ファイナンス 2017年10月号 Vol.53 No.7
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投資家のニーズ・動向等を 踏まえた発行計画国債発行計画におけるカレンダーベース市中発行額の年限別配分については、市場のニーズや動向等を勘案しつつ、超長期から短期までの発行額を国債管理政策上の要請を踏まえて決定しています。平成29年度発行計画においては、超長期債(40年債・30年債・20年債)は、生保等の需要動向を踏まえ、40年債を前年度当初比で増額する一方、30年債は維持、20年債は減額しました。長期債(10年債)は、低金利環境が続く中での需要減退を踏まえ減額し、中短期債(5年債・2年債・1年債)については、マイナス金利下で需要が縮小していることを踏まえ、大幅に減額しました。「流動性供給入札」は、市場における需給がタイトな銘柄を追加的に発行することにより、需給の不均衡を解消し、市場機能を向上させることを目的とした仕組みです。平成29年度計画においては、市場において流動性向上を求める声を踏まえ、流動性供給入札を1.2兆円増額しております。実際のゾーン毎の発行額等は、市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて柔軟に調整することとしています。平成28年度は新興国経済に陰りが見えたのに加え、6月には英国国民が投票によってEU離脱を選択する、いわゆるブレグジットが起こり、世界経済の低迷、成長の減速が心配されました。そこで安倍政権では、世界経済のリスクに立ち向かうべく、「未来への投資を実現する経済対策」を8月2日に閣議決定されました。この閣議決定を受けて8月24日には平成28年度第2次補正予算が閣議決定されました。この補正予算には、建設国債の2.8兆円増額、財投債の3.1兆円増額等、国債発行額の変更が含まれていたため、平成28年度国債発行計画についても変更が行われました。上述の補正予算に伴い、国債発行総額は増えましたが、前倒債を活用することなどにより、カレンダーベース市中発行額の総額は変更しておりません。ただし、年限別発行額を変更しました。具体的にはまず、40年債の発行を0.4兆円増額するとともに物価連動債を同額減額しました。経済対策の中で、現下の低金利環境を活かし、財政投融資の手法を積極的に活用することによりリニア新幹線の全線開業を8年前倒しすることが盛り込まれたことを受け、こうしたインフラ整備に対する超長期の資金供給に対応するため、40年債の発行額を増額しました。一方、物価連動債は市況や市場参加者の意見を踏まえつつ、年間発行額を減額しました。カレンダーベース市中発行額(単位:兆円)区 分28年度当初28年度(9月変更後)(年間発行額;a)(年間発行額;b)(b)-(a)40年債2.42.80.430年債9.69.6─20年債13.213.2─10年債28.828.8─5年債28.828.8─2年債27.627.6─1年割引短期国債25.025.0─10年物価連動債2.01.6▲0.4流動性 供給入札9.69.6─計147.0147.0─経済対策に伴う平成28年度国債発行計画の変更平成28年度国債発行計画の変更ファイナンス 2017.105債務管理リポート2017に見る円滑な国債発行を支える債務管理と財務省の役割特集

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