ファイナンス 2018年1月号 Vol.53 No.10
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(イ)WCOの目標WCOは何を目標として活動しているのかと問われたときに、分かりやすく一言で答えられるように、私どもの目標である「WCO ビジョンステートメント」を用意し、「Borders Divide、Customs Connects」を採用しました。グローバル化の世の中になっていますが、国境というのは未だに重要で、モノやヒトの流れを分断しますが、それをつなぐ役割、コネクティビティが税関、WCOの目標であることを示しています。私は世界各国への出張が多くて、行った先ではその国の政治指導者にお目にかかることが多いのですけれども、彼らに税関の重要性を説明する際に、「Borders Divide、Customs Connects」を使うと、なるほど税関の役割が分かった、それでは税関近代化をサポートしますということになります。(5)WCOの主な機構では、具体的にどのように仕事を進めているのか、お話したようにWCOでは毎週のように何らかの会議が開かれております。一番大きい会議はCouncil(総会)といって、年1回、182カ国の関税局長が集まって、そこで重要政策を決めるということになります。これは、毎年6月に開催しております。他方、年1回だけで182カ国をまとめるのは容易ではなく、日本を含む30カ国がPolicy Commission(政策委員会)という会合(年2回開催)で集まり、総会に重要政策を勧告する仕組みとしています。この他、重要な会議はFinance Committee(財政委員会)で、国際機関として財政運営をどのように進めていくのか実施していくのか議論します。WCOの予算というのは、基本的には人件費ですから、それほど多くなく年間1,600万ユーロ位です。その1番の担い手はアメリカで22%、2位が日本です。3位が中国、4位ドイツと続いていくわけですけれども、その結果として、日本とアメリカには特別な待遇が与えられ、政策委員会と財政委員会の常任メンバーということになっています。国連のようにお金はなくても自分たちは大国だといって常任理事国になるということはなく、貢献額に応じ上位2か国を常任メンバーにする公平な組織なのではないかと思っております。メンバー国182カ国を、どのように取りまとめるのかというのが重要な私の仕事になってくるわけですが、可能な限り182カ国の多様なニーズやプライオリティをこの戦略プランに盛り込んで実施していく、そして、各国に評価してもらうというのが私の基本的な仕事になるわけです。(6)WCOの事務局スタッフ次にWCOの事務局については、現在、184人スタッフがいて、半分が各国税関からのプロフェッショナルなスタッフで、半分がサポーティングスタッフとお考えいただければよろしいかと思います。この組織には、1,600万ユーロ程度しか予算がありませんので、余りたくさん人を抱え込めないということで、WCOの予算で採用できる税関の職員枠は50人程度しかありません。残りはTechnical Attachesとして、給与等は出身国負担で人を派遣してもらっています。また、Professional Associatesといって、これは日本が資金援助を行い、途上国税関から有能な職員を毎年10名程度集め、1年間、WCO事務局で業務経験をしてもらう制度もあります。このため、プロフェッショナルなスタッフのうちの約半分は、WCOで給与等を支払っている職員、残りの約半分は手弁当ないしは資金援助に基づき派遣されてきている職員ということとなります。2009年に私が事務総局長になった際は、西欧の職員が多い職員構成でしたが、その後、全体の職員数を余り変えず、多様な地域・国からの採用を増やし、職員の国籍はこの9年間で34から64に増えています。また、可能な限り女性の職員採用にも心がけ多様性に配慮しています。主な機構政策委員会財政委員会各技術委員会等総会・財政事項の検討・我が国を含む19か国で構成・主要政策課題を検討・我が国を含む30か国で構成・最高意思決定機関・加入国の税関当局の最高責任者で構成43ファイナンス 2018.1連 載|セミナー

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