ファイナンス2017年11月号 Vol.53 No.8
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一方、すでに2018年1月時点でも保険料の減免分が所得の▲2.2%に達することによると思われる。(3)環境配慮フランスでは地球温暖化対策の観点から、エネルギー産品内国消費税における炭素比例部分を2014年に設け、2030年までに二酸化炭素1トン当たりの課税を100ユーロまで引き上げることを目指している。今回の税制改正では、大統領任期末の2022年までに1トン当たり86.2ユーロまで引き上げることとしており、そのためにエネルギー産品内国消費税を、例えば、ガソリン1ℓ当たり現行の約0.65ユーロ(83.9円)から2022年に0.78ユーロ(100.4円)まで、軽油1ℓ当たり現行の約0.53ユーロ(68.5円)から2022年に0.78ユーロ(100.9円)まで、それぞれ引き上げることとしている(図表4)*19。また、軽油に対する税率の引上げペースをガソリンに対するそれよりも速くすることで、ガソリンと軽油の税率差をなくしていくこととしている。(4)減税規模2018年に導入される主な税制改正による減収規模は、総額103億ユーロ(1.33兆円)となっている。ただし、2018年単年度においては、(2)で述べたとおり、健康保険料・失業保険料の被用者負担分の廃止に一般社会税の増税が若干先行するため、37億円の増収が臨時に発生し、その分を差し引くと、66億ユーロ(0.85兆円)の減収となる。さらに、2018年に導入される税制改正として挙げられているものの中には、2017年予算法案の措置(つまりマクロン政権成立前の税制改正)のうち2018年に導入されたり減税効果が現れ始めたりするものが56億ユーロ分ある*20。企業・家計などの経済全体への影響額としてこれらも含めて減収規模を103億ユーロ(2018年単年で66億ユーロ)と示すのは合理的であるが、マクロン政権成立前の税制改正の影響額が含まれている以上、この全額をマクロン政権による税制改正の減*19)我が国の場合、ガソリンに対しては、1ℓ当たり石油石炭税2.8円、揮発油税48.6円、地方揮発油税5.2円の合計56.6円が、軽油に対しては1ℓ当たり石油石炭税2.8円、軽油引取税32.1円の合計34.9円が、それぞれ燃料課税として課税されている。*20)この56億ユーロは、2017年予算法案には盛り込まれていなかったが、2016年末における議会による修正で盛り込まれた措置によるもの。図表5の(8)(9)及び(10)に対応。(図表4)ガソリン及び軽油に対するエネルギー産品内国消費税率の推移(1ℓ当たり)201720182019202020212022ガソリン0.6507ユーロ(83.9円)0.6829ユーロ(88.1円)0.7067ユーロ(91.2円)0.7305ユーロ(94.2円)0.7543ユーロ(97.3円)0.7780ユーロ(100.4円)軽油0.5307ユーロ(68.5円)0.5940ユーロ(76.6円)0.6476ユーロ(83.5円)0.7012ユーロ(90.5円)0.7547ユーロ(97.4円)0.7823ユーロ(100.9円)(図表5)2018年に導入される主な税制改正と2018年における増減収規模税制改正の内容増減収規模(億ユーロ)(1)住居税の減税(80%の世帯を対象に、2018年から3年間、毎年3分の1ずつ減額し、2020年に廃止)▲30(2)不動産富裕税の創設(連帯富裕税を廃止して改組し、金融資産を対象から除外)▲32(3)金融所得(利子・配当・有価証券譲渡益)への単一税率の適用(リブレ・ア口座への免税措置等は継続)▲13(4)法人税率の33%(現行)から25%(2022年)への引下げ▲12(5)給与税の現行最高税率の廃止(20%の最高税率帯が廃止され、新たな最高税率は13.6%に)▲1(6)エネルギー税増税(ガソリン・軽油等に対する税率の引上げ)37(7)たばこ税増税(来年3月にたばこ一箱の価格を1ユーロ引上げ。さらに2020年までに段階的に1.9ユーロ引き上げ10ユーロへ)5(8)競争力と雇用のための税額控除(CICE)(2017年予算法に基づく給与総額に対する控除率引上げ(6→7%)の減税効果)(注)2018年予算法案では控除率を6%に引き下げ、2019年に税額控除自体を廃止し雇用主の社会保障負担等の軽減に置換え予定▲40(9)給与税の税額控除(CICEの非営利法人向け措置として2017年予算法により創設)(注)2018年予算法案では2019年に税額控除自体を廃止し雇用主の社会保障負担等の軽減に置換え予定▲6(10)家事雇用(介助等)に係る税額控除の拡大(2017年予算法により単純税額控除を給付付き税額控除化)▲10計▲103ファイナンス 2017.1125マクロン政権の誕生、そして初の予算編成 SPOT

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