ファイナンス 2018年2月号 Vol.53 No.11
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1.日本経済の現状と財政政策等の基本的な考え方(1)経済情勢29年度の我が国経済をみると、アベノミクスの推進により、雇用・所得環境の改善が続く中で緩やかな回復基調が続いている。海外経済回復の下、輸出や生産の持ち直しが続くとともに、個人消費や民間設備投資が持ち直すなど民需が改善し、経済の好循環が実現しつつある。政府は、持続的な経済成長の実現に向け、「生産性革命」と「人づくり革命」を車の両輪として少子高齢化という最大の壁に立ち向かうため、29年12月8日に「新しい経済政策パッケージ」を閣議決定した。あわせて追加財政需要に適切に対処するため、29年12月22日に29年度補正予算を閣議決定した。雇用・所得環境の改善が続く中、各種政策の効果もあって景気は緩やかに回復していくことが見込まれる。物価の動向をみると、原油価格の上昇の影響等により消費者物価(総合)は前年比で上昇している。この結果、29年度の実質国内総生産(実質GDP)成長率は1.9%程度、名目国内総生産(名目GDP)成長率は2.0%程度と見込まれる。また、消費者物価(総合)は0.7%程度の上昇と見込まれる。(2)財政事情前述の「新しい経済政策パッケージ」に基づく「人づくり革命」に必要となる財源として、31年10月に予定される消費税率10%への引上げによる財源を活用し、「教育負担の軽減・子育て層支援・介護人材の確保等」と「財政再建」とに、それぞれ概ね半分ずつ充当することとしている。この消費税率引上げ分の使い道の見直しにより、32年度のプライマリーバランス黒字化目標の達成は困難となる。我が国財政を見ると、国・地方の債務残高がGDPの2倍程度に膨らみ、なおも更なる累増が見込まれ、また国債費が毎年度の一般会計歳出総額の2割以上を占めるなど引き続き厳しい状況にある。このような状況の中、財政再建の旗は決して降ろさず、不断の歳入・歳出改革努力を徹底し、プライマリーバランスの黒字化を目指すという目標自体はしっかりと堅持する。この目標の達成に向け、これまでの経済・財政一体改革の取組を精査した上で、本年の「経済財政運営と改革の基本方針」において、プライマリーバランス黒字化の達成時期、その裏付けとなる具体的かつ実効性の高い計画を示すこととしている。2.平成30年度予算の概要(1)平成30年度予算の姿前述の「新しい経済政策パッケージ」も踏まえ、30年度予算においては、保育の受け皿拡大や地域の中核企業による設備・人材投資の促進等の重要課題に重点化している。同時に一般歳出等について平成28年度、29年度に引き続き「経済・財政再生計画」の「目安」*1を達成し、公債の発行額を安倍内閣発足以来6年連続で減額するなど、経済再生と財政健全化の両立を実現する予算としている。歳出については、一般歳出が58兆8,958億円、これに地方交付税交付金等15兆5,150億円及び国債費23兆3,020億円を加えた一般会計総額は97兆7,128億円となっている。平成30年度予算及び平成29年度補正予算について主計局総務課主計官 江島 一彦2ファイナンス 2018.2特集

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