ファイナンス2017年11月号 Vol.53 No.8
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特集はじめに本稿では、9月1日に公表した平成28年度年次別法人企業統計調査結果の概要を紹介するとともに、近年の企業動向を俯瞰するため、調査結果 から法人企業全体の損益計算書と貸借対照表を作成し、10年前との比較を行いました。比較からみえてきた企業の動向を紹介します。なお、法人企業統計調査は、企業の単体決算を対象として いることから、連結決算と異なり、海外子会社の売上高などの計数は含まれないことにご留意ください※1 。法人企業統計調査の概要 ~企業活動の実態を明らかに~法人企業統計調査※2は、営利法人等※3を調査対象とし、その資産、負債及び純資産の状況並びに損益等について調査することにより、我が国における法人の企業活動の実態を明らかにすることを目的する統計調査です。法人の企業活動を総合的に把握する統計調査としては、対象法人の範囲の広さ、標本数の多さ等において他に例をみないものであり、その結果は、政府の景気に関する公式見解である「月例経済報告」や国民経済計算(GDP)の基礎統計として活用されるなど、経済・財政政策立案の基礎資料として広く利用されています。また新聞などの報道でも調査結果が大きく取り上げられるだけでなく、民間シンクタンク等での景気・産業分析などにも活用されています。加えて、学問の分野でも、その時系列データの長さなどから、調査結果が活用され、企業活動の分析など、様々な研究がなされています。なお、法人企業統計は統計法において、国勢統計、国民経済計算と並ぶ行政機関が作成する重要な統計である「基幹統計」に指定されています。調査項目は、資産、負債及び純資産並びに損益状況などの貸借対照表や損益計算書上の項目となっており、年1回の企業の確定決算の計数を調査する年次別法人企業統計調査と四半期ごとの仮決算計数を調査する四半期別法人企業統計調査の2種類があります。「四半期別調査」は資本金1千万以上の法人を対象としているのに対し、「年次別調査」は全資本金階層の法人を対象としています。この基準では、調査対象法人(母集団法人)数は、「四半期別調査」で約99万社(平成29年4-6月期調査結果)、「年次別調査」では約284万社(平成28年度)となりますが、この全ての写真提供:ペイレスイメージズ法人企業統計調査結果と調査からみた企業動向財務総合政策研究所調査統計部 若松寛平成28年度年次別2ファイナンス 2017.11

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