ファイナンス2017年11月号 Vol.53 No.8
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連 載|日本経済を考えるータとして集計を行っている。『国民生活基礎調査』を使用するメリットは、年単位での収入等の把握が容易であり、『全国消費実態調査』の「年収・貯蓄等調査票」と違い、「所得票」に税・社会保険料の記載があるので、可処分所得を把握することができることにある。なお、『全国消費実態調査』では、「年収・貯蓄等調査票」に世帯年収の記載があるが、「年収・貯蓄等調査票」に税・社会保険料の記載が無いので、四方・田中(2016)や大野・小玉・松本(2017)のようにマイクロシュミレーションによって推計を行う必要がある。また、分析対象世帯(使用サンプル)の前提として、先行研究に倣って、年齢が不詳である世帯、各種の調査項目(所得、消費、税・保険料等全てが対象)に関して、未記入による空欄(.)ないしゼロ(0)、不詳コード(999999、税・社会保険料については9999または9998)付きについて、各年度で調査項目名や表記の方法が異なることに注意し、条件を揃えて処理を行った。また、本稿で使用するウェイトは、国民生活基礎調査の各年度の個票データに記載されているオリジナルの拡大乗数を使用してウェイト付けを行った。4.2 所得要素の定義以下が、本稿で用いる所得要素の定義である。括弧内は、『国民生活基礎調査』の「所得票」、「貯蓄票」における表記及び項目である。なお、AからEを合計したものからFを引いたものが『国民生活基礎調査』における世帯の可処分所得である。A.世帯主の就労収入B.世帯主の配偶者の就労収入C.その他の世帯員の就労収入D.資産収入(財産所得、企業年金・個人年金等)E.現金給付・その他(公的年金・恩給、雇用保険、児童手当、社会保障給付仕送り等)F.税・社会保険料(拠出金合計*5=所得税+住民税+社会保険料+医療保険料+年金保険料+介護保険料+その他(雇用保険等)保険料+固定資産税+企業年金・個人年金等掛金)上記の3つの「就労収入」は全て年間収入であり、雇用者所得(賞与、各種手当等を含む)、事業所得(経費等を差し引いたもの)、農耕・畜産所得、家内労働所得(内職等による収入)の合計である。世帯員とは世帯主以外の世帯を構成する各人のことで、その他の世帯員とは世帯主と世帯主の配偶者以外で、同居かつ生計を共にしている家族のことである。次に、「資産収入」は、財産所得、企業年金・個人年金等のことである。「現金給付・その他」には、公的年金・恩給、雇用保険、児童手当等、その他の社会保障給付金、仕送り、その他の所得が含まれている。なお、『国民生活基礎調査』の平成22年度版については児童手当等が一つの項目として独立して算出されているが、それ以前の調査についてはその他の社会保障給付金の項目に児童手当等を含む政府からの給付金が含まれている。「税・社会保険料」については、税・社会保険料が一つの項目にまとめられて予め合計が記載されている項目である「拠出金合計」ないし、税と社会保険料に関する各項目を足し上げたものを「拠出金合計」の代わりとして用いることで算出を行っている。4.3 等価可処分所得について世帯の可処分所得はその世帯の世帯人員数に影響され、各世帯で人員数が異なるので、世帯人員数で調整する必要があり、最も簡単な調整方法は「世帯の可処分所得÷世帯人員数」であるが、規模の経済により世帯人員数が多い方が世帯人員の少ない世帯より一人当たりの生活費が共通の部分がある分、より割安になることが考えられる。このため、世帯人員数の違いを調整するための等価尺度として「世帯の可処分所得÷世帯人員数の平方根」である等価可処分所得を用いる。*5)税・社会保険料の拠出金合計(税金+社会保険料)のデータは平成22年度の個票のみに存在しているので、それ以外の年度は所得税以下の各項目の足し合わせにより、拠出金合計の代わりとしている。54ファイナンス 2017.11

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