ファイナンス2017年11月号 Vol.53 No.8
63/66

かずあっきぃのラーメン探訪記連 載|かずあっきぃのラーメン探訪記今回は、はじめに素朴な感想を少し。喜ばしいことに、このコラムも無事に4回目を迎えることができた。このコラムを執筆するに当たっては、事前に霞ヶ関周辺のラーメン店へと足を運び、霞ヶ関から店までの距離、ラーメンの味などを総合的に勘案した上で、ご紹介する店舗を決めている。そのような行動を繰り返している内に改めて気が付いたことがある。最近の虎ノ門の勢いはすごいということだ。念のために申し上げれば、このコラムはラーメンコラム。勢いがあると言っても、経済が活性化したなどという高尚(?)な話ではなく、新店が立て続けにオープンしているということだが(笑)、ざっくりと、1年間で10軒を超えるラーメン店が産声を上げているのだ。今回紹介させていただく『利尻昆布ラーメンくろおび』も、そんなニューカマーのひとつ。同店は、2015年、都営地下鉄大門駅近傍の好立地にオープン。大門・浜松町は、虎ノ門が今のような活況を呈する前から、都内におけるラーメン激戦区として、ラーメン好きから注目を浴びていたエリア。そんな大門・浜松町エリアにおいて、『くろおび』は、超あっさりタイプの淡麗ラーメンを提供する店舗として、主に中高年層からの強力な支持を獲得。若者や観光客が多く、彼らの嗜好に合った濃厚ラーメンを提供する店舗が目立つ同エリアにおいて、スープが透き通ったあっさりラーメンが食べられる同店の存在は貴重。「このエリアでラーメンを食べるなら『くろおび』一択」という層を一定数生み出していたところである。そんな同店が今般、虎ノ門へと移転。新天地・虎ノ門は完全なビジネス街であり、中高年のオフィスワーカーの数も、大門・浜松町のそれと遜色ない。つまり、移転先として理想的なエリアであり、9月17日にオープンしてから日が浅いにもかかわらず、早くも人気店として頭角を現しつつある。同店が手掛けるのは、北海道利尻産の高級昆布を用いた出汁をフル活用した、超あっさりラーメン。緻密な計算の下、昆布に8種類の動物系素材、6種類の魚介系素材、5種類の香味野菜を折り重ねることで、和の情趣を余すところなく表現した1杯だ。近年、関西圏を中心に昆布出汁のうま味をフィーチャーしたラーメンが急増中だが、それらの店舗と同等以上のグルタミン酸が抽出されたスープは、味覚中枢にまとわりつくような滋養味が、心地良い余韻とともに忘れがたい記憶を刻み込む。芯をしっかりと残した固茹での細ストレート麺も、スープの持ち味を引き立てる。いぶし銀ながら隙が見当たらない良杯に、霞ヶ関からも通い詰める人が続出することだろう。かずあっきぃのラーメン探訪記利尻昆布ラーメンくろおび【虎ノ門】まさに中高年層の希望の星! 虎ノ門に超淡麗ラーメンの良店が誕生プロフィールラーメン探究家 かずあっきぃ(田中 一明)1972年11月生まれ。学生時代に出逢った1杯のラーメンに感銘を受け、1995年より本格的な食べ歩きに着手。「ラーメンの魅力の探究」をライフワークとし、年間700杯以上のラーメンをコンスタントに実食。総食杯数は12,000杯を超える。日本全国のラーメン事情に通暁し、各種媒体にラーメン情報を精力的に発信。ファイナンス 2017.1159

元のページ  ../index.html#63

このブックを見る