税制メールマガジン 第77号 25/05/24
税制メールマガジン 第77号 平成25年5月24日
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◆目次
1 巻頭言
2 税制をめぐる最近の動き
3 主税局員コラム
4 諸外国における税制について
5 編集後記
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1 巻頭言
5月の連休が終わり、東京ではクールビズがちょうどよい季節になって
きました。そのためもあるのでしょうか、5月に運動会をする学校も多い
ようです。わが子の通う小学校もその一つで、最近、練習に励んでいるそ
うです。私も、応援に行くのを楽しみにしています。
私が小学生だった頃と比べて、運動会の内容は洗練された印象がありま
すが、主な競技は大きく変わっていないので懐かしい思いがします。大き
く変わったのは、会場のスペースだと感じます。私が小学校に入った頃
(1970年代中頃です)、学校が手狭で、校庭にプレハブの教室を建てて授
業をしていたのを覚えていますが、今では、クラスの数も少なく、1クラ
スあたりの人数も減っているので、運動会場はややゆったりです。
実際、日本における子どもの人数は、大きく減っています。子ども(0
〜14歳)の人口を見てみると、1975年は2,723万人でしたが、今年(2013
年)は1,649万人です。40年足らずで、1,000万人以上も減りました。また、
1年間に生まれる赤ちゃんの数も、1975年は190万人で、2011年は105万人
と、半分くらいになっています。
今後、どうなるかも見てみましょう。出生率が今後あまり変わらないと
見込んだ推計では、子どもの人口は、2046年(33年後)に1,000万人を
割り込み、2058年(45年後)には818万人と、今の半分になるという結果
が出ています。学校の数が変わらなければ、運動会で騎馬戦や組体操とい
った集団競技をするのに困ってしまいそうです。
しかし、出生率が上昇すると、結果は変わります。合計特殊出生率(※)
が、2010年の1.39から2020年に1.61にまで上昇するなどの前提を置い
た推計では、2058年で1,108万人と、上記の結果より300万人近くも多く
なるのです。
出産、子育ては、人生の中でとても大事な出来事ですから、個人の意思
が最大限尊重されるべきです。それを前提とした上で、社会全体として、
どのような社会を目指して、諸制度をデザインするのかは、民主主義社会
における私たち国民の選択です。
たとえば、財政では、子育て政策にどの程度資源を配分し、その財源を
どうするか(子育て政策の財源を借金で当の子どもたちに負わせるわけに
もいきません)など。また、税制については、同じ財源を確保するための
税負担の配分に当たり、子育て世代とそうでない世代の負担をどのように
考えるか、ライフスタイルに応じて負担を変えるべきかなど。簡単に答え
が出せる問題ではありませんが、皆さんとともに考えていきたいと思いま
す。
※ 合計特殊出生率は「15〜49歳までの女性の年齢別出生率を合計したも
の」で、一人の女性がその年齢別出生率で一生の間に生むとしたときの
子どもの数に相当します。
(文中で紹介した数字の出所)
・ 総務省統計局「人口推計」
・ 厚生労働省「人口動態統計」
・ 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」
主税局広報担当主税企画官
小宮 敦史
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2 税制をめぐる最近の動き 〜平成25年度税制改正法〜
前回は、「社会保障と税の一体改革の着実な実施」について、ご紹介し
ました。最終回の今回は、「復興支援のための税制上の対応」と「納税環
境整備」について、ご紹介します。これまでにご紹介した措置の適用時期
については、パンフレット等に記載してありますので、ご参照ください。
(1) 被災地における住宅対策
消費税率の引上げに伴う一時の税負担の増加による影響を平準化し、及
び緩和する観点から、住宅ローン減税について、延長した上で、最大控除
額を拡充することとしていますが、東日本大震災の被災者が新たに再建住
宅を取得等する場合、住宅ローン減税の最大控除額を他の地域よりさらに
抜本的にかさ上げし、現行の360万円から600万円に引き上げます。
(2) 高台移転の促進のための措置
高台移転を更に推進するため、一定の要件を満たす防災集団移転促進事
業で行われる土地の買取りに係る譲渡所得に対し、5,000万円の特別控除
を適用します。
(3) 福島復興再生特別措置法の改正に伴う措置
避難解除区域等への企業誘致を促進するため、避難解除区域に係る課税
の特例の対象区域に避難指示解除準備区域及び居住制限区域を追加します。
また、立地促進区域に新規に進出した事業者に対して、被災事業者を対象
とする現行制度と同様の事業用設備の即時償却・税額控除制度や避難対象
者を雇用する場合の税額控除制度を適用します。
(4) 延滞税等の見直し
現在の低金利の状況を踏まえ、事業者等の負担を軽減する観点等から、
延滞税・利子税・還付加算金について引下げを行います。
例えば、見直し前の14.6%の延滞税については、特例基準割合である
「貸出約定平均金利+1%」に7.3%を足した割合となります。具体的に
は、貸出約定平均金利が1%の場合、見直し前の14.6%の延滞税について
は9.3%になります。
※ 上記の「貸出約定平均金利」とは、日本銀行が公表する前々年10月〜
前年9月における「国内銀行の貸出約定平均金利(新規・短期)」の平
均です。
下記URLから参考資料をご覧いただけます。
・パンフレット「平成25年度税制改正」
http://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei13/index.htm
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3 主税局員コラム 〜2年で、2つの大改正〜
主税局の係長を拝命してから早2年。コラムを執筆する機会をいただい
たので、この2年間で携わった2つの印象深い税制改正について簡単に紹
介しようと思います。
1つ目は、2011年7月に配属されてすぐに担当した「復興財源のための
税制改正」です。係長1年目の私は、右も左もわからず、周りも見えてお
らず、チームの足を引っ張らないように付いていくだけで精一杯でした
(上司に仕事を頼まれても何もできず、気づく頃には、上司がその仕事を
全部やってしまっていることもしばしば。)。ただ、将来世代にこれ以上
負担を先送りすることは避けなければならないという入省当初からの思い
もあって、必死に業務にあたりました。省内外の多くの方に助けられなが
ら、政府税調・与党での検討、3党協議・国会審議を経て、25年間に渡っ
て総額10.5兆円を税制措置で確保することとなりました。
東日本大震災発生当時、金沢国税局に出向していた私は、被災地の様子
をテレビで見ていることしかできず、そんな自分が東京に戻って震災復興
に少しでも貢献できたことは、公務員人生の大きな喜びでした。
2つ目は、「社会保障・税一体改革による消費税率引上げなどの税制抜
本改革」です。2011年11月末に復興財源のための税制改正の仕事が一段
落したのもつかのま、年末に向けて政府方針のとりまとめに奔走しました。
その後、税制抜本改革法案を国会に提出し、国会審議・3党協議を経て、
2012年8月に圧倒的多数の賛成で消費税率10%への引上げ法案は国会で成
立しました。
少子高齢化の進展や厳しい財政状況を考えれば、社会保障の充実を図る
とともに持続可能性を確保するためには、消費税率の引上げによる安定財
源確保は避けて通ることはできない課題です。その課題に対して与野党が
党派を超えて取り組み、法案が成立に至った時には、歴史的な瞬間に立ち
会うことができ、世の中の大きな動きの中に自分がいることを感じました。
ここまで読んでくださった方は、私があたかも大きな仕事をやってきた
かのように思われるかもしれませんが、係長として実際にやっている業務
は地味です。簡単に紹介しますと、いわゆる「ロジ」と言われる仕事がメ
インで、関係部局と連絡調整しつつ、政治家や省内幹部等への説明の段取
り・スケジュールを組んだり、必要部数の資料を用意したり。うまくでき
て当然と思われがちですが、特に、一体改革の時は、社会保障、経済など
幅広い分野にまたがっていたので、たかが連絡調整といえども、電話がひ
っきりなしに鳴るので非常に大変でした(頭の整理をしながら走り続けて
いるイメージでした。)。しかし、よく言われるとおり、物事が段取りど
おり進むと、不思議なことに物事自体も良い結果につながるので、こうし
た地味な係長の仕事も非常に重要だと思っています。
自分が携わってきた業務について紹介してきましたが、そもそも、国民
の皆様に負担をお願いすることはできればやりたくないことです。しかし、
給付があれば、それに見合うだけの負担が必要です。これ以上負担を先送
りするのではなく、これからも、将来世代のことを考えて引き続き精進し
てまいりたいと思います。
主税局調査課内国調査第二係長
石黒 将之
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4 諸外国における税制について
〜イギリスにおける過去と現在の税制改正の取組〜
日本では、2020年のオリンピック・パラリンピックの東京開催に向けた
様々な誘致活動を進めているところですが、これまでに夏季オリンピック
が最も多く開催された都市がどこなのか、ご存知でしょうか。今回の「諸
外国における税制」では、夏季オリンピックが最多の3回開催されたロン
ドンを有するイギリスの税制について、紹介したいと思います。
イギリスといえば、先月のサッチャー元首相の死去のニュースも記憶に
新しいと思います。現在のイギリスは、サッチャー元首相が所属していた
保守党が中心となり、自由党と連立を組んで政権を担っています。そこで、
現在の政権が行っている税制改革について、サッチャー政権時代の税制改
革と比較しつつ、紹介していきたいと思います。
サッチャー元首相は、「鉄の女」の異名を持ち、インフレと低成長に代
表されるイギリス病と言われる問題に悩まされる中で、1979年の総選挙で
勝利して、首相に就任しました。税制面では、所得税の簡素化・最高税率
の83%から60%(その後40%)への引下げ、法人税率の52%から35%へ
の段階的な引下げを実施し、個人・企業のインセンティブを回復して経済
に活力を与えるとともに、それに伴う歳入減を補うために付加価値税の標
準税率の8%から15%への引上げや法人税の課税ベースの拡大等の改革を
実施しました。また、その他にも、国営企業の民営化や大幅な歳出削減な
ど、経済立て直しのために思い切った改革を断行していきました。
時は流れ、2010年、世界的な金融経済危機の発生による経済の悪化、そ
の対策として行った財政出動による財政の悪化といった問題に悩まされて
いる中で、キャメロン党首が率いる保守党が13年ぶりに政権を担うことに
なりました。政権交代後、さらなる財政赤字削減と持続的な経済成長を掲
げて、税制面では、2010年に引き上げられた所得税の最高税率を50%から
45%に引き下げ、法人税率を段階的に28%から20%に引き下げる一方、付
加価値税の標準税率の17.5%から20%への引上げ、法人税の課税ベースの
拡大や銀行税の導入などの改革を行っています。また、社会保障費の削減
など大胆な歳出削減も断行し、歳入措置と歳出措置の両方を考慮すると、
財政中立又は財政赤字削減に寄与するように改革が行われています。
経済が低迷する中で政権を獲得したサッチャー政権とキャメロン政権で
の対応策を比べてみると、同じ政党であるためなのか、ともに財政規律を
重視した財政運営を行っており、極めて興味深い結果となっています。
また、最近では、大手コーヒーチェーン店や大手IT企業が租税回避スキ
ームを利用して、本来より低い法人税収しか納めていないといった議論が、
議会で行われ、一部では市民による抗議活動にまで発展しました。そのよ
うな時代背景もあると思いますが、現政権では、歳入確保策の一貫として、
脱税や租税回避の対策強化にも力を入れています。例えば、悪質な脱税者
の顔写真の公表、当局から租税回避として損金算入の否認等を受けた企業
を政府調達から排除するルールの導入、ケイマンなどのタックスヘイブン
と呼ばれる軽課税地国との間で租税情報を交換する枠組みの構築を進めて
いるなど、様々な取組を推進しています。
この課題は、イギリスに限らず、我が国をはじめ、先進国で非常に力を
入れている分野でもあり、今後、G8などにおいて国際的な議論が進むと
思われるため、その動向や各国の取組について引き続き関心を持って注視
し、日本のより良い税制の構築に少しでも貢献できるよう努めてまいりた
いと思います。
主税局調査課外国調査第一係長
森岡 和宏
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5 編集後記
5月15日に平成25年度予算が成立しました。これで、予算と税制がそ
ろいました。予算や税制がしっかりと動き出し、日本経済の再生につなが
るよう我々も全力を挙げていかなければなりません。
さて、先日、ある大学の講義で2回に分けて、日本の税制や社会保障と
税の一体改革の講義を担当しました。日頃から税制や一体改革について、
分かりやすく伝えようと努力はしているものの、いざ限られた時間での講
義となるとなかなかうまく伝えられない部分もありました。若い学生に税
制や一体改革を理解してもらうことは極めて大事ですので、できるだけ分
かりやすく、興味を持ってもらえるよう努力したいと思います。主税局で
は、税制改正の第一線にいる職員が管理職から若手まで、財務局等からの
要請を受けて、全国各地で講演会や授業を通じて、税制の情報を発信して
います。機会があれば是非聞きにいらしてください。
前回のメールマガジンの新人紹介に対し、温かい励ましのコメントをい
ただきました。二人ともさらにやる気いっぱいです。ありがとうございま
した。今後も、税に関する情報を分かりやすい形で発信していきたいと思
いますので、引き続き、税制メールマガジンをよろしくお願いいたします。
(南)
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