ファイナンス2017年11月号 Vol.53 No.8
7/66

法人を調査することは難しいため、この中から資本金及び業種別に無作為に抽出して調査を行い、もともとの母集団の状況を推計しています(母集団推計)。この抽出した法人を「標本法人」と言い、「四半期別調査」で約3万2千社(平成29年4-6月期調査結果)、「年次調査」では約3万7千社(平成28年度)となっています。これらの標本法人に対し、全国の財務(支)局、財務事務所等を通じて調査票による郵送もしくはオンラインにて調査を実施しています。経常利益及び利益剰余金(内部留保)が過去最高額を更新平成29年9月1日に公表した年次別法人企業統計調査結果によると、法人企業全体※4の経常利益は前年度比9.9%増の75.0兆円となり、4年度連続で過去最高額※5を更新しました(図表1参照)。前年度比では、業種別にみると、原油価格の上昇による在庫評価益の計上等があった「石油製品・石炭製品製造業」や子会社からの受取配当増等があった「純粋持株会社」が増加に寄与しました。経常利益の増加により、企業の利益の蓄積である利益剰余金(内部留保)も406.2兆円と過去最高額※6を記録しました。なお、直近の四半期別調査においても、全産業(資本金1千万円以上、金融機関を除く)の経常利益は前年同期比で22.6%増の22兆3900億円と、四半期ベースで過去最高になっております。労働分配率は足元低下年次別法人企業統計調査結果をもとに作成される指標で、注目される指標の一つに、企業が生み出した付加価値額に占める人件費の割合を示す労働分配率があります。付加価値額の構成要素である人件費を付加価値額で除することで算出されます。調査結果によると、平成24年度以降の付加価値額※7の急速な増加に対し、人件費※8の増加平成28年度年次別法人企業統計調査結果の概要図表1 経常利益と利益剰余金(内部留保)の推移194.2 167.9 188.9 185.3 203.9 202.2 252.4 269.4 279.8 268.9 293.9 281.7 304.5 328.0 354.4 377.9 406.2 75.0 (年度)0.050.0100.0150.0200.0250.0300.0350.0400.0450.00.010.020.030.040.050.060.070.080.0平成1213141516171819202122232425262728(兆円)(兆円)(出所)財務省年次別法人企業統計調査利益剰余金(右軸)   経常利益(左軸)(注)※1 調査の詳細な定義は下記ホームページを確認下さい。 http://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/index.htm※2 本稿の内容や意見はすべて執筆者の個人的な見解であり、財務省あるいは財務総合政策研究所の公式見解を示すものではありません。※3 営利法人等とは、本邦に本店を有する合名会社、合資会社、合同会社及び株式会社並びに本邦に主たる事務所を有する信用金庫、信用金庫連合会、信用協同組合、信用協同組合連合会、労働金庫、労働金庫連合会、農林中央金庫、信用農業協同組合連合会、信用漁業協同組合連合会、信用水産加工業協同組合連合会、生命保険相互会社及び損害保険相互会社を指します。ファイナンス 2017.113平成28年度年次別法人企業統計調査結果と調査からみた企業動向特集

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る