ファイナンス 2017年10月号 Vol.53 No.7
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になります。IoTがちょうどいいタイミングであらわれてきた。欧米と比べていい点は、我々の人口はぐんと減って、労働人口も本当に足りなくなってきている状況でのIoTやAIですから、欧米に比べると雇用への影響というのはそれほどセンシティブではないのかなと。欧米は、やっぱりIoTやAIをやると必ず雇用の話になりますが、日本はそれに比べれば結構いいポジショニングなのかなと思っておりますし、非常にいい可能性があるのかなと思っております。(3)日本の生産性が低い理由では、一体全体なぜ生産性が低いのか。少し我田引水的になりますが、IT、ICTの人たちの分布が偏っているということがすごく大きいのかなと思います。アメリカは半分以上の51.0%のIT技術者がユーザー側(ITを使う側)の企業にいますが、日本は24.1%と逆になっております。お手元の資料にあるように、やはり経営者側の意識が根本的に違うということでありまして、欧米の経営者はIT、ICTは差別化する競争力の源泉だと認識していますが、日本の経営者はそうではない。そのあたりの意識もやはり大きく違うのかなと思いますが、ただ最近は少しずつ変わってきたかなと私は感じております。5.新しいデジタルの世界に向けて(1)資産のデジタル化と再定義①資産のデジタル化では、次に新しいデジタルの世界に向けて5点ほどお話をさせてください。1点目は、資産のデジタル化と再定義です。これからの大きな流れは、やはりIoTぽいような流れでありまして、リアルなものをデジタル化していく、フィジカルアセットのデジタル化ということになろうかと思います。では、古くは物的資産のデジタル化というのはどういうものであったかというと、例を挙げると航空機の座席予約システムです。航空機という座席をデジタル化したものと考えることができます。同じように今はやりのシェアリングエコノミーも、私から見ると物的資産のデジタル化になるわけで、車という物的資産、空きスペースという物的資産をデジタル化していく。全てのシェアリングエコノミーは何かしらの物的資産をデジタル化していっている。そう考えると、今現在デジタル化されてない物的資産というのはまだまだ膨大にありますので、そういう今現在デジタル化されていないものをリストアップしていくことによって、何か新しい可能性が開かれていくのかなと私は思っております。②再定義そのような形でデジタル化が進んでいくと、いろいろなものを再定義していかなければいけないと思っております。いろいろなところで言われているとおり、事業立地も再定義がなされてきています。製造業を例にとると、今までは物をつくって販売するという事業立地だったわけですが、これからはサービスを提供していく。アメリカに空調機器をつくっているキャリア(Carrier Corporation)という会社がありますが、あれも今までは空調機器をつくって販売するビジネスだったのですが、今はお客様の空間を快適にするサービスを売っているので、物の販売からサービスの提供に事業立地が少しずつ変わり始めてきているということです。今までは物をつくって売る企業は、デザイン、設計、原材料、物流、販売といった一方向で組織が最適化されていたように思いますが、これからはデジタルのデータが生まれてきますので、つくったものからデータが上がってきます。そうするとフィードバックループを回していかなければいけませんので、「フィードバックループを回すために適した組織」と今までの「一方向でいい組織」とは、恐らく違うかもしれないということで、組織のあり方自体も柔軟に考え直していかなければいけないのではないかと思いますので、今までの成功事例がそのまま当てはまるかどうかわからないと私は思っております。40ファイナンス 2017.10連 載|セミナー

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