ファイナンス 2017年12月号 Vol.53 No.9
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2技術革新の動向(1)税関の検査機器等税関の現場においては、様々な検査機器が利用されている。最も馴染みのあるものは、海外から帰国・入国した際に税関の旅具検査場の脇にあるX線検査装置であろう。X線検査装置は、用途・状況に合わせて、手荷物を検査するものからコンテナなど大型貨物が検査できるものなど様々なタイプがある。税関には、この他にラマン分光計、液体分析器、不正薬物・爆発物探知装置など特定の物質(主に麻薬などの社会悪物品や危険物)を検知するための装置・機器が、日本各地に配備されている。今回のフォーラムで注目を集めたのは、多分に漏れず、AI(人工知能)であった。これまでも、過去の情報を利用したリスク判定・リスク管理の手法は存在したが、そのアルゴリズムにAIを活用することにより、新たな可能性を開こうという試みが行われている。例えば、大量のX線画像を、貨物の内容及び申告者などの申告情報や検査結果などと併せてデータベース化し、AIによってリスク判定の目安にしようという試みが複数の企業によって行われていた。更に、AIを貨物検査だけではなく、事後調査やコンプライアンス管理にも応用する取組も、いくつかの企業によって行われていた。他方、AIがどこまで人にとって代わることができるのか、あるいはAIを適切に稼働させるためのデータの質の管理等については、官民双方から様々な見解が示された。(2)官民の意見交換フォーラム期間中、「国境という観点からみた画期的技術」、「機器とその信頼性」、「新たな技術―新たな機会?」、「データ分析のもう一つの側面」、「監視」、「数字と地図による国境:入国地点をどのように越えるのか」といった各テーマで、税関当局、民間企業などが参加してプレゼンテーションや討論会が行われた。新たな技術やその利用方法、成功・失敗体験などが紹介され、課題や問題意識の共有が行われた。日本税関は、関税中央分析所より、最新の化学分析を用いた覚醒剤プロファイル分析による情報【参考】日本における入国者数と、輸出入申告件数、税関定員数の推移70.080.090.0100.0110.0120.0130.0140.0150.0160.0170.020062007200820092010201120122013201420152016輸出申告件数輸入申告件数入国者数定員(2006年:指数100)(年)〈写真資料3〉展示の説明を受ける長峯大臣政務官ファイナンス 2017.1217第6回WCO技術革新フォーラムの開催についてSPOT

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