このページの本文へ移動

日米租税条約(新条約)の署名についての財務大臣談話

15 11 7

財務大臣談話

 今回の日米租税条約の改正は、およそ30年ぶりに両国の社会経済情勢の変化等を踏まえ、全面的にその内容を改めたものであり、今般、両国の間で正式に署名されたことを発表いたします。
 
 現在、わが国においては、少子・高齢化、IT化等が進展する中で、持続的な経済社会の活性化を実現することが喫緊の課題となっており、とりわけ、グローバル化する経済の中で、新しいフロンティアの拡大と生産資源のダイナミックな再配分を通じた産業競争力の再構築が求められています。
 
 こうした視点を踏まえ、税制については21世紀に相応しい包括的かつ抜本的な改革に取り組んできているところです。
 その第1弾として、平成15年度においては、わが国産業の国際競争力の強化や構造改革を進めるとの観点から、21世紀をリードする戦略分野の成長を支援する研究開発税制、設備投資税制等を集中的・重点的に講じたところであり、現在、その効果が発現しつつあります。
 更に、こうした政策を一層推し進めるために、今般、第2弾として戦略的なパートナーである米国との投資交流を税制面からも支援することとし、その目的で、およそ30年ぶりに日米租税条約の改正を行うこととしました。今回の改正では、これまでのわが国の条約ポリシーを大幅に見直しており、ビジネスチャンスの拡大、雇用の創出、競争の促進等を通じた経済の活性化や産業構造の変革につながることが大いに期待されます。
 
 具体的な内容としては、両国間の積極的な投資交流を促進する観点から、投資所得(配当、利子、使用料)について源泉地国の課税をできるだけ制限することとしております。特に、持株割合50%超の子会社からの配当を免税とするとともに、金融機関等の受取利子についても免税とします。更に、使用料については無体財産権の活用の重要性を踏まえ、対内・対外投資促進の観点から条約に関する基本方針を変更し、これについても免税とします。
 
 なお、移転価格課税において課税年度から7年以内に調査に着手しない場合は課税処分されなくなるなど予測可能性が高まることから、米国に進出している邦人企業はより活動しやすくなると考えられます。
 
 また、新日米租税条約では投資課税に対する免税が大幅に拡充される一方で、租税条約の濫用や国際的な租税回避行為の増加も予想されることから、本来であれば条約の特典を受けるべきではない者に対して特典を制限するための包括的な規定を設けています。このような特典制限条項を適切に運用していくとともに、条約上の情報交換規定を活用することによって、今後とも、適正・公平な課税の実現に向けて努力していくこととしております。
 
 更に、租税回避行為にとどまらない国境をまたがる巧妙かつ悪質な脱税事案についても適切に対応できるよう、日米租税条約改正に合わせて、関係当局と一層の連携を深めていくこととします。
 
 以上のさまざまな施策を着実に実施していくことによって適正な国際課税が確保されるとともに、日米両国間の投資及び人的交流が促進されることを通じて、今後より一層両国の経済関係が緊密なものとなることを期待しております。