ファイナンス 2018年1月号 Vol.53 No.10
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すると、ほかの選挙ポストの人たちから不満も出てきます。私が事務総局長になってからは、管理委員会をつくって、月一回はこの5人と、それからその次長たち、そして官房のメンバー数人を集めて、そこで政策を説明して彼らの意見を聞くことをしています。やはり、相談したという形にすると、彼らもかなり納得してくれます。この5人の選挙ポストを除くと、残りは全て私が任命できます。国際機関に人を送り込むというのは、どの国も非常に重視しておりまして、各国から圧力がかかりますので、手続きの公平性のために採用委員会をつくって、次長が議長で局長たちを集めて、事前に応募してきた多数の候補を数名のショートリストに絞ってもらいます。候補者選定の際には、関税局長、時には大使や大臣が私のところに陳情に来られますが、公平な手続きを構築しこれに対応しています。このように、いろいろ仕組みをつくって、公平性を担保しつつ、私1人に全ての圧力がかからないようにしながら、一番有能な候補者を選択する工夫をしております。(8)182カ国を6つの地域に分けて運営メンバー国とのコミュニケーションも重要な課題であり、加盟182カ国を6つの地域に分けて事業を運営しております。毎年6月の総会の前の4~5月頃、この6つのそれぞれの地域で関税局長が集まる地域会合が開催されます。ここで地域としての方針が決まっていきますので、この6つの地域会合には必ず私自身が出席するようにしております。こうした機会においては、地域が何を重視しているのか、関税局長一人一人に、直接何が問題なのかを必要があれば聞いておきます。何しろ、6月の総会に182カ国が集まったときは、私は総会を回すのに忙しく、各関税局長と個別に会う時間が取れませんので、可能な限りこの6つの地域会合に事前に行って前処理をしておく。そういうことをやっておくと、彼らは自分たちの思いが伝わっていると感じてくれるわけですね。それから6つの地域それぞれには、各地域の代表を務める関税局長がいますので、この人たちにも定期的に電話して連絡を密にするようにしております。3.政治指導者への政策提言最後に、Advocacy(政策等の提言活動)について申し上げます。各国を訪問した際、政治指導者と会い、税関の持つ経済発展と社会保護の役割を説明し、WCOのスタンダードに沿った税関近代化の必要性を訴えながら、技術支援でお手伝いを約束するのは事務総局長の重要な仕事です。またそのためにも、他の国際機関との連携も重要となります。以下、最近の例をお話しします。(1)各国大臣等を訪問(ア)アフガニスタン本年7月、アフガニスタンに赴き同国の大統領や財務大臣と面会しました。アフガニスタンはかつては中央アジアと南アジアをつなげる、まさにコネクトする連携の要衝でした。中央アジア諸国は今はモノをロシア経由で欧州に送るか、あるいは中国からはモノが入ってくる状況です。考えてみれば、すぐ南のアフガニスタンを経由してパキスタンに行けば、そこには港がありますので、貿易路の多様化の可能性はあるのだと思います。まず、財務大臣にお会いすると、途上国でよくあるのですけれども、汚職対策を要請されました。税関はモノが流れていく国境にありますから、途上国ではしばしば汚職が問題になります。具体的には、税関手続は時間を要することが多く、各段階で小額のお金を払って、通関を早めてもらうという類の汚職が散見されます。私どもは、それに対して幾つかツールを有しており、特に「アルーシャ宣言」が参考になると説明します。アルーシャというのは、この宣言が採択されたタンザニアの都市の名前です。先ず1番目に、高すぎる関税率や多すぎる関税の減免措置は、汚職の誘引になりかねないので、適切なレベルに抑える。2番目に、手続きの電子化を進めて税関手続を簡素化し、税関職員と民間とが不適切に接触する45ファイナンス 2018.1連 載|セミナー

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