私は広島県の呉市で生まれ育ちました。両親は市内で「巴屋」という小さな仕出し屋を経営していました。店で売っている「アイスモナカ」は、昔から近隣の人たちから愛されている人気商品です。
私の父は、家業を継ぐ前―終戦直後のことです―、呉税務署に奉職して いました。昔のことをあまり語らない父が、幼い私(たぶん5〜6歳の頃)に語ってくれた話があります。
戦災で両親を亡くされた娘さんとおばあさんの二人暮らしの家があり、税金が払えず、家財を差し押さえられました。おばあさんは税務署に直訴にこられ、対応にあたった父が、話を聞き、そのままおばあさんと一緒に家に行き、貼られた赤紙を全部破り、納税猶予の処分まで一人で(勝手に)やってしまったそうです。父は上司から大目玉を食らい、昇給を2回飛ばされたと笑っていました。おばあさんは、父に向って手を合わせて拝んでいたそうです。
この話を聞いた時、幼心に父のことを「エライ!」と思い、「困っている人を助ける」父のような人間になりたいと素直に思ったことを憶えています。
父がやったことは、役人としては決して褒められた行為ではありませんが、気持ちと姿勢は「公」に仕える者として持っておかなければならない大切なものだと思っています。これからも心に刻みつけていきたいと考えています。
さて、12月9日(正確には10日未明)、24年度税制改正大綱が取りまと められました。決定までの過程の中で、減税を要望される皆様からは、ペ イ・アズ・ユー・ゴー原則ばかり唱える「ロボットみたい」だと揶揄され、時には「悪魔だ」「裏切りだ」とののしられながらも、重点項目につき、財務省として飲めるところは(ぎりぎりのところで)全部飲んでまとめた税制改正だったと思っています。それも内容をブラッシュアップさせていただきながら。良い改正ができたと内心ほっとしています。
次は、これから年末にかけて、「社会保障と税の一体改革」の議論が本 格化してまいります。6月にまとめた「成案」をさらに具体化した「素案」を年末までに取りまとめます。「一体改革」は、社会保障制度を持続可能なものとすることと合わせ、財政再建の道筋を示すものでもあると考えます。
今ヨーロッパで起きている「債務危機問題」は、決して対岸の火事では ありません。誰がどう見たって(国と地方が抱える長期債務残高の対GD P比はわが国が図抜けて高いという点で)わが国の財政状況はどの国より も厳しいのだから。国民生活を危機に陥れるかもしれない可能性を排除す ることが、政治に求められる最も必要な「責任」だと思います。必ず一体 改革を実行しなければならないと決意を固めています。「国民は賢明であ る」が、師・松下幸之助翁が教え続けた言葉でした。「説明」が大事なの だと思います。一体改革実行に向けて、死に物狂いで説明に当たってまい ります。読者の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。
ここ数日冷え込みが強くなってきました。読者の皆様におかれましては お風邪など召されぬようくれぐれもご自愛ください。
財務大臣政務官 三谷 光男
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2 税制をめぐる最近の動き
(1)平成23年度税制改正について
平成23年度税制改正法案(「所得税法等の一部を改正する法律案」)
については、今年1月25日に国会に提出した後、3度にわたる法案の
修正を経て、11月30日に可決・成立し、12月2日に公布・施行されま
した。
この間の経過をもう少し詳細にご説明しますと、まず、6月10日に
法案のうち政策税制措置の拡充、期限切れ租税特別措置の延長等に関
する部分を法案から切り離し、法案名を「経済社会の構造の変化に対
応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律案」
に修正いたしました。(なお、政策税制措置の拡充、期限切れ租税特
別措置の延長等に関する部分の法案については、6月22日に可決・成
立しております。)
その後、10月28日には、法案に関する与野党協議の状況を踏まえ
て、政府提案の形で、法案のうち納税者権利憲章の策定等に関する部
分が削除され、また、11月18日には、衆議院財務金融委員会において
民・自・公三党の共同提案による法案の修正案が提出され、法案のう
ち個人所得課税、資産課税、消費課税に関する部分が削除された上
で、可決・成立に至りました。
今般成立した平成23年度税制改正法のうち、国税の主な項目は以下
のとおりです。
【法人課税】
・実効税率を5%引下げ
(法人税率30%→25.5%)
・課税ベースの拡大等―減価償却の見直し
―欠損金繰越控除の見直し
―研究開発税制の見直し 等
・中小法人に対する軽減税率の引下げ
(18%→15%)
・中小企業関係租特の見直し
【納税環境整備】
・税務調査手続
(現行の運用上の取扱いを「法令上明確化」)
・更正の請求期間の延長等
・理由附記等
なお、平成23年度税制改正法案の修正の過程で改正が見送られた積
み残し事項については、平成24年度税制改正や社会保障・税一体改革
の中で検討していくこととしております。
また、法律の条文などについては、下記URLに掲載しております
ので、そちらをご覧ください。
http://www.mof.go.jp/about_mof/bills/179diet/index.htm
(2)復興財源のための税制措置について
東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源
については、「今を生きる世代全体で連帯し負担を分かち合うことを
基本とする」との考え方の下、歳出削減や税外収入の確保に最大限努
めるとともに、それでもなお足らざる部分について時限的な税制措置
を行うこととしております。
この税制措置を含めた財源確保のための法案については、「東日本
大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に
関する特別措置法案」を10月28日に国会に提出し、民・自・公三党で
の協議の結果、衆議院で修正が行われた上で、11月30日に可決・成
立、12月2日に公布・施行されました。
この時限的な税制措置の具体的な内容は、以下のとおりです。
【復興特別法人税】
・平成23年度税制改正(法人実効税率の引下げ+課税ベース拡大)の
実施とセットで、法人税額に対して10%の時限的な付加税を創設す
る。
・付加税は、平成24年度から平成26年度までの措置とする。
・課税標準は法人税額とし、納税義務者は法人税の納税義務者と同じ
とする。
【復興特別所得税】
・所得税額に対して2.1%の時限的な付加税を創設する。
・平成25年1月から平成49年12月までの措置とする。
・納税義務者・源泉徴収義務者は所得税の納税義務者・源泉徴収義務
者と同じとする。
なお、法律の条文などについては、下記URLに掲載しております
ので、そちらをご覧ください。
http://www.mof.go.jp/about_mof/bills/179diet/index.htm
また、上記の時限的な税制措置については、法案の国会提出に先立
ち、税制調査会において8月4日から10月11日にかけて審議が行われ
ました。審議内容、資料等については、下記URLにてご覧いただけ
ます。
http://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/zeicho/index.html
(3)復興に向けた税制上の対応(第2弾)について
東日本大震災による被災者の支援策については、本年4月に成立し
た「東日本大震災の被災者に係る国税関係法律の臨時特例に関する法
律」により、税制上の緊急対応(第1弾)として様々な措置を講じて
きているところですが、その後の復旧・復興の状況等を踏まえ、今
般、第2弾の対応として更なる措置を講じることとしました。
そのため、上記の法律を一部改正する法律案を11月4日に国会に提
出し、12月7日に可決・成立、同月14日に公布・施行されました。
ここでは、各税目の主な項目についてご紹介いたします。
【所得税】
・住宅の再取得等に係る住宅ローン控除の特例
・復興特別区域に係る税制上の特例措置
・津波防災地域づくりに関する法律の制定に伴う措置
・雑損控除等に係る災害関連支出の対象期間の延長の特例
・被災市街地復興土地区画整理事業等に係る土地等の譲渡所得の課税
の特例
・被災居住用財産の敷地に係る譲渡期限の延長の特例
・買換え特例の買換資産に係る取得期間等の延長の特例
【法人税】
・復興特別区域に係る税制上の特例措置
・被災代替資産等の特別償却の対象への二輪車等の追加
・被災者向け優良賃貸住宅の割増償却
【資産税】
・事業承継税制(相続税・贈与税)における事業継続要件等の緩和
・被災者が取得した住宅取得等資金に係る贈与税の特例措置
・相続税の延納・物納の申請に係る準備期間等の特例
・大震災の被災者等に係る登録免許税の免税
【消費課税等】
・被災二輪車等に係る自動車重量税の特例還付
・被災者の買換え二輪車等に係る自動車重量税の免税措置
・被災酒類製造者が移出する清酒等に係る酒税の税率の特例
・大震災の被災者等に係る印紙税の非課税措置
なお、各項目の詳細や法律の条文などについては、下記URLに掲
載しておりますので、そちらをご覧ください。
http://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/index.html
また、上記の税制上の対応については、法案の国会提出に先立ち、
税制調査会において7月15日から10月11日にかけて審議が行われまし
た。審議内容、資料等については、下記URLにてご覧いただけま
す。
http://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/zeicho/index.html
(4)平成24年度税制改正について
平成24年度税制改正については、去る12月10日に税制改正大綱が取
りまとめられ、同日閣議決定いたしました。
大綱の詳しい内容については、次号においてご紹介したいと考えて
おりますが、下記URLからご覧いただけますので、ぜひアクセスし
てみてください。
http://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/24taikou_3.pdf
なお、平成24年度税制改正については、税制調査会において10月26
日から12月10日にかけて審議が行われました。審議内容、資料等につ
いては、下記URLにてご覧いただけます。
http://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/zeicho/index.html
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3 編集後記
今号では、9月に財務大臣政務官に就任された三谷政務官にご寄稿いた
だきました。この場を借りて、御礼申し上げます。
前号を発行したのはGW前の4月末。それから半年以上が経過しました
が、この間、メルマガの発行が滞ってしまい申し訳ありませんでした。
この1年を振り返ってみると、今年は平成23年度税制改正法案の国会提
出に始まり、
・復興に向けた税制上の対応の第1弾
・社会保障・税一体改革成案の取りまとめ
・復興財源のための税制措置
・復興に向けた税制上の対応の第2弾
・平成24年度税制改正
と、議論の尽きない一年であり、今も社会保障・税一体改革に関する議論
の真っ最中です。税制調査会の開催回数で見ても、今年度は既に27回を重
ね、過去2年の年間開催回数の記録を更新することはほぼ確実な状況です
(平成21年度:27回、平成22年度:25回)。
こういうときこそ情報発信が重要であることを改めて心に留めて、来年
こそはタイムリーな情報や充実したコンテンツをもっと発信していきたい
と考えておりますので、これからもよろしくお願いいたします。
最後に、新しい年が皆様にとって素晴らしい―年でありますようお祈り
申し上げます。
(鈴野)
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