ファイナンス 2018年1月号 Vol.53 No.10
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職員トップセミナー事を動かしたり、あるいは居眠りしたからといって死刑にしたりという、そういう意味での恐怖ではなくて、彼らには彼らの鉄の掟のようなものがあって、それに触れた場合には親戚だろうが排除されるのだというのが、そういう意味での恐怖だと思います。(2)北朝鮮は合理的か最近、「北朝鮮は合理的か」という話を特にアメリカは気にするようですけれども、私は合理的だと思うのです。例えば核ミサイルの問題でも、北朝鮮が間違って先制攻撃をするようなことは絶対しないだろうと。なぜならば、先制攻撃をすれば反撃をされて当然自分たちの体制は崩壊してしまうため、そんなことはしないだろうと。そうすると次の質問で出てくるのは、では例えばアメリカがいわゆる軍事施設であるとかあるいは核関連施設を限定的に攻撃した場合、北朝鮮は反撃をしてくるかという質問が来るわけですね。そこで私が「それは反撃してくるだろう」と言うと、「それはアメリカ人の考える合理性ではない」と言われてしまう。「これまで名だたる独裁者と言われている人たちもそうだった。カダフィに関してもアメリカは空爆をやったけどカダフィは反撃してこなかった。それから(パナマ侵攻の時も)ノリエガ将軍は反撃してこなかった。だから、合理的であれば反撃してこないだろう。部分的な限定の攻撃であり、体制を壊すとは言ってない。ティラーソン国務長官が盛んに、北朝鮮の体制変化を求めるものではないということはそういうことなのだ」という、こういう議論があるのですね。それに対して私がどうお答えするかというと、「それはアメリカに対する不信感があるからである。北からすれば一回目の攻撃だけで止まるとどうして信用できるのか。黙っていたらまた敵の二の矢、三の矢が来るかもしれない。だとすれば一の矢が来たところで、もう反撃するしかないというのが北朝鮮の合理性なのだ」と私が言うと、「それは合理性とは言わない」という話になって分かれてしまうのです。やはり彼ら(北朝鮮)なりの合理性というのはどこにあるのかというところを見きわめていく必要があるように思います。(3)対話の意味するもの:北朝鮮と国際社会北朝鮮にとっての対話というのは、自ら核保有国として受け入れさせる、あるいはそれを前提とした対話だったら彼らはいつでもやりたいわけです。けれども、国際社会としては当然ですけれども北朝鮮に核を放棄させるための対話でないと意味がない、アメリカのティラーソン国務長官なども繰り返し、核放棄のための対話なのだという言い方をしております。ですから、この二つの対話にどうやって接点を見出すのかというのが恐らく今後の課題ですが、なかなか難しいというのが今の状況かと思います。5.国際社会の対応(1)米・中・ロ・韓の動き(ア)米国アメリカのトランプ政権の北朝鮮政策の特徴というのは二つあって、一つは北朝鮮への圧力というのがまず基本です。それからもう一つは、中国に働きかけて中国が北朝鮮に持っている影響力を行使させることです。ですから今は、いわゆる二次的制裁といって、北朝鮮と取引のある企業に対してプレッシャーをかけていく。これは多くの場合中国の企業ですから、米中関係の枠組みがどうなっていくのかというのが今後の課題になってくるだろうと思います。(イ)中国中国の立場というのは恐らく完全に仲介役の立場であって、例えば今は中断している六者協議というのは、中国からすると、北朝鮮に核を放棄させると同時に、アメリカもその枠組みの中に入れて乱暴なことをしないようにコントロールする、そういう思いがあるわけです。前回の六者協議がスタートするタイミングといファイナンス 2018.136連 載|セミナー

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