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第171回国会における与謝野財務大臣の財政演説

平成21年4月27日

今般、先に決定されました「経済危機対策」を受けて、平成二十一年度補正予算(第一号特第一号及び機第一号)を提出することとなりました。その御審議をお願いするに当たり、補正予算の大要について御説明いたします。

(最近の経済金融情勢への対応)

まず、最近の経済金融情勢と、「経済危機対策」について申し述べます。

昨年夏以降の経済金融情勢の悪化に対し、政府は、財政措置十二兆円を含む総額七十五兆円規模となる累次の経済対策をとりまとめました。現在、平成二十一年度予算を速やかに執行し、景気回復を最優先課題として取り組んでいるところであります。

しかしながら、平成二十一年度予算をとりまとめた昨年末以降も、我が国の景気は急速な悪化が続いております。世界的な景気後退を背景に輸出や生産が大幅に減少するとともに、雇用情勢も急速に悪化しつつあります。また、企業の資金繰りなど金融環境も厳しい状況にあり、我が国はまさに「経済危機」とも言える状況に置かれております。

他方、将来に目を転じますと、我が国は、少子高齢化への対応、低炭素社会の構築といった構造的な課題に直面しております。外需依存から内需主導による成長へと経済の体質転換を進めつつ、こうした課題にも適切に対応する必要があります。

また、現下の厳しい経済金融情勢の中、財政政策が成長や雇用の下支えにとって重要であることは国際社会の共通の認識であり、四月二日の金融サミットにおいて、成長や雇用等を回復するため、必要な規模の継続した財政努力を行うこととされたところであります。

こうした経済金融情勢等を踏まえ、四月十日、政府は、「経済危機対策」を決定いたしました。

本対策においては、第一に、景気の底割れを回避するため、雇用調整助成金を拡充するなど緊急雇用対策の拡充・強化を行うとともに、保証・貸付枠の拡大など企業の資金繰り円滑化等について万全の措置を講じ、あわせて公共事業等の前倒し執行を行います。

第二に、中長期的な成長を図るため、三つの分野について、特に緊急に実施すべき施策を実行いたします。まず、「低炭素革命」として、太陽光発電や環境対応車・グリーン家電の普及促進に取り組みます。また、「健康長寿・子育て」として、地域医療の再生や介護機能の強化等に重点的に取り組むとともに、安心こども基金の拡充等により子育て支援の強化等を行います。あわせて、「底力発揮・二十一世紀型インフラ整備」として、農地の有効利用等により食料自給力の向上に取り組むとともに、国土ミッシングリンクの結合や港湾・空港インフラ等の整備により、地域間の連携や競争力を強化いたします。

第三に、国民の皆様に安心と活力をもたらすため、防災・安全対策等に取り組みます。また、地方公共団体に対して、地域における公共投資を円滑に実施することができるよう「地域活性化・公共投資臨時交付金」を、地域の実情に応じたきめ細やかな事業を積極的に実施できるよう「地域活性化・経済危機対策臨時交付金」を、それぞれ交付いたします。

第四に、需要不足に対処する観点から、住宅取得のための時限的な贈与税の軽減など、税制上の措置を講じます。

本対策のとりまとめにあたっては、経済の下支えに必要な施策や将来の成長力を高める施策などを厳選いたしました。優先順位を明らかにして果断な実施を図ることで、民需の自律的回復を促すこととしております。

こうした取組を行う一方で、中期の財政責任を果たしていくことが必要です。このため、経済情勢の急激な変化や累次の経済対策として実施される措置等を踏まえつつ、財政規律の維持や持続可能な社会保障構築とその安定財源確保に向けた取組を着実に進めてまいります。

(平成二十一年度補正予算(第一号、特第一号及び機第一号)の大要)

次に、今般提出いたしました平成二十一年度補正予算(第一号、特第一号及び機第一号)の大要について御説明いたします。

まず、歳出面においては、「経済危機対策」関連として、「雇用対策」について一兆二千六百九十八億円、「金融対策」について二兆九千六百五十九億円、「低炭素革命」について一兆五千七百七十五億円、「健康長寿・子育て」について二兆二百二十一億円、「底力発揮・二十一世紀型インフラ整備」について二兆五千七百七十五億円、「地域活性化等」について千九百八十一億円、「安全・安心確保等」について一兆七千八十九億円、「地方公共団体への配慮」について二兆三千七百九十億円、合計十四兆六千九百八十七億円を計上しております。あわせて、国債整理基金特別会計への繰入れを計上する一方、経済緊急対応予備費の減額を行うこととしております。

他方、歳入面においては、財政投融資特別会計財政融資資金勘定から三兆千億円を受け入れるなどにより、三兆千六十六億円のその他収入の増加を見込む他、七兆三千三百二十億円の建設公債の発行を行うこととしております。

以上によってなお不足する歳入については、やむを得ざる措置として三兆四千八百七十億円の特例公債の追加発行を行うこととしております。今回の措置により、平成二十一年度の公債発行額は四十四兆千百三十億円となり、公債依存度は四十三・〇パーセントとなります。

これらの結果、平成二十一年度一般会計補正後予算の総額は、一般会計当初予算に対し歳入歳出とも十三兆九千二百五十六億円増加し、百二兆四千七百三十六億円となります。

以上の一般会計補正等に関連して、特別会計予算及び政府関係機関予算についても所要の補正を行うこととしております。

また、財政投融資計画については、本対策を実施するため、この補正予算において七兆八千四百二十三億円を追加することとしております。

なお、「経済危機対策」に関連して、「租税特別措置法の一部を改正する法律案」ほか一件を提出しております。あわせて、「株式会社日本政策投資銀行法の一部を改正する法律案」ほか三件も提出されることと承知しております。

以上、平成二十一年度補正予算(第一号、特第一号及び機第一号)の大要について御説明いたしました。関連法案とともに御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。