ファイナンス2017年11月号 Vol.53 No.8
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目を単純に合計すると、92%が業績に満足しているとの回答でした。今後何を改善すべきかについては厳しめの意見が多く、IMFなど他の国際機関と遜色のない経済、金融分析能力を一日も早く備えるべしというものでした。自分も全く同意見でした。驚いたのは、もっともっと各国を訪問して欲しい、AMRO所長と経済政策を議論したい、という意見が多数だったことです。一番心配していた各国の経済政策への注文が厳しすぎるというものはありませんでした。マクロ経済の調査・分析について3年近く辛口の発表を続けていましたが、その方針が受け入れられたと解釈することもできます。3年前の第一回目のサーベイランスの会議でAMROの辛口の意見がほぼすべての国から袋叩きにあっただけに、うれしく思うとともに安堵しました。他方、それまで講演などは時間の許す限り引受けていただけに、「これ以上各国へ行くことを求められても」というのも正直な感想でした。所長の業績評価の際には、自国出身のAMROスタッフに対して、所長の職場での仕事振りについての意見聴取をする国もありました。風通しの良い職場というのか、会議の合間にスタッフから「所長の指導力に関して母国政府から非公式な聴取がありましたからこう答えておきました」という口頭の報告までありました。「日頃の恨みを晴らすためにも、もっと批判的なことを伝えたら? 自分を首にする絶好の機会だよ」と唆して、皆で大笑いをしたことがあります。任期延長が決定されたのは2014年5月の大臣・総裁会議でしたが、当面の最大の課題は、国際機関設立協定の署名式を早期に実現することでした。B国の国内情勢から前途には暗雲が立ち込めていました。(注)本稿は、AMRO創設の過程で自分がどう考えたか、アジアの人とどう付き合ってきたかを中心に、言わば見聞録風にまとめるものです。在職時に加盟当局から受け取った情報に関してはその職を離れた後も守秘義務がかかっているため、個別の経済・金融情勢の機微にわたる部分などについては触れることはできず、また記述の中に一部省略などがあることへの理解をお願いします。どこの国が話を進めたとかを評価するのが目的ではないため、日本以外はなるべく匿名(A国など)で記すことにします。本稿の記述は、AMROまたは財務総合政策研究所の見解を表すものではありません。(前 財務総合政策研究所所長)カンボジアのショッピング・モール風景(2)(同国では長年米ドル建てで値段が表示されてきましたが、最近現地通貨リエル建てを併記するところが現れました)、本文の記述と関係はありませんファイナンス 2017.1147国際機関を作るはなし ASEAN+3マクロ経済リサーチ・オフィス(AMRO)創設見聞録 連 載|国際機関を作るはなし

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