ファイナンス2017年11月号 Vol.53 No.8
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巻頭言全体最適を目指して財務大臣政務官を拝命して3か月が経ちました。平成25年の初当選以来、参議院財政金融委員会に4年間所属していましたので、比較的スムーズに職務に馴染むことができたような気がします。財務省は、野球に例えるとキャッチャーだと思います。プレイヤーの中で唯一、逆の方向を見ながら、試合全体をコントロールする。重い防具を着けて辛い姿勢を強いられ、試合に負けると「リードが悪い」と全責任を負わされる。それでいて、試合に勝ってもそれほど脚光は浴びない。なんとも切ない役回りです。しかし、だからこそ、誇りを持って仕事ができるのではないでしょうか。「陽徳は陰徳に如かず」。報われない仕事こそ尊い仕事です。要求官庁にはそれぞれ「省益」・「局益」と言われるものがあります。しかし、財務省は「入るを量りて出ずるを制す」ことが必要ですので、財源を考慮しながら全体最適を求めていかなければなりません。すなわち財務省の「省益」はニアリーイコールで「国益」ともいえるのではないでしょうか。この感覚を、私は首長という立場でささやかながら経験させて頂きました。私は宮崎県都城市の市長を平成16年から24年まで務めていました。夕張破たんや小泉改革の中で自治体の行財政改革が叫ばれる時期であり、市の財政健全化に大きなエネルギーを費やしました。歳出カットや定員削減など、痛みを伴う改革を進めるためには、有権者の理解が必要です。約300ある自治会に毎週末出向いて、財政状況と改革の取り組みについて、直接語りかけ理解を求めました。また、従前は、議員の要望に応えられない議会答弁で「財政状況が厳しいため」という言いぶりが常套句として使われていました。しかし、私はこれを禁句とし、事業の優先順位をきちんと説明し、政策と目標の全体像を示して理解を求めるようにしました。行政と住民が全体最適をきちんと理解し、目標を共有していかなければ、政策も改革もうまくいかないと考えていました。結果としては地方債残高を大幅に減らし、財政指標は県内トップになりました。同時に選択と集中で取り組んだ政策が実を結び、企業立地数や有効求人倍率などでも県内トップとなり、医師会病院移転新築や工業団地造成、大学誘致など大きなプロジェクトも実現することができました。現在、少子高齢化が進む中、社会保障費が増大し、給付と負担の関係を持続可能なものにしなければなりません。社会保障と税の一体改革はマイナーチェンジをしながらも、大きな方向性に対する国民の合意は確固たるものがあります。一方で、8%への消費税増税が経済成長の足を引っ張ってしまったという指摘があり、財政再建と経済成長のバランスという難題を克服しなければなりません。アベノミクスは初期の金融政策で劇的な成果があらわれましたが、現在は長い踊り場に入っているような状況です。おそらく成長が軌道に乗るために、もう少しの時間が必要であり、その意味で今が正念場だと思います。このような重要な時期に大臣政務官を拝命したことに、大変重い責任を感じております。国家国民のため、微力ながら、自らに与えられた役割を誠心誠意果たしてまいりたいと存じます。財務大臣政務官長峯 誠ファイナンス 2017.111財務省広報誌「ファイナンス」はこちらからご覧いただけます。

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