ファイナンス 2018年1月号 Vol.53 No.10
6/60

平成30年1月財務大臣年頭所感財務大臣麻生 太郎あけましておめでとうございます。平成30年の年頭に当たり、謹んで新春のお慶びを申し上げますとともに、我が国の経済財政運営等につきまして一言所感を述べさせていただきます。政権発足から丸5年。安倍内閣は、この5年間、アベノミクスの「改革の矢」を放ち続けたことで、我が国経済の停滞を打破することができました。政権交代後、極めて短い期間で「デフレではない」という状況を作り出す中で、名目GDPは過去最高となり、実質GDPはプラス成長を続け、企業収益は過去最高の水準になりました。また、有効求人倍率は史上初めて全都道府県で1倍を超え、賃金についても、賃金アップの流れが4年連続で続いているなど、雇用・所得環境は大幅に改善し、経済の好循環は着実に回り始めております。しかしながら、こうした中においても、現役世代は、社会保障に対する将来不安、また、子育て、介護といった負担に直面しております。こうした状況に正面から取り組むため、「人づくり革命」を断行し、子育て世代、子供たちに大胆に政策資源を投入することで、社会保障制度をお年寄りも若者も安心できる全世代型へと改革し、希望出生率1.8、介護離職ゼロの実現を目指します。そのために必要となる財源として、2019年10月に予定される消費税率10%への引上げによる財源を活用します。消費税率の2%の引上げにより5兆円強の税収となりますが、この増収分を教育負担の軽減・子育て層支援・介護人材の確保等と、財政再建とに、それぞれ概ね半分ずつ充当します。このようにして、社会保障の充実と財政健全化のバランスを図ってまいります。この消費税率引上げ分の使い道の見直しにより、2020年度のプライマリーバランス黒字化目標の達成は困難となります。我が国財政は、国・地方の債務残高がGDPの2倍程度に膨らみ、なおも更なる累増が見込まれ、また、国債費が毎年度の一般会計歳出総額の2割以上を占めるなど、引き続き、厳しい状況にあります。このような状況の中、財政健全化の旗を降ろすことは許されません。不断の歳入・歳出改革努力を徹底し、プライマリーバランスの黒字化を目指すという目標自体はしっかり堅持します。この目標の達成に向け、これまでの経済・財政一体改革の取組を精査した上で、今年の「経済財政運営と改革の基本方針」において、プライマリーバランス黒字化の達成時期、その裏付けとなる具体的かつ実効性の高

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る