ファイナンス 2018年1月号 Vol.53 No.10
49/60

職員トップセミナー各国が事務総局長に何を期待しているかというと、仕事の内容もさることながら、職員採用を公平に行って欲しいということと、健全な財政の維持ですので、そうした点が見えるように心がけ、いろいろ努力しております。(7)事務局組織WCO事務局の組織上、トップは事務総局長でその下に事務総局次長が一人おります。もともと私が2002年から2008年までやっていたポストです。この7月まではチリの関税局長だった人が次長をやっていたのですが、彼がISO(国際標準化機構)の事務局長に就任することになったため、現在、空席となり、本年12月に特別総会を開いて選挙をする予定になっています。また、事務総局長、事務総局次長の下に3つ局があります。(ア)TARIFF AND TRADE AFFAIRS(関税・貿易局)ここでは品目分類と関税評価と原産地規則の3つ分野を所掌しています。品目分類は不断の見直しが必要です。というのは、技術の進歩に伴い新商品が次々と出てきており、例えば、最近では電子たばこが売れていますが、製品及び原材料をどう分類するのか、たばこなのか、化学品なのか。分類によって、関税率も異なりますので、見直した結果を5年に1度の条約改定に織り込んでいます。(イ)CAPACITY BUILDING(キャパシティビルディング局)ここは先ほど説明した税関の組織的能力の向上を担当しており、技術支援のために各国に専門家を派遣しています。(ウ)COMPLIANCE AND FACILITATION(監視・手続局)監視系の仕事では、麻薬取締りのような国際的オペレーションやテロ対策の研修などを実施しています。また、民間が相当関与しておりますけれども、知的財産権の取締りは、特に先進国から見ると大きな話であろうと思います。手続系の仕事の中心は、税関手続きの簡素化・標準化となりますが、その基本となるWCO協定は『京都規約』と呼ばれております。これは、1973年にWCOの総会が京都で開かれたときに、採択されたことから、このように呼ばれています。もっとも各国に行って大臣に『京都規約』加入を慫慂すると、地球温暖化の京都議定書と混同されることがあったのですが、最近では理解が進んで、現在、112カ国まで加入が進んでいます。WCOでは、事務総局長、事務総局次長、それから3人の局長、この5つのポストが選挙ポストという、少し変わった組織になっております。どのように5人の選挙ポストを一体として運用していくのかというのは、なかなか難しく、私の前任の事務総局長の時代は、自分1人で全部決めて、下に決定事項を降ろしていたのですが、そう事務局組織事務総局長御厨 邦雄(日本)2009年1月~2018年12月事務総局次長(欠)前任:S. Mujica(チリ)2010年1月~2017年7月(辞任)監視・手続局長A. Hinojosa(米国)2016年1月~2020年12月キャパシティビルディング局長E. Checcucci(ブラジル)2016年1月~2020年12月関税・貿易局長P. Liu(中国)2016年1月~2020年12月ファイナンス 2018.144連 載|セミナー

元のページ  ../index.html#49

このブックを見る