財政投融資制度の抜本的な改革について


社会・経済情勢の変化等に対応し、財政投融資も抜本的な改革を進め 新たな機能にふさわしい仕組みを構築しました。


 平成12年5月24日に「資金運用部資金法等の一部を改正する法律」(平成12年法律99号)が成立しました。
 これにより、わが国の財政投融資の仕組みは、郵便貯金や年金積立金の預託義務が廃止され、特殊法人等の施策に真に必要な資金を市場から調達するようになるなど、そのシステムが根幹から改められ、新しい時代によりマッチしたものとなります。
 この法律は、平成13年4月1日からの施行となっており、平成13年度の財政投融資計画から、新法に基づき編成が行われます。

 

財政投融資改革の経緯

 財政投融資は、財政政策の一環として、有償資金を活用し、国の施策を効率的かつ効果的に実施する仕組みであり、その基本的役割は、将来においても重要と考えられます。しかし、一方で経済全体の成熟化、市場メカニズムの整備等に伴い、政府の役割の見直しが求められる中で、財政投融資をとりまく環境も大きく変化してきているのも事実です。
 このような中で、従来の仕組みについては、行政改革等の議論において、
(1) 郵便貯金、年金積立金が増加する中、これらの資金の資金運用部への預託義務が特殊法人等の肥大化、非効率を招いたのではないか
(2) 金利面で年金等の預託者側の財務状況への配慮により、調達コスト高の要因となっているのではないか
(3) 国からの補助金等の政策コストを十分に分析しないままに融資するという手法により、後年度の国民負担の増大を招いたのではないか
等の問題点が指摘されました。
 これらの問題に対処するにあたっては、郵便貯金、年金積立金の全額が、資金運用部に預託されるという従来の財政投融資のシステムを改め、「出口」の特殊法人等が政策を遂行する上で真に必要となる資金を、市場から調達する仕組みに変える等の抜本的な改革を実施する必要があると考えられました。
 具体的な改革の方向を巡って、平成9年11月以来資金運用審議会懇談会、行政改革会議、など多方面より検討・報告がなされました。これらを踏まえ、さらに有識者・関係者の意見もお聞きしながら、財政投融資改革案の作成に向け、政府部内で検討を続け、平成11年12月9日に政府(大蔵省)において、財政投融資改革の骨格を「財政投融資制度の抜本的改革案(骨子)」としてとりまとめました。
 また、平成11年度秋には財政制度面からの問題点を専門的に議論するため、財政制度審議会法制部会において、財政投融資制度の改革に関する法制上の主な改正点等について御審議頂きました。
 なお、財政投融資制度の改革の実施に伴う経過措置の内容については、平成11年12月に郵政省、厚生省との間でその大枠が合意されました。
 その後、法案作成作業が進められ、「資金運用部資金法等の一部を改正する法律案」が平成12年3月7日に閣議決定の上、国会に提出され、5月24日に成立しました。この法律は平成13年4月1日からの施行となっており、平成13年度の財政投融資計画から新しい制度の下で編成が行われることになります。

明日見らいふ南大沢(東京都八王子市) Image
明日見らいふ南大沢(東京都八王子市)

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財政投融資制度改革のポイント

 郵便貯金・年金積立金の全額が資金運用部に預託される制度から、特殊法人等の施策に真に必要な資金だけを市場から調達する仕組みへと抜本的な転換が図られます。これにより、財政投融資制度の市場原理との調和が図られるとともに、特殊法人等の改革・効率化の促進にも寄与することとなります。
 財政投融資の対象分野・事業については、政策コスト分析などの適切な活用を図り、民業補完、償還確実性等の観点から不断の見直しを行います。

 

郵便貯金・年金積立金の預託義務を廃止し自主運用へ

 郵便貯金・年金積立金については、資金運用部に対する全額預託義務を廃止し、平成13年4月以降は、金融市場を通じて自主運用を行います。同じく簡保積立金につきましても、財投機関等に対する融資を廃止し、郵便貯金と同じく平成13年4月以降は、金融市場を通じ自主運用を行います。自主運用に際しては、資金の公的性格及びその規模に鑑み、あらゆる角度から安全確実かつ効率的な仕組みとし、ルール化して厳正に行います。
 ただし、財政力の弱い地方公共団体の資金確保のため、自主運用開始後の郵便貯金、簡保積立金は、地方債計画・財政投融資計画の枠内で、地方公共団体に対しては例外的に予算により国会の議決を受けた貸付枠の中で、市場原理に則して政府が定める統一的貸付条件等によって簡素な手続きにより直接融資することが認められます。

 

市場原理にのっとった資金調達

 特殊法人等は、財投機関債の公募発行により市場の評価を受けることを通じ、業務の運営効率化へのインセンティブが高まります。このため、特殊法人等は、まずその資金を原則として自己調達することを検討し、各機関は財投機関債の発行に向けた最大限の努力を行うこととします。
 ただし、財投機関債による資金調達では必要な資金需要を満たすことが困難な機関については、(1)その業務が民業補完のために実際に必要なものか、(2)将来の国民負担を推計した政策コストの分析、(3)償還確実性、等を精査して、当該法人等の業務について、ゼロベースからの徹底した見直しを行うこととします。その上で、政策に必要と思われる場合、財投債によって調達した資金の貸付けを受けることになります。
 財投債は、財政規律を確保するため、一般会計と区分経理した新しい特別会計において発行し、発行限度額について国会の議決を受けます。他方、発行・流通の仕組みは、現行の国債・地方債証券等における一体発行の例や諸外国の実例、債券市場の効率性等に鑑み、現行の国債と一体のものとして取り扱います。
 なお、政府保証債については、財政規律の確保等の観点から、直ちに政府保証なしで財投機関債を発行することが困難な機関等について、個別に厳格な審査を経た上で限定的に発行を認めることとしています。

 

市場原理との調和

 財政投融資改革後は、調達金利についても、市場に連動した条件で行うこととし、これまでのような預託者の事業運営に対する配慮としての金利上乗せを廃止します。また、貸付金利については、基本的に、貸付期間に応じ、国債の市場金利を基準として償還形態も反映して設定し、10年ごとの金利見直し制も選択可能とします。
 また、資産・負債管理(ALM)の充実を図ることとし、発行される財投債と融資のタイミングのずれを円滑に調整するため、融通証券を発行し、その発行限度額について国会の議決を受けます。
 郵便貯金及び年金積立金の預託の廃止に当たっては、中央省庁等改革基本法等を踏まえ、既往の貸付けの継続にかかわる資金繰りを確保するとともに、市場に与える影響に十分配慮し、激変緩和のための適切な経過措置を講ずることとしております。

 

政策コスト分析の充実やディスクロージャー等の推進

 財政投融資の対象分野・事業の見直しに役立てるため、財政投融資対象事業の政策コストを定量的に把握し、公表し、これにより、特殊法人等の業務・財務の改善、財政規律の向上を図ります。今後とも分析対象の拡充、分析手法の改善を図ります。
 また、各特殊法人等のディスクロージャーの充実を図るとともに、財政投融資全体のディスクロージャーの拡充を推進します。

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財政投融資制度の抜本的改革案(骨子) 
平成11年12月9日大蔵省とりまとめ
1. 基本的考え方

 

●郵便貯金・年金積立金の全額が資金運用部に預託される制度から、特殊法人等の施策に真に必要な資金だけを市場から調達する仕組みへと抜本的な転換を図る。これにより、財政投融資制度の市場原理との調和が図られるとともに、特殊法人等の改革・効率化の促進にも寄与する。
●財政投融資の対象分野・事業については、政策コスト分析などの適切な活用を図り、民業補完、償還確実性等の観点から不断の見直しを行う。


2. 改革の骨子

(1) 資金調達
(1) 郵便貯金・年金積立金の預託の廃止(自主運用)
●郵便貯金・年金積立金について、資金運用部に対する全額預託義務を廃止し、平成13年(2001年)4月以降は、金融市場を通じ自主運用を行う。簡保積立金も、財投機関等に対する融資を廃止し、郵便貯金と同じく平成13年(2001年)4月以降は、金融市場を通じ自主運用を行う。
・ただし、財政力の弱い地方公共団体の資金確保のため、自主運用開始後の郵便貯金、簡保積立金は、地方債計画・財政投融資計画の枠内で、地方公共団体に対しては例外的に直接融資を行う。その際、個別地方公共団体との相対交渉ではなく、予算により国会の議決を受けた貸付枠の中で、市場原理に則して政府が定める統一的貸付条件等によって簡素な手続きにより融資する仕組みとする。
●自主運用に際しては、資金の公的性格及びその規模に鑑み、あらゆる角度から安全確実かつ効率的な仕組みを検討し、ルール化して厳正に行う。
(2) 財投機関債
●特殊法人等については、財投機関債の公募発行により市場の評価にさらされることを通じ、運営効率化へのインセンティブが高まる。このため、特殊法人等は、まず、その資金を原則として自己調達することを検討し、各機関は財投機関債の発行に向けた最大限の努力を行う。
(3) 政府保証債
●政府保証債については、財政規律の確保等の観点から、直ちに政府保証なしで財投機関債を発行することが困難な機関等について、個別に厳格な審査を経た上で限定的に発行を認める。
(4) 財投債
●上記(2)(3) のいずれによっても資金調達が困難であったり、不利な条件を強いられる重要施策実施機関や超長期資金を必要とする事業等について、国の信用で一括して市場原理に則した財投債によって調達した資金の貸付けを受ける方式を認める。
(5) 財投債の財政規律の確保等
●財投債は、財政規律を確保するため、一般会計と区分経理した新しい特別会計において発行し、発行限度額について国会の議決を受ける。貸付債権からの回収金等により償還される仕組みを備えていることから、将来の租税を償還財源とする現行の国債における定率繰入れ等は適用しないこととする。
●発行・流通の仕組みについては、現行の国債・地方債証券等における一体発行の例や諸外国の実例、債券市場の効率性等に鑑み、現行の国債と一体のものとして取り扱う。

(2) 財政投融資の対象分野・事業の見直し
●民業補完の趣旨を徹底し、償還確実性を精査する等不断の見直しを行い、投融資の肥大化を抑制する。
●見直しに際しては、政策コスト分析を適切に活用する。

(3) 市場原理との調和の推進
●資金調達については、市場に連動した条件で行うこととし、これまでのような預託者の事業運営に対する配慮としての金利上乗せを廃止する。
●貸付金利については、基本的に、貸付期間に応じ、国債の市場金利を基準として設定する。また、10年ごとの金利見直し制も選択可能とする。
●資産・負債管理(ALM)の充実を図る。
●平準的に発行される財投債と融資のタイミングのずれを円滑に調整するため、融通証券を発行し、発行限度額について国会の議決を受ける。

(4) 国会の議決等
●財政投融資は、財政政策の一環として、国が行う資源配分機能を有する長期の投融資活動であることから、改革後も予算により国会の議決を受ける。
●財政投融資の全体像を示すため、分かりやすく投資、融資、保証に区分の上、統一性・一覧性をもった財政投融資計画を作成し、国会の審議充実に資するため、国会に提出する。その際、財投機関債についても、財投機関の自己資金の内訳として明示する。
●地方公共団体に対する貸付けは、政策的な資源配分機能を有するため、財政投融資計画において、郵便貯金・簡保積立金による貸付けを含めその総額を統一性・一覧性をもった形で表示する。

(5) 経過措置
●郵便貯金及び年金積立金の預託の廃止に当たっては、中央省庁等改革基本法等を踏まえ、既往の貸付けの継続にかかわる資金繰りを確保するとともに、市場に与える影響に十分配慮し、激変緩和のための適切な経過措置を講ずる。

(6) 政策コスト分析の充実等
●将来の国民負担に関するディスクロージャーの充実を図り、財政の健全性の確保に資するとともに、財政投融資の対象分野・事業の見直しに役立てるため、財政投融資対象事業の政策コストを定量的に把握し、公表する。
●政策コスト分析を通じ、特殊法人等の業務・財務の改善、財政規律の向上を図る。
●今後とも分析対象の拡充、分析手法の改善を図ることにより、政策コスト分析の一層の充実に継続的に取り組む。

(7) 特殊法人等・財政投融資全体のディスクロージャー等の推進
●各特殊法人等のディスクロージャーの充実を図るとともに、財政投融資全体のディスクロージャーの拡充を推進する。

(8) 「資金運用部」の廃止等
●「資金運用部」を廃止し、新しい財政投融資制度にふさわしい仕組みを構築する。その際、発生主義への移行など経理基準の改善等を行い、財務の透明性、明瞭性の一層の強化を図る。

(9) 実施時期
●中央省庁等改革基本法等に基づき、平成13年(2001年)4月より実施する。



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