税制メールマガジン 第79号 25/08/28
税制メールマガジン 第79号 平成25年8月28日
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◆目次
1 はじめに
2 中里政府税制調査会会長からのメッセージ
3 税制をめぐる最近の動き
4 諸外国における税制について
5 編集後記
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1 はじめに
第78号(6月配信)でお伝えしたように、政府税制調査会が新たにスタ
ートしました。6月24日に、安倍総理から、中長期的な観点から各税目の
在り方等についての諮問があり、今後三年間の任期の中でこの課題に取
り組んでいくこととなります。
今般の税調メンバーは学者・各界各層からの有識者から構成されており、
会長には東京大学中里会長が就任されました。中里会長は東京大学法学部
教授、ハーバード・ロースクール客員教授などを歴任され、2000年に政府
税調のメンバーとなっております。
今後の政府税調の議論、税制改革の在り方について、今回のメルマガに
投稿して頂きましたので、是非お読み下さい。
政府税調において中長期の課題が議論される一方、9月からは、例年通
り、来年度税制改正に向けた議論がスタートします。今年については、
報道にもある通り、消費税率引き上げの最終判断を安倍総理が秋に行い、
また、成長戦略に盛り込まれた投資減税の議論も秋に前倒しに行われる
ということで、財務省主税局にとっては例年にも増して熱い秋となりそう
です。
こうした中長期の税制の在り方論、また足元の年度改正の議論について、
正面から取り組んでいくことはもちろんですが、そうした政策論だけでな
く、税制に対する国民一人一人の理解をどうしたらより深めることができ
るのかといった面も更に考えていきたいと思っています。
税とは何か、どうして払わなくてはいけないのかといった根本論から理
解を得ていくプロセスの一つ一つが、いざ税制改革を行う際、或いは実際
に税率引き上げを行っていく際に、地に足についた議論を行うことにつな
がっていくと考える次第です。
主税局総務課企画官
中村 英正
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2 中里政府税制調査会会長からのメッセージ
日本国憲法の定める租税法律主義の原則の下、税制改革はすべて法律改
正によりなされるものです。それ故に、それについて責任を負うのは、国
会であり内閣です。税制調査会が税制改革を行う権限を与えられているわ
けではありません。私達、租税制度の専門家は、その際の留意点を総理へ
の諮問に対する答申というかたちで述べることを期待されているにとどま
ります。
したがって、私たちは、税制改革をめぐる議論には様々な制約があると
いう点を理解しなければなりません。理論的な観点のみを重視して、云々
すべきであるというのは簡単なことかもしれませんが、税制調査会は、ど
の学説が正しいかを判断する場ではありません。理論を現実のものとする
ためには、政治的制約、法的制約、国際的制約と、様々な制約が存在しま
す。白地に絵を描くような租税制度の構築が不可能な以上、漸進的な改革
こそが、唯一現実的なものといえます。
ところで、この30年程の間に、租税制度の研究者は、経済取引の実態を
理解しなければ、研究が難しい状況になっています。課税の対象が経済取
引である以上、その実態の理解が何よりも重要なことは当然のことです。
そのような変化を前提とすると、税制改革の議論も、今後、変化を迫られ
ます。
第一に、納税の現場を無視した議論は行われなくなるのではないでしょ
うか。経済取引に基づいて申告が行われ、その結果として納税がなされる
のですから、これは当然のことといえます。理論的にいかに正しいことで
あっても、現場が混乱するような制度改正は受け入れられないでしょう。
第二に、国際的な議論が必須のものとなるでしょう。OECDやG8・G20に
おける国際的な課税逃れ(BEPS, or Base Erosion and Profit Shifting)
に関する議論を無視した議論はありえないものとされるでしょう。また、
国際課税の議論のみならず、日本における税制改革をめぐる議論を外国に
知ってもらうための努力が必要です。
第三は、将来に関する明るい展望です。暗い気持ちで暗澹たる未来を論
ずるだけでは、国民に見離されてしまいます。また、反対論を揶揄するだ
けの議論も生産的ではありません。政策とは、すべからく、国民の気持ち
を明るくするようなポジティブなものでなければなりません。明るい未来
を提示できる議論が必要です。
今後の税制調査会における議論についても、この三本柱に沿ったかたち
で行けたらと考えています。
東京大学教授
中里 実
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3 税制をめぐる最近の動き
・税制調査会の開催
8月5日に第2回の税制調査会が開催され、各委員及び特別委員から様
々なご意見が出されました。次回は秋に開催される予定です。
会議の模様や資料等については、税制調査会のホームページでご確認い
ただけます。
(税制調査会HP)
http://www.cao.go.jp/zei-cho/
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4 諸外国における税制について
諸外国の税制に関する最近の話題として、今回は、先進諸国が協同して
取り組んでいる租税の問題についてご紹介したいと思います。
近年、各国がリーマンショック後に財政状況を悪化させ、より多くの国
民負担を求めている中で、多国籍企業などがグループ内の関連会社による
国境を越えた取引などを通じて、各国の税制優遇措置や租税条約等を複雑
に組み合わせ、所得を軽課税国・無税国に移転し、グローバルに租税の負
担を免れる問題が顕在化しています。
報道にもある通り、世界的なIT企業など、誰もが知っている大企業の
企業行動・課税状況について、国民の関心が高まり、海外の議会で公聴会
などが開かれています。こうした問題は昔から存在はしていましたが、今
回は大きな国際社会のアジェンダとなるなど、次元の違う扱われ方をして
います。本年のG8首脳会議やG20財務大臣・中銀総裁会議においても取り
上げられました。
この問題の受け皿となっている国際機関がOECDです。国際課税を巡る問
題については、OECDの租税委員会がかねてから主導的役割を担っています。
このOECD租税委員会は、昨年「税源浸食と利益移転」(BEPS: Base
Erosion and Profit Shifting)に関するプロジェクトを立ち上げ、本年
7月のG20において「BEPS行動計画」を公表しました。この計画は、国際
課税に関する国際的な協力の歴史において転機となる画期的な成果である
として、日本をはじめとするG20諸国から全面的な支持が得られたところ
です。
ちなみにこのOECD租税委員会の議長は、国際租税の世界で大きな影響力
があるポストですが、現在の議長は財務省の浅川雅嗣総括審議官です。日
本人がこのポストについたのは初めてのことです。
この行動計画には、電子商取引への課税のあり方、無形資産等に関する
移転価格税制の策定、外国子会社合算税制の強化、租税条約濫用の防止な
ど、国際的な課税逃れを防ぐために取り組むべき15項目の課題が特定され
ています。OECDは今後1〜2年半の間に、各国が二重非課税を排除し、実
際に企業の経済活動の行われている場所での課税を十分に可能とするため、
行動計画の各項目について新たな国際的な税制の調和を図る方策を勧告す
ることとしています。
なお、今回の行動計画の実施に関しては、OECD非加盟のG20メンバー8
ヶ国(中国、インド、ロシア、アルゼンチン、ブラジル、インドネシア、
サウジアラビア、南アフリカ)がOECD加盟国と同様に意見を述べ、意思決
定に参加しうる仕組みとして「OECD/G20 BEPSプロジェクト」が設けられ
ました。OECD加盟国という枠組みだとどうしても先進国中心となってしま
いがちですが、経済規模が大きな新興国も議論に引き込むことで、実効性
のあるルール作りを行っていくこととなっています。
このように国際課税の問題は国際的に大きな課題となっており、政府税
調でもこの秋から取り上げられることとなっています。
主税局調査課課長補佐
大森 朝之
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5 編集後記
前回の配信から1か月間が空いてしまいました。6月と7月の人事異動
で、私以外は交替し、主税局の広報の体制も大きく変わりました。中村企
画官の下、私と係長の白神(しらが)、係員の柴田の体制で、今後とも税
制の広報に取り組んでいきます。引き続き、よろしくお願いいたします。
さて、今回から税調の委員・特別委員からのメッセージを掲載すること
にしました。税制調査会にふさわしく、様々な分野の専門家、実務家、経
営者などに参画いただいています。次回以降もお楽しみに。
(南)
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