投融資額を大きく上回っており、呼び水効果は一定程度発揮されていることを示しております。
8ページから10ページにかけましては、各ファンドにおけます政策目的、収益性及び民業補完に関しますKPIの達成状況をお示ししております。
私からの説明は以上でございます。
〔橋本計画官〕引き続きまして、資料2に基づきまして、官民ファンドに係る論点等についてご説明申し上げます。
3ページ目をおめくりいただけたらと思います。民間からのリスクマネーの状況でございますけれども、我が国では、米国のみならず中国などと比較してもPEファームの数は少ない。アメリカでは3,000件余のPEファームがあるということでございますけれども、我が国は200件弱、またPEの投資金額につきましても、2兆ドルを上回る投資をしている米国に比べまして、670億ドルほどと極めて低調になっているということでございます。
4ページ目にお進みいただけたらと思います。官民ファンドにつきましては、ご案内のとおりかと思いますけれども、政策的意義あるものに限定して、民業補完を原則としつつ、民間でとることが難しいリスクをとることで民間投資を喚起するということを目的として設立されたものでございまして、こういう趣旨のものだということでございます。
5ページ目にお進みください。これは、冨山委員から以前ご提出いただいたものでございます。いろいろな政策があるわけでありますけれども、一般会計の補助金や交付金といったところは投資収益そのものを目的としているものではございません。ただ、私ども産業投資でやっております官民ファンドにつきましては、政策目的としても必要性があるものでもありますし、投資収益も満たさなければいけないということで、両者が重なり合う部分が官民ファンドのストライクゾーンという、この狭い領域を狙って政策を実現していかなければならない性質のものということでございます。
6ページ目にお進みください。これまで産業投資として、官民ファンド等に対しまして6,000億円弱の予算を措置してきているところでございます。内訳を見てまいりますと、半分程度がINCJ(産業革新機構)に行っております。あと、大きいところで申し上げますと、1,000億円を超えている日本政策投資銀行の特定投資業務、それからクールジャパン機構、JBICの特別業務と、こういったところが金額の大きいところとなっております。
7ページ目にお進みください。産業投資機関の状況を図にさせていただいたものでございます。縦が資金の性質ということで、上がシニアローン、下がエクイティという形、横軸が分野別ということになっておりまして、一般分野として産業革新機構、あるいはDBJといったところが、おおむね規模感で棲み分けをしております。
特定分野は、まず海外展開のところを見ていただけたらと思いますけれども、JBICは広範に融資をすることをメーンの業務としている機関でございますけれども、投資も行っておりまして、広範な業務展開をしているということでございます。そのほかに、クールジャパン、JOIN、JICTは、基本的にエクイティを供給して、それぞれの特定分野について投融資を行う機関として存在しております。また、農業についてはA-FIVE、地域活性化についてはPFI推進機構、REVICという機関があるといった状況でございます。
8ページ目にお進みください。前々回の当分科会におきまして委員の皆様から頂戴した意見を簡単にまとめさせていただいております。
「30年度の産投要求は6割増加していて、不要不急の案件には措置を行わないように。」というお話。「官民ファンドは、民間資金の触媒となっているが、問題は波及効果があるかどうかである。」、「銀行や企業は資金余剰の状態であるにもかかわらず、資金を十分に供給していないのが問題。」、「官民ファンドの投資案件の中には利益が出ているものもあるが、民間はそのような案件になぜ出資しなかったのかが問われるべきではないか。」、「クロスボーダーの案件は、人材が限られているので集約すべきではないか。」というご意見がございました。
9ページ目以降は、3つの論点を掲げさせていただいております。、
が本年度の編成に直接関係ある論点、
は若干、中長期的な課題というような位置づけでございます。
10ページ目、お進みください。10ページ、11ページで、今日、お越しいただいているA-FIVE、クールジャパン、JOIN、JICTの計画と実績についてまとめさせていただいております。
A-FIVEの表を見ていただきますと、この5カ年の合計額で、投資計画は1,500億円ほどとなっておりますけれども、投資実績は58億円、うち12億円が資本性劣後ローンとなっておりまして、計画と実績で投資執行率の欄が右から2番目にございますが、こちらを見ていただきますと3.9%となっております。また、産業投資の執行につきましても、初年度は300億円を執行しておりますけれども、25年度から28年度までは執行額がゼロというような状況になっているわけであります。
クールジャパン機構も同様の状況にございまして、投資計画は1,510億円ほどの合計金額となっておりますけれども、投資実績で310億円、執行率で20%程度となっております。
また、JOINは、投資計画3,000億円程度につきまして、投資実績100億円、執行率3.7%、JICTは、949億円の投資計画に対して13%、執行率1.4%となっております。
これらございますので、例えばA-FIVEで申し上げますと、28年度末の貸借対照表上、現預金が200億円ぐらいあるような状況でございますし、クールジャパンも300億円強の現預金を持っているというような形になっております。
引き続きまして、12ページ目でございます。こちらは、投資実績と運営経費を対比させたものになります。A-FIVEで見ていただきますと、先ほど見ていただいた投資実績額58億円に対しまして、運営経費が41億円掛かっているという状況でありまして、投資実績に対する運営経費の割合が71.5%ほどと比較的高くなっていると思います。類似する民間の投資会社で申しますと、20%から30%ぐらいというような形になっておりますので、それと比しても相当程度高い水準かと思います。
引き続きまして、13ページでございます。こちらはちょっと色彩を変えまして、資金調達の問題ということでございます。伝統的には、出資が無コスト資金で、借入れが有コスト資金とされておりますけれども、昨今の税制改正の状況や低金利を踏まえますと、産業投資の出資金には法人事業税が毎年度0.525%かかるということに対しまして、国内債の政府保証借入れであれば、例えば真ん中ほどにありますDBJの10年債でいいますと0.09%と、資金コストの面から言いますと逆転している状況にございまして、外貨も同様の状況にあるということでございます。
14ページ目は、民間ファンドの例でございます。もちろんデットとエクイティ、性質は違うわけでありますけれども、民間ファンドはある程度それらを合わせ調達している状況にございます。しかし、今日、お越しいただいている4機関につきましては借入れ、債券という資金調達は行っておらず、基本的に資本金による資金調達のみを行っているという状況になってございます。
15ページ目、論点でございますけれども、このような計画と実績を踏まえて、計画をどのように策定していくべきなのか。あるいは、また、ただいま申し上げました資金調達コストや民間の資金調達の例も踏まえて、財源の適切な構成についてどう考えていくべきなのかということを論点として掲げさせていただいております。
引き続きまして、16ページ目以降、論点はJICT及びA-FIVEから制度の要求がございますので、これについてご説明申し上げます。
まず、17ページ、JICTでございます。現行、JICTの支援対象は、通信・放送等に関するインフラ整備、いわゆるハード整備を伴う事業とされております。ハード整備を伴う限りにおいては、ソフトについても支援対象になり得るということでございます。これに対しまして、そういったインフラ整備を伴わない、ハード整備を伴わない事業につきましても、プラットフォーム事業のうち特に重要なものについては支援対象としたいと、このような要求でございます。
検討の視点でございますけれども、まずJICTの設立趣旨として、そういったハード整備事業であれば、大きな初期投資が必要で回収が長期にわたる、法制変更リスク等があり、民間で対応困難でありまして、官の支援が必要なのではないか、こういう整理だったかと思います。また、クールジャパンがコンテンツ、アプリを支援対象としておりますので、JICTがインフラ整備を伴う事業を対象としたと、このようなお話もあったかと思います。
18ページ目、民間事業者でも、海外のソフト分野へ積極展開しているような例も見られるということでございます。
3番目、プラットフォーム事業でございます。プラットフォーム事業と一言に言いましても、様々なものがありまして、公共サービスとして広範なインフラ的なものもありますけれども、個別ビジネスとして競争的に提供されるものもあるわけであります。そういった種類の中で、どういったものを支援対象にしていくか考えていかなければいけないということであります。また、次にありますように、の事業を政府等の政策・施策に位置づけられた事業としてITシステムの整備を行うようなケースもあり、こういったものについては一定程度調整にリスクがあるというようなことも指摘されている状況にございます。
そういった設立趣旨や海外展開の状況に留意する必要がある一方、一定の民間企業が対応困難なリスクがあり得ることも踏まえて、どのような事業がJICTの支援対象にふさわしいと考えるのかということが論点かと思います。
19ページ目にお進みください。A-FIVEの業務の追加でございます。A-FIVEからは、食品流通構造の改革を進めるため、ICT技術の活用等により新たな流通プラットフォームの構築を行う食品流通事業者への支援業務を追加したいと、このような要求でございます。
視点でございますけれども、事業再編等業務及び流通構造改革業務、例えば日本政策金融公庫の農林水産事業の資金メニューの中の構成比と照らしてみますと、極めてシェアの低い部分になっていて、必ずしも農林水産業分野において中核的な分野になっていないということであります。A-FIVEは、従前から6次産業化を支援することを基本業務として、今年度から事業再編等、また30年度要求で流通構造改革を行いたいということにしているわけでありますけれども、そういった既存業務との親和性や業務運営の効率性の観点から、どのように考えていくべきなのかということが論点かと思います。
20ページ目以降は、先ほど申し上げました中期的な視点ということであります。
まず、21ページ目は、これは経済産業省の資料になりますけれども、AI、ビッグデータの進展を踏まえた第4次産業革命においては、人の移動、物の移動といったサービス提供の形態に応じて産業の再編が進んでいくのではないかと考えられておりまして、従来であれば自動車なら自動車産業、交通事業(バス・タクシー)などであれば同一業者の中での再編ということで考えられてきていたわけでありますが、こういう業態を超えた形で再編が進んでいくことが考えられるわけであります。こういった中においては、業態別のファンドというのはどういう位置づけ、どういう発展性を持って考えていくべきなのかということかと思っております。
22ページ目は、大規模な再編ということであります。我が国だけでなく、世界的に事業環境が大きく変化する中で企業が生き残りをかけていくためには、事業ポートフォリオの大胆な組みかえが必要と従前から言われているわけでありますが、我が国においては、その活用実績、規模が非常に少ないという状況にございます。
また、23ページでありますけれども、クロスボーダーのM&A案件というのは伸びが非常に緩やかでありますし、特に中堅・中小企業による案件の伸びが低いということでありまして、こういったところにも支援が必要なのではないかと思われるわけであります。
24ページ目にお進みください。中小企業の海外直接投資の開始に当たって必要とされるものとしては、まずは資金的余裕でありますからファンドの役割というのがあるのですけれども、そういったことのみならず、法制に対する知見でありますとか、マーケット情報といったような事業性確保を支援するということも、あわせて行っていくことが必要でありまして、こういう役割も期待されていることかと思います。
25ページ目にお進みください。事業性確保のための環境整備を行うためには、国際的なネットワークや人材、相手国での認知が不可欠であります。そういったことをやっていくためには、一定の規模が組織的に必要なのではないかという問題意識でございます。
26ページ目であります。各ファンドの投資規模の状況ということであります。冒頭、申し上げたとおり、海外PEは非常に大きな規模でやっているということでありまして、ブラックストーングループというのはさらに拡大して、44兆円ぐらいの規模で投融資を行っているという状況に対しまして、我が国の国内PEは3,000億円程度という規模にとどまっていると。非常に格差が大きくなっているわけであります。
こういった状況の中、官民ファンドといたしましては、INCJ、DBJ、JBICは1兆円から数千億円の規模で投融資を行っている状況にありますけれども、JOIN、CJ、JICT、A-FIVEは数百億円規模の投融資にとどまっているという状況にあります。こういった規模感からも、今後、どういう位置づけを考えていくべきなのかということが検討の視点となり得るかと思っております。
27ページでございます。我が国産業の今後の再編の方向性、あるいは海外展開に係る民間事業者の支援の方向性等の観点から、官民ファンドについて、今後、さらに期待される機能や役割は何かといった論点かと思っております。
私からは以上でございます。
〔池尾分科会長〕どうもありがとうございました。
今枝政務官は、他のご公務がございますので、ここで退席されます。どうもありがとうございました。
〔今枝財務大臣政務官〕どうもありがとうございました。失礼いたします。
(今枝財務大臣政務官 退席)
〔橋本計画官〕次に、冨山委員からの意見書の御紹介をさせて頂きます。
お手元に、5ページほどの意見書がございまして、要点だけ御紹介させていただこうと思います。
まず1番目に、環境変化と政策課題ということで、大きく2つの視点を掲げて頂いております。1つは、伝統的な民業補完としての官民ファンド、未発達の民業の呼び水という位置づけ、2番目は新たな時代のリスクマネーの担い手としてということであります。世界の資本主義はさらに先に進んでおって、長期かつ高いリスクをとるリスクマネーの領域では、ソブリン・ウエルス・ファンドや公的年金基金が大きな役割を果たしつつある。ここでは、伝統的な「官か民か」、あるいは「官から民へ」という議論の枠組みはあまり意味を持たなくなってきていて、高い投資リターンを長期持続的に上げられるものは国富形成にとって善というような考え方になっているという視点であります。
この2つの視点を踏まえまして、以下の議論があるということでございます。
まず、伝統的な枠組みのところから4点ご指摘をいただいておりまして、1点目は人的基盤の脆弱性ということであります。我が国の金融システム、人材市場というのは著しくデットサイドに偏っていて、エクイティ性の投資を行う人材基盤は民間においても甚だしく脆弱であるということであります。また、そういった中で民業補完的なストライクゾーンで投資を行おうとすると、極めて高度な技、芸を求められると、そういう状況であります。ここに加えて、国際というキーワードが重なると、リスクマネーのプロであり、かつグローバルトップ人材であり、公共政策的なセンスが必要と、3重のレア条件をクリアできるスーパーマンが必要となるということでありまして、しかるべき人材を得ることは至難であるという認識かと思っております。そういたしますと、対応策として、官民ファンドの再編、統廃合は不可避である。特に、国際投資系は今のままでは厳しい。地域軸、あるいは産業軸で、3グループぐらいに収れんすべきではないかといったようなご意見であります。
2番目は、リスクマネー投資機関とか、ガバナンス態勢のミスマッチということであります。エクイティ投資というのは、経験的な直感で瞬間的な判断を行うことが求められる世界ということでありまして、対応策として、役所からの出向者などで間接部門、管理部門が膨脹している官民ファンドは、直ちにスリム化を図るべきであるというようなご意見であります。
3番目は、パフォーマンス評価者の誤解ということであります。エクイティ性の投資は、だめな時期、準備不足の時期はじっとしていて、勝機が来たら怒濤の投資行動に出るというような狩猟的なゲームであることから、官民ファンド、主務省、モニタリング側官庁のエクイティファンド、リスク投資に係るリテラシー向上を図るべきであるというようなご意見であります。
4番目は、問題の本質が金から人にシフトしているという大きな流れに対応するということであります。パラグラフの下でありますけれども、民間人材であれば自明に官僚や政府系金融機関の人材より有能だという幻想も、こと国内の人材に限って言えば捨てるべきである。広義の官の領域にいる基礎能力の高い人材を、リスク投資の世界の一流のプロが鍛えるほうが効率的に一流のプロ人材に育つ確率が高い。
対応策のところでありますけれども、一部の官民ファンドは民間の人材の避難場所になっている疑念が拭えない。そういったファンドは、迅速かつ大幅にフロントスタッフのスリム化、筋肉質化を図るべきである。少数で構わないから、一流のプロ人材の集団として再出発すべきである、こういったご意見でございます。
3番目は、新展開ということであります。広い意味での経済的な国益、国富の増大を図るリスクマネーの担い手をどうするか、議論すべき時期が来ております。エクイティ投資をインベストメントチェーンの主役に転換するという政策的課題とも、こういった議論は整合するのではないかということであります。グローバルな再編資金やグロースキャピタルを提供して、高い収益が上がるファンドが出てくるとすれば、それは国内の民間事業会社や、民間ファンドにおいてリスクをとる能力が必ずしも十分でないことを示唆しているということ。
かかるパラダイムシフトと、我が国の過度に預金に偏ったインベストメントチェーン、デットサイドに偏った金融資本市場の実態、長期かつ大きなリスク投資を担える民間プレーヤーがほとんどいない実態を鑑みたとき、伝統的な官民ファンド論、民業補完論を超えて、今回の再編、統廃合を機に、官民ファンドの一部を日本型のソブリン・ウエルス・ファンドとして進化させることを検討すべき。また、公的年金基金をはじめとして、年金系の長期資金の一部をリスクマネーとして、新たな日本型ソブリン・ウエルス・ファンドに投入し、我が国のインベストメントチェーンをエクイティ指向に大きく転換させる先駆けとすることも検討すべきであるというようなご意見でありました。
以上でございます。
〔池尾分科会長〕どうもありがとうございました。
それでは、議論に入りたいと思います。官民ファンドをめぐって幾つかの論点が既に出されておりますが、それらをめぐりまして、委員の皆様方からご意見、あるいはご質問等をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
どうぞ、渡部委員。
〔渡部委員〕冨山委員のように大きな話から入ると大変なことになると思うので、実務的に、JICTさんから出ている制度改正、これ、支援対象等を広げられるというのは、目の前に投資案件が実際あるということで変えられたいのか、事務局からご説明のあったように、投資実績等が必ずしも進んでいないということから、これを広げればできるかもしれないということなのか。そのあたりの実際の感覚、それなりにベンチャー、プライベートエクイティ、実務として携わったことはあるのですけれども、そんなに単年度主義でいかないということは十分理解するのですけれども、現実、何かあるということでおっしゃっているのかどうかということだけ、ちょっと確認したいと思いました。
〔池尾分科会長〕では、先に関連したご質問というか、ご意見、お願いします。
〔川村委員〕JICTさんも、A-FIVEさんも感じるのですけれども、まず素朴に、従前の業務範囲において、現状、達成率、短兵急に低い、高いと言うのは不適当だと思いますが、それにしても、まだまだ非常にのり代が多い中で、なぜ新たな分野を加えようとされているのか。これ、ただいまのご質問と同じ趣旨です。
さらに、それに加えて、もともと出ようとされている分野は、現在、林立しております他ファンド、ほかのファンドのいわばコアビジネスになっているところがかなりあると私は理解しているのですけれども、そうだったら2つくっついてしまったらいいではないか。冨山委員ではないですけれども、JICTさんを見れば、これだったら自然でいけばクールジャパン機構と1つになったほうがよほど効率的だし、まさに人材面でのいろいろな、共同化というのでしょうか、クオリティーを良くする、こういうことができるのではないか。
それから、A-FIVEさんも、当初は1次産業を6次産業化していくためにということが大きな目的だったと理解しています。現在、それを一生懸命やっていただいているわけですけれども、現状の到達点を見るとまだまだ余地がある。そこに、今度は流通プラットフォームという分野を出しておられる。これは、所期の目的との関係でどう考えるべきなのか、両ファンドに対する素朴な質問であります。
また、両者ともプラットフォームという言葉がよく出てきているわけでありますが、これは今までの日本の経験で、官民でいっても実はプラットフォーム事業はなかなかうまくいっていないという事実もある。設立された当初の目的がまだまだ達成されていない中、なかなかにというか、非常に難度の高いプラットフォーム事業に出ていこうとされている、その勝算はどの辺におありなのか。これらについてちょっと教えていただければと思います。
〔池尾分科会長〕どういたしましょう。ファンドの方に直接お答えいただきましょうか。まず、JICTからお願いします。
〔海外通信・放送・郵便事業支援機構齋藤常務理事〕JICTでございます。ご質問ありがとうございました。
まず、今回の支援対象の拡大において、実際に今、何か目の前のものがあるのかということでありますけれども、この審議会でのご議論を踏まえた上で、どの程度の範囲のものまでが認められるかということにもよりますし、ビジネスの具体的な話でございますので詳細は申し上げられませんけれども、今回のご審議の結果、例えば海外における中央政府のほうで通関システムなどを整備する場合でありますとか、サイバーセキュリティーのシステムを整理する場合でありますとか、自治体、公的機関がそれぞれの交通機関等のインフラのメンテナンスに関するシステムを整備するとか、そういった事例が出てまいりました場合には私どもの支援ができるのではないか。この場でのご議論の結果でございますけれども、そういうように考えております。
それから、実績が伸びていないのに、何で新たな分野を目指すのかということでございます。今回、実績が伸びていないという数字の問題もございますが、1つには、28年度末の数字をご覧いただきますと、28年度下期において2件の支援決定を行っておるんですけれども、そのうちの1件につきまして、実際の投融資、これは事業の進展に応じまして出資、融資を行っていくものであり、それが28年度末から29年度上期にずれ込んでおるという事情がございました。
そのほか、伸びていないことの背景としまして、外国政府主導のプロジェクトなどの場合には、閣僚が変わったり、対象分野の法改正などが遅れたりといった政治的な事情によってプロジェクトを中止したり、遅延しているという事情があったわけでございます。今回、もしお認めいただきましたらば、新たな分野についてさらに支援実績を伸ばしていきたいと考えております。
それから、他ファンドでもできるものがあるのではないかというご指摘でございますけれども、私どもJICTは通信、放送、郵便分野に専門性を持った官民ファンドだと考えておりますので、その専門性に基づいて機能的かつ柔軟的に業務を行いまして、投資分野に即した目利きを発揮したり、ノウハウを蓄積したりするということで、対象分野事業の組成でありますとか、成功のために効率的、効果的に事業を行ってまいりたいと考えておるわけでございます。
〔池尾分科会長〕では、A-FIVEの方、お願いします。
〔農林水産省新井輸出促進審議官〕まず、A-FIVEにつきまして、新たな業務の追加ということでございます。これにつきましては、農林漁業成長産業化ファンドということでございまして、設立当初は農林漁業者が加工、あるいは販売を行うということで、農林漁業者の支援を主軸にしてまいりました。その後、農業政策の中で、農林漁業者だけでは解決できない問題を、農業競争力を強化するという観点から政策として取り組んでいくことにしておりまして、そういう関係で、昨年は、農業競争力強化支援法の中で主軸となっておりました事業再編、肥料、農薬のコストを下げることにつきましても、A-FIVEの業務として追加をさせていただいたところでございます。
同じく、同法におきましては流通構造改革を一つの軸として取り上げておりまして、それはまさに農林漁業者のバリューをどうやって消費者まで伝えるかということでございまして、これにつきましては日本は非常に遅れている状況にございます。そういう中、この食品流通のプラットフォーム支援についてA-FIVEの事業に追加することは、政策として、それから私どもの主軸であります農林漁業者の成長という観点から、一貫性がある施策と考えているところでございます。今回の流通プラットフォーム支援、資料の19ページにもございますように、いろいろな形で遅れている農林漁業の流通のシステムとインフラを一緒に解決して行こうということでございまして、これを行っていかないと、これからの農業の成長はないと考えているところでございます。
それから、実績が伸びない中というお話がございました。確かに、A-FIVEの実績、今のところ投資効率が低いということでございますが、昨年、中期計画を見直しまして、日本政策金融公庫との協調、いろいろな政策に対応しております。そういう中で、現在の28年度末の投資実績は58億円でございますが、29年度は90数億円になるレベルまでの投資案件を、今、見込んでいるところでございます。
それに、さらに事業再編ということも入ってまいりました。本体の農業競争力強化支援法におきましては、事業再編で、現在、2件を認定しております。A-FIVEを使うことにはなっておりませんけれども、これからA-FIVEの活動も出てくるのではないかと考えているところでございます。
ファンドの統合につきましては、まさに農業の成長化といった観点から、食品、それから農業分野を一貫してやるということ、A-FIVEもいろいろな知見を積んでまいりましたので、こういう人材を生かして取り組んでいきたいと考えているところでございます。
〔池尾分科会長〕江川委員、お願いします。
〔江川委員〕今までの議論をお伺いしていてちょっと感じましたのは、今、官民ファンドがかなりたくさんできているのですけれども、この統合を少し考えたほうがいいのではないかと思いました。
1点目は、何人かの委員もご指摘になったり、今のご説明を聞いていても思ったのですけれども、産業構造がどんどん変化してきて、ITがあらゆる分野に出てきて、プラットフォームの意味合いもどんどん変わってきているわけです。アマゾンとか、そういうところが金融分野に進出したりということですから、既存の省庁の管轄に合わせる形でファンドをつくっても、どうしてもそこでバッティングすることが出てくるのはやむを得ないことだし、むしろそういうところで神経をすり減らすよりは、ある程度統合してしまって、自由に案件に対応できるようにして行くほうが効率的ではないかと思ったのが1点目です。
2点目は、そういうようにすることによって管理コストも削減できるのではないか。ファンドを1つ作ると、そこにいろいろなものをくっつけなければいけませんけれども、ある程度再編、統合して規模が大きくなれば、管理コスト、これは本当にかかるコストもありますし、人の面でも減らすことができて効率化が図れると思います。
3つ目は、むしろプラスの面で、そうやって一緒になることによって、例えばベストプラクティスがもっと共有されるとか、人材の流動性も進むと思います。私、個人的には、今、ご説明あったように、農業などはいろいろな意味で将来性がある重要な分野だと思うのですけれども、どうしても農業というと、例えばファンドが一緒になると、おそらく人材もいろいろな形で流れるようになるので、今まで農業に接点がなかったような人材がそちらに流れていくとか、そういったメリットも考えられると思うので、そういうことも考えていただければと思います。
〔池尾分科会長〕はい、どうぞ。
〔林田委員〕ありがとうございます。
資料の10ページから紹介されています4つのファンドを見ますと、やはり印象としては、期初の投資計画と実績との乖離がとても大きいという気がいたします。それでも、毎年度、多額の要求を繰り返している。設立から2、3年程度のファンドであれば、スタートアップということである程度大目に見てもいいかと思いますけれども、設立から5年以上たっても状況が大きく変わっていないファンドも見られまして、そこはちょっと、このままでいいのかという気がしております。
あと、先ほどもちょっと説明がありましたけれども、例えば預金がA-FIVEですと200億円、クールジャパンだと300億円強あると。つまり、この表を見る限り、初期に投入した資金がそのまま滞留しているのではないか、滞留しているものの中から運営経費を使っているということが続いているように見受けられます。ですから、そろそろ要求水準の妥当性でありますとか、ファンド経営のあり方そのものについて抜本的な見直しを考えたほうがいいのではなかろうかと、この表を見て感じました。
12ページの表を見ましても、投資実績と運営経費の関係から見て、明らかに経費に見合う投資が行われていないファンドが見受けられますので、このままではファンドとして経営が成り立たないのではないかという危惧も覚えます。今、幾つかお話ありましたが、ファンドが単純に合体すればうまくいくのかというのは、私、ちょっと分かりませんけれども、やや乱立気味の官民ファンドの整理統合も視野に入れていいのかなと、そういう感想を持ちました。
以上です。
〔池尾分科会長〕どうもありがとうございます。
冨田委員、お願いします。
〔冨田委員〕ありがとうございます。
ファンドの方に質問したいのですけれども、低い執行率の背景ですけれども、そもそもの案件が少ないのか、あるいは、ここで冨山委員が出されているような官民ファンドのストライクゾーンが狭いのか。もっと言うと、前回の議論で御紹介あるのですけれども、そもそも民間資金のリスクマネーに対する、リスクをとってやろうというインセンティブが非常に少ないのか。なぜ低い執行率かということについて、なかなか民間の出資が得られなかったのか、事業者の許可というか、あまりやる気がなかったのか、そこらのところをお聞きしたいのです。資料1の7ページで説明されたのは、すごく呼び水効果があるということですけれども、実態はそうではないわけですよね。民間の資金が乗ってこない、あるいは事業者がもともとあまり乗り気ではないと。どこに原因があったかを、それぞれのファンドの方から簡単にお聞かせいただきたいのですが。
〔池尾分科会長〕どうもありがとうございます。
手短にお願いしたいのですが、表面的な理由ではなくて、当然、本当に立ち入って再検討をしていただかなければいけないことだと思うので、本質的に何が原因で執行率がこういう低水準にとどまっているのかということについて、ちょっと踏み込んだ説明を短時間でお願いしたいと思います。ちょうどディマンディングで申しわけないですが。
では、順番でA-FIVEの方からお願いできますか。
〔農林漁業成長産業化支援機構平岩取締役常務〕A-FIVEでございます。
私どものファンドの出資、ご指摘のとおり執行率、低い状態でございます。手短にということでございますけれども、農林水産分野は今まで出資という手法を使っておりませんでした。政策手段としてなかったので、そこでこれを活用して、農林漁業者の方が自らの経営としてやっていけるようにということで、その事業をサポートするような形で始めたわけでございますけれども、最初はやはり、今まで使っていなかったということもございまして、やや控え目な活用であったかと思います。その関係で、どうしても規模が小さかった、一件一件が小さかったということで、件数は今、119件まで出ていますけれども、私どもの出資規模が1件当たり6,000万円、7,000万円であったということが一つ大きな要因だったと思います。
そこで、私どもとしては、必ずしも6次産業化のニーズにフィットしていない部分もあるのではないかということで、先ほどお話がございましたように、今まで地銀さんと一緒につくらせていただいたサブファンド……。
〔冨田委員〕事業者か、出資者である金融機関とか、どこにあったかということをお聞きしたいのです。
〔農林漁業成長産業化支援機構平岩取締役常務〕はい。事業者は、今までは基本的に農林漁業者の方が6次産業化をするという取組、地方で取り組まれるものを中心にやってきたわけであります。
今後、現場のニーズをいま一度よく把握してやっていくという中では、かなり規模が大きくて、A-FIVEのほうで直接の投資をしたりですとか、農業法人に直接出資をさせていただくという取組ですとか、そういったところについて必ずしも需要に応えていなかったので、今後、そこの部分の取組を強化するというようなことをやっていけば、まだまだニーズはあると考えておるところでございます。
〔池尾分科会長〕それでは、クールジャパン機構の方、お願いできますか。
〔海外需要開拓支援機構若井専務執行役〕クールジャパン機構専務執行役の若井でございます。簡単にお答えをさせていただきます。
28年度までの投資実績、300億円の投資実績に対して300億円程度の現預金があるということでありますが、これについて申し上げれば、例えばインバウンド向け観光のためのLP出資、これは順次出資していくものでありますので、順次出資して支援の約束をする。その支援の約束をしたけれども、まだ実際の出資に至っていないようなものが相当額ございます。それから、海外で順番にお店を展開していく、ホールを展開していくというような場合において、当初から全額を出資するのではなくて、事業の進捗を見ながら我々は出資させていただいています。これは、当然、リスクマネーを保全する意味において非常に大きなポイントになると思っております。
そういう点で、我々の支援決定の約束ベースで言えば、既に520億円を超える支援決定をしておりますので、手元に資金を持ちつつ、実際の事業者さんに出させていただくタイミングをうかがっています。まだ100億円、間があるではないかというお話もあるかもしれませんが、これについては、当初、想定していたM&A案件について不調に終わったことによるものでありますので、一時的な要因であると考えてございます。
2点目、事業者さんとの関係ということであります。当社の場合においては、海外にお店を出すような新規のプロジェクト型の出資が非常に多いということもあって、場所を探す、人を探す、マーケティングをする、そういう意味において事業のリードタイムが非常に長い傾向がございます。したがって、そういう点で言えばストライクゾーンがというよりは、いろいろな事業者さんとおつき合いをさせていただいていますけれども、リードタイムが長い間にプロジェクトが頓挫するケースは非常に多くございます。
構想の段階でご相談を受けたものの中で、実際に投資に至るものは1%ぐらいしかございません。それは、非常にたくさん案件はあるのですけれども、我々がリスクをしっかり管理し、そして事業者さんのマネジメントの体制を精査し、我々、民業補完でありますから、民間サイドの資金調達についても、しっかりとその堅さ、ファイナンスが堅いということを確認した上でなければ、我々、投資ができません。そういったタームの整理もしながらやらせていただくということになると、どうしても打率が下がるのは仕方がないと思っております。
ただ、足元の数字で申し上げれば、2017年度の上半期で既に未公表案件を除く69億円、4件の支援決定をさせていただいておりますので、これまでの事業の中でいろいろなオリジネーション、ソーシングをやってきた成果は出つつあると考えてございます。
以上であります。
〔池尾分科会長〕今、ご指摘いただいたとおりだとは思うのですけれども、打率が低いというのはある意味、最初から分かっている話であって、投資計画総額1,510億円からすると、おっしゃった約束ベースで、コミットしている分を含めても500億円というのは3分の1ですよね。だから、やはりもうちょっと原因について説明いただきたいという気がいたしますが。
〔海外需要開拓支援機構若井専務執行役〕いろいろ考え方はあろうかと思いますが、我々としては、かなり長期にわたる投資であるということを考えますと、政府保証のデットで調達というところについては、もう少し足の速いような、例えばカーブアウトの案件を3年で統合してIPOするとか、そういうものであると使えるのですけれども、我々の今の投資案件の想定されるエグジット期間は平均7年であります。そういうことを考えると、金融環境の変化なども想定すると、政府保証借入れというところまで一気に踏み込むというのは、案件の性格からいって少し慎重であるべきかと思っています。
そういう点では、産投出資分については基本的に使わせていただいて、なお、先ほど申し上げましたように、例えば短期的にM&Aで大きな案件があったときには、当然、産投出資だけではなくて、比較的足の速いものでありますので、政府保証借入れなども使わせていただいてやっていければと思ってございます。
〔橋本計画官〕計画と実績の乖離についてのご質問ですので、そちらにお答えいただけませんか。
〔海外需要開拓支援機構若井専務執行役〕恐縮であります。
そういう点で言えば、1,500億円と言われる中には、政府保証借入れ分が相当程度含まれているという認識でございます。政府保証借入れの計画額の合計として635億円積まれているという認識でありますから、そういった中で言いますと、我々としてもなかなか大型のM&A案件で政府保証を使う機会がなかったことが、全体での達成率の低さにつながっていると認識をしています。
〔池尾分科会長〕では、JOINの方、お願いできますか。
〔国土交通省篠原国際統括官〕JOINに関しましては、これまでに10件、109億円の実績があるわけでございますけれども、その理由としては2つあるかと思っております。1つは、JOINは設立されたのが3年前、先月の10月20日で3周年を迎えておりますが、第1号案件を形成するまでに1年ほど経過いたしました。その後は加速をして、今、10件まで来ておりますので、このペースを上げていきたいということが一つでございます。
もう一つは、この分野の特性かと思っておりますけれども、実際に事業者から相談を受けている案件は、今、97件ございます。ただ、このインフラ案件は、特に相手国政府の判断の中で案件が固まって動いていくところがございますので、相手国政府の動きが想定よりも遅れることがしばしば起きるということがございます。さらに、そういうものですから、逆に相手国政府の判断で急に動くこともございますので、予算規模としては対応できないリスクを考えて要求させていただいているということで、乖離が生じているのかと考えてございます。
以上でございます。
〔池尾分科会長〕JICTの方、お願いします。
〔海外通信・放送・郵便事業支援機構齋藤常務理事〕JICTでございます。
JICTも、設立が27年の11月末でございまして、ようやくと申しますか、間もなく2年を経過するという状況になってまいりました。その中で、私どもとしても当然のことながら、ソーシング活動の活発化などには努めてまいらなければならないと考えております。
執行率が低いということにつきましては、先ほどと重なるご説明になりますけれども、短く申しますと、外国政府の政治的事情、これは閣僚の交代でありますとか、法改正の遅延等がございます。それから、昨年度に関しましては、事業の進捗に応じた資金融資の実行という中で平成29年度にずれ込んだことがございます。
ただ、お話にありましたように、事業者さんの関係という意味では、これまで電気通信事業、ICTインフラの整備プロジェクトにおいては、我が国のメーカーさんたちは基本的に物を納入する、物売りというような形態でこれまであったということで、その中で、今回、第1号案件のように、メーカーさんが出資して事業に参画していく形をとれたという状況が、今、ございます。
〔冨田委員〕よろしいですか。
〔池尾分科会長〕どうぞ、冨田委員。
〔冨田委員〕ご説明いただいたのですが、言われたことを簡単にまとめると、案件はたくさんありそうだ、だけど民間出資が得られないので進まなかった、時間が足りなかったというご説明が大半だったと思うのです。時間が足りないというのは、立ち上げてまだ期間が経っていないということだと思うのです。
要は、私、何をお聞きしているかというと、前回、ちょっと出られなかったのですけれども、8ページの前回の意見の要約というのはなかなかよくまとまっているように思います。真ん中にあるのは、民間というのはリターンの高いものを求めているのだと、少なくとも出資金は戻ってこなければ困るということがあって、だから厳しいのだと。
そういう目で5ページ目の図を見ますと、ストライクゾーンが狭そうに見えるのだけれども、そもそも民間資金があまりリスクをテークするということでないとすれば、官民ファンドでいろいろな甘味剤というか、民間の投資家を呼び込むようなことをやっているのだけれども、効果がなかったと読むべきか。だから、基本的な問題はそこらの判断だと思うのです。
そういうお話を実務の中からお聞きしたかったというのが今回の狙いなのですけれども、私、それはまだよく理解できないので、今、言ったように、案件はたくさんあるのだけれどもできなかった、それは民間の出資が集まらなかったからだという理解でいいのか。あるいは、冨山委員がメモで示されたように適切な人材がいなかったからだと。かなり思い切ったことを書かれているのだけれども、そういうことなのか。どこにネックがあるのかということです。ただ、時間が足りないと言われても、もう5年も経っている機関もあるわけですから。そこらをお聞かせいただきたかったのですけれども、分科会長から指示していただければと思います。
〔池尾分科会長〕では、今の追加のご質問の趣旨を踏まえて、結局、ボトルネックというか、何が一番制約要因になって案件が組成できていないのかという点について、もう一度、簡単に4機関の方にご説明いただきたいと思います。
それでは、設立から5年を経過しているA-FIVEについて、もう一度、端的に言って何が一番制約要因だったと総括されているかをちょっとお聞かせいただけませんか。
〔農林水産省新井輸出促進審議官〕まず、A-FIVEについてでございます。
A-FIVEの制約要件、端的に申しますと、まずは先ほど申し上げたように、非常に小口だったことで出資額が伸びないということが一つあります。それから、6次産業化、当初、始めたものにつきましては、原則、農林漁業者が議決権25%を超えた出資をするということでございまして、やはり農林漁業者の出資に対して事業の規模が左右されるということで、案件がなかなか進まなかったという事情がございます。
それから、A-FIVEにつきましては、基本的にきちんとハンズオンしていくと。農林漁業者にとって2次、3次というのは未知の分野ですので、そういう意味で地方銀行のサブファンドを使うという体制をとってまいりました。そういう中で、地方銀行の扱いとして、そもそも農業関係融資のノウハウがなかったということもございますし、かつ、そこで間接的な経費が掛かったという経緯はやはり否めないと思っております。
今年度の事業再編、それから今、お願いしております流通関係のプラットフォームにつきましては、このような制約要件がない中で出資ができるということでございまして、今までのサブファンドを使わない直接の農林漁業者への投資を含めまして、さらに案件形成に努めていきたいと考えているところでございます。
〔海外需要開拓支援機構若井専務執行役〕クールジャパン機構でございます。
1点だけ、先ほどの説明の補足をさせていただくと、例えば10ページの表でいいますと、クールジャパン機構に対する産業投資の出資額の累計が1,100億円であるかのように見えておりますが、これは一定の余裕を見込んだ予算要求であって、現実に出資されているのは、政府出資としては586億円で、その中において、我々としては520億円程度の支援決定を既に行っているということは最初に申し上げておきます。
その上でご質問にお答えすると、我々の場合においてはどうしても海外で、例えば新規の店舗をやる、新規の配信事業をやるというような民間事業者さんとの共同プロジェクトになります。したがって、やはり民間事業者さんとして、その事業自体が将来的にきちんと自立できるかどうかの見極めのところ、お店などの場合には立地、商品、配信事業の場合にはコンテンツであったり、現地の協力、先ほどありましたような現地の規制の問題、そういうところもあって事業の懐妊期間というのは非常に長い状況がございます。
そういう中で、通常の事業会社であれば、やはり一定の投資に対するリターンを求められるケースがあって、どうしても事業がリニアに、直線的に立ち上がるわけではなくて、初期、非常に苦労する傾向がございます。そういったところで躊躇をされて、実際に出店に至らないような案件が多数あるということかと思っております。例えば、冨田委員のご指摘にあったような地方銀行とか、そういうところから調達をするということではなくて、基本的には事業者さんの自己資金で賄われているケースが多いので、そういった意味での事業の見通しのところについて、やはりいろいろな不確定要因があって、躊躇されて案件化ができないというケースが、我々の投資案件としては多いと思っております。
〔池尾分科会長〕JOINの方、お願いします。
〔国土交通省篠原国際統括官〕JOINに関しましては、民間の投資意欲のほうは十分にあると考えてございます。それは、先ほど申し上げた97件の相談案件があるということにも表れていると思うのですが、進んでいかない原因として私どもが考えますのは、私どもが担当するインフラ、あるいは都市開発という案件は、基本的に新興国において、構想マスタープラン、フィージビリティースタディー、それから入札という過程を経ていますけれども、そこはやはり新興国、やや不慣れな面もあり、進行が想定よりもかなり遅れていくという傾向があり、案件の形成が具体化するのに時間が掛かって、それに伴ってこちらの出資案件の具体化も遅れるということではないかと考えてございます。
〔池尾分科会長〕JICTの方、お願いします。
〔海外通信・放送・郵便事業支援機構齋藤常務理事〕JICTでございます。
案件につきましてはあるんですけれども、先ほど申し上げたように外国政府側、外国側の政治的事情、いわば政治リスクというものが非常にあるということで、民間の方々はこの辺について、そのリスクを躊躇しているというようなケースが多くございます。特に、ASEAN諸国では官の信頼が高いということもございますけれども、民から国、官に対して交渉していくのはなかなか難しいという事情がございます。したがいまして、今後一層、私どもも政府とともに、政治リスクを最小化していくように交渉等をしてまいりたいと思っております。
〔池尾分科会長〕では、土居委員。
〔土居委員〕今までご回答をお伺いしていると、何か質問をする気がなくなったので、意見だけにとどめたいと思います。
当然、失敗してはいけないですけれども、うまくいっても、結局、あまり褒められないというスキームになっているのではないかという気がするわけです。つまり、どういうことかというと、やはり民業圧迫はいかんというところがどうしてもあるわけです。そうすると、民間で自明にリスクをとってうまくいくことが分かっている案件を、官民ファンドが独り占めして案件として組成するのは民業圧迫ではないかと言われてしまう。そういうものが目の前にあって、これだったら絶対うまくいくとそれなりの確度で言えるとしても、確度が高ければ高いほど民間でやるという話なので、別に官民ファンドが口出しする必要はないではないかということになってしまう。逆に、リスクが高ければ高いほど失敗する可能性が高くて、失敗すると、このままでは出資が毀損するではないかと後ろ指を指されるということになるので、成功しても褒められないし、失敗してはもっと褒められない。そういう悲しい状況が、今、官民ファンドの置かれている状況ではないかと、私なりに勝手に総括をするわけです。
そういたしますと、確かに産業投資の実績や執行率が低いというのは、そういう意味では官民ファンドの方々が非常に奥ゆかしいといいましょうか、民業圧迫になってはいけないということをしっかり踏まえておられる点は、私は褒めてあげたいと思いますけれども、では何のために財投要求されるのか。そういうところと、当然、これまでの議論に重なってくるという悩ましい問題にまた直面するということではないかと思います。
そういう意味で言いますと、要求したのだから枠いっぱい全部使ってください、枠いっぱい使わないなら次の年は要求してはいかんみたいなことを言ってしまうと、逆に危ないものに手を出して失敗してしまう可能性があって、それは我々として望んでもいないことですから、無理に枠いっぱい使ってもらう必要は全然ないと私は思います。当然、枠以上に出資してもらうことが制度上できないので、枠いっぱい産業投資を要求されるのだろうと私は理解しているので、使い残すということはある程度やむを得ないことなのかなと。
そうすると、次に出てくる問題は、資料2の13ページにある資金調達コスト、ないしは、その1ページ前の12ページにおける運営経費との対比ということが出てきまして、何のために産業投資の手段を使ってコストをかけてやっているのかということが当然、問われる。開店休業状態では全く困るということになってくるので、より低い資金調達コスト、場合によっては政府保証借入れとか、そちらのほうがまだ調達コストが低いということであるならば、そちらのほうで対応するということも今後は検討していただかなければいけないのではないかと思います。
さらには、案件が出てこないのに運営経費ばかりかかるということでは、何のために官民ファンドをつくったのか分からんという話になります。産投の執行率が低いといえども、やはり案件はしっかり組成していただけるものは組成していただかないといけないので、開店休業状態ではいけない。そういう意味では、運営経費をどうやって効率化していくか。簡単に言えば間接経費が多いわけですから、そうすると幾つも乱立しているような状態というのはよくない。冨山委員のおっしゃっている統合という話も、今後はしっかり考えていただかなければいけない。せめて、同じ役所の所管になっている官民ファンドぐらい統合していただいていいのではないかと思うわけです。例えば、産業革新機構とクールジャパン機構とか。
ほかの官民ファンドがあってもいいと思うのですけれども、役所が違うとか、政策目的が違うとか、いろいろぐちぐち言い出されると、私も独立行政法人改革のときに議論に関わらせていただいて、複数の大臣の所管になるのは、そんな独立行政法人の統合はやめてくれというプレッシャーにさんざんさらされた経験があります。そういう意味では、いきなりは無理だと思うのですけれども、せめて同じ役所が所管しているならば同じファンドに、1つにする。そういうところからでも、進められるものはできるだけ早目に進めていただくことが必要かと思います。
最後に1点、これはちょっと蛇足的な意見になるかもしれませんけれども、冨山委員の意見の中で、最後のところに日本型ソブリン・ウエルス・ファンドと書いてあって、そういう理想を掲げるのはとてもいいことだとは思うのですが、あいにくウエルスとなっていないというのが我が国の悩ましいところであります。一般会計だと出資金は国債を発行していて、唯一、産業投資だけ本当にウエルスと言えるものかもしれないけれども、時々、復興予算とか、蓄積するほうでないほうにウエルスになりそうな政府の資産が使われることがあったりしますから、本当に貯めたウエルスでエクイティ性の資金を展開していくような状態になっているのかというと、日本の現状を考えるとソブリン・ウエルス・ファンドというよりか、結局、出資金も国債で発行しているというとソブリン・デット・ファンドみたいな感じになっていて、果たして日本版がすぐにできるかというと、私はちょっと疑問に思っているということだけ付け加えさせていただきたい。
〔池尾分科会長〕幾つか論点があると思うのですけれども、現状において極めて小規模なファンドが縦割りで、乱立と言うとちょっと言い過ぎかもしれませんが、あるという状況はいかがなものかということで、1つは、ファンドの運営に関わる高度人材は率直に言って希少なわけですから、希少な人材はやはり有効活用しなければいけない。現状、それが分散して使われているというのはむしろ非効率ではないかということと、経費の部分について、共通化することで節約する余地はまだまだあるのではないかということがあったと思います。
私、一言だけ申し上げたいのですが、A-FIVEの設立の際にも財投分科会でヒアリングをしたと思うのです。そのときに、過去の議事録を確認していただけばいいんですけれども、基本的な問題は、ちゃんとしたノウハウを持った人材を確保できるかどうかだということを、私、質問した記憶があります。人材確保をちゃんとできるのですかと質問したのに対して、万全を期しますというご回答があったんですが、今の時点で地銀にノウハウがなかったと言われるのはちょっとどうかというのは、蛇足ですが、少し申し上げておきます。
翁分科会長代理。
〔翁分科会長代理〕皆様の意見と少し重なる部分があるのですが、私も何点かあるのですが、官民ファンドに枠いっぱい使ってもらうということを目的にするのではなく、本当に必要な、まさにストライクゾーンのところにきちんと投資をして、きちんとしたパフォーマンスを上げてもらうということが基本的には重要なことなので、そういったことをできるようにしていただくということがまず重要だと思っております。
また、運営経費につきましては、どのファンドも非常に高過ぎて、今、池尾分科会長もおっしゃったのですけれども、本当に統合が必要だと思っています。間接経費とか、システムとか、それぞれつくっているだけ非常にコスト高ですし、本当に人材は希少ですので、1カ所で集めてやるというようなやり方を本当に考えないと、これだけ数が多いと無駄な経費が多くなっていると私も思います。
それから、それぞれのファンドのガバナンス、各官庁がどういうように関与しているのか、取締役会がきちんと機能しているのかといったことも、統合とか、そういう議論をするに当たっては、きちんとオーバービューすることが必要なのではないかと思っております。
それから、サンセットで、INCJやREVICという期限が来るものが幾つかございまして、今回はご説明なかったですけれども、もともと官民ファンドというのは時限を切って、この期間までやるといったもとでつくられている組織であると思っておりますので、単に延長するというようなことがあってはならないと思っております。期限を延長してまだやることがあるとすれば、それは一体何なのか。今までのそれぞれのファンドのパフォーマンスを総括し、その間、民間市場で足りなかった市場の失敗がどういうように推移しているかということを評価し、その上で、もう一回どういうことが本当に必要なのかという精査が必要なのではないかと思っているので、そういった見直しをぜひやっていただきたいと思います。
もう一つは、A-FIVEについて、今回、新たに流通構造改革というものを要求されています。先ほどのお話では、これを民間事業者、漁業者が中心にやっているのでなかなかできなかったということですけれども、流通構造改革というのは企業を巻き込んでやっていかないとできないことではないかと思うのです。そういう意味で、こういった制度をもっと抜本的に見直さないと、流通構造改革はA-FIVEの今の制約の中ではできないのではないかとも思うのです。本当にやろうと思うのであれば、制度改正をしてでもやらないとできないのではないかと思うのですが、その点についてご見解をお伺いしたいと思います。
〔池尾分科会長〕お答えいただくということですね。
〔翁分科会長代理〕はい。
〔池尾分科会長〕それでは、今、質問していただいたことについて、A-FIVEの方からちょっとお答えいただけますか。
〔農林水産省新井輸出促進審議官〕まさにA-FIVEにつきましては、先ほど申し上げましたとおり、農林漁業者につきましては出資を25%上回るという条件がございました。昨年の業務再編については、そのような条件がなく、スーパーとの再編についてはA-FIVEは関与できるということでございます。今回、流通構造改革業務を新たに追加するためには法律上の措置が必要でございまして、これにつきましては必要な検討を行っているところでございます。
〔池尾分科会長〕はい、どうぞ。
〔野村委員〕今まで出たご意見とかなり重複するのですが、3点ほど簡単に意見を述べさせていただきます。
まず一つは、冨山委員がおっしゃるように、官民の役割は見直す時期に来ているかと思いますが、とはいえ、官民ファンドが民間の活力をもっと引き出せば、民間からの出資の呼び水になるというような役割にはやはり変わりはないと思います。そうしたときに、先ほど冨田委員からもありましたが、説明資料の7ページにあった呼び水効果がこれだけありましたという説明には、ちょっと違和感を覚えるところです。先ほど各機関からご説明いただいても、民間を呼び込む可能性があまり感じられなかったのです。私の理解不足だったかもしれないので、ご説明いただいた機構の方に、いや、こんな大きな可能性が出てきていますということがありましたら、補足してご説明をいただきたいところです。
2点目は、やはり統合が必要ではないかと私も感じています。業種を超えたいろいろなプラットフォームづくりが必要となっているということ、それからコストもかかるし、人材も非常に分散してしまいがちということを考えると、統合が必要ではないかと感じています。それぞれの機構の専門性の高さというのは、ご説明いただいた中でも感じているところではありますが、例えば先ほどの制度改定でも、JICTのご提案とクールジャパンとの被りはどうなのか。それから、A-FIVEのICTを活用したプラットフォームづくりであるならば、むしろINCJで行うほうがもう少し違う分野の知見も生かせるのではないかと感じています。
3点目は、先ほどからも出ているように人材不足です。高度人材の不足は、春にEU視察をさせていただいて、実際に投資の現場に足を運んだときにも感じたところです。投融資を生きたお金にするには、とにかく人であるということを強く感じました。目利きであり、プロデューサーでありという人たちを、どのように育てていくのか、高度人材の不足をどう解消していくのか。これはどなたにお伺いすればいいのか分からないのですけれども、今、このようなことを計画しているという案がもしあれば教えていただきたいと思います。
以上です。
〔池尾分科会長〕どうもありがとうございました。
では、林田委員。
〔林田委員〕補足的で恐縮ですけれども、先ほども申し上げましたが、運営経費が投資実績に見合わず大きいという話があって、今、皆様方からやはり統合が必要だというお話がありましたが、表をよく見てみますと、運営経費が年を追うごとに増えているということで、それぞれの機関において運営経費を削減する何かアイデアというか、取組はなさっていらっしゃるのか、その辺の必要性についてはどう考えていらっしゃるのかといったあたりもちょっと聞いてみたいと思いました。
〔池尾分科会長〕そうしますと、何か成功事例のようなものがあるのかという話と、人材の確保、養成に関してどういう取組があるのかということと、経費の削減についてどういうお考えがあるか。どなたでも結構ですので、どうぞ。
〔経済産業省江崎商務・サービス政策統括調整官〕経済産業省でございます。CJ機構の担当という観点からお話をさせていただきます。
まず、先ほど土居委員がおっしゃったように、評価の場合、成功しても失敗しても怒られるというなかなか悩ましいところはあるのですけれども、できれば我々、成功して怒られたいという思いはあります。ただ、その中で一番難しい分野として、儲かればいいのかと言われれば政策目的があります。
クールジャパン機構ですと、やはり日本の良さを世界にアピールするという大目的がございます。他方、全くお金にならないものは、それこそ補助金でやるべきだというストライクゾーンが非常に狭いということはあります。したがって、まずはやりながら日本をアピールすることと、これは海外なものですから、民間だとなかなか出にくいということがあるので、やって見せるということが政策目的としてはあると思います。
他方で、実は人材の話で申し上げると、どうして我々、目利き論というか、当たるものを探す論のほうにちょっと力が行き過ぎているかなと反省をしています。例えば、海外であると、現地の情報をいかにちゃんととれているか、それから現地のお店を365日サポートできるかという体制を、ほかの機構さんも似たところがあると思うのですけれども、私どもはこれからJETROと完全にタイアップして見ると。まさに地元の評判も含めて、それを仕組み化していこうと思っております。もちろんMOUはあったのですけれども、時々相談するという形だったので、そうではなくてきっちり見ることが大事ということ。
もう一つは、ガバナンスという意味で、私どもは毎回、支援決定とか、定期的なことをやっておりますけれども、その中で間接経費が高いか低いかというのは、通常の民間ファンドからすると低いのです。ただ、案件がやっていないから高く見える。そうすると、何の比較においてコストを削減しなければいけないか。したがって、我々は、冨山委員は非常に鋭いことを書いておられて、やはり狩猟的なゲームであるという意味においては目利きの人の判断もある。手をつけたものに関しては、先ほど来申し上げているように相手のせいもあるのですけれども、相手の責任の部分をいかにミニマイズするかというところは結構大事だと思っておりますので、ここは完全にタイアップでいけると。
そうすると、おかげさまで日本文化に対する評価はそこそこ高うございます。ただ、来て買うのは成功しておりますけれども、行って売ってくるというのはなかなか難しゅうございます。私ども自治体でやったときもそうですけれども、日本で失敗したものは海外で絶対成功しないので、プラスアルファ海外でのノウハウというのをやると、そちらの人材と一緒にしていかないと、多分、私どもだけではなくてほかも同じだと思いますけれども、そういう取組を今、やろうとしているところでございます。
以上です。
〔池尾分科会長〕時間が大分過ぎています。それで、予算要求はないのですが、設置法の改正がある関係で、産業革新機構の関係官庁の方にも来ていただいておりますので、現状に関して手短にご説明いただければと思いますが、いかがでしょうか。
〔経済産業省政策局三浦産業再生課長〕経済産業省産業再生課長の三浦でございます。
見直しの話が出ましたけれども、具体的には産業競争力強化法という法律に基づいて産業革新機構は設置されております。この法律の附則の中で、今年度末までの間に経済、社会情勢の変化を勘案しつつ、INCJの施行の状況、産業革新機構のやっていることをきちんと見直す、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとするということが法律上、定められておりまして、この規定に従って今年度末までに一定の見直しを、レビューをしていく必要があるというのが現在の状況でございます。
先ほどの成功、失敗の話とも絡んでくると思いますけれども、要するにリスクが高いから民が出せないというような話はあると思うのですけれども、民間のお金が出せない理由というのは幾つかあると思っております。例えば、INCJがやっておりますベンチャーの領域を見ていると、アーリーの軽いIT系、こういうところの資金は相当厚くなってきていて、多分、民間のベンチャーキャピタルは出るようになっている。その一方で、バイオの創薬であるとか、IoT系のハードウエアの関係とか、こういうところはまだまだ、なかなかお金が出ないという議論がある。
これは考えていくと、多分、イグジットまでの期間が少し長い、民間ファンドの目線としてはおそらく3年、5年というイグジットで、全体のファンド自体も7年、10年で組んでいると思うのですけれども、その間尺にちょっと合わない。もしくは、たくさんのお金は集まりつつあるのですけれども、日本のVCはまだまだ規模が小さい。そうすると、1件当たり数十億円というオーダーの投資が必要になってくるような創薬には、なかなか規模の問題としてはまってこない。これも、それこそアメリカのセコイアみたいに大きいファンドが出てきて、だんだん解決していくのかもしれない。例えば、ウーバーに3,500億円をソブリン・ウエルス・ファンドが投資するようなことが起こっているのですけれども、そういう巨額なものというのは民ではなかなか最後まで埋まり切らないのかもしれない。
いずれにせよ、アジャスティッドリスクとリターンの関係は成立しつつも、民間のお金が出ない領域というのはあるのではないかと今、感じております。ただ、埋まっているところは当然、引いていくということが大事だと思いますので、そういう観点からしっかりとレビューを、今までやってきたことを、今後、どうしていくのかということを考えていきたいと思っております。
現時点では、申しわけありません、ここでご報告できるようなかちっとした結論は出ているわけではございませんけれども、一旦ということでご報告をさせていただきます。
〔池尾分科会長〕どうもありがとうございました。
追加で、どうしてもというご意見、ご質問等ございますか。それでは、時間の制約もありますので、十分に議論し切れなかった部分も残されていると思いますが、このあたりで質疑を終了させていただきたいと思います。追加で回答をいただきたいという事項等ございましたら、事務局にお伝えいただければ、後日、しかるべき対応をしていただくことができると思いますので、議論し残した点がありましたら後でご連絡ください。
それでは、官民ファンド及び関係省庁の担当部局の皆様、どうもありがとうございました。ご退室をお願いいたします。
次に、商工組合中央金庫、及び中小企業庁担当部局から調査結果等のご報告をいただきますので、入退室の間、ちょっとお待ちください。
(A-FIVE、CJ、JOIN、JICT及び関係省庁 退席)
((株)商工組合中央金庫 着席)
〔池尾分科会長〕それでは、本日、最後の3つ目のアジェンダになりますが、商工組合中央金庫の調査結果等につきまして、中小企業庁よりご報告をお願いしたいと思います。
よろしくお願いします。
〔中小企業庁吾郷事業環境部長〕中小企業庁事業環境部長をしております吾郷と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
今回、商工中金の危機対応業務に関します不正事案につきまして、その調査結果、それを踏まえた対応につきましてご説明させていただきます。
まずもって、本件につきましては、監督官庁でございます私ども中小企業庁といたしましても大変遺憾に存じておりますし、また、ここにいらっしゃる皆様方も含め、関係者の皆様方、ステークホルダーの皆様方に大きなご迷惑をおかけましたこと、大変申し訳なく存じております。
座ってご説明させていただきます。
資料3でございます。おめくりいただきまして、目次の次、これまでの経緯というところからご覧ください。この事件の発端は、平成28年10月24日、商工中金の鹿児島支店で、危機対応業務に関しまして貸付対象の要件確認をするわけでございますが、これについて、職員による取引先の試算表等の数値、日付の入替え、変更等の改ざんが判明したというところから始まってございます。
ここに書いてございます危機対応業務とは何かということでございますけれども、これは大規模な災害、あるいはリーマンショック、円高、デフレなどの危機事象に対応するための融資制度でございまして、国費で日本公庫の損失補償や利子補給などをつけた上で、影響を受ける中小企業に対して指定金融機関たる、この場合、商工中金が貸付けを行う仕組みでございます。
当然に、影響を受けた方にだけ融資を行うということでございますので、売上げが減っておるとか、そういった数字の要件がございます。これを、実際にはそういう厳しい状況にない中小企業に対しても、数字を少しいじって危機対応業務の対象という形にして融資を行っていたという状況でございます。
平成28年12月12日に、この問題を受けまして商工中金で第三者委員会を設置いたしまして、國廣正弁護士に委員長になっていただきまして、調査、原因究明、再発防止策、こうしたことをご依頼申し上げたところでございます。
結果、平成29年4月25日に第三者委員会の調査報告書が報告されております。ただ、危機対応業務、平成20年の創設以来22万件ほど融資をしておりますが、この第三者委員会の調査ではそのうち2万数千件のサンプル調査を行ったということで、それをベースに原因でありますとか、再発防止策をお出しいただいたということでございます。
これを受けまして、平成29年5月9日に、主務省でありますところの経済産業省、財務省、金融庁、農林水産省による業務改善命令を出させていただいております。これは、やはり22万件全部を調査しなければいけないだろうということで全件調査の実施、そして、当面、直ちに実施すべき再発防止策の策定、実行をお願いしたということでございます。
5月以降、商工中金においては、これを受けて全件調査をしていただきました。それから、私ども主務省庁としても検査を実施してきたわけでございます。
そして、10月25日でございますけれども、こうした主務省検査、それから商工中金の全件調査の結果報告を受けまして、2度目の業務改善命令を発出しております。それに対応して、商工中金からは、主務省に対しまして業務の改善計画を提出してもらっています。
業務改善命令の主な内容が下に書いてございますけれども、主に以下の4点でございます。1つは、役職員の責任の所在の明確化。2つ目は、監査機能の強化、組織運営の適正化を含む抜本的な再発防止策の策定・実行。3番目、民業補完の趣旨を踏まえた持続可能なビジネスモデルの策定・実行。そして、4番目、取締役会の強化や外部人材の登用を含む新たな経営管理体制の構築ということでございます。これが全体の流れでございます。
次のページをご覧ください。そのうち、全件調査の結果についてご説明を申し上げます。端書きに書いてございますけれども、22万件につきまして、外部の弁護士の方、あるいは会計士の方の参画も得まして、一定の客観性を担保しながら調査を実施したということでございます。
その調査の結果でございますけれども、1.不正があると判定した口座数でございますけれども、4,609口座、全体22万件に対応する比率でいいますと2.1%。営業店数97営業店、これは国内営業店100店舗でございますから、ほぼ全店舗でございます。融資実行額も、12兆4,000億円のうちの2.1%、2,646億円という形になっております。
そして、右側でございますけれども、こうした数字の改ざん等を補正いたしますと、一部で危機対応融資の要件を満たさなくなったものがあるわけでございまして、その数が3,255件でございました。当然、要件を満たさないわけでございますから、これに係る国費が関係しております利子補給のお金でありますとか、ツーステップ・ローンでありますとか、こういうものは当然、お返しいただくという措置をとっております。
次に、2.をご覧いただきますと、書類の添付漏れみたいなものを含めまして、黒とは言えないけれども、白とも言えないものがやはりたくさんございました。これに関して、灰色であって、かつ要件の充足が確認できなかった口座数として4,800件ございましたので、これについても国費に関係するものはお返しいただいたということでございます。予算でいいますと37億円、ツーステップ・ローンでいいますと20億円の返還を行っているということでございます。
それから、今回の全件調査に対応して、危機対応業務以外のものについても不正行為が行われていたことが判明しております。このうち、産業投資貸付を活用した貸付制度につきましても2件、不正行為が見つけられたということで、現在、さらに調査中でございます。
4ページをご覧ください。この全件調査、あるいは主務省検査を踏まえて、根本原因は何だったのかということを特定したものが4ページでございます。4つございます。1つは、危機対応融資の計画値、予算みたいものを支店に割り当てて、業績プレッシャーのもとで計画の達成を推進したということでございます。いわゆるノルマ化ということでございます。
2点目でございますけれども、危機対応融資、これは利子補給などがつくものですから、使いようによっては民間との競争上の優位にもなるわけでございまして、こういった使い方をしたということでございます。
3点目でございますけれども、危機対応融資の制度趣旨を逸脱した案件であっても、形式的、表面的に要件に当てはまれば使っていいではないかということを黙認して、それが結果としてコンプライアンス意識の低下につながっていたということであります。
4点目が、不適切な運用を防止するための内部統制、あるいはガバナンスが欠如していたということでございます。取締役会の問題でありますとか、そういったことが指摘されているところでございます。
次のページをご覧ください。これに対応して、商工中金が現段階で策定した抜本的再発防止策でございます。
1つ目は、公的金融と通常業務の峻別でございます。具体的な施策のところに書いてございますけれども、もともとノルマだったというところが一つの原因でございますので、危機対応業務等の公的融資の実績について業績評価の項目から除外しました。
そして、危機対応業務等の公的融資の専門部署を創設して、そこは別の部署で担当するようにしたなどの対応をしております。
それから、ガバナンス体制の見直しです。これは具体策のところを見ていただきますと、コンプライアンスの仕組みをさらに強化して、地域ごとに担当をつくり、第一線、第二線、第三線という監査の役割体制を明確にした。そして、外部弁護士を長とするコンプライアンス委員会を設けて、不正事案の対応状況をモニタリングする体制にしたものでございます。
その他、コンプライアンス意識の立て直しでございますとか、組織全体の働き方、意識改革などにも取り組んでいるところでございます。
6ページ、次のページでございます。関係者の処分でございます。ご覧いただきますとおり、役員の処分といたしまして、安達社長以下、ご覧のような処分をしております。あるいは、退任済みの役員についても自主返納の要請をしております。また、職員の処分につきましては、危機対応業務に関係する本部室職員で52名、その不正自体を実際にした行為者332名、その上司483名ということで、合計で813名を処分しております。
最後のページ、6でございます。今後につきましては、まず1つは再発防止策、それからガバナンスの徹底強化が十分であるかどうかということ。それから、商工中金による危機対応業務そのものの見直しも考えなければいけないということ。そして、危機対応業務以外の平時のビジネスモデル、商工中金としてどうあるべきかということを検討するために、経済産業大臣の指示に基づきまして検討会を設置することといたしました。今月の中旬くらいから議論を始めまして、年内を目途にこれについての一定の結論を出して、その先、新たな経営体制等をまた考えていくというステージに入っていこうと思います。
以上でございます。ありがとうございました。
〔池尾分科会長〕どうもありがとうございました。
それでは、ただいまのご報告につきまして、委員の皆様方からご意見、あるいはご質問等ございましたら、よろしくお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
土居委員。
〔土居委員〕ご説明、どうもありがとうございました。
資料の5ページ、抜本的再発防止策というところですけれども、まず1番目の公的金融と通常業務の峻別という話で、一番下に危機対応業務等の公的融資の専門部署の創出ということですけれども、危機対応業務というのは常時あるわけではないと思うのですが、危機対応業務にも専門部署をつくったということなのですか。そうではなくて、公的融資は通常業務と分けることにしたという意味なのでしょうか。それが一つお伺いしたいところです。
もう一つは、これからさらに川村座長がご議論されるのかもしれないですけれども、やはりこういう不祥事があると、内部統制をしっかりやる仕組みを確立していただくことが信頼回復の近道なのではないかと私は思っておりまして、特に他の金融機関よりも厳しい内部統制システムを組織の中につくることでもって再発防止を図る。内部通報など通報者の権利とか、立場を守るということをしながら、そういう不正が二度と起こらないようにとか、不正が起こっていたとすれば、しっかりそれを情報としてつかんで業務に生かしていく。そういう内部統制システムをより厳しいものとして確立したほうが、逆に今後の信頼回復につながるのではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
〔池尾分科会長〕では、お願いします。
〔中小企業庁吾郷事業環境部長〕まず、1点目の専門部署でございますけれども、危機対応業務以外にも公的金融ございますので、それを合わせた組織体ということでございます。ただ、危機対応業務も、いわゆる熊本地震のような災害もございますので、リーマンショックが去った後、全くなくなるかというと、そうでもございません。それが1点目でございます。
2点目は、内部通報制度などの内部統制のシステム強化のお話です。まさにおっしゃるとおりでございまして、今回の商工中金の改善策の中にも、当然、それは入っております。正直申し上げて、内部通報の制度も必ずしもうまく機能していなかったということもありまして、それも含めて対応が提出されておりますけれども、これもこれから私どものほうで、まさに検討会のご議論も踏まえて、これで十分なのかという議論が当然あると考えております。
〔池尾分科会長〕では、川村委員、お願いします。
〔川村委員〕この最後のページとは関係なく、財投の観点で申し上げたいところですが、今、ご報告を伺っていると、やはり従前から長くやってきたビジネスモデルというのでしょうか、ミッションというのでしょうか、実は非常にシュリンクしていたものが、たまさか危機対応ということで、いわば水位が上がってきて底が見えなかったところ、水位を維持しようとして矛盾が爆発したという現状と理解しているのですが、そうなると、従来のビジネスモデルの規模を前提にして財投を出すという話は、やはり根っこから考えなければいけないのではないか。
今後、どういう方向性が示され、どういう対応をされていくかということはあると思うのですけれども、少なくとも純財投の観点から見たときに、お金をどういうものに対して、どういう規模で出すかということについては、やはりかなり個々の今後の新しい、もちろんガバナンス、コンプライアンスというのはもう言わずもがなの一丁目一番地なのですが、同時に、ここでビジネスを問われているとなったら、それとの見合いでの財投のあり方というのは、やはりちょっと慎重に検討していかなければいけないかと思っています。
〔池尾分科会長〕どうもありがとうございました。
はい。
〔野村委員〕大変お伺いしにくいことですが、監督官庁としてさまざまな報告を受けていると思いますが、その中でおやっと思うようなことはなかったのかどうか。ヒヤリハットの法則などは事故、トラブルなどでよく言われますが、そのように危機を察知することも監督官庁の責任ではないかと思います。答えにくいかと思いますが、あえてお伺いします。
〔中小企業庁吾郷事業環境部長〕まさに私ども監督官庁として、当然、検査権限等も有しているわけでございます。そして、こういった事案が鹿児島支店で発覚する前にも幾つか兆候があって、私ども把握したものもあるのですが、調査はしたものの、それがこれだけ大きい広がりを持っているものだと認識できなかったということはございます。ですから、当然、結果として私どもも監督責任、一定程度あると考えております。
〔池尾分科会長〕では、冨田委員。
〔冨田委員〕3点ですけれども、1点目は、今、言われたアーリーウォーニングとの関係ですけれども、実は当分科会では、毎年、政策コスト分析というものを出していまして、今年も7月に審議して、私も出席していたのですけれども、その資料の中で政策金融公庫の危機対応業務のコストは約7,000億円だったと記憶しているのです。それがかなり増えてきていて、よく見ればこれがシグナルだったのかもしれないのだけれども、不正が全て原因とは、2%ほどなのでなかなか難しいのですけれども、やはりコスト分析というものをそういう観点からも活用するというか、もっと我々、真剣に議論しておけば、結果的にもっとアーリーウォーニングができたのではないかと思います。
2点目は、先ほどノルマ化の話は出てきましたけれども、何でそういうものが出てくるかということをお聞きしたいのです。私なりに察するに、中小企業対策は、例えば日本信用保証協会への繰入金は、金融危機、98年以降で言えば10兆円にもなるのです。これは補正予算で出るので、なかなか分かりにくい。それから、最近ですと、ものづくり補助金という補助率が非常に高いものについて、その自己資金の返還すらなかなかできていない状況である。これも去年の補正予算で出ていて、中小企業予算というのはわりあい出やすい感じがあるのではないか。そういうものと、機関というか、株式会社商工中金におけるノルマ化との関係はどういうように考えたらいいのだろうかという問題です。
それから、国費として返還すると言われたのは、既にもう返還していただけたのでしょうか。そういうことを確認したいということです。
以上、3点です。
〔池尾分科会長〕お願いできますか。
〔中小企業庁吾郷事業環境部長〕まず、7,000億円と関係でございますけれども、危機対応融資という物事の性質上、事業規模につきましては、私どもとしてはその時々の経済、金融情勢等を反映して、業況が悪化している中小企業の資金繰りに万全を期す観点から十分な措置を講じなければいけないということで、ある程度幅を見込んだ準備をするといった部分があったと思います。ただ、他方で、その後、政策ニーズが変化する中で、それをどうやって見直していくべきかという仕組みの問題は、当然、あると認識しております。
それから、中小企業政策予算はお金が出やすいのではないかみたいなお話もございましたけれども、私どもとしては、やはり中小企業のニーズに対応して必要な予算を措置していると考えておりますが、今回のケースで言いますと、これを公的金融の部分と、商工中金のいわゆる通常のプロパー金融の部分としっかりと区別ができずに、営業の武器に使ってしまったというところに課題があると考えております。
最後に、先ほどご説明いたしました要件を満たさなくなった分について、返還を既に行ったのかというお尋ねでした。私、先ほど過去形で言ってしまったような気もするのですが、今、返還をせんとしているところでございます。まだ全額は返還されておりません。
〔池尾分科会長〕江川委員。
〔江川委員〕一つコメントというか、お願いです。今回、商工中金でこのような問題が残念ながら出てきたということで、通常の業務をもう一度見直すべきではないかということで、明るみに出て、あり方を検討するという流れになったと思うのですけれども、理想的には、そういう社会情勢とか政策ニーズが長年の間、徐々に変化していく中で、やはり昔からあったいろいろな機関に関しても、そういったものをレビューして、通常のサイクルの中で問題点を早目に察知して、何か手当てをしていくということが望ましいかと思いますので、そういうことがどういうようにできるということも含めて考えていただきたいということ。
それから、今、中小企業対応のお話が少し話題になって、私も常々よく分からないと思っていたのは、例えばアメリカとかでは、中小公庫みたいな機関が州とか、町のレベルでも結構ベンチャー支援みたいなことをやっていて、いわゆるベンチャー育成みたいなことと中小企業対策の境目があまりないような感じがするのです。日本では、中小対策というのはずっとあって、でも、それではイノベーションが起きてこないので、ベンチャーをやりましょうといって、実は私、今朝も経済産業省のリスクマネーの懇談会に出ていたのですけれども、そういう話が進んでいて、この辺の関係がどうなっているのかと思います。
ですから、1点目の見直しを常時していかなくてはいけないということとも重なるのですけれども、今回、ある意味いい機会でもあると思うので、既存の機関との棲み分けとか、ベンチャー支援とか、今の時代のイノベーション、日本の成長を支えていくためのエンジンをつくり出すためにどうあるべきかということも視野に入れて、検討していただければと思います。
〔池尾分科会長〕要望というか、課題提示ということで、よろしく受けとめていただきたいと思います。
ほかに。そろそろよろしいでしょうか。この件に関しましても、後で質問し残したというようなことがございましたら、事務局にお伝えいただければ、しかるべき対応をさせていただくことになっております。そういう意味で、ここでの質疑は以上で終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
本日の議事は、以上といたしたいと思います。繰り返しになりますが、議論いただいた内容のほか、追加のご意見やご質問等がございましたら事務局までお寄せください。
本日の議事内容につきましては、いつもとおりですが、この後、事務局より記者レクを行います。議事録につきましては、委員の皆様方のご了解をいただいた後に財務省ホームページに掲載いたします。また、今回は、冨山委員の意見書が力作で、冨山委員の意見書につきましても、全ての内容をここで紹介し切れませんでしたので、ご本人に確認の上、ホームページに掲載するということにさせていただきたいと思います。
本日は、ご多用の中ご参集いただきまして、また熱心にご議論いただきまして、まことにありがとうございました。これで散会とさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。