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2.証券行政

 証券会社を取り巻く環境をみると、証券市場は昭和59年から加速された証券市場の自由化・国際化の一層の進展に伴い大きく発展し、国民経済のなかで大きな役割を果たすとともに、国際的にもニューヨーク、ロンドンと並んで世界を代表する市場となった。しかしながら、一方で、平成3年に発覚した損失補てん問題や平成9年に発覚した総会屋グループへの利益供与問題などのいわゆる証券不祥事は大きな社会的論議を巻き起こし、我が国証券市場に対する内外の信頼を大きく損なう結果となった。

 証券不祥事等の再発防止策等の策定、また、平成8年から取り組みが始まった抜本的証券市場改革の検討やさらなる規制緩和、さらには金融システム改革(いわゆる「日本版ビッグバン」)の取り組みに伴う金融システム改革法の施行等、証券行政面においても多くの制度改正が実施されてきている。

 最近の制度改正等の主なものは次のとおりである。

(1)証券取引に係る内部者取引の規制

 有価証券の発行会社の役員等は、投資者の投資判断に影響を及ぼすべき情報について、その発生に自ら関与し、又は容易に接近しうる特別な立場にあるが、これらの者が、そのような情報が未公表のものであることを知りながら有価証券の取引を行ったとすれば、公表されなければその情報を知り得ない一般の投資者と比べて著しく有利となり、一般投資者にとって極めて不公平な結果となる。このような取引は、一般にインサイダー取引と呼ばれているが、こうした取引が放置されれば、証券市場に対する信頼が損なわれることとなる。このため、昭和63年5月に証券取引法を改正し、インサイダー取引規制のための法整備を行い、有価証券の発行会社の役員等がその職務等により得たインサイダー情報を利用して、その公開前に当該有価証券の取引を行うことを禁止する措置がとられた。この改正により、財務局においては上場会社等の役員及び主要株主が自己株式を売買した場合に、その売買に関する報告書を受理する業務が新たな業務として加わった。

(2)自己資本規制の導入

 従来、証券会社のリスク管理のため、株式、先物取引等の個別商品ごとに純財産額に対する保有割合の上限を定めるといった財務・業務規制が行われてきた。しかし、証券市場の急速な拡大や先物・オプション取引等の新商品の増加等により証券市場を取り巻く環境は大きく変化を遂げ、オフ・バランス取引も含めた証券会社のリスクを適切に管理する必要性が高まってきたことや、国際的にも昭和62年のブラック・マンデーの経験を経て証券会社の自己資本規制の必要性があらためて認識されたことなどから、平成2年4月に通達を発出し、証券会社の総体的なリスク管理を図るため新たに自己資本規制が導入された。

 自己資本規制比率は、市況の急激な変動により収入の減少や保有資産の価値の下落に直面した場合においても、証券会社の財務の健全性が保たれ、投資家保護に万全を期することができるようにすることを目的とし、具体的には、証券会社のリスクを総体的に把握し、固定化されていない自己資本額のリスク相当額合計に対する比率を管理することによって、各種のリスクが顕在化した際においても、固定化されていない自己資本により対応し得るようにしたものである。財務局においても、自己資本規制比率に関する業務として、月例報告等によりその推移を監視し、必要があれば証券会社に対して監督上必要な措置を講じる業務が加わった。

 証券会社に対する財務規制の中核として位置づけられている重要な規制である自己資本規制比率はその後、平成3年の一連の証券会社の不祥事への対応策のひとつとして、証券取引の公正の取引のため、ルールの明確化を図ることが求められたことや、平成4年1月に報告された証券取引審議会報告「証券市場における適正な競争の促進等について」においても、通達等は可能な限り法令化ないしは自主規制団体の規則への移行等を行うことが提言されたことを受けて、その基本的な考え方が証券取引法に明記され、自己資本規制比率の算定方法などの詳細については「証券会社の自己資本規制に関する省令」で定められた。

 さらに、平成10年12月の金融システム改革により、自己資本規制比率の早期是正措置の指標としての位置づけが証券取引法上明確となり、証券会社には四半期ごとの同比率の公表が義務づけられた。こうした措置を踏まえ、自己資本規制比率の算定方法がより適正かつ厳格なものとなるよう、平成11年6月に省令の全面改正を行った。

(3)株券等の大量保有状況の開示

 わが国証券市場において、経営参加、高値による売抜け・肩代わり等各種の目的を持って、公開会社の株式等を大量に買い集める事例が増加し、このような買集めや肩代わり等に伴い、株価の乱高下が生ずることが多く、これらに関する十分な市場情報を有していない一般投資者に不測の損害を与えかねないという問題が生じてきた。このため、平成元年2月以降、証券取引審議会において株式等のいわゆる買占めの問題が検討され、同年5月に「株式等の大量の保有状況に関する情報の開示制度の在り方について」の提言がなされた。これを受けて、わが国証券市場の公正性・透明性を高め、投資者保護を一層徹底するため、平成2年6月に証券取引法が改正され、株券等の大量保有状況に関する開示制度(いわゆる5パーセントルール)が導入された。財務局においても、大量保有報告書の受理および公衆の縦覧に関する業務が加わった。

(4)損失補てんの禁止と証券取引の事故確認

 平成3年6月に大手証券会社の損失補てんが報道されて以来、証券会社各社による多額の損失補てんや暴力団との関わり等の不祥事が次々に明るみに出た。とりわけ特定顧客に対する損失補てんは、免許業者たる証券会社としての規範に著しく反するものであり、内外の投資家の証券市場の公正性、健全性に対する信頼感を大きく損なったばかりでなく、特定の顧客だけが有利な取扱いを受けたのではないかという不公平感を広く国民の間にもたらした。このようなことから、平成3年10月に証券取引法が改正され、市場の公正性と健全性に対する投資家の信頼を確保するため、@有価証券の売買等について損失を補償すること、又はあらかじめ定めた額の利益が生じないこととなった場合にはこれを補てんし又は補足するため財産上の利益を提供する旨を事前に申込み又は約束する行為、A既に生じた損失又は利益に追加することを申込み又は約束する行為、Bあるいは実際に提供する行為、を禁止する措置が講じられた。

 しかし、「証券事故」によって、顧客に生じた損失を証券会社が賠償する行為は、形式的には補てん行為に該当することとなるが、こうした証券事故による損失は本来証券会社が負担すべきものであり、これを補てん行為として禁止することは合理性がなく、一方、証券事故が損失補てんの脱法行為として利用されることを防ぐ必要があることも考慮され、改正証券取引法では、大蔵大臣が事故に起因する損失であることを確認した場合については、損失補てん禁止の対象から除外することとされた。この確認事務については、確認申請にかかる事故の発生した証券会社の営業店の所在地を管轄する財務局長に委任されている。

(5)金融システム改革

 証券分野の諸規制については、従来から利用者の負担軽減や新商品の出現等の環境の変化への対応といった観点から随時見直しが行われてきたが、諸外国で抜本的な市場改革が進展するなか、わが国市場は世界の最先端からの立ち遅れが目立つようになってきた。こうした状況を踏まえ、平成8年6月には証券取引審議会総合部会が設置され、証券市場改革に向けた本格的な検討が開始され、同年11月には橋本総理大臣から、我が国金融市場がニューヨーク、ロンドンと並ぶ国際的市場として復権するよう、フリー、フェア、グローバルの3原則に則り、金融システム改革(日本版ビッグバン)に全力を挙げて取り組むよう大蔵大臣等に対して指示されるなど、「市場原理が働く自由な市場」の構築に向けた取組みが進められた。

 平成9年6月にとりまとめられた証券取引審議会総合部会の報告書「証券市場の総合的改革 〜豊かで多様な21世紀の実現のために〜 」では、@投資家・資金調達者の選択肢の拡大、A仲介者機能の強化、B利用しやすい市場の整備、C信頼できる公正・透明な取引ルールの整備及び仲介者の健全性確保、という観点から、改革の全般的な方向性が示された。これに従って、まず銀行等の投資信託委託会社の店舗貸しによる直接販売の導入等、法律改正を要しない措置が実行に移され、次いで法改正が必要なものについては、平成10年3月、第142回通常国会に金融システム改革を一体的に進めるうえで中核をなす関係法律24本の改正を一括化した「金融システム改革のための関係法律の整備等に関する法律及び関連3法案(金融システム改革4法)」が提出され、同年6月5日に成立した。施行は、株式売買委託手数料の完全自由化等一部を除き、同年12月1日から施行されることとなった。

平成10年6月の証券取引法改正の主な改正内容

@資産運用手段の充実

金融機関が証券取引法上の登録を受けて、本体での証券投資信託の窓口販売ができるようになった。

 有価証券店頭デリバティブ取引を定義して、同取引に係る業務を営むことが証券業務として加えられた。また、金融機関も一定の範囲で営業として取り扱うことができるようになった。

 欧米で広く利用されているさまざまな投資信託の商品を、我が国投資家が利用できるように、証券投資法人(いわゆる会社型投信)及び私募投信が導入された。

A活力ある仲介活動を通じた魅力あるサービスの提供

 証券業について参入を促進するため、従来の免許制が登録制に改められた。ただし、有価証券の元引受け業務、有価証券店頭デリバティブ取引業務及び私設取引システムに係る業務については認可が必要とされた。この改正と同時に、従来、金融監督庁が監理していた証券会社、都銀等本庁主担の認可金融機関及び外国証券会社の登録事務は、本店等が所在する財務局において行うこととなった。


証券会社の免許制

 証券業については昭和23年証券取引法制定以降、いわゆる「登録制」がとられていたが、その後、昭和40年5月の証券取引法の一部改正により、同年10月1日以降証券業に「免許制」が採用されることとなった(従来登録を受けているものについては経過的に昭和43年3月31日まで、登録業者のままで営業することが認められたので、免許制への全面移行は同年4月1日であった)。爾来、平成10年12月1日の「登録制」移行までの30有余年にわたって免許制が続いた。


 証券会社の専業業務を見直し、投資顧問業や証券投資信託委託業等の法令で幅広く明記した業務については届出で、それ以外についても承認を受ければ行えるようになった。承認についても、公益に反し、又はリスクの算定が困難であるため、投資者保護の観点から支障がある場合を除き拒否できないこととなった。

B特色ある多様な市場システムの整備

 投資家がニーズに合った様々な形態の取引を行えるよう、取引所集中義務が撤廃された。

 投資家が、米国等において普及している電子的な取引サービスである私設取引システム(PTS)を我が国でも利用できるようにするため、証券会社にPTSの開設・運営が認められた。

C利用者が安心して取引を行うための枠組の構築

 証券会社の破綻の際の顧客資産の保護のため、顧客資産の分別管理が法律上の義務となった。

 また、任意の財団法人であった寄託証券補償基金にかわる新たな投資者保護制度として証券取引法上の認可法人として投資者保護基金が規定され、証券会社の加入が義務づけられた。当該規定により、平成10年12月に日本投資者保護基金及び証券投資者保護基金が発足した。

 従来は省令の規定事項であった証券会社の自己資本規制比率の早期警戒水準を証券取引法上明確にするとともに、同水準の維持ならびに自己資本規制比率の四半期ごとの公表が義務づけられた。

 新たに証券会社の業務及び財産の状況について公衆縦覧が義務づけられた。

(6)行政機構改革等

@証券取引等監視委員会の設置

 平成3年のいわゆる証券・金融不祥事を契機に、証券・金融行政のあり方、特に証券会社、証券市場に対する検査・監視体制のあり方について種々の議論が行われた。これらの議論を踏まえ、証券取引及び金融先物取引の公正の確保を図り、証券市場及び金融先物市場に対する投資者の信頼を保持するため、平成4年5月には、証券取引等監視委員会の設置、証券業協会等の自主機関の機能強化等の諸施策を内容とする「証券取引等の公正を確保ための証券取引法の一部を改正する法律」が成立、同年7月20日、行政部門から独立した新たな検査・監視機関として、証券取引等監視委員会(国家行政組織法第8条)が設置された。財務局でも同委員会からの事務委任を受け、証券取引等監視官が設置された。 (財務局における証券取引等監視業務の詳細については「第4章第1節 証券取引等監視事務」を参照されたい。)

A金融行政機構改革

 住専問題をはじめとする金融機関の不良債権問題等を契機として金融行政に対する様々な批判が生じたこと等にかんがみ、金融行政機構改革の具現化が検討され、平成9年6月には「金融監督庁設置法」及び「金融監督庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律」が成立した。改革の柱として、 平成10年6月22日、民間金融機関等に対する検査・監督事務を担当する金融監督庁が総理府の外局として設置され、地方における民間金融機関等の検査・監督については財務局長は金融監督庁長官から権限の一部の委任を受けて、その直接の指揮監督の下にこれらの権限を行使することとなった。この一環で財務局でも理財部に「検査監理官」「金融監督官」を設置し、金融監督庁長官の指揮命令系統を明確にするとともに、証券会社の監督等を所掌する「証券監督課」が設置されたほか、閲覧業務の財務局への移管等業務分掌の見直しをはじめとして所要の改正が実施された。

 なお、明確なルールに基づく透明かつ公正な金融行政への転換を図るために、平成10年6月証券関係の基本通達がすべて廃止され、省令・告示化するなど全面的な見直しを行い、今後の行政運営において必要なものについては行政担当官向けの「事務ガイドライン」が作成・公表されている。

(7)その他

@証券会社の破綻

 国内一般証券会社の廃業、破綻は、高木貞証券(昭和55年に免許取り消し)以来なかったが、平成9年以降、株式市況の低迷による収益の低下、自由化・国際化の進展に伴う競争激化による経営不安等から、廃業・会社解散等を決定し、証券業から撤退する会社が出始め、平成9年5月から平成11年3月末までの間で27社(国内一般証券21社、外国証券6社) が退出した。

主な証券会社の退出事例は以下の通り。

山一証券の破綻

 4大証券の1社であり 100年の歴史をもつ山一証券は、平成9年11月24日、いわゆる飛ばし取引により、 2,600億円を超える簿外債務を抱えることとなったため、営業の継続を断念し自主廃業に向けた営業休止を決議した。これを受けて大蔵省は、同日、顧客資産の保護等を図るための所要の命令を発出した。
山一証券は、営業休止後日銀特融を受けながら、顧客資産の返還をはじめとする業務・財産の整理縮小を行い、顧客資産の返還が一通り終了した平成11年6月1日に破産申立を行ない、翌2日に破産宣告を受けた。なお、山一証券は同日最終的な債務超過額が1,602億円となる見込みであることを発表した。

その他法的整理を選択した証券会社
(イ)

 三洋証券は、平成9年11月3日、関連会社4社の法的整理に伴い、これらの会社に対する与信(貸付金や保証予約、貸付有価証券等) に損失が発生、債務超過となることが見込まれたため経営の続行は困難と判断し、東京地裁に会社更生法の適用を申請した。証券会社の法的整理は初のケースだったが、東京地裁は、顧客資産の返還やそれを円滑に行うための資金繰り資金の導入を例外とする財産保全命令の申立てを認めたため、一般顧客の資産については保全処分の例外として返還ができることとなり、また、顧客資産の損失分については寄託証券補償基金は規約で定められた補償限度額(1社当たり20億円)について適用しないこととしたことから、顧客資産の全額保護が図られた。

 なお、平成10年6月24日、会社再建は困難と判断し清算に向けて準備を進めていく旨公表し、支店の閉鎖、人員整理等を行った。現状においても保全管理人の下で顧客資産の返還等、財産の整理が進められている。

(ロ)

 丸荘証券は、平成9年12月23日、外債投資の失敗等から債務超過となり、東京地裁に破産の申立てを行い、同時に、東京地裁から顧客資産の返還を例外とする財産の保全処分の命令が出された。また、寄託証券補償基金は補償限度額を適用しないこととしたため、顧客資産の全額保護が図られた。証券会社が破産法を適用して会社整理する初めてのケースとなった。なお、同社は平成10年9月30日に破産宣告がなされた。

(ハ)

 その後、平成10年8月20日に中村証券、平成10年10月21日に山吉証券が自己破産の申立てを行っている。

 その他の証券会社

 小川証券は、平成9年5月23日、顧客との間で発生した受渡し不能事故の発生等による財産状況の悪化を理由に、営業休止、証券業の廃止及び会社解散を決定した。国内一般証券会社としては、昭和55年の高木貞証券以来初めての証券業界からの退出となった。その後、越後証券等多くの証券会社が赤字体質から脱却できず経営の先行き不安等から自主廃業を行っている。

A証券業への新規参入

 平成9年8月19日に未公開株を専門に取り扱うディー・ブレイン証券に証券業の免許が与えられた。証券業への新規参入については、平成5年3月に免許基準を公表していたところであるが、外国証券会社と金融機関の証券子会社以外の国内一般証券会社については、昭和43年の免許制採用以来初めての免許付与となった。以降、金融システム改革法の施行により登録制に移行する前の10年11月末日までに一般証券会社15社に免許が与えられた。

 平成11年3月末時点の証券会社数は、国内証券会社 231社、外国証券会社57社、合計で288社となっている。


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