ファイナンス 2017年12月号 Vol.53 No.9
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ため協定の案文を工夫して、「B国は国内条件が整い次第参加する」旨を明記しつつ、B国を除く12か国の財務大臣により文言を確定し、各国の国内手続きに入る路線へ軌道修正できないか、というものです。ASEANにおいては、何らかの理由で閣僚の署名権限がえられないことが過去にもあり、ASEANとASEAN以外の国との協定で、「○○国は条件が整い次第参加する」と明記した前例も見つかりました。この場合ASEANと日中韓の間にコンセンサスをつくり、共同議長からB国を説得してもらうことになります。おそらく条文の変更とB国の説得に6か月かかるとして、翌2015年の前半の署名式が目標になります。その後、各国の議会承認手続きにあと1年強はかかりますが、2016年5月の任期末には「国際機関化への道筋は付けた」と言うことは可能と考えられました。三つ目は、B国の憲法停止、近日中の暫定憲法公布という状況の中に、むしろ活路を見出せないかというものです。軍政下の暫定憲法という性格から、憲法の内容として議会手続きなども簡素化ないし迅速化が図られると伝えられていました*3。条約の承認ならともかく、財務大臣の条約の案文の確定のための署名権限の付与について、何らかの工夫ができる余地が生まれるのではないか、という発想でした。B国語のできるエコノミストにB国の憲法素案と新聞報道を丹念に追いかけ、報告するよう指示しました。B国の暫定憲法が公布されるが 前進せず(2014年6月~8月)7月22日に暫定憲法が公布され、取り寄せてみると、「条約や協定などが暫定議会に提出されて60日経過しても採決がない場合は承認されたものとする」との条文がありました。この暫定憲法の条文を読む限り、3番目の選択肢を追求する「芽」が出てきました。B国事務方に連絡を取ってみると、署名権限の承認の件については暫定議会へ提出する方向で暫定政府首脳へ働き掛けるとのことです*4。ところが動きが見えたのはそこまでで、その後外からは動きが見えなくなりました。前年(2013年)以来の制約が折角取り除かれそうなのに、前進が見えないという状況にやきもきする日々が続きました*5。図2 三つの選択肢と個人的見通し(2014年6月現在と現時点での仮想上の日程)2014年2015年2016年2017年2018年2019年2020年選択肢(2)(=B国条件付き参加)2015年前半署名式2016年後半国際機関発足2014年後半~2015年前半署名式選択肢(3)(=B国暫定憲法に従う)2016年国際機関発足選択肢(1)(=変更せず)2016年前半以降署名式2017年後半以降国際機関発足選択肢(1)´2017年11月時点における仮想上の日程2019年以降署名式2020年以降国際機関発足所長の任期は2016年5月末まで(注)「仮想上の日程」とは、選択肢(1)を取ったとして、2014年~17年の実際の動き(憲法制定の遅れなど)を踏まえた2017年11月現在の見通しである。28ファイナンス 2017.12連 載|国際機関を作るはなし

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