ファイナンス 2018年1月号 Vol.53 No.10
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1.はじめに列席の皆様の中には懐かしいお顔もあって、こうした機会を設けていただくのは有難いことだと思っております。御紹介にありましたように、私は、関税局の課長時代にWCO事務総局次長に選出されて出向しました。そのまま残って事務総局長を目指すことになり、2008年の選挙を経て、2009年から2013年まで1期5年を務め、現在は2014年から2018年末までの2期目を務めています。私どもは、税関関係の各種セミナーやフォーラムを世界各地で開催しておりまして、今回は税関で使うテクノロジーのフォーラムを東京で組織しました。テーマはdisruptive technologyで、新たなテクノロジーがこれまでの仕事のやり方、あるいは生活の仕方まで変えていく、スマートフォンがいい例ですけれども、そういうものが税関にどういう影響を及ぼすのかということを議論しました。世界各国から500人位が集まって、今週火、水、木曜とあり、先ほど終わったところです。本日は、トップ・マネジメント論ということですので、WCOはこういうものだということをお分かりいただかないと、トップ・マネジメント論になりませんので、それを御紹介しながら話を進めさせていただきたいと思います。2.WCOとは(1)発足の経緯WCOとは「World Customs Organization」の略称で「世界税関機構」と訳されております。皆さん御存じのWTO「世界貿易機関」というのがありますけれども、その前身がGATT「関税と貿易に関する一般協定」で1947年に設立されております。皆さんIMFや世界銀行のことはよく御存じで、いわゆるブレトンウッズ体制と言っておりますけれどもGATTもその一つです。IMFが為替と経済の安定、世銀が経済発展、もう一つのGATTが貿易の促進を図るという三本柱です。第二次世界大戦は、主要国が貿易ブロックをつくって世界貿易が阻害されたことがその一因だったという反省から生まれたのがGATTで1995年にWTOに発展しています。GATTができたときは、欧州も戦後復興を議論しているときでしたので、今のEUのもとになる考え方ですけれども、欧州でGATTの考え方を進めて、関税同盟を設立する機運が生まれました。関税同盟をつくるためにはGATTでやっている関税率の調和だけではうまくいきません。その関税率がどの物品に適用されるのかを決める品目分類国際機関におけるトップ・マネジメント講 師演 題御厨 邦雄 氏世界税関機構(WCO)事務総局長職員トップセミナー平成29年11月2日(木)開催41ファイナンス 2018.1連 載|セミナー

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