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○井本鑑定企画官 若干定刻より早いですけれども、おそろいでございますので、開始したいと思います。
それでは、ただいまから酒類総合研究所分科会・研究ワーキンググループを開催させていただきます。
委員の皆様方には御多忙の中お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
本日の議事進行は、私、鑑定企画官の井本が務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
委員の皆様方には引き続き幅広い見地から御意見を賜りますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、平成20年度に係る業務の実績に関する評価について、前回の分科会から引き続きまして評価を、研究項目についての御審議を主にお願いしたいと思います。
本日御審議いただく資料でございますけれども、クリップでとめてございますものがお手元にございますけれども、前回の分科会で使用いたしました資料を基本的に使わせていただくことにしておりますけれども、前回の分科会におきまして委員の皆様から御意見、御指摘があった事項等につきまして、研究所で資料を修正したものを御用意いたしましたので、こちらに差しかえております。
その差しかえた部分でございますけども、資料の3をごらんいただきたいと思います。
43ページをごらんいただきたいと思います。「A 環境保全・資源の有効利用のための微生物及び酵素の研究」につきまして、論文掲載の記述が脱落しておりましたので、44ページに追加してございます。アンダーラインを引いてございます。
それから、51ページでございますが、「低温酵素を利用する酒類醸造技術の開発」につきまして、出願の特許が脱落しておりましたので、次の52ページのところ、上から3行目でございますが、アンダーラインを引いてございます。これを追加してございます。
それから、ちょっと戻りまして恐縮でございますが、21ページをごらんいただきたいと思います。「平成20年度鑑評会開催実績」につきまして表がございますが、この表の左下にアンダーラインを引いたところがございます。表の一番下の段でございますが、「平成20年度鑑評会来場者アンケート結果の反映等」を、前回の分科会での御指摘を踏まえまして、最新の集計結果に改めてございます。この内容につきましては、研究所のほうから説明していただきたいと思います。
○平松理事 それでは、説明させていただきます。
アンケートで、きき酒に使用するスポイトの吸引力が弱いという意見がございましたために、この形状を、吸引力を高めるよう改良しまして、結果的にきき酒の際の負担を軽減するよう対応いたしております。その結果、スポイトの改善を評価するという意見をいただいております。
以上でございます。
○井本鑑定企画官 ありがとうございます。
それから、あわせて研究所から席上配付資料の1、2と「研究事績参考資料」というのを用意させていただいております。
本日は研究ワーキンググループでございますので、御審議いただく項目といたしましては、研究の分担ということで、資料の3の17ページから19ページまで、それから共通でございます20ページから23ページまで、あと研究のところで、大部でございますけれども、24ページから77ページまで、さらに共通の78から107ページまでというふうになってございます。これにつきまして、後ほど研究所から説明をいただきたいと思います。
さて、本日の研究ワーキングの後でございますが、資料の2の記入様式をごらんいただきたいと思います。この資料2の記入様式に評価を御記入いただきまして、お手数でございますが、8月7日(金曜日)までに事務局までファクスまたはメールでいただければと思っております。
各委員の先生方の評定を取りまとめたものといたしまして、事務局で案をつくらせていただきますので、それを8月18日(火曜日)の分科会でそれぞれの評定を御審議いただきたいと思っております。
なお、御記入いただきます評価書のもととなる「業務実績報告書」につきましては、整理合理化計画の中で、「評価委員会は、独立行政法人の評価の際、業務・マネジメント等に係る国民の意見募集を行い、その評価に適切に反映させる」というふうに決定されていることを受けまして、平成19年度分からパブリックコメントを実施することとなっております。平成20年度の業務実績報告書につきましては、去る7月7日から20日までの間に実施いたしましたが、特に御意見はございませんでした。
以上でございます。何か御質問、御意見等ございましたら、よろしくお願いいたします。よろしいでしょうか。
それでは、平成20年度に係ります業務の実績につきまして、研究所のほうから説明をお願いしたいと思います。
○家藤研究企画知財部門長 酒類総合研究所の家藤です。私のほうから平成20年度の研究関係の業務実績について御説明させていただきます。少し長くなりますけれども、よろしくおつき合いをお願いいたします。
説明につきましては、先ほど鑑定企画官が言われましたように、資料の3の17ページをお願いいたします。そこから始めます。ところどころ区切って御説明させていただきますので、その都度御質問を受けるという形で進めたいと存じます。よろしくお願いいたします。
それでは、まず、資料3の17ページでございます。酒類の高度な分析及び鑑定でございます。
業務の実績でございますけれども、イの酒類の高度な分析及び鑑定については、分析機器を整備するほか、外部へ委託したほうが効率的な分析については、民間開放の観点から民間分析機関へ23件委託するほか、研究所への分析依頼についても、民間での実施が適当なもの、つまり民間分析機関で容易に分析できるものについては、民間分析機関等を紹介しております。
まず、発がん性があるというふうに指摘されておりますカルバミン酸エチルの分析でございますが、酒類の安全性に関する分析については、第2期中期計画におきまして、特別研究の一課題として行うこととしております。ここではそれとは別途、庁からの依頼による分析等を挙げております。カルバミン酸エチルについては、平成20年度、清酒144点を分析いたしました。
民間等からの受託分析は、次の18ページの表に挙げておりますような分析を行っております。輸出酒類の分析は、台湾向け輸出酒類とEU向け輸出ワインの分析を行っております。これらはいずれも相手国から当酒類総合研究所が日本国における公的分析機関もしくは証明機関とされているものでございます。17年度に始まりました台湾への輸出酒類の分析は、20年度は48件110点を分析しております。EU向けワインは、一昨年度の11月からその業務を開始しており、本年度は5点分析いたしました。また、本年度は、麹菌のアフラトキシン合成遺伝子解析の依頼分析を新規に1件行いました。これは麹菌のDNA解析研究の結果から新たに生まれた分析技術でございます。
平成20年度の特別な分析として、事故米関係の分析がございます。これは委員の先生方もご存じのとおり、平成20年9月8日に非食用の事故米が不正流通により一部酒類に使用されたとの報道がございました。これに関しまして、研究所は国税庁の依頼に基づき、9月11日から事故米を使用して製造された可能性がある酒類等(98点)の分析を行うほか、当該事案と無関係な酒類業者が取引業者より商品の安全性の確認を求められている事例が発生したことから、9月22日からホームページに残留農薬・カビ毒について受託分析を実施する旨を掲載し、事故米とは無関係の一般の酒類(70点)についても受託分析を行いました。事故米を使用して製造された可能性がある酒類の分析結果については、9月30日にホームページに公表し、新聞等報道機関からの電話による問い合わせ及び取材に対応いたしました。
18ページ下段、ロのアルコール分の測定によるアルコール浮ひょう、つまり酒精計の校正については、483点を行っております。
あと、ハにありますように、これらの分析や浮ひょうの校正はいずれも期限内に報告させていただいております。
ニの受託試験醸造でございますが、昨年度は民間の酒造会社より1件受託いたしました。
次に、ホの国税庁所定分析法の改良に関しましては、アルコール分とエキス分の分析について、測定精度の確保のため、外部精度調査の協力依頼があり、対応いたしました。
このほか、外部へ委託したほうが効率的な分析、例えば環境ホルモン等の分析につきましては、民間分析機関へ委託して実施しております。
とりあえずここで区切らせていただきます。
○井本鑑定企画官 それでは、御質問等ございませんでしょうか。
○中西臨時委員 特にありません、私のほうは。
○井本鑑定企画官 それでは、続いてよろしくお願いいたします。
○家藤研究企画知財部門長 それでは、24ページからですが、(3)の酒類及び酒類業に関する研究及び調査でございます。平成20年度までの第2期の中期計画では、酒類の安全性の確保、環境保全、技術基盤の強化という3つの分野に重点化して、特別研究4課題、それと基盤研究10課題を行うこととしておりました。最初に、特別研究の4課題をまとめて御説明させていただきます。
なお、席上配付資料として、「研究事績参考資料」と表書きしましたA4横のものをお手元に配付しておりますので、それもごらんいただきながら説明を進めさせていただきたいと存じます。
まず初めに、特別研究(イ)麹菌培養環境応答システムの解析及び麹菌総合データベースシステムの開発でございます。
まず、Aの麹菌培養環境応答システムの解析でございますが、これは目的・意義に書いてありますように、清酒づくりになくてはならない麹菌(Aspergillus
oryzae)につきましては、温度や培地の水分活性(浸透圧)等に応答し酵素生産やその他の特性を変化させることが知られており、これが清酒の品質に大きな影響を与えると考えております。つまり、言いかえますと、清酒づくりにおける米麹のような固体培養は、一般の液体培養とは環境が大きく異なることから、麹菌の固体培養という環境における麹菌の環境応答のシステムの全体像を明らかにしようというものでございます。
取り組みの状況でございますが、昨年度におきましては、本文の24ページに書いてありますように、昨年御説明させていただいているとおりでございます。
本年度分については、先ほどの参考資料の1ページ、ポンチ絵のあります1ページにて説明させていただきます。
まずは、@、麹の特性に影響を与える醸造環境のうち、酸素濃度、原料米品種、精米歩合の影響について、DNAマイクロアレイによる遺伝子発現の解析を行いました。
麹菌の培養時には、麹を取り巻く酸素濃度が低下することが知られています。そこで、通常の酸素濃度を20%と4%における20時間、30時間、42時間目の遺伝子の発現を調べました。20時間目以降、30時間、42時間と赤及び青の散らばった部分が見えており、酸素濃度の影響が大きくなることが示されました。変動の大きな遺伝子として、酵素生産――これはグルコアミラーゼですけれども――あと解糖系、分生子形成に関係する遺伝子が挙げられ、これら遺伝子の発現に酸素濃度が大きく影響していることが示されました。
次に、原料米品種と精米歩合の影響を、品種、日本晴と山田錦、精米歩合40%と70%で調べました。結果として、遺伝子発現に影響を受ける遺伝子数は、精米歩合の違いによる影響を受けた遺伝子が10個であり、一方、原料米品種の影響を受けたものが291個と、原料米品種のほうが精米歩合より大きな影響を与えることが示されました。
次に、Aの水分活性。これはイコール浸透圧と考えていますが、その浸透圧制御に重要な役割を果たすと想定されています制御因子のHogA、AtfA、AtfBの解析を行いました。HogA、AtfA、AtfBの各遺伝子破壊について、浸透圧ストレス応答時の遺伝子発現を解析したところ、HogA及びAtfAが多数の遺伝子発現を制御していることが示唆され、HogAがAtfAの上流因子と推定しております。
Bにおいては、麹のメタボライト解析、つまり米麹の各種代謝物の経時的変化につきその解析を行うため、麹からの代謝物の抽出方法及びLC/MSによる一斉定量分析法を検討し、確立いたしました。
さて、次に、Bの麹菌総合データベースシステムの開発についてですが、本文の25ページでございます。これは麹菌の研究を進めるために、ゲノム情報を中心として麹菌の総合データベースシステムを開発し、知的基盤を整備するものでございます。
昨年度所内公開を行った麹菌ゲノム情報データベースについて、外部サーバーへの移植、動作テスト、セキュリティ設定などを行い、平成20年8月に所外公開を行いました。
また、麹菌を中心に17種類の子嚢菌類ゲノム情報の比較解析を行うほか、麹菌ゲノム情報データベースに製麹時における個別遺伝子の発現情報を加えるなど情報を拡張し、現在のところ所内公開による動作テストを行っております。
なお、公開したゲノム情報は、参考資料の2ページ、ポンチ絵のほうですけれども、そこに示しましたようなものでございます。
では、続きまして、資料3の本文26ページに移りたいと思います。これは手持ちの参考資料の3ページをお願いいたします。特別研究(ロ)の酒類の特性に関する原料成分の解析及びその利用に関する研究でございます。
昨年は、清酒から苦味等の不快な後味を示す新規な成分を見出し、それがイネグルテリンに由来するペプチドであること、及び蒸米たんぱく質を酵素消化することで高分子ペプチドが蓄積することを明らかにしております。
清酒もろみ中での原料米たんぱく質の分解産物の解析を行いました。その結果、参考資料3ページ、左の図に示しますように、清酒もろみ中では赤の矢印で示しています苦味ペプチドを含む低分子ペプチドが2日目のようなもろみの初期から生成しているということが明らかとなっております。このことは、清酒もろみの中では蒸米たんぱく質が比較的速やかに分解されるということを示しております。前年までは高分子ペプチドというのが酵素消化で蓄積するということを明らかにしておりますけれども、清酒もろみの中では非常にその蒸米たんぱくの分解というのが速やかに起こっているということでございます
次に、また本文の26ページに戻っていただきたいのですが、清酒の老香に大きく寄与するポリスルフィド――これは硫黄原子が2つ、3つとつながった化合物ですけれども、その生成と蒸米たんぱく質との関係についての研究です。まず、硫黄、特に含硫アミノ酸の多い清酒は、貯蔵後、ポリスルフィドの生成が高い傾向が見られました。さらに、清酒中の硫黄と窒素化合物含量との間には高い相関があったことから、清酒中の硫黄の大半は米たんぱく質に由来すると推定されました。
そこで、原料米たんぱく質の生成酒の貯蔵劣化への影響を調べました。資料3ページの右では、ポリスルフィド――これはジメチルジスルフィド及びジメチルトリスルフィドですけれども、その生成と原料米中の硫黄成分の関係を解析しました。横軸は米中の硫黄成分の量、縦軸はその原料米を使用して製造したお酒を貯蔵して生成したポリスルフィドを示しております。これらの間には相関関係が見られ、このことは硫黄含量の多い米、これはつまりたんぱく質の多い米と言えますが、そうした米を使って製造したお酒では全硫黄、含硫アミノ酸が多くなり、貯蔵後のポリスルフィド生成も高くなることが示されました。
また、もとの本文資料26ページ及び次の参考資料の4ページでございます。ブドウ・ワイン関係につきまして、本年度はブドウの栽培条件のうち温度と水分がフェノール系化合物に及ぼす影響を検討しております。
参考資料4ページの上の図を見ていただきたいのですが、ベレゾン――ベレゾンといいますのは着色開始期のことです。ベレゾンの2週間前からウェット及びドライの条件で栽培し、着色開始期(ベレゾン)後にそれぞれを高温及び低温で栽培し、ブドウの着色色素でありますアントシアニン及び渋味成分であるプロアントシアニジンの生成量を測定しました。アントシアニンは、高温より低温で、またウェットよりドライで増加し、気温及び水分の影響を強く受けました。一方で、プロアントシアニジンへの影響は少ないものでありました。
一方、参考資料4ページ、下の図ですが、ベレゾン(着色開始期)のずっと前、開花後1週間目から高温・低温で栽培した場合の果皮や種子のプロアントシアニジンについて調べました。高温条件では、心地よい渋味と言われる果皮プロアントシアニジンが減少し、荒々しい渋味が強くなる傾向を示しました。
以上のことより、夏場に高温多湿となる我が国では、比較的冷涼な地域を選び、水分ストレスがかかる栽培方法をとることが特に重要であるというふうに考えております。
特別研究はちょっとこの2題で切らせていただきます。
○井本鑑定企画官 ありがとうございます。
御質問等ございませんでしょうか。
○魚住委員 この参考資料のほうの1ページの環境応答システムの解析で、右下のほうの「発現に影響を受ける遺伝子数」というところで、原料米の品種は291と、意外にたくさんの遺伝子に影響しているというのは非常におもしろい結果だと思いますが、精米歩合のほうの影響は割合少なくて、これは、原料米はいろんな成分の量が違うと思うのですが、どういうところが一番影響しているのでしょうか。まだそこまで研究はいっていないかもしれませんが、非常に興味あるデータだと思いましたのでお尋ねします。
○家藤研究企画知財部門長 最近の我々の研究では、でん粉のいろんな含量、でん粉の構造などが違っていて、それが、麹菌がお米の中に食い込んでいくときに影響するのかもしれません。昔から山田錦とかは非常に麹がつくりやすいとか、一般米は中に麹がはぜ込みにくくて難しいというようなことが言われていますけども、そういった影響であるかもしれませんが。
○魚住委員 そういう物理的なところが非常に多くの遺伝子の発現に影響するということですね。
○家藤研究企画知財部門長 はい。
○魚住委員 どうもありがとうございます。
○中西臨時委員 ちょっとよろしいでしょうか。参考資料の3ページ目なのですが、これもまだ今後の研究だと思うのです。大変興味ある結果だと思うのですけど、この「生成酒の貯蔵劣化への影響」というところで、貯蔵の条件というのはどんなような条件で研究をされているのでしょうか。
○家藤研究企画知財部門長 これは加温して短期で貯蔵しております。
○中西臨時委員 結果が早く出るようにそういう実験条件を設定している。
○家藤研究企画知財部門長 はい。
○中西臨時委員 これは時間が長くなれば当然どんどんふえていくという、そういうふうに考えていいのですか。
○家藤研究企画知財部門長 はい。なるべく短期で結果が出るようにということでございます。
○中西臨時委員 わかりました。ありがとうございました。
○井本鑑定企画官 そのほか、よろしいでしょうか。もしありましたら、後ほどまたお聞きしたいと思います。
それでは、研究のほう、引き続きよろしくお願いいたします。
○家藤研究企画知財部門長 では、お手元の本文資料28ページでございます。(ハ)の清酒酵母の醸造特性及び栄養特性のポストゲノム解析でございます。
取り組みの状況でございますけれども、昨年度御説明させていただきましたように、清酒酵母きょうかい7号のゲノム塩基配列をほぼ明らかにし、清酒酵母と実験室酵母の一倍体同士の交配によって得られた100株の一倍体分離個体について、清酒の小仕込み試験による解析結果から、エタノール濃度や酸度等の形質が複数の遺伝子の支配を受けていることが示唆されております。
本年度は、清酒酵母のきょうかい7号のゲノム塩基配列から、清酒酵母には、PHO3、PPT1、ASP3、AIF1といった遺伝子が欠失していること、及び5番染色体の一部及び14番染色体の一部に逆位構造があることを明らかにしております。
また、参考資料の5ページにより説明させていただきますが、清酒酵母の醸造特性に関係する遺伝子座(QTL)を同定いたしました。昨年度の清酒酵母と実験室酵母の交配から得られた一倍体分離個体について、各分離個体当たり142個――合計で1万4,200個となりますが――のDNAマーカー
――これは繰り返し配列を持つマイクロサテライトを使っておりますが、その遺伝子型を決定し、それぞれ一個一個のマーカーがどちらの親に由来するかということを決定し、遺伝子型のデータと各分離個体の清酒醸造特性のデータを用いてQTL(量的形質遺伝子座)の解析を行いました。そして、エタノールや香気成分の生産に関する25個の有意なQTLを同定いたしました。
参考資料5ページの右ですけれども、これは少しわかりにくいかもしれませんが、もろみの日数ですね。今回これは10日もろみとなっていますけれども、そのもろみ日数とともに発酵力に関与する遺伝子座(QTL)が矢印で示されています。この表はそのもろみの日数とともに発酵力に関与する遺伝子座が変化しているということを示したもので、このような現象が見られました。
さらに、清酒酵母きょうかい6号、9号、10号などの各種醸造用酵母のゲノムを次世代型DNAシーケンサーで解析し、塩基配列データを取得しております。
続きまして、28ページの下のB、清酒酵母の栄養特性のポストゲノム解析でございます。酵母においてエルゴステロールやチアミンなどは酵母のアルコール耐性やアルコール発酵に必須の成分で、これらが多く存在します。また、清酒酵母は、S-アデノシルメチオニンというアルコール性肝炎に顕著な治癒効果を持ち、またうつ病の改善効果があると注目されている物質や葉酸など栄養特性物質を特異的に多く生産・蓄積していることを見出しております。これら栄養特性の面から、清酒酵母の特性把握などを行い、またそれら栄養特性(栄養物質)の蓄積機構の解明を行っているものであります。
本文29ページの取り組みの状況でございますが、昨年度までに、非必須遺伝子破壊株から得られたS-アデノシルメチオニンの高蓄積株を解析し、S-アデノシルメチオニン蓄積には、メチル化サイクル、糖の代謝及びリン酸代謝が関与していることが示唆されました。このほか、清酒酵母に多い葉酸について、種々の葉酸化合物の定量分析条件を検討いたしました。
本年度は、葉酸蓄積量について清酒酵母と各種醸造用酵母で比較検討したところ、やはり清酒酵母――きょうかい6号、7号、9号ですけれども――が葉酸を高蓄積することを確かめました。
そこで、菌体内葉酸の経時的変化を調べましたところ、参考資料の6ページ上の図のように、実験室酵母では対数増殖期の初期に最も葉酸を蓄積するのに対しまして、清酒酵母は対数増殖期から定常期に進むに従い増加するという異なった挙動を示すことがわかりました。また、異なる培養条件では、清酒酵母での葉酸蓄積の経時的変化も変わることを見出しております。
S-アデノシルメチオニンについては、清酒酵母(きょうかい9号)の振盪培養と静置培養でのS-アデノシルメチオニン量の経時的変化を調べたところ、静置培養のほうがS-アデノシルメチオニンを蓄積する時間が長く、定常期でも高レベル――振盪培養時と比べて約20倍ですけれども、高レベルで維持しておりました。また、リン酸代謝系との関連から、培地条件を検討したところ、清酒酵母はYPD培地条件と比べてリン酸添加によりポリリン酸を約31倍、S-アデノシルメチオニンを約8倍蓄積することがわかりました。
なお、S-アデノシルメチオニンは非常に不安定な物質であり、それゆえに我が国ではサプリメントなどに供されていません。
そこで、S-アデノシルメチオニンの安定化方法についても検討を行いました。これについては参考資料の6ページを見ていただきたいのですが、それの3番です。S-アデノシルメチオニンというのは非常に不安定な物質ですけれども、安定化物質としてこれまでに知られています物質、デキストリン、トシル酸、そうしたものより我々はリン酸及びポリリン酸というものがS-アデノシルメチオニンを安定化させる効果のあることを見出しました。
引き続きまして、本文の31ページ及び参考資料の7ページ、特別研究の4つ目でございます。ニの酒類の安全性の確保に関する研究のうち、Aの酒類の安全性に係る微量成分に関する研究です。
取り組みの状況でございますが、昨年度に引き続きまして、微量成分の分析等を行っております。
まず、残留農薬ですが、本年度はビール、リキュール類の計28点の残留農薬の分析を実施しました。昨年までの結果とあわせ、現在のところ特に問題となる事例はありませんでした。また、参考資料7ページの2に示しましたように、酒類に適した簡易の農薬分析法の有効性を検討し、QuEChERS法という方法が実用可能であることを示すことができました。
本文に戻りまして、カルバミン酸エチルでございますが、昨年度までに、カルバミン酸エチル生成のキー物質が酸素であり、酸素を除去したところ、梅酒中のカルバミン酸エチルを大幅に減少するという実証実験をしております。本年度は、梅酒中の実態調査を継続いたしました。
それと、重金属でございますけれども、重金属の1つでありますカドミウムについては、本年度は、清酒醸造工程中の動態を調べ、カドミウムは多くが酒粕のほうへ移行し、清酒中では少ないことを確認しました。
あと、環境ホルモン・その他では、セミカルバジドがカップ酒等の容器の口径の大きい製品に認められましたが、量的に問題となるものはありませんでした。
次に、Bの酒類のトレーサビリティー ――これは本文の32ページとなります――につきましては、昨年同様、情報収集を行っております。
本年度は、清酒のアルコール添加の有無について、質量分析及びNMR分析を行い、酒類中のカーボンサーティーン含量を質量分析法により分析することで有効な情報が得られる可能性が示されました。
参考資料8ページにその結果を示しております。これは質量分析計で――「アルコール」というのはアルコール試薬及び醸造用アルコール等ですけれども、それと「パック酒」、これはアルコール添加酒です。それと一番下の「純米酒」。こうしたものを質量分析、δ13Cというものを定量することによって、ほぼきれいに判別できるということを示したものであります。
また、次ですが、清酒及び果実酒の原料品種の判別については、市販清酒及び果実酒からのDNA抽出方法及びPCR条件の検討を行っております。
参考資料9ページに、清酒の原料米DNAの検出結果の一部を示しております。上の写真のように一部のプライマー、これはPCRの産物が短く出るような、そうしたところのプライマーですけれども、そうしたプライマーで稲のDNAをテンプレートとしたPCR産物が得られております。現在は、原料米品種判別に利用できる適切なDNAの抽出方法及びプライマーの組み合わせなど、PCR条件の検討を続けている状況でございます。
以上で切らせていただきます。
○井本鑑定企画官 ここまでのところ、何か御質問等ございますか。
○魚住委員 この参考資料の9ページのSSR解析。SSRというのは葉緑体DNAだと思うのですけど、「他コピー」というのは、これ、「多」というのでしょうか。9ページの真ん中辺です。単なるミスプリントかと思います。「葉緑体DNAのSSR(他コピー)」と。
○家藤研究企画知財部門長 これは、すみません、ミスプリントです。おっしゃるとおりです。すみません。
○魚住委員 「多」という。
○家藤研究企画知財部門長 はい。
○中西臨時委員 大変興味ある研究内容で、研究の質問をしているのじゃ申しわけないのですけど、この資料の6ページの清酒酵母の葉酸の分析なのですけど、大変私もおもしろい結果だなと思うのですけど、これは清酒酵母間の違いというのはあるのですか。例えば6号と7号と9号で。
○家藤研究企画知財部門長 6号、7号、9号は、比較的非常に似た挙動をいたします。
○中西臨時委員 すみません、申しわけありません、ありがとうございました。
○井本鑑定企画官 よろしいでしょうか。
○中西臨時委員 はい、結構です。
○井本鑑定企画官 それでは、引き続いてよろしくお願いいたします。
○家藤研究企画知財部門長 それでは、引き続きまして33ページから始めさせていただきます。ここからは基盤研究の10課題に移らせていただきます。
まず、(イ)の酒類の成分に関する研究でございます。
取り組みの状況でございますが、お手元の配付資料の10ページをごらんください。醸造用酵母はSaccharomyces cerevisiaeに属しますが、同じ種の間、特にごく狭い範囲での醸造酵母間の判別は困難でありました。そうした判別を行えるようにしようというものです。真ん中に書いてあるような流れに従って酵母のDNAによる判別を行っております。これまで、まず1つ目は、酵母の細胞壁たんぱく由来のプライマーで焼酎用酵母12株のうちの8株、ワイン酵母12株を判別できたとしております。また、醸造用酵母内での焼酎用酵母、ワイン酵母、清酒酵母の判別もかなりできるようになっています。
本文33ページに戻っていただきまして、本年度は、酵母ゲノム上のORF上のアミノ酸偏在に着目をしてやっているわけでございますけれども、各アミノ酸の偏在に着目したプライマーを利用したPCR法で酵母判別を試みましたところ、電荷を有するアミノ酸偏在領域に増幅DNA断片の長さの多様性が認められました。そのほか、親水性アミノ酸偏在領域に長さの多様性が認められております。醸造用酵母のPCR法による判別は、酵母の用途別判別のほか、同じ用途の酵母のうちでは焼酎酵母間及びワイン酵母間では効率的な判別も可能となっております。また、清酒酵母の判別についても有効なプライマーを見出すことができました。
続いて、本文の34ページ、(ロ)の酒類の飲酒生理に関する研究でございます。
そのうちのA、酒類の酔いに関する研究でございます。この目的は、平たく言いますと、酔いの評価系を確立したいということ。それはどういうことかと申しますと、現在、酔うということに対して、例えば焼酎は酔い覚めがいいとか、清酒は酔い覚めが悪いとかということが、巷で言われていますけれども、科学的根拠が何もないのが現状でございます。
そこで、いわゆる各酒類といいますか、焼酎、清酒等々の酒の酔いをどのようにして評価するかということでございます。マウスの飲酒による抗不安作用を指標とする酒類によるリラックス効果及び各酒類摂取における12時間の積算運動量の検討から、同アルコール濃度で同用量の酒類を摂取した場合には、酒類による酔いやリラックス効果の違いはあまり大きくないということが示唆されております。
本年度ですけれども、酩酊が軽い条件と重い条件で清酒、赤ワイン、焼酎、ウイスキーをマウスに経口投与し、運動量変化を10分単位で調べた結果、投与直後から12時間後まで酒類間で違いがないことが示されました。また、清酒と焼酎をマウスに経口投与した後の血中や脳のエタノール・アセトアルデヒド濃度の変化も酒類間で違いがなかったことから、酔いに最も影響を与えるのは摂取したアルコール量であるということが示唆されました。
次に、また別の実験ですが、清酒飲料のリラックス効果というものを、普通酒と吟醸酒のリラックス効果について、高架式十字迷路試験で調べました。これは参考資料の11ページをごらんください。
左上にあります写真が高架式十字迷路でございます。オープンスペースとクローズスペースがありまして、ネズミは普通といいますか不安がある場合、クローズスペースにじっとしているのですが、お酒を飲んでリラックスするとオープンスペースに出てとどまる時間の比率が高くなるというものです。
下の図ですが、普通酒と吟醸酒及び対照として水を用いていますが、吟醸酒のほうがリラックス効果、つまりオープンの場所に出る時間が長いということでのリラックス効果ですけれども、そうした効果が有意に高くなっております。
さて、吟醸酒は香気成分であるカプロン酸エチルや酢酸イソアミルなどを多く含むのですが、そこで次に、普通酒に吟醸酒に含まれるのと同量のカプロン酸エチル及び酢酸イソアミルをそれぞれ単品で加えたもので同じ試験を行いました。結果は、参考資料11ページの右下の図ですが、カプロン酸エチル及び酢酸イソアミルを普通酒に加えたものは吟醸酒と同程度のリラックス効果が観察され、吟醸酒の香気成分が効果を促進していることが示されました。
本文の35ページに戻っていただきたいのですが、このほか、近畿大学との共同研究によって、純米酒をイオン交換クロマトグラフィーで4つに分画した分画物でGABAA受容体の応答に影響を与える分画が見出され、香気成分以外にもリラックス効果に関与する清酒成分が存在していることが示唆されております。
続いて、35ページの酒類と食品の相性でございます。白ワインを飲むときにするめを食べますと生臭いにおいが生じるということで、相性が悪いというふうに言われています。昨年度までに、このするめの白ワインへの添加によりアルデヒド類が生成することから、酒類と食品との組み合わせにより生じる生臭いにおいは、魚介類に多く含まれる不飽和脂肪酸の分解の関与が推察されております。また、各種実験から、ワイン中の亜硫酸が不飽和脂肪酸の分解を促進させ、アルデヒド類や苦味応答が増加したと考えられました。
さて、参考資料の12ページをごらんください。本年度はさまざまな酒類に不飽和脂肪酸――DHAを使用しておりますが――を添加し、味覚センサーを使用することによって苦味応答性を検討しました。亜硫酸の入っている白ワイン、赤ワインでは、センサーが苦味を感知しておりますが、清酒、ビール類、紹興酒及び亜硫酸無添加のワイン――白ワインのD及び赤ワインのCですけれども――ではほとんど変化が見られませんでした。
次に、2の図ですが、不飽和脂肪酸、DHAを含む15%エタノール緩衝液での亜硫酸濃度の影響を検討したところ、亜硫酸が10ppm未満の低濃度でも味覚センサーの苦味応答及びアルデヒド類が顕著に増加いたしました。
さらに、右の3の表ですが、亜硫酸無添加白ワインとそれに亜硫酸を添加したものを用いて焼き魚との相性の官能評価――これは2点試験法でございますが――を行ったところ、亜硫酸を添加した白ワインのほうが焼き魚との相性が悪いとする回答が多数を占め、亜硫酸添加ワインは無添加ワインよりも生臭いというコメントが多くございました。
以上のことから、酒類と魚介類との相性にはやはり亜硫酸の有無が大きな影響を及ぼすと考えております。
とりあえずここで区切らせていただきます。
○井本鑑定企画官 ありがとうございます。
それでは、御質問等ございましたら。
○中西臨時委員 資料の12ページの一番右の下なのですけど、この亜硫酸の無添加と添加のところの「有意差あり(1%)」。1%というのは、有意差1%という意味ですか。
○家藤研究企画知財部門長 1%の危険率で有意差ありということです。
○中西臨時委員 ああ、そうですか。ありがとうございました。
○魚住委員 技術的な細かいことですみませんが、この味覚センサーというのは、そういう機械で先味、後味というか、2種類別々のセンサーがついているのでしょうか。このデータは苦味雑味というのと苦味というので区別して測定できるわけですね。この辺の機械、この研究手法自体は非常におもしろいと思いますので、ちょっともしおわかりならお教えいただきたいのですけども。
○家藤研究企画知財部門長 先に感じるのと後で感じる苦味ということですね。
○魚住委員 これは実際には人がかぐわけで、それを機械が区別できるということですか。
○木崎理事 苦味センサーのセンサーが1種類じゃなくて何種類かあります。基本的な構造としては、この舌の脂質二重膜をモデルにして、そこに入れるいろいろな物質によって、人間の先味を感知できそうだというものとか、それから後味を感知するようなものだというような、そういうセンサーを何本か設けて、それぞれのセンサーの応答を見ながら、後味に感知している場合にはこれは後味感知というようなデータにしております。
○魚住委員 そうすると、そのセンサーの物質自身は実際の味覚センサーのたんぱくを使っているわけなのですか。
○木崎理事 たんぱくではなくて、化学物質です。脂質二重膜の中にその化学物質を埋め込んであるようなものでございます。
○魚住委員 人の感覚に対応するわけですね。
○木崎理事 はい、それに対応するものと現在のところみなして研究をしているところでございます。
○魚住委員 どうもありがとうございます。
○井本鑑定企画官 よろしいでしょうか。
それでは、よろしくお願いします。
○家藤研究企画知財部門長 では、続きまして、お手元の本文の資料37ページでございます。(ハ)の酒類の品質向上に関する研究でございます。
ジメチルトリスルフィド――これは先ほども出ましたが、ジメチルトリスルフィドという物質は、清酒の劣化臭である老香に大きく関与する成分でありますが、清酒での生成機構は明らかとなっておらず、その機構及び前駆物質を明らかにしようというものでございます。
本年度の取り組み状況でございますが、参考資料の13ページをごらんください。このジメチルトリスルフィドの前駆物質について本年度は精製・同定を行い、その精製過程において見出されたDMTS――ジメチルトリスルフィドですけれども、DMTS生成ポテンシャルを有する2つの主要ピークのうち、ポテンシャルの高かったDMTS-P1というものを精製しました。その標品を得まして、これについて高分解能のエレクトロスプレーイオン化質量分析及びNMR分析を行い、DMTS-P1が新規化合物であります1、2dihydroxy-5-(methylsulfinyl)pentan-3-oneと同定いたしました。また、化学合成したDMTS-P1のマススペクトル及びNMRスペクトルを清酒から精製したものと比較し、一致することを確認しております。
DMTS-P1の市販清酒中の濃度は、0.2〜1.0mg/Lの範囲にあり、清酒と同濃度のDMTS-P1を清酒に添加して貯蔵試験(70℃、1週間)を行ったところ、右下の図ですが、DMTS生成量は無添加の場合の約2倍となったことから、DMTS-P1のDMTS生成への寄与が確認されました。
それと、続きまして、本文38ページのB、酒類の活性酸素による劣化の制御に関する研究でございます。ビール系の酒類の品質において鮮度は重要であり、この香味安定性の増強は重要な課題であります。本研究では、活性酸素消去能を指標として品質劣化について検討し、ビール系酒類の品質安定性を高めることを目的としております。
昨年度までは、ビールの香味安定性の指標とされるヒドロキシルラジカル生成のラグタイムと活性酸素の消去能・生成能との相関を検討しました。
本年度は、ビール系酒類の貯蔵試験を行い、貯蔵後における品質の官能評価による劣化度と活性酸素消去能等との相関分析を行いました。
内容については、参考資料の14ページを見て説明させていただきます。ビール中の酸素は活性酸素、そしてヒドロキシルラジカルを生成し、劣化成分前駆体が生成されると言われています。そして、ビールの香味安定性は、強制酸化条件(60℃)におけるヒドロキシルラジカル生成のラグタイムに比例するとされています。つまりヒドロキシルラジカル生成のラグタイムが長いものは香味安定性が高い、つまり劣化しにくいというものです。
第2図には、ビール以外に発泡酒及び第3のビールと言われるものについて、そのヒドロキシルラジカル生成を見たものですが、第3のビールや発泡酒ではヒドロキシルラジカルがわずか、あるいはほとんどしか生成せず、それらの品質の劣化度と従来から言われていますヒドロキシルラジカル生成のラグタイムとは相関がないことがわかりました。
そして、図3に品質の劣化度と活性酸素消去能SOD様活性の相関を示していますが、SOD様活性がビール系酒類共通の香味安定性の指標となり得ることが示唆されました。
次に、本文38ページ下のCのビールの品質安定性に関する研究でございますが、昨年度までに、攪拌吸着抽出法(SBSE法)及びガスクロマトグラフィーによる分析を検討しまして、約400の分離ピークのうち、100個程度のピークについて成分を同定するとともに、そのほとんどの成分が比較分析可能な安定した値を示すことを確認しております。
本年度は、前年度同定した100程度の成分のうち91成分についてカテゴリー間及び貯蔵前後の成分の違いについて比較したところ、ビールや発泡酒等のカテゴリー間で同定される成分の種類にはほとんど違いが見られないものの、量的割合は異なっておりました。また、この方法により、既に報告されている複数の劣化成分の貯蔵中の変化を比較したところ、カテゴリー間で変化の仕方が異なることが明らかとなっており、各カテゴリーに合った劣化成分を指標とした品質管理の必要性が示唆されました。
それと、続きまして、清酒のカビ臭防止に関する調査研究で、これは本文の39ページの真ん中のDでございます。参考資料は15ページになります。これは清酒のカビ臭について、汚染状況及び防止法について検討しているものでございます。
清酒のカビ臭は、ご存じのように、トリクロロアニソール(TCA)によることを当研究所で見出していますが、このTCAは木材の防カビ剤として使われるトリクロロフェノール(TCP)が麹菌などによってメチル化され生じること、また防カビ剤としてTCPを使用していないときでも木材に次亜塩素酸ソーダをかけることでリグニンからTCPを生じることも明らかとしています。
さて、平成18BYの全国新酒鑑評会出品酒で、官能評価でカビ臭の指摘を受けたものなど、158点についてカビ臭の原因物質の1つでありますトリクロロアニソールを分析したところ、TCAの閾値1.7ppt以上が60点、これは全体の6.1%に当たります。そして、1〜1.6pptが18点、0.5〜0.9pptが9点でありました。市販種麹での前駆物質トリクロロフェノールからTCAへの変換能を調べますと、全種麹に変換能があったものの、種麹間で1.8倍程度の差がございました。また、当座のカビ臭防止法の検討の1つとして、TCA汚染清酒の活性炭による除去処理を検討したところ、活性炭の種類によってTCA除去率にかなり違いのあることがわかりました。
続きまして、資料41ページ、(ニ)の酒類原料の特性及び利用に関する研究でございます。
Aの醸造原料米の新規品質評価法は、デンプンのアミロース含量とアミロペクチンの側鎖構造が蒸米の消化性に重要であるという成果を用いて、簡便な酒米の品質評価法を確立するというものでございます。
昨年までに、デンプン分子構造を酵素処理・ゲルろ過クロマトグラム及び示差走査熱量計やラピッド・ビスコ・アナライザにより解析することで、蒸米の消化性を高度に予想できるとしています。
本年度は、1998年−2006年の統計資料から清酒の粕歩合の全国加重平均と気温との関係を解析しましたところ、稲の登熟期である夏〜秋の気温が粕歩合と正の相関性を示したことから、稲登熟期の気象はもろみにおける原料米の溶解性に大きな影響を及ぼしている可能性が示唆されました。
これを受け、気象データの明らかな2003年−2008年産原料米36品種の試料を用いて、気象データとデンプン特性及び蒸米消化性との関係を解析しました。そして、@出穂後1カ月の平均気温がアミロペクチン短鎖/長鎖比及びアミロース含量と最も高い相関性を示すこと、2として、デンプンの老化を反映した条件では、蒸米消化性は出穂後1カ月の平均気温と直線的な負の高い相関性を示すこと、3として、デンプンの老化が進んでいない条件では、蒸米消化性は、出穂後1カ月の平均気温が23度付近で最も高く、それより高いあるいは低い温度で低くなることがわかりました。
ここで参考資料の16ページをごらんください。右の図ですが、それぞれの消化条件で出穂後1カ月の平均気温に基づく蒸米消化性を予測する式を構築しました。その式が青いブルーのラインで引いた式ですけれども、その妥当性を2008年産試料で検定したところ、いずれの条件でも出穂後気温により蒸米消化性を比較的精度よく予測できました。
したがいまして、稲登熟期の気温によって高い精度で米の溶解性に関する酒造適正を予測する可能性が示されました。このことは、気象データにより事前に蒸米の消化性を予測できることを意味しております。
続きまして、42ページのB、ブドウ品種「甲州」の特性解析でございます。御承知のように、甲州と申しますのは、我が国固有のブドウ品種で、我が国の醸造用ブドウとして極めて重要な品種であることから、業界の関心も非常に高いところでございます。
昨年度までに、ジーンチップを用いた西洋系品種及び甲州のゲノムDNAのハイブリダイズ強度の比較から、甲州の大部分の遺伝子配列は西洋系品種と類似しているが、一部甲州でハイブリダイズが弱く、欠失が示唆される配列のあることを明らかにしております。
本年度は、甲州と他の東洋系品種について比較したところ、他の東洋系品種でもハイブリダイズの弱い配列があったものの、その数は少なく、東洋系品種と比較しても甲州に特異的な欠失配列があることが明らかとなりました。一方、ジーンチップを用いたゲノムDNAのハイブリダイズ強度により供試品種をクラスター解析すると、西洋系品種のグループと甲州を含む東洋系品種のグループに分かれ、ゲノム配列全体の類似度からも西洋系と東洋系品種は異なり、甲州は東洋系のグループに属することが確認されました。
お手元の配付資料17ページに以上のことをまとめて記載しております。図1は、甲州と東洋系品種の竜眼とのゲノムDNAハイブリダイゼーションの結果ですが、ハイブリダイズが弱い配列があること、また図2では、ゲノムDNAのハイブリダイズ強度により甲州は東洋系のグループに属することを示しております。
以上でございます。
○井本鑑定企画官 ここら辺のところ、御質問等ございますか。
○魚住委員 この参考資料の16ページのところの出穂後の平均気温と消化性の相関のグラフは非常におもしろいのですが、この図の斜線は温度が高くなるほど消化性が悪くなるということですね。
それで、本文のほうで、41ページの「23℃付近で最も高く」と書いてあったのは、これとの関係がちょっとわかりにくいのですが、どういうふうに解釈すればよろしいでしょうか。
○井本鑑定企画官 直接答えていただけますか。
○家藤研究企画知財部門長 3番は、従来あまり老化させない条件で消化性を見ておったのですけども、そうしますときれいに結果が出なくて現場と合わないというのを後で確認したということでございます。ということで、Aの記述の内容がグラフの内容でございまして、今回得られたメインの結論ということでございます。Aのほうは、十分に老化をさせて、もろみとか粕歩合とかの状況とよく合うようにしたということでございます。
○魚住委員 わかりました。
それからもう1つは、単なる技術的な用語の、私が知らないものですから、教えていただきたいのですが、この41ページの下から3分の1ぐらいのところの「粕歩合」という言葉は、これは粕の残りが多いのと少ないのとどちらが、粕歩合が高いと言うか、その定義はどういう向きになっているのでしょうか。
○家藤研究企画知財部門長 100キログラムの米から20キロの粕が、残渣が出ましたら、それを粕歩合20%と言いますので、粕歩合が高いことは溶け残りが多いということです。
○魚住委員 そうすると、ここの本文の文章ですと、気温が高いほど粕が残りやすいということですね。
○家藤研究企画知財部門長 はい、気温が高いと米がかたくなって溶けなくて粕になるということでございます。
○魚住委員 そうすると、これは要するに従来温度が高いと溶けにくいということで、わかりました。16ページの図は、今度は消化性ですから、温度が高いとやっぱりこれは消化性が悪い。この「消化性(%)」はどういう数値なのでしょうか。やっぱり溶け残りですか、それとも……。
○家藤研究企画知財部門長 これは消化したものです。大変老化させていますので、粕が非常に多い状態でやったものでございますので、実際には溶けたものの量を縦軸で示しております。
○魚住委員 わかりました。どうもありがとうございます。
○家藤研究企画知財部門長 その高温と低温の関係については、きょうは説明しませんでしたけど、16ページの左側の図ですが、高温の場合はアミロペクチン側鎖が長くなるということで、老化しやすく、もろみ中で酵素消化されにくいという、そういうことだというふうに思うのですけど。
○魚住委員 どうもありがとうございました。
○井本鑑定企画官 よろしいでしょうか。
○家藤研究企画知財部門長 後半を始める前に、ちょっと訂正があります。先ほど本文の25ページ及び参考資料の2ページですけれども、25ページの下から3行目の「麹菌を中心に14種類」ということ、あと参考資料も「14」となっていますが、私が先ほど「17」というふうに言い間違ったそうで、正しくは「14」です。申しわけありませんでした。
では、引き続き御説明させていただきます。
資料3の43ページをお願いいたします。(ホ)の醸造環境資源に関する基盤的研究でございます。
まずは、Aの環境保全・資源の有効利用のための微生物及び酵素の研究でございますが、参考資料18ページをごらんください。平成18年度では、自然界から黒糖焼酎粕の色素を減少させる微生物・Penicillium
oxalicumを単離し、昨年度では本菌の糖蜜由来色素及びアントラキノン系色素RB19の脱色機構を解析しました。その機構は、主に吸着によるものでした。また、有機態リンを含むリン除去能の高い廃水処理用酵母として育種したHansenula
fabianiiの培養液からフォッサターゼの一種でありますフィターゼを精製し、遺伝レベルでの解析をしたところでございます。
本年は、Penicillium oxalicumを用いて実用化処理に向けた検討を行ったほか、廃糖蜜を原料としたバイオエタノール蒸留残渣で増殖し、かつ、その脱色作用を有する微生物を新たに単離・同定し、実用化に向けた基礎試験を行いました。
Penicillium oxalicumについては、脱色と同時に環境負荷を下げるPenicillium oxalicumによる処理槽を設け、活性汚泥処理やオゾン処理と組み合わせた実験室規模での連続処理試験を行いましたところ、3倍希釈黒糖焼酎粕に対し、脱色率は処理槽で約30%、処理フロー全体で約87%となり、炭素、窒素、リンについても96%以上除去することができました。
また、バイオエタノール蒸留残渣で増殖する脱色微生物として、Aspergillus tubingensis及びAspergillus
japonicusを単離し、これについても活性汚泥処理とオゾン処理の組み合わせにより、オゾンによる脱色に要する処理時間が大幅に短縮されました。Aspergillus
tubingensisによる処理槽を用いた試験では、5倍希釈蒸留残渣に対する脱色率は処理フロー全体で94%となり、溶存態有機炭素は97%除去されております。
また、昨年度cDNAを取得したフィターゼについては、Pichia pastorisたんぱく高発現系により29.5g/L換算のフィターゼを取得し、当該酵素の諸性質を解析いたしました。
続きまして、44ページ、Bの醸造副産物の有効利用に関する研究でございます。参考資料の19ページをごらんください。現在、液化仕込み清酒粕は、その価値が十分評価されておらず、価値が低い状態にあります。しかし、液化仕込み清酒粕は、その大部分が酵母であり、飼料特性の高いことが期待されています。
昨年度までに、畜産関係研究者と連携し、液化仕込み清酒粕の肉牛及び黒毛和種子牛などに対する給餌効果を検討したところ、栄養状態改善効果、体重増加が認められました。このことは、液化仕込み清酒粕の牛第一胃(ルーメン)内の微生物の活性化によるわら類及び牧草類飼料の繊維質の消化性向上に起因し、さらに液化仕込み清酒粕中の酵母菌体が消化性向上に大きく寄与していることが示されました。
本年度は、各種焼酎粕の牛第一胃胃液による粗飼料のin vitro分解率の影響を検討いたしました。その結果、麦焼酎粕、芋焼酎粕などに高い粗飼料繊維質消化率の向上が見られ、これが牛第一胃内の微生物を活性化させ、繊維質の消化性を向上させることが示されました。一方、黒糖焼酎粕では粗飼料分解率の低下が見られ、これは粕に含まれる黒糖由来のポリフェノールやメラノイジンの微生物抑制効果による可能性が考えられました。
また、乳牛では、液化仕込み清酒粕の大豆粕代替のたんぱく資源としての評価を行いました。液化仕込み清酒粕は、大豆粕に比べ血中GOT濃度、乳中尿素態窒素などが低くなり、血中の乳糖率、乳脂肪率などは高くなる傾向が見られ、液化仕込み清酒粕は、乳成分、血中成分に悪影響を及ぼすことはなく、代謝機能の改善効果を有すると認められました。
以上のことから、液化仕込み清酒粕は家畜飼料の大豆粕代替たんぱく資源として価値あるものであることが示されました。
なお、この研究結果は、連携で研究を行っております近畿中国四国農研センター及び宇都宮大学の協力で得られたものでございます。
続きまして、46ページの(へ)の麹菌有用形質の解析及びその利用でございます。
昨年度までに、麹菌有用形質の利用の基礎となる麹菌の高い安全性を分子レベルで確認するほか、黄麹に比べて解析がおくれております黒麹の分類についても、必須遺伝子の配列解析などを通じて分子生物学的手法による検討を行いました。
なお、当研究所保存の黒麹菌は、そのゲノムの一部の遺伝子配列、ITS、β-tubulinなどを比較し、Aspergillus nigerタイプとAspergillus
tubingensisタイプに大別されることを示しました。
本年度は、株式会社トロピカルテクノセンターが保存します黒麹菌12株について同様に解析しました。沖縄トロピカルテクノセンター所有の株は酒造現場からとられたもので、当研究所保有の醸造現場から分離されたことが明らかなほとんどの株、また白麹菌のAspergillus
kawachiiもすべて同じ遺伝子配列を持ち、Aspergillus tubingensisタイプに属し、これらの菌株が我が国において黒麹菌の主流と考えられました。
また、黒麹菌の有用形質である高い安全性を確保するため、オクラトキシン非生産性の分子レベルでの解析を試みました。Aspergillus nigerのゲノム情報の検索から、オクラトキシン生合成への関与が報告されているpolyketide
synthase遺伝子のホモログを見出し、またPCR及びサザン解析の結果、少なくともオクラトキシン生産性を有するAspergillus niger株は当該遺伝子を保持することを確認しております。今後は、オクラトキシン生産性を有するAspergillus
niger株におけるpolyketide synthase遺伝子のホモログについて、オクラトキシン生産性への関与及び当所保存の黒麹菌における分布について検討を行いたいと考えております。
これはお手元の参考資料20ページをごらんください。先ほど述べました黒麹菌主流派と言われるもの、これは沖縄トロピカルテクノセンターから得られました醸造現場から得られた株、及びNRIB、我々の研究所で由来が明らかな醸造現場由来の株というものが上記の黒麹菌主流派という、そのタイプにほぼ分類されたということで、これでAspergillus
tubingensisタイプということで分類されるという結果でございます。
続きまして、47ページのBの醸造産業に利用される微生物の多様性に関する研究でございます。本年度は、これまでに解析を行った菌株が40年以上前に単離された菌株であったことから、現在使用されている米麹及び種もやしから分離した菌株22株について、ゲノムアレイ解析を行い、クラスタリングを行いました。その結果、これまでの解析で清酒関連、みそ関連の麹菌が集積していた清酒・みそグループとは異なり、新たに単離した22株中15株が集積するグループ――ここでは新清酒グループと表現しております――が出現しました。
これについては参考資料21ページをごらんいただいたほうがわかりやすいと思いますが、醸造産業に利用される微生物ということで、従来40年前に単離された清酒麹というのは一番左の清酒・みそクレイドというところに分類されるのですけれども、現在市販で使用されています菌株、種麹などから見た目でコロニーの違うものをピックアップして、それを分離して培養したというもの、それが一番右の従来とは違う新清酒クレイドという、また違うタイプのものに属する、そうしたものが出現したということが今回の成果であります。
続きまして、本文48ページ、トの醸造関連微生物遺伝子の機能及び利用に関する研究開発でございます。
Aの醸造用酵母の細胞壁に関する研究開発では、DCW1という当所で見出した酵母の細胞壁合成に関与するたんぱく質の機能について調べております。
昨年度までに、Dcw1たんぱく質はGPIアンカーたんぱく質であり、細胞膜の脂質ラフトの中で機能していることが明らかとなっています。
本年度は、Dcw1たんぱく質の細胞内局在性をさらに詳しく解析する目的で、各種の細胞内輸送変異株を用いて蛍光標識した特異抗体による顕微鏡観察を行いました。Dcw1たんぱく質はゴルジ体から細胞膜へ輸送後、エンドサイトーシスによりエンドソームに移動し、さらにゴルジ体へとリサイクルしていることが明らかとなりました。また、Dcw1たんぱく質はユビキチン化されており、ユビキチン化が細胞膜からゴルジ体へのリサイクルに必要であることがわかりました。
これにつきましては、お手元の参考資料の22ページですが、特異抗体による顕微鏡観察から得られるリサイクルの様子を@に示しており、またAには、正常な細胞ではDcw1たんぱく質がユビキチン化されているということを示しております。
次に、49ページのBの醸造微生物のゲノム解析とアルコール耐性及び安全性の確保に関する研究でございます。この研究では、醸造微生物の中のもう1つ、火落菌という清酒のアルコールに耐え、清酒の中で増殖可能な乳酸菌について解析を行っております。
昨年度までにゲノム解析が終了しております。
本年度は、火落菌(Lactobacillus fructivorans H1株)と乳酸菌類でエタノール耐性の知見がありますOenococcus
oeniを中心に比較解析を行いました。火落菌は、Oenococcus oeniでエタノール耐性の関連が報告されています遺伝子をすべて有していることが明らかとなりました。また、エタノール耐性の異なる火落菌2株についてシーケンスを行い、ゲノム配列を比較したところ、リファレンスとなるH1株のゲノムにマッピングされていなかった領域は全ゲノムの0.5%程度であり、マッピングされた領域についても99.9%が保存されていたことから、エタノール耐性は異なるものの、これらが近縁であることが裏づけられました。
なお、H1株はプラスミドを持っているのですが、そのプラスミドでマッピングされなかった領域はプラスミド全体の大きさの77%程度となり、大きく異なっていることが示唆されました。
次に、Cの醸造用酵母の育種に関する研究についてです。これまでに酵母が4-ビニルグアイヤコールというフェノール臭物質を生成するためには、PAD1及びFDC1という2つの遺伝子が必要であることを示してきました。では、なぜそれら2つの遺伝子を必要とするのか、それら2つのたんぱく質がどのように相互作用しているかについて調べているところであります。実験では、それらたんぱくにタグをつけて発現し、それらの相互作用をいろいろと見ておりますが、両者の相互作用は確認できておりません。
Pad1たんぱく質及びFdc1たんぱく質の末端に蛍光色素GFPを利用して酵母内の局在性を調べたところ、これらがミトコンドリアに局在していることが予想されました。
なお、これについての参考資料はつけておりません。
一応ここで区切らせていただきます。
○井本鑑定企画官 これまでのところ、何かございますか。よろしいでしょうか。
それでは、研究所のほうでよろしくお願いいたします。
○家藤研究企画知財部門長 それでは、本文51ページの(チ)低温酵素を利用する酒類醸造技術の開発でございます。これは、低温域で活性を持つ酵素について、その機能等の研究を行うというもので、南極で単離されました低温性酵母が生産するグルコアミラーゼについて研究を行っております。これについてはお手元の参考資料の24ページで説明させていただきます。
その@では、本研究で行っています酵素、Cystofilobasidium capitatumという酵母ですけれども、それが出しますグルコアミラーゼと、対照としてRhizopus
niveusのグルコアミラーゼの活性と温度の関係を示しております。C.capitatumの酵素は、低温で相対活性が高いことが御了解いただけると思います。
本年度は、その酵素の精製を行いましたところ、SDS-PAGEで常に明瞭な2本のバンドがあらわれる結果となりました。
そこで、それらそれぞれのN末端配列を調べました。本菌について当所ではある程度のゲノム情報を得ておりますが、それに照らし合わせたところ、2つのペプチドは1つのORFに連続してコードされており、1つのポリペプチドとして翻訳された後に切断され2つのポリペプチドとして本酵素を形成するのではないかと現在推測しております。
なお、本酵素はグルコアミラーゼというふうに考えていましたが、アミノ酸配列解析などの結果、αグルコシダーゼではないかと思われます。
さて、本研究ではもう1つ、酵素研究に必要な組み換えたんぱく質生産技術の萌芽的研究も行っております。麹菌(Aspergillus oryzae)を利用した組み換えたんぱく質の発現の際、Aspergillus
oryzaeには3つのα-アミラーゼ遺伝子があり、それらも大量に生産されてしまいます。異種たんぱく発現の際のこのようなタカアミラーゼの同時生産を抑えるには、それらの遺伝子を破壊してしまうのがいいのですが、麹菌においては選択マーカーが少ないために複数の遺伝子を破壊することが困難です。そこで、選択マーカーとなる遺伝子を何度も使用できるように、麹菌におけるマーカー回収遺伝子システムの構築に成功しました。
さて、次に、53ページ、(リ)の酒類醸造関連成分データベースの開発でございます。これは酒類製造の工程管理を容易にすることを目標としたもので、発酵条件と香味生成の関連づけに資するデータを収集などするというものでございます。
昨年までに、モデル清酒もろみ発酵解析制御システムなるものを考案しました。
本年度は、そのシステムでグルコース濃度などの条件の異なる発酵を行い、酵母の中間代謝産物を含む香味生成に関係する広範な成分をHPLC-MS/MSを用いて定量しました。その結果、ビタミン類の添加により香気エステル類生成の主要な経路と考えられる分岐鎖アミノ酸、イソアミルアルコールなどの、生合成経路の菌体内中間代謝物濃度が低下するということがわかりました。麹については、引き続き規模の大きな製麹実験による麹の成分データを、ビタミン類を含めて収集を進めたほか、培地中の酸素の影響と合成培地中での麹の水分活性による代謝の影響についても実験を行いました。酸素については、培地中への麹菌の増殖には培地中の酸素の有無が影響していること、水分活性については、浸透圧ポテンシャルよりもマトリックポテンシャルが酵素代謝等において重要なファクターになるのではないかということが推測されました。
参考資料の25ページは、それらに関する図であります。
次の55ページの酒類業及び消費動向に関する調査のA、酒類業界における技能伝承に関する研究でございます。これは、熟練技能者が少なくなっている状況におきまして、熟練者が酒造の各工程においてどのような技術・技能を重要視し、判断し、作業しているか、そういう技術を後世に残すための取り組みでございます。
昨年度では、製麹工程における技術・技能分析を行い、技術・技能チェックシートを完成させました。
本年度は、昨年と同様のプロセスにより、米の洗米・浸漬及び蒸し・放冷のチェックシートを作成しました。また、これらのチェックシートについては、現場での観察やインタビューにより妥当性を確認しました。
作成した技術・技能チェックシート及び熟練者の技術・技能修得事例については、解説を加え、利用しやすい形で提供していきたいと考えております。
それと、Bの消費者の酒類に対する意識・ニーズ調査でございますが、これは、メタボリックシンドロームに対応した新たな健康診断制度が始まるなどの要因により消費者の健康意識が変化し、酒類の消費や選択の動機に影響を与えていると予想されましたので、これを明らかにするために、全国に居住する20歳以上70歳未満の成人男女約5,000人を対象に、平成21年2月時点における「消費者の健康に関する意識と酒類の消費や選択の状況」について、ネットリサーチによるアンケート調査を行いました。
以上については、参考資料の26、27でございます。
27ページのほうですが、先ほどの消費者の健康に関する意識と酒類消費との関係調査につきましては、現在、集計解析を行っているところでありますが、丸で囲んだ部分、健康を考えたお酒を飲んだ動機として、40代、50代、60代の男性においては「家族や友人に勧められたから」という部分が比較的多く、20代、30代、40代の女性は「ダイエットに良さそうだから」という回答が多いというふうな結果が得られつつあります。
一たんここで区切らせていただきます。
○井本鑑定企画官 それでは、ここまでのところ、何か御質問、御意見等ございますでしょうか。
○魚住委員 この参考資料の25ページの水分ストレスのところの「マトリックポテンシャル」というのは、私、よく知らないものですから、どういうものでしょうか。
○家藤研究企画知財部門長 25ページの上のほうに説明が載っていますけれども、水分ポテンシャルではなくて、いわゆる毛細管現象に由来するものがマトリックポテンシャルということで、その毛細管現象で引っ張られることによって水分が……。
すみません、本文の53ページの下に補足説明があるので、そちらのほうがわかりやすいです。申しわけありません。
○魚住委員 これは要するに、毛管現象で水が例えば土だとか、あるいは米の粒子の表面に吸い取られてしまうというような、そういうポテンシャルのことですか。
○家藤研究企画知財部門長 はい。
○魚住委員 これは、具体的には何かこのポテンシャルを測定する方法というのはあるのでしょうか、数値化する。
○家藤研究企画知財部門長 数値化というか、そのグラフは載せていまして、説明が悪くて申しわけありませんが、そこに3つの、PEG200とNaCl、あとPEG8000というもので実験を行っておりますが、そのPEG200とかNaClのほうはだんだんと濃度を多くすると浸透圧のポテンシャルになるわけですけども、PEG8000というのは非常に高分子なものでありまして、こっちのほうは多く量を入れても浸透圧には関係しない。これを多く入れることによってマトリックポテンシャルが増してくるということで、この2つの右と左の対比からマトリックポテンシャルというものが麹菌で影響しているというようなことを言っているようです。
○魚住委員 わかりました。どうもありがとうございます。
○中西臨時委員 参考までに、ちょっと1つお聞きしたいのですけども、低温の酵母のグルコアミラーゼの参考資料の24というのがありますね。これ、通常の酵母と例えば最大の活性比較をするとどのぐらい違うのですかね。これは相対値で書いてあるのですけど、実際の活性だとどれくらいになっているのでしょうか。
○家藤研究企画知財部門長 非活性は大体37度ぐらいでは変わらないのですけれども……。
○中西臨時委員 最大活性の絶対値というかな、活性比較すると何倍ぐらい違う。そんなに大きな違いはない。
○家藤研究企画知財部門長 37度ぐらいでは同じような……。
○中西臨時委員 同じような強さを保っていると。そうですか。ありがとうございました。
○家藤研究企画知財部門長 ですから、低温酵素というのはこういう感じで、高温で非常に不安定になるというふうなものが多いようですけども。
○中西臨時委員 ありがとうございました。
○井本鑑定企画官 よろしいでしょうか。
それでは、研究所のほうからよろしくお願いします。
○家藤研究企画知財部門長 引き続きまして、57ページ、研究及び調査の成果の公表、活性化の業務でございます。
イの研究成果の発表実績でございますけれども、ここにありますように30報でございます。昨年の29報と同程度となっております。それと、学会発表も80件、これは昨年とほぼ同様でございます。そのうち国際学会発表が10件で、昨年度より増加いたしました。
59ページからの別表1に論文発表の実績、それから61ページの第2表に学会発表の実績の一覧を挙げさせていただいております。
研究会等での発表は65ページの別表3に示させていただいております。これは20件と昨年度より増加しております。これは表に書いてございますように、産総研と研究所のジョイントシンポジウムというものを新たに開催し、その講演による増加などによるものと思われます。
そのほか、解説記事を67ページの別表4に示しておりますけれども、これは30件と、昨年度の22件、第1期の平均の11件を上回っております。
それと、58ページに戻りまして、ロの特許の出願でございます。20年度は7件ということで、中期目標期間の目標であります年平均7件と同じ数となっております。これに関しましては今後とも頑張って成果を出し、特許にするよう努力していきたいと思っております。なお、特許の内容につきましては、69ページの別表5に示しております。
次は、70ページのハ、共同研究等の実施でございます。共同研究は28件で、受託研究が6件と、昨年度の実績を上回っております。本年度の新規の受託研究としましては、環境省事業での株式会社りゅうせきからの「バイオエタノール発酵プロセスに係る実用化改善技術研究開発」がございます。
共同研究の具体的内容は、先ほど既に研究調査のところでも触れさせていただいておりますが、そのほか民間との契約で明らかにできないものも含めまして、ここにその概要を整理させていただいておりますし、また席上の配付資料とさせていただいております。席上配付資料1に20年度の共同研究の一覧表がございます。ここに研究先が明らかにできるものは明記しておりますけれども、共同研究の契約上明らかにできないものにつきましては、単に民間企業とか酒類製造業者等と記載されているところでございます。
それと、整理合理化計画でも他省庁の研究機関等との研究調査の相互補完や連携を図るという観点から、適切な研究課題について共同研究を積極的に推進するとされておりますことから、今後とも共同研究を推進していくということにしております。
それと、74ページのニの研究生の受け入れ状況でございますけれども、ポスドク等の受け入れ状況は表にお示ししているとおりでございます。
また、ホの産学官との連携でございますけれども、国税庁職員との人事交流のほかに、大学教員に併任しております。そのほか、他の機関等からの委員就任を受け入れております。
76ページのヘの産学官等との交流・フォーラムへの参加につきましても、積極的に参加するほか、地域及び酒造組合等と連携し、表にありますような講座、シンポジウムを実施しております。
あと、トの国際会議への参加におきましても、庁の要請により国際会議へ参加させていただいております。
他機関からの委員就任要請の内容でございますけれども、これも席上配付資料の2とさせていただいております。そこにいわゆる具体的に何をやっているかという業務内容というものを個々に記させていただいております。助言とかアドバイス等々、あとは人事院における試験の作成委員等々がございます。
以上でございます。
○井本鑑定企画官 ありがとうございます。
研究所のほうからの説明は大体以上でございます。委員の先生方、何か御意見、御質問等ございませんでしょうか。
○中西臨時委員 特にございません、私のほうは。
○魚住委員 特にございません。
○井本鑑定企画官 それでは、若干繰り返しではございますけれども、ただいま研究所のほうから説明がありました平成20年度の業務の実績の評価の結果につきましては、資料の2の記入様式に御記入をいただきまして、8月7日(金曜日)までに事務局までファクスもしくはメールで御送付いただきますようによろしくお願いいたします。各委員の評定を取りまとめたものといたしまして、事務局で案を作成させていただきまして、次回の分科会でそれぞれの評定を御審議いただきたいと思っております。
日程が非常にタイトになっておりますところ、ご多忙の中、非常に恐縮でございますが、取りまとめの事務の都合上、8月7日までに必ず御提出いただきますように重ねてお願い申し上げます。
次回は8月18日(火曜日)の第26回の分科会となりますので、引き続きの御審議のほどよろしくお願いしたいと思います。
本日は、若干早うございますが、これをもちまして散会とさせていただきます。長時間ありがとうございました。
(以上)
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