ファイナンス 2017年10月号 Vol.53 No.7
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1エコノミスト養成プログラムの概要エコノミスト養成プログラムの立ち上げ現在、我々が籍を置く国際通貨基金(IMF)アジア太平洋地域事務所(IMF Regional Oce for Asia and the Pacic:OAP)では、IMFのアジア太平洋地域の地域拠点として、IMFが同地域で行う経済・金融動向のサーベイランス業務の支援、奨学金プログラムの運営を行うほか、IMFにおける日本人スタッフの増加を目的としたリクルートミッションの招聘や、IMFの業務についての広報活動などを行っている。サーベイランスとしては、OAPのスタッフは、個々の加盟国(現在は、日本とネパール)とのIMF年次コンサルテーションミッションに参加し、これら国々のマクロ経済政策および構造改革の課題等に関する分析ペーパーを作成する。また、スタッフは地域にとって関心の高い分野についてのリサーチも実施する。広報活動としては、例えば実際にIMFで働いているスタッフの横顔を「コーヒーアワー」という参加型説明会などを通して紹介するといったより身近なものから、IMFが半期ごとに発表する旗艦報告書である「世界経済見通し(WEO)」やIMFが日本に対して行う経済・金融動向のサーベイランスの結果をまとめた4条協議レポート公表時などに「Economic Issues Seminar」を開催するなど、よりテクニカルな内容についても積極的に広報してきている。一方で、IMFが実際にどのような経済分析ツールを用いてどのようにマクロ経済分析を行っているかについて、これまで幅広い層を対象にわかり易い形で紹介する機会があったとはいい難い。―「IMFの持っている知見をより幅広く国内に周知することはできないか」、「IMFの知見を活用して国内のエコノミスト育成につなげていくことができないか」、「IMFの知見を周知することは、IMFの勧告等を理解してもらうのに役立つのではないか」―こうした事務所スタッフの想いから、今般OAPでは「Initiative for Macroeconomists of the Future:エコノミスト養成プログラム」を新たに立ち上げた。本プログラムは、主に国際経済・開発などの分野の学習や国際機関等への就職を希望する学生を対象に、より理解のできるマクロ経済分析のアプローチやIMFの業務の具体的なイメージを伝えていくことを主眼としており、特に、IMFが加盟国のサーベイランスを行う際に用いている「ファイナンシャル・プログラミング(Financial Programming:FP)」及び「債務持続性分析(Debt Sustainability Analysis:DSA)」といった経済分析ツールの紹介に重きを置いている。今回、8月上旬に主に国内で学んでいる大学院生を対象に、本プログラムの第1回目のセミナーを開催した(後ほど詳しく紹介)。Spot02IMF主催・JICA協力「Initiative for Macroeconomists of the Future:エコノミスト養成プログラム」について*IMFアジア太平洋地域事務所, エコノミスト 千田 正儀 鴨志田 拓也ファイナンス 2017.1015SPOT

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