ファイナンス 2017年10月号 Vol.53 No.7
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と下げられる。アメリカの事例だと3分の1ぐらいまで下げることができたということで聞いております。④地すべりへの対応あとは将来的には地すべり対応ですね。こちらは10年前ぐらいですかね、国道168号線での地すべりの映像です。国交省の地方整備局の方が見回りをして危ないところを通行止めにしていたわけですけれども、通行止めにした先で地すべりが起こっているという映像です。将来的にはこういうところにセンサーが入って、例えば地中を流れている水分の量を常時モニタリングして、危ないかどうかというのをあらかじめ教えてくれる世界になるのかなと思います。今現在アナログでやっているものは膨大にありますので、そういったところは少しずつデジタル化されていく時代になっていくのかなと思っております。3.データ駆動型経済IT、ICT業界は、データが主軸となって動いてきたので、データ駆動型経済という言い方もなされますが、今までは「コンテンツ」と「行動情報」という2つの競争軸で競争がなされてきました。グーグル、アマゾン、フェイスブックとかツイッターとかインスタグラムとかいろいろありますが、それらは「コンテンツ」を集めていくのか、「行動情報」を集めるのか、あるいはその両方を集めていくのかということでありまして、インターネット上のコンテンツを集めたのがグーグルですし、購買履歴を集めたらアマゾンになります。また画像を集めたらインスタグラムになりますし、つぶやきを集めたらツイッターになる。これに対して、これからの競争軸は「モノのデータ」です。リアルなデータをどんどん集めていく時代にこれからは入っていく。そうなっていくとグーグルが1社で全てのリアルなデータを集めていくというのは多分あり得ない。ここで言うリアルなデータは、先ほどの地すべりのデータとか、水道管のデータとか、かなり地味なデータが対象になりますから、これはいろんな人たちにチャンスはあると共に、私の非常に雑駁な感覚で言うと、地味なところに行けば行くほど日本は強くなるかなと思っております。シリコンバレーはやはり派手なことが得意ですので、地味なところからデータを集めていくというのは、日本人の気質にも合っているのかなと思っております。今現在グーグルもこういった分野に入り始めたわけです。こちらのビデオをご覧ください。アメリカのサーモスタットをつくっている会社です。円形のしゃれた形のサーモスタットをつくっている会社を、グーグルが3年前の1月15日だったと思いますが、32億ドルという巨費を投じて買収いたしました。1台2万円ぐらいでそれなりには売れていたのですが、それでも売り上げだけでは32億ドルには絶対至らないわけです。では、一体全体グーグルが狙っていたのは何なのかというと、家の中から上がってくるデータを牛耳ることが可能かもしれないということです。データの可能性を集められるかもしれないというのが32億ドルもの価値をつけたというふうに認識しております。しかし、買収から3年経ちましたが、グーグルがこのサーモスタットから上がってきたデータを使って新しいサービスを始めている状況ではありませんので、グーグルでも一歩踏み出したけれど試行錯誤している状況です。4.生産性向上と価値創出(1)AIに頼らずともできることは多いいろいろなところでデジタル化が進んでいるということをお話いたしましたが、目的はいわゆる生産性向上になるわけですね。生産性を向上させることで価値を生み出す。AIに関して、私が若干懸念しているのは、メディアの情報を見ているとAIって何かすごそうだ、最先端で難しそうだ、という点です。人間の知能を超えるのではないか、とそういう論調が多いようにも見受けられるのですが、世の中の問題の99.99%は簡単な問題であるというのが私の今の感覚です。したがって、エクセルに毛が生えた38ファイナンス 2017.10連 載|セミナー

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