ファイナンス 2018年1月号 Vol.53 No.10
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1.はじめに御紹介にあずかりました、南山大学の平岩でございます。よろしくお願いいたします。御案内のとおり、本年の9月15日を最後に、北朝鮮につきましては今のところ静かな状況が続いております。それまでは、毎週末、毎週のようにミサイルを発射したり、核実験をやってみたり、あるいはいわゆる舌戦というもので、非常にアメリカを挑発したり、逆にトランプ大統領がそれに対して過激なことを言って、ますますヒートアップする、そういう状況がずっと続いておりましたが、40日以上にわたって何もない状況にあります。では北朝鮮が姿勢を変えたのかということになるのですが、残念ながらそうではないです。中央委員会総会(10月7日開催)において、金正恩委員長は「自分たちがやってきたことは間違いではなかった」「経済制裁その他についても自分たちで十分準備ができていて耐えられるのだ」「核兵器は民族の生存権を担保する威力ある抑止力である」と、こういうようなことを言っています。この時の人事では、金正恩の妹の金与正の政治局員候補への選出、崔竜海の党中央軍事委員への選出、李容浩外相の政治局員への昇格が注目されたところです。そういうようなことで、北朝鮮は沈黙にもかかわらず、少なくとも今の時点では、北朝鮮がこれまでの姿勢を変えて、核ミサイルを放棄する方向に動くことはなさそうであると。ではそもそもこの核ミサイルの今の状況というのは、どういうふうに考えたらいいのかというところをもう一回おさらいをしたいと思います。2.北朝鮮の核ミサイル問題の現状(1)2016年に核実験2回、ミサイル発射23回そもそも今回の一連の核ミサイルは、昨年(2016年)の1月に通算4回目となる核実験が一つのきっかけと言いますか、それ以後非常に激しい状況で続いてくるわけです。その前年、2015年のときは恐らく北朝鮮からすると、アメリカとの水面下での交渉等があったわけで、なおかつ韓国との間にも交渉があったわけですが、そのアメリカとの交渉がうまくいかない。それから南北の軍事当局者会談も12月に決裂をした。北朝鮮からすればオバマ政権との交渉はもう難しいと。だとすれば次の政権がスタートするまでに、できる限りのことをやって、その能力を上げて、次の政権と交渉したいと、恐らくそういう思いだったのだろうと思います。北朝鮮の核ミサイル問題と国際社会講 師演 題平岩 俊司 氏南山大学 総合政策学部 教授職員トップセミナー平成29年10月27日(金)開催ファイナンス 2018.132連 載|セミナー

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