ファイナンス 2018年1月号 Vol.53 No.10
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財政制度等審議会・財政制度分科会は、2017年9月から7回にわたって審議を行い、「平成30年度予算の編成等に関する建議」をとりまとめ、11月29日に麻生財務大臣に手交した。本建議は、平成30年度予算の編成及び今後の財政運営の指針となるものとして、総論に加え、社会保障、地方財政、文教・科学技術をはじめとする9つの歳出分野における具体的な取組を示したものである。詳しい内容は建議本文をご覧いただくこととし、ここでは建議の概要、特に財政総論の中でポイントとなる点をご紹介したい。1財政の現状と課題我が国の財政は引き続き深刻な状況に陥っている。内閣府の「中長期の経済財政に関する試算」(以下、中長期試算)によると、2016年度の国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス。以下、PB)は18.9兆円(対GDP比3.5%)もの赤字と見込まれている。また、同年末の一般政府債務残高は対GDP比239%と、歴史的にも国際的にも例のない高い水準となっている。こうした中、政府は、少子高齢化という課題の克服のため「人づくり革命」を実施すること、その財源の大宗は消費税率の10%への引上げ分の使い道を見直すことで賄うこと、2020年度のPB黒字化目標の達成は困難となること等を発表した。今回の建議では、こうした政府の発表を踏まえ、・財政規律がこれまでにも増して強く問われていることを認識すべきである、・国民の不安の解消や消費の喚起といった成果につなげるためには、財政再建に対する政府のコミットメントを説得力ある形で強く示すことが必要不可欠である、との指摘がなされている。2財政健全化に向けた基本的考え方続いて、PBの黒字化達成に向けた新たな計画が今後策定されることを念頭に置いて、財政健全化目標についてどう考えるか、景気回復期においては財政健全化にどのように取り組むべきか等に係る考え方が整理されている。Spot02財政制度等審議会 「平成30年度予算の編成等に関する建議」 について主計局調査課長 関口 祐司主計局調査課調査第1係長 宇佐美 紘一左から、吉川洋委員、冨田俊基委員、小林毅委員、榊原定征会長、麻生太郎財務大臣、田近栄治会長代理、土居丈朗委員、中空麻奈委員ファイナンス 2018.114SPOT

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