ファイナンス 2017年10月号 Vol.53 No.7
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巻頭言ふるさとから、 まちづくりを考える。財務副大臣を拝命して2ヶ月が経過を致しました。国の根幹を司る財務行政に携わらせて頂き、緊張感を持って取り組んでおります。先進国最悪の財政の改善とGDP600兆円という経済成長の高みを目指すこと、この両立を図ることが必要です。予算や税制の面で難しいかじ取りが必要になると思います。微力ですが麻生大臣をお支えし、最大限力を発揮させて頂く所存です。本稿では、自己紹介方々ふるさとを例に、ライフワークであるまちづくりについて投稿させて頂きます。私は滋賀県長浜市に生まれました。滋賀県(近江国)は、古より京に近く、畿内と東国・北陸地方との間で人モノの行き交う場所でもありました。白洲正子氏が「近江は日本の楽屋裏」と評されたとおり、日本通史に深く関わった土地柄でもあります。天智天皇の大津宮等都も4箇所置かれていたほか、戦国時代は、幾多の戦乱の舞台となり、「近江を制する者は天下を制す」とまで言われ、近江出身の武将も数多く輩出しました。長浜市は太閤秀吉が最初に城主となったところで、市内には賤ケ岳や姉川、小谷城などの古戦場も数多く立地しております。私はその長浜市内の中心部の商店街の荒物屋で生まれました。全国の商店街の例にもれず、昭和50年代より大型店の進出に直面し商店街は壊滅的なダメージを受けました。そんな中、地元企業家の発案で、観光拠点として明治時代の銀行跡を活用した「黒壁スクエア」が整備されました。「黒壁スクエア」はガラス工房を中心に美術館、レストランなどで構成され、江戸時代からの街並みとタイアップした観光拠点です。現在、年間200万人の観光客が訪れる滋賀有数の観光地となり、商店街再生の代表例とも言われます。まちづくりに大切なのは「若者」「よそ者」「商売そっちのけで地域の為に頑張る人」と言われます。「黒壁スクエア」も、商店街の外の若手、新進気鋭の企業家たちによる勇気ある挑戦が現在の隆盛をもたらしています。また、当地には400年以上続く「長浜曳山祭」があります。長浜城主であった秀吉が男子誕生を祝し町民に砂金を配ったところ、町民がそれを基に山車を作り、市中を引き回したのが始まりと言われます。大きな山車の上で子供歌舞伎が演じられます。私も二度、役者として出演させて頂きました。昨年はユネスコ「世界無形文化遺産」に登録されました。竹下内閣のふるさと創生事業をご記憶の方も多いと思います。各市町村に1億円ずつ配布した事業です。温泉掘削や金塊購入など様々な使途が世間を賑わせました。長浜市では祭を維持するうえで特に人材不足に直面していた、子供歌舞伎の三役(振付、浄瑠璃、三味線)の育成塾を立ち上げ、そこにこの資金を思い切って投入しました。現在その塾の出身者が祭においても重要な一翼を担うようになっております。あの資金が無ければ祭の維持も困難だったかもしれません。先輩の知恵に敬意を表したいと思います。まちづくりには、長期のビジョンが必要との良い証左と言えます。以上の二つの点は、地域の創意工夫により、まちは変わるという例でもあります。私自身、日本という大きな視点と同時に、常々、地域の視点、現場の視点を大切にし、活動していきたいと考えております。財務副大臣うえの 賢一郎ファイナンス 2017.101財務省広報誌「ファイナンス」はこちらからご覧いただけます。

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