ファイナンス 2017年10月号 Vol.53 No.7
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夏季職員トップセミナー すが、矢印の向きを世界に統一するのか、日本独自で行くのか。ヨーロッパから来た人たちの戸惑いをどれだけ減らせるか。前進なのを後進だと思って進んでしまうと、いつまでたってもたどり着くことができないので、大きな問題だと思っています。平面すなわち2Dを3Dに見分けることができる能力は、日本人は非常に長けているのです。それは、北斎の時代から、見えていた立体空間を平面に置きかえていて、それからゲーム機があって、今に至るということが非常に大きな理由でしょう。2Dと3Dが頭の中で瞬時に置き換える訓練のない人たちに対して、どういう表現の仕方を工夫するのか、ということが課題にあります。最初に少しお話をさせていただいたように、日本の文化は非常に瀬戸際で、多くは衰退し一部は消滅が起こっています。特に文化の発展を担う方、それを支えるお道具をつくってくださる方々の衰退は著しい。このことは、お道具を買い支えることによって彼らが生活でき、次世代の人を育成できる環境が整うと思うのです。ですので、もし皆さんがお買い物するときに、手で作られたものがあれば、ぜひ職人がつくったものを買うことで、この国の文化をみんなで買い支えていただければと願っております。応援していただければと思います。ご清聴ありがとうございました。講師略歴紫舟書家/アーティスト6歳から書道を始める。大学卒業後、企業に勤務した後、書家に転身。2014年にフランス・ルーブル美術館地下会場にて開催されたフランス国民美術協会展では、屏風書画と書の彫刻で、金賞と最高位金賞を日本人初のダブル受賞。「北斎は立体を平面に、紫舟は平面を立体にした」と評される。翌年同展にて世界で1名枠とされる「主賓招待アーティスト」に選出。日本人では横山大観以来、現存日本人初。2015年、イタリア・ミラノ国際万博ジャパンパビリオンにおいて「Scene Ⅰ」の空間の全アートワークを担当、国際万博初の金賞受賞。日本の伝統文化である「書」を、書画・メディアアート・彫刻へと昇華させながら、文字に内包される感情や理を引き出し表現するその作品は唯一無二の現代アートとなり、世界に向けて日本の文化と思想を発信している。現在、大阪芸術大学教授も務める。ファイナンス 2017.1051連 載|セミナー

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