ファイナンス2017年11月号 Vol.53 No.8
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の一員としての考え方に通じ、利用者としてのみならず社会を構築する支え手として「みんなのために、みんなでお金の使い方を考える」という主権者に必要な観点の基礎を育む要素を兼ね備えている。今回の授業は、今後の財政教育プログラムに一石を投じる非常に価値のあるものとなった。提案・企画いただいた西嶋教諭をはじめ学校関係者、開催準備等で全面的にバックアップいただいたPTA関係者の方々に改めて御礼申し上げたい。•西嶋教諭の振り返り生活科を研究していることから、本件を担当し、小学校2年生向けの財政教育プログラムを開発した。全国初の低学年での実施にあたり、従来のものと異なる学習スタイルの実施を提案した。提案の一点目は、担任主導で授業を行うこと。学級の実態と関わりが深い生活科の授業であることから、担任とゲストティーチャー(青山講師)という形での指導が望ましいと考えた。二点目は、一時限のみの投げ込み型の学習ではなく、単元を通した学習をデザインすること。児童にとって身近かつ魅力的な「公園」を学習の軸とし、身近な公園からそこに関わる人や公園のもつ公共性に学習が広がるように単元を構成した。ここで、依頼文やタブレット型PCの活用により、児童にとって身近な公園から、みんなの公園へ考えが広がるように構想した。さらに、ビデオレターによって必然性を高めた上で「公園づくりシミュレート」に取り組み、遊具や施設のよさや関わる人へ思いを馳せながらグループで協議することを通して、これまでに獲得した気付きを表現してとらえ直し、気付きの深まりや公共性の高まりをねらった。今回「むかし、ブランコの下がコンクリートで、ケガをしたことがあるんだ。小さい子もつかうんだから、マットがいるとおもうよ」「りょうほうとも大切だけれど、どっちが大切かというと…」など、これまでの気付きをとらえ直す思考が見られた。また、「ぼうさいそうこはみんなのためになるから、あったほうがいいよ」の発言や看板に「公園は、みんながつかうものです。ゆずりあってつかいましょう」と書く姿のように、公共の意識に関連する表現も見られた。「おくばしょのそうだんや、コインのそうだんをしました。100コインだけつかうことをはんでよく考えながらそうだんしました」の感想に表れているように、財政面も必死になって考えていた。また、青山講師の存在も活動の必然性を生んでいた。青山講師の名刺を作成し、授業のはじめに配布を依頼したことで、「青山さん、たすけてください!」と自分たちから話し掛けるなど、豊かな関わりが生まれた。授業の終わりに、完成した公園を見ることができないことを残念がる青山講師に向けて、「ビデオレターでおくります!」と提案する児童の姿がとても印象的であった。自ら学びに向かい、人との関わりを豊かに深める姿だと言える。授業後に自発的に質問し、図書館などの公共施設や公的資金が集まる仕組みに気付きを広げていく姿も見られた。本学習では、財政教育的な学びのみならず、生活科的な学びも豊かであった。新しい学習スタイルの工夫が、効果的なプログラムの実現につながったのだ。主体的に学びに向かい、公園や人に深く関わりながら生き生きと学ぶ児童の姿が魅力的であった。授業づくりでお世話になった青山講師をはじめ、財政教育プログラムに関わる機会をくださった財務省関係者の方々に心より感謝申し上げたい。ぼくのわたしの公園が完成(10/17撮影)ファイナンス 2017.1111小学校2年生向け財政教育プログラム ~ぼくのわたしの公園づくりシミュレート~SPOT

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