ファイナンス2017年11月号 Vol.53 No.8
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連 載|日本経済を考える等価可処分所得=可処分所得√世帯人員数等価可処分所得は先行研究やOECDの報告書で一般的に使われており、本稿も準拠する*6。4.4 分析手法本稿の分析手法は、Shorrocks(1982)、Jenkins(1995)による変動係数の寄与度分解を用いる。Shorrocks(1982)は、1965年から1980年までのイギリスの家計所得の不平等を分析した研究であって、この分析手法を用いた最初の研究である。Jenkins(1995)は分析手法を定式化し、先行研究である四方・田中(2016)もこの手法を用いている。詳細な数式は割愛するが、以下が寄与度の定式である。Sf=sfCV=ρfλfCVfこの分析手法は、各所得要素の寄与度の合計が、世帯の総所得における格差を表しているので、所得格差の数値による把握がしやすい不平等度指標であると言える。次の第5章では、寄与度の合計の推移を見ることで、格差の推移のトレンドを掴みたい。5.世帯主年齢別の寄与度の合計から見た所得格差の推移世帯主年齢別の寄与度の合計の推移は、すなわち格差計の推移である。図6は『国民生活基礎調査』の20~59歳の2人以上世帯の世帯主年齢別の格差計の2004年~2010年の推移であり、図7は先行研究である四方・田中(2016)の『全国消費実態調査』を用いた分析の中から対応する2004年及び2009年の数値を比較用に載せている。図6の『国民生活基礎調査』の2004年と図7の『全国消費実態調査』の同じく2004年を比較すると、全ての年齢層において図6の『国民生活基礎調査』の値が大きく、年齢が高くなるにつれて、その傾向が顕著になっている。個別に見ていくと、図6の『国民生活基礎調査』の推移については、40~49歳以外の年齢層において、2007年に格差が拡大した後、2010年では2004年よりも格差が縮小ないし30~39歳のみ横ばいとなっている。40~49歳については全年齢層を通して唯一、2007年で格差が縮小し、逆に2010年で2007年より格差が拡大している。図7の『全国消費実態調査』においても、40~49歳は他の年齢層と異なり2010年に格差が拡大する傾向にあることから、40~49歳に何か特有の原因があると思われる。*6)可処分所得=年収-税・社会保険料等価可処分所得は世帯の可処分所得を平方根で割って求められる。例えば、可処分所得が100万円の単身世帯と144万円の2人世帯(144万円÷√2=100万円)が同じ所得階層に分類されることを意味する。図6 世帯主年齢20~59歳の2人以上世帯の寄与度の合計の推移(国民生活基礎調査)20~29歳30~39歳40~49歳50~59歳0.8000.5500.5710.5490.6880.6490.6550.6700.7290.6290.5530.5500.4810.7000.6000.5000.4000.3000.2000.1000.000国民生活基礎調査2004国民生活基礎調査2007国民生活基礎調査2010出所:国民生活基礎調査各年度個票より筆者作成。図7 世帯主年齢20~59歳の2人以上世帯の寄与度の合計の推移(全国消費実態調査)0.4060.41020~29歳30~39歳40~49歳50~59歳0.8000.7000.6000.5000.4000.3000.2000.1000.000全国消費実態調査2004全国消費実態調査20090.4690.4370.4400.4360.4000.423出所:四方・田中(2016)をもとに筆者作成。ファイナンス 2017.1155シリーズ 日本経済を考える71

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