ファイナンス 2018年1月号 Vol.53 No.10
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職員トップセミナーを韓国は取り戻すことができると思うか、という質問を受けました。私は、あまりイニシアティブを取ることに一生懸命になって、これまでの流れを壊すということだとそれはかえってあなたたちにとってよくないのではないかという話をしたのですけれども、いまだに韓国などの会議に出ると、彼らは必ず「ドライバーズシート」(支配的な立場)と言うことがあります。北朝鮮問題のドライバーズシートには本来韓国が座るべきなのだと、そういう思いがあることは間違いない。しかしながら今の文在寅政権も、日米韓の動きを壊してはいけないということもよくわかっていますし、それから北朝鮮の行動がかなりひどいということもあって、今の段階では日米韓でとりわけその圧力でというこの路線を受け入れているということかと思います。ただ、彼らはやはりドライバーズシートへの憧れと言いますか、思いが非常に強いし、それから文在寅大統領自身はいわゆる圧力路線ではなくて、対話あるいは融和路線を旨とするそういう大統領です。対話にいきたいからというのでいろいろ準備をしているようですが、この間韓国で聞いてきた話でおもしろかったのは、保守政権の9年、本来は10年ですけど、朴槿恵政権が1年短かったので保守政権の9年の間で金大中、盧武鉉の間にできていたパイプというのが全部潰れちゃったので、もうこれは特使しかないのだというような言い方をしています。今はまさにアメリカそれから日本が軸となって、北朝鮮に対する圧力路線というのが続いているわけですけれども、これがどこかの局面で一気に潮目が変わって対話の方向にいくだろうと韓国側は読んでいるし、私もそれがどういうきっかけなのかわかりませんけれども、そういう局面が変わる瞬間があるのかもしれないと思っております。そういうタイミングをどういうふうにうまくつかめるかというのが、今の韓国側が一生懸命考えていることのように思います。(2)共有しうる最終目標これまで北朝鮮に対して効果的に国際的な協調というのができてこなかったのは事実です。その結果、北朝鮮の核ミサイルの能力がここまで上がってしまったというのを我々は考えなければいけないのですが、朝鮮半島の非核化というのを最終目標としているということに関しては、これは中国もロシアも含めて恐らく間違いないと思います。しかしながら、そこに至るプロセスと時間、これが決定的に違うのだろうと思います。日米韓は基本的には、韓国はちょっと微妙ですけど、少なくとも日米は今はまだ対話のときではないと。要するに圧力をかけて、北朝鮮が姿勢を変えてから対話なのだという考え方で、圧力に軸を置くということになるのだろうと思います。一方の中国・ロシアからすると、北朝鮮というのは圧力をかけても変わらんと。だからむしろ対話で何とかうまく彼らを納得させて、自分たちの決断として、核放棄に導くしかないのだというのが基本的な中国・ロシアの考え方だと思います。さらに日米と中ロでは最終目標に至るまでにかける時間について大きな違いがあります。可能な限り短期間で、と考える日米に対して、中ロはかなり長い時間をかけなければいけない、との立場です。日米韓と、とりわけ日米と中ロがどういうふうに接点が設けられるのかというのが、今後の課題だろうという気がしますが、なかなか難しいというのが今の状況かと思います。6.圧力によって北朝鮮の姿勢を変えられるのか(1)3つの過小評価結局今の問題というのは「圧力によって北朝鮮の姿勢を変えることができるのかどうか」というところです。アメリカのティラーソン国務長官が北朝鮮政策は過去20年間失敗してきたと言い、トランプ大統領も過去の三代の大統領は北朝鮮政策を失敗したと言うわけですけれども、これは恐らく圧力をもっとかければよかったとか、あるいは圧力からファイナンス 2018.138連 載|セミナー

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