ファイナンス2017年11月号 Vol.53 No.8
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間中に国家試験を受験でき、合格すれば、滞在期間の更新に制限なく、看護師・介護福祉士として働ける。彼らは、来日前からの日本語学習で一定の日本語能力を身に着け、来日後も日本語研修を受ける。インドネシアとフィリピンは訪日前日本語研修を6か月間受け、日本語能力試験N5(一番やさしいレベル)程度以上を取ることが入国の前提。訪日後も6か月間の日本語等研修を受けてから、受け入れ施設に行く。ベトナムは、訪日前にみっちり12か月の日本語研修を受けて日本語能力試験N3以上を取ることが前提。入国後もさらに2か月の日本語等研修を受けてから受け入れ施設に行く。このように彼らに無事に看護師・介護福祉士として活躍いただくためのベースとなるのが日本語教育。8外交官・公務員研修将来、対日関係に関わることが期待される若手の外交官・公務員に日本語や日本事情を理解してもらうことは、その国での波及効果も大きい。このため、毎年、8か月間、関西国際空港近くの国際交流基金関西国際センターで研修が行われている。前身の研修を含めこれまで963名の外交官・公務員が研修に参加。今年も世界34カ国から参加。この研修の第一の目的は、日常生活に必要な日本語能力習得、さらに実用的な言語スキルを身につけること。もともと優秀な人たちでもあり、研修開始後数ヶ月で地元の方々とある程度コミュニケーションがとれるようになるという。更に文化活動として、書道・和太鼓・俳句・生け花・着物の着付けなどがある。広島・京都・東京などへの地方研修もあり、その間、外務省等の政府機関等との面談や、日本の伝統芸能(文楽・能・狂言)鑑賞などもあり、日本文化の隠れた側面を発見し、日本社会の仕組みを理解するのに役立つという。歓迎レセプションで会ったインドネシアからの研修生は大の日本漫画ファン。世界中で4億部以上売れているベスト・セラー「ONE PIECE」を未だ読んでいないというので、第1巻を贈る。ここの修了生で駐日大使になっている人が何人もいる。修了生である駐日トーゴ大使によると、はじめて日本語を見たときは、果たして日本語が書けるようになるのか? と疑問に思ったが、先生がプロで、1、2週間も経つと、生徒全員が英語やフランス語のABCDのようにひらがな、かたかなを書けるようになったし、各国からの研修生が家族のように仲良くなったとのこと。現在も、トンガ、カザフスタン、ルーマニア、パキスタンの駐日大使がこの研修の修了生。きっと、今年の研修生の誰かも駐日大使になって戻ってくる。9おわりに繰り返しになるが、語学教育は、国際文化交流の重要な柱であり、その国の文化の深い理解を得るには有効なツールである。海外での日本語教育は、近年、総じて、人気が高まっているが、以下のような課題もある。まず、海外進出日本企業が必要とする産業人材や、技能実習制度等の訪日ニーズの拡大などによって急激に増大する日本語学習ニーズに必ずしも十分に対応できていない。海外で日本語教育を行う人材は、各国の日本語教師も、海外で教える日本人日本語教師ともに不足しており、その育成が急務である。さらに、地域的にみると、まず、南アジア、中央アジア、アフリカ、中南米等、日本語教育が拡2015年度の外交官・公務員日本語研修参加者36ファイナンス 2017.11SPOT

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