ファイナンス 2018年1月号 Vol.53 No.10
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機会がありました。その際、彼は国連の安保理でいろいろな決議は定められるが、実施は全て国境で行うのだから、それは税関の話であり協力関係を深めましょうとのお話でした。(イ)WTO貿易円滑化の面ではWTOとの関係も引き続き重要であり、今、最もホットな話題は電子商取引貿易です。電子商取引の定義はなかなか難しいのですが、国境を流れるモノを管理する税関から見ると、インターネットで注文し、支払いもオンラインと取引の流れは電子的ですが、最終的には越境したモノが郵便局や税関に膨大な量の小包などの形で届きますので、これをどう捌くのかといった課題になります。越境電子商取引は消費者や零細企業にとっては貿易の恩恵を受ける機会でしょうが、実際に小包を開けてみると、麻薬から、知財違反のもの、さらには銃器、現金の隠匿、そういった貿易禁制品や規制品が多数見つかります。また電子商取引だと税務面でも捕捉が困難な側面があります。WTOの場でも、次のルール作成の対象は電子商取引貿易だという声がありますが、懸念を示す途上国もあって、なかなかまとまりがついていません。そのためWTO事務局長と相談してこの12月にアルゼンチンで開催されるWTO閣僚会合の場で、電子商取引に伴う貿易の現場から見た現状とWCOとしての国境での電子商取引貿易に関するスタンダード策定の方向性を説明することにしております。(左)アゼベドWTO事務局長(ウ)G20昨年、中国で開催したG20の場で、国境を越えた非合法な資金の動きを取り締まる必要があるが、その際、貿易手続きが偽造インボイス等を通じて悪用されているのではないかとして、WCOに検討を依頼するという内容が首脳宣言に入りました。そこでWCOでは、様々な研究機関と連携し経済的な影響を検討すると共に、現場での対応策を取りまとめております。(エ)UNESCOなど本年1月のダボスの世界経済フォーラムでは、UNESCO事務局長や米国スミソニアン博物館代表と文化財保護のセッションに参加しました。何時も、現在、世界で何が問題・課題になっているかを考え、これに対し税関がどのように貢献できるかを考える必要があるのですが、昨年は文化財保護、特にイラクやシリアでテロリストが文化財を破壊して、それを輸出して資金源にしかねないことが世界的に問題視されていました。そこで、昨年のWCO総会では国境での文化財保護を優先課題にすることを提案し、総会決議にこぎつけました。またUNESCOと協力し、税関職員の研修や情報共有のネットワーク構築を実施しました。税関が世界的な課題について、様々な役割を果たすことが出来ることを示せたと思っています。(3)民間とのパートナーシップ政治指導者の話ばかりしましたが、民間と協力してビジネス環境を改善することも重要であり、民間の貿易団体や企業の代表に声を掛け、WCOにおいて民間協議の場をつくり対話と協力に努めています。また、これをモデルに、加盟国でも税関と民間の協議の場を作る動きが広がっています。4.国際機関トップとして何が重要か最後になりますが、国際機関トップとして何が重要かということですが、第一にはビジョンを示せること。コミュニケーション能力もこれに入りますけれども、先ほどお示しした戦略プランのよ47ファイナンス 2018.1連 載|セミナー

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