ファイナンス 2018年1月号 Vol.53 No.10
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うのは、まさにアメリカがイラクに対して攻撃を開始した時期で、イラクが終われば次は北朝鮮だという、そんな雰囲気だったわけです。そんな中で中国は、アメリカは放っておいたら当時のブッシュ政権が北朝鮮に軍事攻撃をするかもしれない、それはもうとんでもないということで重い腰を上げて、六者協議を準備して、その枠組みの中に入れたという経緯があります。現在、その六者協議がありませんので、アメリカが軍事行動に出るかもしれないと判断した中国からすれば、自分たちが前に出て、北朝鮮に対して厳しく対応しなくてはいけないと判断したのだろうと思います。でもその後、米国から聞こえてくるいろいろなシグナルがちぐはぐだということもあって、6月の米中の安全保障と外交のツー・プラス・ツーあたりから、中国もアメリカが軍事力を行使できないだろう、しないだろうと判断するようになる。だとすれば本来の仲介者の立場に戻っていく。それを見透かしたように、翌7月4日に北朝鮮はICBM発射実験をするわけですけれども、その直後に中国はロシアとともに「両方ともやめろ」という言い方をするわけです。北朝鮮に対してはこれ以上の核ミサイルの実験をやめろと。一方でアメリカに対しても米韓軍事合同演習をやめろと非常に具体的な要求をするわけです。しかも中露の外相会談の声明では、北朝鮮の立場もわかるとまで言うわけです。本来の仲介者の立場に立つということだったのだろうと思います。中国の私の友人たちに話を聞くと、米中関係というのは重要だが、それがトランプ政権なのかどうかというのはいろいろ余地があると言うのですね。普通で考えればあと3年で終わるだろうと。だとすればその3年間をしのげば、次にもう少しリーズナブルな大統領が出てきたときに、この米中関係というのは北朝鮮問題をもう少し管理できるような方向にいけるのではないのか、と言う中国人もいます。一般的には中国の人に聞くと、北朝鮮というのはあってもなくても困ると。あればあったでいろいろ面倒だし、なければないで在韓米軍付きの韓国と共生しなきゃいけなくなる。これはこれで厄介な話だという、そんなところのようです。(ウ)ロシアロシアは朝鮮半島問題そのものにそれほど大きな関心があるわけではなくて、アメリカとの関係の中で考えているのだろうと思います。もう随分前ですけれども、2000年のときに1か月ぐらいモスクワの国立国際関係大学というところにいたのですけれども、そのときにロシアの専門家と話をしたり、あるいは当時のロシアの外務省朝鮮担当の人と話をしたら、まだそのとき六者協議とかなんとかというのが全然ないタイミングだったのですけれども、その外務省の担当官が、ロシアとしてはメンバーが自由に議題を設定できる多国間協議をやって、そこで在韓米軍について議論をしたいと言うわけですね。彼らが言っていたのは、ヨーロッパに展開するアメリカ軍に関して口を出す枠組みというのは我々にはいっぱいあると。ところが自分たちの後背地である朝鮮半島、韓国にいる在韓米軍について口を出す枠組みというのは一切ない。そういう枠組みがほしい、ということを言っておりました。恐らくそこには在日米軍というのも入るのかもしれませんけれども、いずれにせよ、ロシアが大国であることを目指せば目指すほどアメリカとの関係というのが出てきて、その中での朝鮮半島という、恐らくそういう位置づけなのかなというふうに思います。(エ)韓国韓国では、朴槿恵大統領が職務停止に追い込まれて、新しい大統領が今年の5月に当選したわけです。この5月の当選直後に、新聞社のみならず、いろんなところから意見を聞かせてほしいという話があったのですけれども、みんなその立場は違うけれども同じことを聞いてきました。すなわち、今年になってから北朝鮮問題というのは非常に緊迫して、それが主としてアメリカと中国によって進展しているが、今回韓国に新しい大統領ができたことで、今まで失ってきたイニシアティブ37ファイナンス 2018.1連 載|セミナー

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