ファイナンス 2018年1月号 Vol.53 No.10
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の外交文書の公開が話題になったところだが、ロシア大使館のお向かい辺り、外務省の飯倉公館の建物の一角に、秘密解除された明治以来の外交文書が閲覧できる「外交史料館」がある。飯倉公館に呼ばれる機会はなくても、外交史料館には誰でも行ける。1972年9月の日中国交回復交渉関係の資料を見ると、田中総理・周恩来総理による4回の首脳会談の記録、並行して行われた3回の外相会談の記録、総理一行の名簿、日程表、総理と毛沢東主席との面談記録、各宴会での田中総理、周恩来総理の挨拶など興味深い資料が見られる。それから半世紀近く、以下、最近の日中関係の民間の交流のいくつかの取り組みをご紹介する。2中国高校生長期招へいプログラム(心連心)(1)プログラムの内容このように首脳同士の交渉で回復した日中関係については、1983年の中曽根総理の訪中時の胡耀邦総書記との間の合意で、日中友好21世紀委員会が発足。両国で交互に行われる会合の都度、双方の総理に報告することとなった。その後、2003年に小泉総理と胡錦濤国家主席との日中首脳会談で新日中友好21世紀委員会の設置が合意され、その第2回会合での青少年交流強化の提言を受け、2006年から日中21世紀交流事業が始まる。その柱がこの日中高校生の交流プログラムである。日本と中国の将来を担う若者たちが心と心を結び合うことを意味する「心連心」プログラムともいう。2016年10周年を迎えたこのプログラムでは、中国の大都市出身の生徒が多い中で、日本では東京に行くのは一人位で、文字通り全国に行くので、当然、日本の大都会に行くと思っていた多くの生徒は面食らう。昨年無事帰国した11期生の中には、沖縄はもとより、初めて長崎県の壱岐高校という離島の高校に行った生徒もいる。彼らは一人っ子なので、家では家族の中心で、自分で電車の切符も買ったことがない子もおり、学校ではひたすら勉強だけをしてきた人たちだ。国交正常化交渉の際の田中総理・周恩来総理会談記録、田中総理大臣中国訪問団一行名簿。外務省外交史料館所蔵。17ファイナンス 2018.1SPOT

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