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財務大臣談話~財務省発足に当たって~(平成13年1月6日)

財務大臣談話

~財務省発足に当たって~

平成13年1月6日

 本日、中央省庁等改革に伴う新体制への移行を機に、大蔵省は「財務省」と名称を改め、諸機関と連携しつつ、財政経済運営に取り組むこととなりました。
 発足の日に当たり、今後の財務省行政の基本的な考え方を述べさせていただきます。

(基本的認識)
 我が国は、戦後半世紀の間に敗戦の荒涼からの復興と驚異的な高度成長を成し遂げましたが、こうした輝かしい繁栄を支えたのは、経済的な豊かさの追求を共通の価値観とした官民協働のシステムでした。
 しかし、共通の価値観を前提にしたシステムは、内外の経済社会情勢に急激な変化が生じた世紀末に至って、抜本的な見直しを迫られることとなりました。すなわち、冷戦構造の終結により、世界的にこれまでの価値の体系が崩れる中、我が国では、バブル経済の崩壊に伴い負の遺産を抱えることとなり、その後景気が長期的に停滞したことにより、これまでの右肩上がりの経済は変容を余儀なくされました。少子高齢化の進展、経済のグローバル化やソフト化、情報化といった構造変化も急速に進んでいます。その中で、国民の利害は複雑化し、価値観は加速度的に多様化してきています。
 新しく迎えた21世紀の我が国経済社会は、国民一人一人が自己の責任において選択し、主体的に国家や社会と関わっていくことができる、自由かつ公正なシステムとなることが望まれています。
 こうした経済社会を形造っていくに当たって、行政も自ずから変わっていかなければなりません。今後の政府には、複雑な利害や多様な価値観の下での自由かつ公正な経済社会の形成を目指して、選択肢を提示しつつ国民的合意の形成に努めることにより、その役割を十全に果たしていくことが求められていると考えます。

(財務省の発足)
 大蔵省は、戦後の復興から高度成長の時代を通じ、我が国の財政経済運営において重要な役割を果たしてきました。
 しかしながら、近年、先に述べたように内外の経済社会情勢が大きく変化し、政府・民間ともに対応を迫られる中で、大蔵省の行政に対しても、変化に十分に対応しきれていないのではないかといった厳しい眼が注がれることになりました。
 大蔵省は、真摯な自己改革に努めてまいりましたが、新世紀の到来に当たり、「財務省」として、納税者としての国民の視点に立ち、効率的かつ透明性の高い行政を行い、国の財務を総合的に管理運営することにより、健全で活力ある経済及び安心で豊かな社会を実現するとともに世界経済の安定的発展に貢献することを使命として、名実ともに新たな一歩を踏み出してまいります。

(財務省が取り組む課題)
 財務省は、新たな時代の行政機関として、その使命を達成すべく、以下のような内外の諸課題に取り組んでまいります。
 まず、重点的かつ効率的な予算や財政投融資の編成、「公平」「中立」「簡素」という租税原則に沿った税制の企画立案等を通じ、適切な財政経済運営を行い、我が国経済社会の安定的発展に貢献していくことが重要であると考えております。国の資産、負債及び国庫の適切な管理と通貨に対する信頼の維持に努めるとともに、国税や関税などの適正な申告・納税を確保することも、我が国経済社会の健全な基盤の確保のため取り組むべき課題です。
 巨額の債務の累増は、財政の硬直化を招き、ひいては経済社会の発展そのものに支障を及ぼしかねません。景気に配慮しつつ、新世紀の経済社会の姿を展望しながら、歳出特に社会保障の在り方、税制の在り方、更には中央と地方の関係まで視野に入れた検討を行い、様々な課題に十分対応でき、将来にわたって持続可能な財政構造を構築していくことは、成し遂げなければならない重要な課題と考えています。
 また、経済のグローバル化が進む中で、自由かつ公正な国際経済社会の実現やその安定的発展に向けて、世界経済の中で大きな地位を占める我が国が主体的な役割を果たすことが求められていることは論を待ちません。アジア通貨危機の経験から、我が国がアジア地域との連携を強化し、その経済安定に積極的に寄与していく必要性も一層高まっています。財務省は、このような認識の下、国際通貨システムの安定やアジアにおける地域協力の強化、国際貿易の秩序ある発展に努めてまいります。

(財務省が目指す行政運営の在り方)
 経済社会の在り方が変わり、国民の利害が複雑化し、価値観が多様化する中で、こうした課題に適切に対応していくためには、行政運営の在り方も、時代に即応したものとしていく必要があり、財務省は、以下の3点を重視して行政運営に努めてまいります。
 まず、財務省は、政策の透明性の向上を図ります。国民に対して積極的に的確な情報を発信するとともに、国の財政事情や予算編成についても透明性を向上させてまいります。この度、新しい財務省の使命と政策の目標を、政策評価の実施要領とともに公表したところでありますが、政策評価制度は、財務省の考え方を広く国民に明らかにし、政策の内容や実施状況について、国民への説明責任を果たすものであります。いわば、財務省の行政を国民に投影し、その反響を踏まえて自ら評価し、自己規律していくものであり、今後その着実な実施に努めてまいります。
 また、納税者としての国民の視点に立って政策を展開してまいります。このため、財務省の政策について御質問や御意見を伺う場を積極的に設けてまいります。また、情報化の急速な進展は、行政サービスの質的向上と業務の効率化を図るチャンスでもあります。国税や税関等の手続の電子化を進めるなど、財務省における情報化を総合的・計画的に推進してまいります。
 さらに、高度な専門性に裏打ちされた効果的・効率的な行政運営を行うことも重要であります。高い能力と見識を有する人材の育成・確保に努めるとともに、各分野等の専門家や市場関係者との意見交換を積極的に進めつつ政策形成を図り、新たな時代の潮流を見据えて、従来の発想にとらわれず、山積する諸課題に取り組むことにより、財務省は、国民の期待に応えてまいりたいと考えています。

(終わりに)
 財務省は、全職員が一人一人決意新たに、国民全体の奉仕者たる矜恃と責任感を持って、職務に全力を尽くすことにより、今回の中央省庁等改革の実を着実に挙げてまいりたいと考えています。是非、国民の皆様方の御理解と御協力をお願いいたします。


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