ファイナンス 2017年10月号 Vol.53 No.7
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夏季職員トップセミナー (2)汎用技術:蒸気機関からICTへ①汎用技術が社会に与える影響2点目は、汎用技術です。ようやくIT、ICTが汎用技術、ジェネラル・パーパス・テクノロジーになりつつあるかなと思っております。汎用技術は全ての産業セグメントに影響を与えるテクノロジーですが、ピーター・ドラッカーがとてもいいことを言っております。「蒸気機関という汎用技術が鉄道の登場を促したけれども、重要だったのは鉄道を生み出したことではなく、鉄道というインフラがあったからこそ郵便とか新聞とか銀行などががらりと変わっていったのだ。」と。これとまさに同じかなと思っております。すなわちIT、ICTは、ブロードバンドとかクラウドとかモバイルとか、いろいろなものを生み出しましたが、それを生み出したのが最終ゴールではなくて、そういうものがあるから、ありとあらゆる産業が変わっていく。それが、社会に与える汎用技術の影響なのだと思うと、これからIT、ICTが非常にインパクトを持ってくるのかな、と個人的には思っております。②タイムスパンでは、どのぐらいのタイムスパンなのかというと、私の感覚からすると、間違っているかもしれませんが、バブルがはじけて30年、40年たって本物になる。1850年に英国で鉄道バブルでしたが、鉄道が全盛期を迎えたのはバブルがはじけて30年から40年ぐらいあとです。1929年は電力と自動車のバブルと呼ばれておりますが、欧米で電化とか道路の舗装が進んで、本当の意味で電力と自動車が社会のインフラになったというのは30年、40年経ってからです。2000年にインターネットバブルがはじけ、2008年にリーマンショックが起こって、やっと昨年とか一昨年でIoTとかAIとかという言葉がブレークしてきたことを考えると、まだまだ長い年月をかけてじわじわと社会の隅々まで入り込んでいくのかなと思っております。(3)海兵隊と想い3点目は、デジタルとかIoT、AI、全てそうですが、やっていくに当たって海兵隊みたいなフットワークの軽い組織でやっていかないといけないということで、海兵隊が重要だということ及び強い想いが重要だということをお話しします。1点目、海兵隊は非常にコンパクトな組織です。陸海空という機能がコンパクトに集められており、まず初めに前線に赴く。2つ目が実は重要なのですが、リスクが高いということです。非常に危ないところに行くからこそ海兵隊としての存在意義があるわけです。経営者の方々には、部下が失敗して戻ってきたら是非褒めてあげるように、そういうお願いをしております。そうじゃないとやはり身動きがとれないのです。経営学では、知の深化と知の探索の両方をやらないといけないと言われますが、デジタルとかAIとかIoTとかは、まだまだ新規事業系です。知の探索側になりますから、そうすると失敗する確率が高いわけで、そこを経営者の方はまたしっかりと守ってあげるのが重要じゃないかなと思っております。(4)インベンション(技術)とイノベーション(顧客)4点目ですが、インベンションとイノベーション。インベンションはテクノロジーの観点で、イノベーションはお客さんと社会の観点となります。25年前とか30年前には、インベンションのハードルが高かったような気がします。例えば光ファイバーを高速化したり、携帯電話を高速化したり、CPUの消費電力を下げたりとか、そういうテクノロジーのハードルを越えると、すっと事業につながるし、社会にも展開されていくということで、この時代の日本企業は強かった。しかし、今はインベンションのハードルが相対的に低くなって、イノベーションのハードルがぐっと上がり、相対的な高さが変わってしまったように感じております。それはなぜかというと、一ファイナンス 2017.1041連 載|セミナー

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