ファイナンス 2018年1月号 Vol.53 No.10
38/60

ですから、昨年1月の4回目の核実験を皮切りに、20回以上のミサイル発射実験を行い、それから同じ年度で2回目、通算5回目の核実験を9月に行い、飛躍的にミサイルと核の技術を向上させ始めていきました。(2)トランプ政権発足とシリア攻撃ところが、アメリカでトランプ候補が当選すると同時に、そういった行為というのが中断いたします。ミサイルも発射しない、核もやらないという時期がずっと続いていたのですけれども、今年の2月ですか、マティス国防長官が韓国・日本を訪問して、従来の北朝鮮政策をそのまま、いわゆる日米韓を中心として圧力を加えていくということが明らかになりましたので、それをきっかけに今度はまた北朝鮮がミサイル発射を繰り返すということになったわけです。そもそもトランプ大統領という人は、この北朝鮮問題にそれほど関心があったわけではないのだろうと思います。ところが、昨年末のオバマ大統領からトランプ大統領への引き継ぎの際に、オバマ大統領が、アメリカにとっての喫緊の課題が北朝鮮問題であるということを言って、一気に関心が高まったと言われております。3月からは、米韓軍事合同演習があり、北朝鮮がそれに対抗して、いろいろな形で威嚇を行うということで、朝鮮半島がまさに危機的な状況が演出されると。とりわけ、御記憶にあるかと思いますが、習近平国家主席がアメリカを訪問して、米中首脳会談をやっているまさにそのときに、アメリカはシリアに攻撃を加えました。オバマ大統領ができなかったシリアへの攻撃をトランプ大統領がやったと。だとすると、これはひょっとするとアメリカは場合によっては軍事力を使うかもしれないと、恐らくかなり北朝鮮も緊張したのだろうと思います。北朝鮮が行う実験というのはいわゆる固形燃料であったり、あるいは潜水艦から発射するようなものであったり、あるいはそれまで隠しておいて直前になって出してくる、要するに反撃力があるということを見せつける。要するに、自分たちに何らかの形でアメリカが攻撃をしたら、どんな攻撃であろうとも間違いなく相手に対して、とりわけ韓国と日本を射程に入れた、今持っている現有の兵器で反撃できるのだということを見せつけるような実験だったと私は思っております。(3)ICBM(大陸間弾道ミサイル)発射実験と水爆実験それが大きく変わったのが、7月4日のアメリカの独立記念日に合わせたように1回目のICBM発射実験を行ったことです。これはこれまでトランプ政権にとってのいわゆるレッドライン、ここを超えたらアメリカは軍事力を行使するかもしれないと言われていたものでした。北朝鮮は、このICBMを発射し、しかも2回やり、なおかつ9月には通算6回目となる水爆実験を行った。ここのあたりまでは、恐らく北朝鮮はトランプ政権というのは軍事力を行使できないだろうと足元を見ていたのだろうと思います。それはなぜかと言いますと、トランプ大統領は激しいことを言うにもかかわらず、マクマスター補佐官やマティス国防長官が繰り返し「軍事力行使なんてとんでもない」とか「軍事力を使って北朝鮮に反撃を受けたら何百万人もの犠牲者が出る」と、だからとてもそんなことできないみたいなことを言うわけですね。ですからアメリカから出てくるメッセージというのが、ちぐはぐな印象があったわけですけれども、その中から恐らく北朝鮮側はアメリカは軍事力を行使することが難しいと判断したからこそ、ICBMなどのミサイル、核実験を行ったのだろうと思います。(4)北朝鮮のこの40日の沈黙が意味するものこうして水爆実験まで北朝鮮はやるわけですが、ここでまた今なぜこの40日間の沈黙があるかということにもつながるのですけど、恐らく中国も北朝鮮も慎重になってきていることは事実だろうと思います。6回目の核実験を受けての国連の決議に関しては、アメリカが当初言っていたものよりは大分ト33ファイナンス 2018.1連 載|セミナー

元のページ  ../index.html#38

このブックを見る