ファイナンス 2018年1月号 Vol.53 No.10
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財政健全化目標については、・PB黒字化は債務残高対GDP比を安定的に引き下げていくための必要条件であること、・債務残高対GDP比は経済成長率や金利の動向に左右されることから、それのみでは実効性のある財政運営の指針となり得ないこと、が示されている。審議会では、中長期試算の「経済再生ケース」による経済予測は楽観的過ぎるとの指摘が常に出ており、債務残高対GDP比の実績を見ても、中長期試算の見通しに反して一貫して上昇してきているところである。景気回復期における財政健全化の取組については、米国のクリントン政権やスウェーデンのカールソン政権・ペーション政権における財政再建の事例を紹介しつつ、景気拡大による歳入増のみに頼るのではなく、景気が拡大する中でより一層歳出抑制(歳出対GDP比の低下)に取り組むことの重要性が示されている。建議にあるとおり、我が国の現下の経済状況は、経済再生と財政健全化を両立する絶好の機会であり、腰を据えて歳出・歳入改革に取り組むことで、将来にわたって持続的に成長していくための基盤を速やかに整備していくことが求められている。3今後の財政運営についての考え方最後に、今後の財政運営についての考え方が示されている。まず、平成30年度予算について、「経済・財政再生計画」の集中改革期間(2016~2018年度)の最終年度の予算として、歳出改革の「目安」を遵守し、一般歳出の伸びを5,300億円以下、そのうち社会保障関係費の伸びを5,000億円以下に抑えることが必要であるとされている。加えて、中長期的な視点に立って、生産性向上に資する質の高い予算とすることの重要性が指摘されている。次に、PB黒字化の達成に向けて新たに策定する計画については、財政再建の旗を降ろすことはないという政府のコミットメントを裏付ける、具体性と実効性を備えた信頼できる計画とすることを強く求めている。具体的には、・具体的な歳出・歳入措置を掲げたうえで、現実的な前提等に基づき、できる限り早期のPB黒字化達成を目指すべき、・現行の「目安」を最低限の出発点として、更なる歳出改革の加速に向けて踏み込んだ検討を行うべき、・各歳出分野について、歳出改革のための具体的な取組とその工程を明確化すべき、との提言が示されている。また、PB黒字化の前提として、消費税率10%への引上げは約束どおり2019年10月に実施すべきとしている。政府としては、財政や社会保障の将来に対する不安を払拭し、安心して消費・投資できる環境を整備するためにも、建議で示された方向に沿って財政運営に当たり、一歩ずつ着実に財政健全化に向けて取り組んでまいりたい。【本建議の詳細はホームページに掲載】https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/scal_system_council/sub-of_fiscal_system/report/zaiseia291129/index.html財政制度等審議会財政制度分科会の審議風景※2017年秋からペーパーレス化が開始された。15ファイナンス 2018.1財政制度等審議会「平成30年度予算の編成等に関する建議」について SPOT

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